ハイパースペースから抜けた後、スキッフはポリス・マサに着陸した。
オビ=ワンがパドメを抱えて、私はドロイドを連れて後から降りる。パドメは医療センターに運び込まれ、また走ろうとすると目眩がした。
立ち止まる私を、オルデランの補佐官が支えてくれる。
「大丈夫ですか?」
「ありがとう。一瞬目眩しただけだから。」
一人で歩けると言い張って離れようとすると、オーガナ議員に止められた。
「貴女も医療センターへ。」
「大丈夫ですから。」
「アリス」
「はい、マスター。」
片膝を折ると、マスター・ヨーダに何かを刺された。マスターの手には、シリンジ。中身は言うまでもない。
不可抗力、すぐに意識が飛んだ。
目を覚ますと、左肩がちゃんと手当てされていた。私の雑な処置から、医療ドロイドの丁寧な処置に変わっている。治れば何だっていいのに。
「貴女の処置は適当でしたので、バクタ・パッチを新しく貼り替えました。」
「ありがとう。マスター達は?」
「アミダラ議員の出産に立ち会っています。」
医療ドロイドに案内され、分娩室に向かう。
向かう途中、突然喪失感が襲った。クワイ=ガンが死んだ時と同じだ。命が消える感覚。
パドメが死んだ。
分娩室に着いたが、パドメは既に息を引き取った後だった。
『────────』
またあの声だ。以前、クルーザーの中で現れ、私を“嘘吐き”と言った人だった。前回と同じように、彼女はフードを深く被っていて、顔が見えない。
意識を集中して、神経を研ぎ澄ませる。
『貴女はまた逃げた。』
「その通り。私は逃げた。」
『どうして勇気を出さなかったの?』
変えられることは、いくつもあった。クワイ=ガンの死は避けられなかったとしても、戦争を止めようと思えば、防げていた。それなのに、私は逃げた。ドゥークー伯爵を殺して止めることで、私は暗黒面に堕ちると思った。
暗黒面が恐ろしくて、立ち向かえなかった。
「私が暗黒面に堕ちれば良かったと?」
『何度も誘惑はあったはず。マスター達のように、貴女は反撃するのではなく避けることで、暗黒面から逃げようとした。それがそもそもの間違い。』
「違う、」
『違わない。現に貴女が逃げたことで、選ばれし者は闇に堕ち、選ばれし者が愛した人は死んだ。』
彼女の言う通り、私は道を間違えた。避けるだけではいけなかったんだ。ジェダイになって、暗黒面が恐ろしいから避けてきた。
パドメとアナキンを、置き去りにしたも同然だ。
「どうすればいいの?」
『暗黒面に立ち向かって。』
「それだけ?」
『そう。少なくとも、後悔はしない。』
段々と彼女の姿が薄くなり、引き止めようと呼び止める。
「待って!あんた誰!?」
『私は貴女。』
「え……」
『私は暗黒面に手を出した貴女。貴女が今決断したことで、未来は変わる。これが最後の忠告。もう逃げないで。』
そう言って、私のドッペルゲンガーは消えた。
つまり、私が暗黒面に踏み入る未来もあったということだ。どの選択が正しいかではない。どの道を選ぶかが重要なんだ。
どの選択も、失うものも得るものも変わらない。
逃げるのは、もうやめる。
「アリス」
振り向くと、オビ=ワンがいた。
様子がおかしい私に、彼はまた名前を呼ぶ。
「アリス、どうした?」
「何でもない。何?」
「会議室に来るんだ。」
オビ=ワンに続き、会議室へと入る。
会議室にはオーガナ議員もいて、今後の話し合いがされていた。パドメが産んだ、2人の子供達の今後を。
双子は隠さなければならない。
「子供らを安全な場所に隠そう。」
「それも、シスが感知できないところでないと。」
双子は、男の子と女の子。二人共、強いフォースを受け継いでいる。シディアスに見つかれば、希望は消える。
「女の子は、私が引き取りましょう。」
オーガナ議員が、女の子を引き取ると言ってくれた。妻の女王陛下と、養子が欲しいと言っていたという。オルデランなら、誰も目を付けない。
「男の子の方は?」
「タトゥィーンにいる彼の家族が良い。そこに託そう。」
タトゥィーンに、アナキンの義兄弟がいる。あの辺境の星なら、見つからない。感知すら難しいだろう。
「………私が責任を持って見守ります。」
オビ=ワンが、歴史通りにそう言う。
オーガナ議員に私、オビ=ワンが立ち上がると、マスター・ヨーダは私とオビ=ワンを引き止める。
「しばし待て。」
座り直すと、マスター・ヨーダは言葉を続ける。
「アリスは知っているじゃろう。」
「はい、マスター。」
「何の話です?」
「フォースの冥界から帰ってきた者がおる。オビ=ワン、かつてのお前の師じゃ。」
「クワイ=ガンが!?」
「交信の方法を教えよう。」
ヤングリングの頃、クワイ=ガンから聞いたことがある。
今を重きに置いた、生けるフォースだ。それを学べば、死後も自我を保てるという。ただ、私はシスの秘術をかけられている身だ。どうなるか、想定できない。
「アリス、お前にはまだ課題が残っておるな。」
「そうです。」
「課題だって?」
「シスの秘術を解く。その鍛練は後回しになる。」
「解けないのか?」
「シディアスが死ねば、解ける。と思う。」
「随分先の話だな。」
ヤヴィンの戦いまで、19年。時間はある。
「なーに、どうってことないよ。戦争も任務もないから、いくらでも探せる。」
「だが、気を付けろ。シスの執着は深い。」
「分かってる。」
席から立ち、2人に頭を下げる。
「では、マスター方。フォースと共にあらんことを。」
「さらば、アリス。」
「フォースと共にあれ、アリス。」
会議室を出て、脱出ポッドに乗り込む。タナヴィーに送ってもらうと、オーガナ議員に迷惑がかかる。これが最善の道だ。
「マスター・レイン、ご武運を。」
「ありがとうございます、オーガナ議員。」
射出ボタンを押して、ポッドはタナヴィーを離れる。ブースターを使わず、私はフォースの導きに任せた。
ポッドには食料もある。しばらく浮いていよう。
その時が来るまで。