道中は、空気が重い旅だったと言っておこう。
唯一気になることは、ロザルに向かう途中でヴェイダーの気配を感じたこと。私だけでなく、ケイナンとエズラも、暗黒面の気配を感じていた。恐らくロザルのどこかに、ヴェイダーが潜んでいる。
クリスタルの記録と予期で、罠の臭いがするけど、今はまだ行動すべきじゃない。
「よーし到着!んじゃ、偵察行ってくる!」
「待て!一人で行くな!」
「え?なんで?」
スター・コミューターを降りて早々、ケイナンに止められる。
「ルード議員に、あんたを一人にするなと言われているんだ。」
「か、過保護……!」
「あぁ、それは私も同意よ。」
「ヘラ……」
「悪い意味ではないわ。まともな戦略を立てたことがないから、用心するようにアドバイスされたの。」
「いや、それ悪い意味って言ってない?」
ヘラはそんなことお構いなしに、大臣の待つドッキング・ベイに向かう。
あれ?保護者?
こういう時のヘラには、逆らわない方が身の為だ。トワイレックの女性って綺麗だけど、芯の強い女性が多くない?
「そんなこと言ったって、その内逸れて迷子になるんじゃねぇか?」
「ゼブ、よく分かってるね!」
「笑い事じゃないわよ。ケイナンが困惑した理由が分かるわ。」
サビーヌもなかなか手厳しい。
ドッキング・ベイに着き、私達はチュア大臣を待つ。チョッパーとゼブはスター・コミューターで待機。何かあったら迎えに来てもらう算段だ。
「ねぇ、聞いていいかな?」
「何?」
エズラが、私の背後から声をかける。
「ルード議員とどういう関係なの?」
「ケイナン、説明してあげて。」
「俺が?」
「うん。マスターから聞いてるでしょ?」
あの騒動を知らないジェダイ評議会のメンバーはいない。
ケイナンは溜め息を吐いて、エズラやヘラ達に説明をする。
「ルード議員は、アリスに求婚している。」
「求婚!?」
「それで、答えは?」
「NO、掟に反するから。」
「掟?」
「マンダロリアンにもあるでしょ?」
マンダロリアンにも、いくつかの掟がある。ジェダイの掟も似たようなものだ。でも、今はジェダイ・オーダーはない。
要は、従う意味がない。
「どうやって潜入する?」
「俺が行く。任せろ。」
「任せろ?何をする気?」
ヘラの問いに、ケイナンはストーム・トルーパーのコマンダーに声をかけに行く。ケイナンはトルーパーを殴り倒し、そのトルーパーのアーマーを着て陰から出てくる。なんて無茶なやり方なんだ。
「私達は上に行きましょう。」
「じゃあ、私が先に。」
フォース・ジャンプで住宅街の屋根に跳び乗り、3人も後に続く。
その瞬間、嫌な気配を感じてベイの方に振り向く。背筋が凍るような寒気に、激しい怒りが、伝わってくる。もしかしなくても、暗黒卿のものだ。
私の様子に気付いたサビーヌが、声をかけてくる。
「アリス、大丈夫?」
「………大丈夫。ちょっと辺りを偵察してくる。」
「ダメよ!アリス!」
ヘラの呼び声を無視して、暗黒卿の気配を追って走る。
今こそ、疑問の答えを知る時だ。
もしここにヴェイダーがいるなら、私は奴の思惑に乗せられていることになる。奴も、私がいることが分かるはずだ。本当にいたとしても、私は自分の意志で会うつもりだ。
ベイを見下ろす人影を見つけ、その人の背後に降り立つ。
その人は私が来たことに気付き、振り返る。
「アリス・レイン、お前が来ることは予期していた。」
「半端な者ばかり送り込んできて、何のつもり?ダース・ヴェイダー。」
振り返った暗黒卿、ヴェイダーは私の言葉に嘲笑する。
今も、冷たく重いフォースを感じる。これがあのヴェイダーなのかと思うと、なぜか心が苦しかった。ヴェイダーの後ろに、シディアスの影を見たような気がして、吐き気がする。
「お前自らが来ることを望んでいたのだ。期待通り、お前はロザルに来た。レイン、皇帝陛下がお待ちだ。」
「へぇ、私を奴に差し出すんだ?」
「それが陛下のお望みだ。」
シディアスは、やはり諦めていないようだ。弟子であるヴェイダーを差し向けるくらい、私に執着している。それに、奴はヴェイダーの怒りを利用している。私への怒りを利用して、私を拘束する気だ。
「そう……それならどうして自分で来ないの?」
「お前のことはよく分かっている。私が出向かずとも、自ら来る。クローン戦争の時代から、何も変わっていない。微かに臭うその恐怖が、お前の弱点だ。」
「私は変わらない。でも、あんたは変わった。全てを暴力で解決しようとしている。シスの権化がね。」
「何とでも言え。希望など幻に過ぎん。お前の信じる光とやらも、幻だ。」
その声に、かつての友の意識は感じられなかった。身も心も、暗黒面に染まっている。私のことを受け入れてくれなかった。
どちらかが死ぬまで戦うしかないのだろうか。
できるなら、ヴェイダーを殺したくない。
「少しは面影が残ってるかもって思ってた。でも、違ったみたいだね。残念だよ。」
ヴェイダーを本当の名で呼べば、奴の怒りが増した。
「その名を口にするな!」
強烈なフォース・プッシュを受け、私は2軒先まで吹っ飛ぶ。
2軒先の屋根に落ち、身体が滑り落ちようとする。ギリギリのところでライトセーバーを壁に突き刺せば、落下せずに済んだ。安堵したのも束の間のことだった。
「うそーん……」
落下したところの屋根が傾いていく。
「ぁぁぁあああああ……!いたーい……」
私は下に停まっている、ランド・スピーダーの上に落ちてしまった。
その時、23番ベイで何かが爆発する。
チュア大臣の気配は感じられず、任務は失敗したと分かった。ケイナン達が心配だが、こちらもそれどころじゃない。私も離れないと、帝国軍に見つかる。
肝心の答えは得られたが、解決はしていない。
ヴェイダーを救うには、私一人では無理だ。
「っ!」
左腕のコムリンクが点滅し、通信を報せる。通信を取ると、ケイナンだった。やはり、失敗したらしい。
『アリス!今どこだ!?』
「あんた達と反対方面にいる。」
『何だって!?』
「偵察してたの。失敗したってことは、大臣は死んだんだね。」
『罠だったんだ。しばらく合流はできそうにない。』
「分かってる。後で合流しよう。」
通信を切って、私は人気のない裏路地に潜む。
心配が的中してしまった。非武装のスター・コミューターはもう使えない。何とか脱出する方法を考えなきゃ。
酷く冷たい暗黒面が、私を焦らせていた。
こんな時なのに、“ダンタム”に会いたいと思ってしまう。
「情けない……」
膝に頭を突っ伏し、溜め息を吐く。
友人を見捨てたのに、その後悔を忘れそうになる。忘れてはいけないのに。霞のように消えそうだ。
「狼狽えるな、私。」
まだ終わっていない。
ヴェイダーを救えないと決まったわけじゃない。遥か未来に、希望がある。その希望の為に、可能な限り全力を尽くす。
それが私にできることだ。
希望の光は、消えていない。