幸せな夢を見た。
まだ戦争中のことだ。パドメとアナキン、私がナブーで穏やかな時間を過ごしていた。2人と過ごした時間だけは、はっきりと憶えている。
でも、2人はもういない。
目を覚ますと、ケイナンが呼びに来ていた。
「アリス、今いいか?」
「いいよ。」
個室を出て、ケイナンとブリッジへ歩きながら話す。
「ロザルのチュア大臣が、亡命を望んでいる。」
「あの人が?意外だね。」
「ターキン総督に絞められているんだろう。」
帝国、強いては皇帝に貢献できない士官は必要ない。
ターキンはそう考えている。あの処分された尋問官も、ヴェイダーに不要だと判断され切り捨てられたんだ。下の士官は、ターキンのような上官を恐れている。
恐怖政治はいつか綻びるのに、皇帝、シディアスはそれを選んだ。
だが、それがある意味は弱味でもある。
「大臣を引き入れちゃえば?」
「何を馬鹿なことを……正気か!?」
「正気に決まってんじゃん。大臣を引き入れたら、機密情報が手に入るも同然でしょ?」
本人がその気なら、だけど。
大臣の救出は、ケイナン達が向かうという。ゴーストは使わず、スター・コミューターを使用するらしい。良い案だとは思うけど、もしもの為に1つ言ってみた。
「スター・コミューターって非武装だけど、大丈夫?」
「戦いはしない。大臣を連れ出すだけだ。何か懸念でもあるのか?」
「いや、特にないよ。心配になっただけ。」
そう、何かあるわけがない。大臣を静かに連れ出して、静かに去るだけだから。何も心配する必要はない。
「あんたが心配なんて、余程のことだ。警戒はしておく。」
「うん。成功を祈るよ。」
個室を後にして、一人通路を歩く。
ケイナンと一緒に行くべきか、悩んでいた。大臣の救出作戦に同行すれば、私の疑問が解決するような気がする。ヴェイダーがなぜ自ら現れないのかという、長らく抱えている疑問。
未知の作戦に、同行すべきだろうか。
「アリス」
アソーカに呼び止められ、追ってくる彼女に足を止める。
「何か問題でも?」
「問題と言えば問題ね。ブリッジに来てくれる?」
「ブリッジに?」
来れば分かると言われ、アソーカとブリッジへと向かう。
ブリッジに入ると、問題と言われた理由が分かった。
『久しぶりだな、アリス。』
「ルード議員!」
懐かしい姿が、ホログラムに映っていた。
多少の老けはあるが、すぐにルード議員だと分かった。14年前と何も変わっていない。彼は私の知る議員のままだ。
「議員、通常回線は不用心では?」
『貴女も相変わらずだ、アリス。だが、心配ない。通常回線ではあるが、一種の擬装をしている。帝国に知られることはない。』
「そうですか……」
安堵すると、今までのことを一気に思い出し、ルード議員に待ったをかける。
「議員、私の救出を反乱軍に依頼したそうですね。なぜそんな危ないことを?わざと捕まったことなんて、初めてではないんですよ。」
その問いに答えたのは、議員ではなくアソーカだった。
「今回は訳が違うのよ。あのまま捕まっていたら、貴女はコルサントにいたわ。」
「知ってる。それがどうしたの?」
「アリス、あれは罠だったの。」
『貴女がロザルにいると知ったヴェイダー卿は、尋問官に罠を張らせた。渓谷での一戦や、抵抗せず拘束されるところまで、全て帝国の罠だったんだ。』
ロザルでの私の行動は、筒抜けだったらしい。
ハイパースペースを出てすぐに捕まったことも、ヴェイダーの計算内だったのか。全ては、私をコルサントに連行する為。皇帝の前に突き出す為に。
今思えば、反乱軍がいて良かったと思った。
シディアスとは、二度と会いたくない。
「感謝します、議員。」
『アリスが無事なら良い。タノ、席を外してくれるか?』
「ええ、分かりました。」
「え」
できれば、2人きりにしないでほしかった。
アソーカはブリッジを出ていき、残ったのはリベレーターを操縦する隊員のみ。
『何か悩み事でもあるのか?』
「よくお分かりで。」
『貴女の変化は分かる。』
「“ダンタム”、私とヴェイダーのことは知ってるのに、なぜ反乱軍に招いたの?」
この14年間、何もなかったわけじゃない。
穏やかな時もあれば、苦しんだこともある。議員はそれを知っているはずなのに、あえて飛び込ませるようなことをしてきた。しかも、反乱軍を危険に曝すような真似だ。
『アリス、ヴェイダー卿自身が来ない理由が分かるか?』
「貴方には分かるの?」
『憶測に過ぎないが、予想はつく。“君”は自分で確かめるべきだ。アリス、何をすれば良いのか、もう分かっているだろう?』
どう行動するべきなのか、フォースは既に道を示している。気付いてはいるけど、フォースの導きに従うか、自分で決めるか悩んでいた。フォースの意志は、まだ私を導いている途中だ。
「ダンタム、ありがとう。」
『諭したつもりだったが、忠告もさせてほしい。気を付けてくれ。もうあんな思いは懲り懲りだ。』
「そろそろ違う人を追いかけたら?」
『無理だ。アリス以外は追いかけられない。』
左腕のアームカフを撫でれば、議員はそれを見てまた口を開く。
『まだ持っていてくれたのか。』
「捨てられるわけない。御守りだもの。」
『そう願うよ。フォースと共にあらんことを、アリス。』
通信が切られた後、深呼吸する。
やることは決まった。答えは、自分で確かめよう。向こうが来ないなら、こっちから行ってやる。
ブリッジにアソーカが戻ってきて、入れ違いに私がブリッジを後にする。
「どこへ行くの?」
「ケイナン達のところ。私も付いてく。」
「分かったわ。」
ロザルで、答えを得られるような気がする。それが悪い答えでも、甘んじて聞こうじゃないか。私とヴェイダーの確執が変わる時だ。
ゆっくりとした歩みから駆け足に変え、接続部へ向かう。
ルード議員には感謝しかない。