フェニックス艦隊と連絡を取ると、案の定ケイナンが呆れていた。モールとは言わず、親切な爺さんに拾われたと話した。
あ、でもスターデストロイヤーを一隻墜としたも同然だし、私の迷子もチャラだよね。
しばらく寄り道すると言えば、ゴーストにいるアソーカが口を開く。
『せめて向かう先は教えてくれないかしら?』
その問いにモールが喋ろうとしたから、慌てて奴の口を手で塞ぐ。
通信機にスクランブルをかけ、モールに行き先を聞く。
「俺が説明すれば早いだろう。」
「あんた、自分がトラブルメーカーって分からない?」
「お前も人のことを言えんだろうが。」
「余計なお世話だよ!」
スクランブルを解除し、モールに聞いた行き先を告げる。
目的地は、コリバン。
『アリス……』
「分かってるよ。私にも懸念があるから。」
『暗黒卿の正体を知っているのね。』
「答えられない。でも、いつか嫌でも分かる。」
『嫌な言い方ね。』
「ごめん。」
『ええ。その疑問は、自分で見つけなきゃよね。』
モールを見ると、さっさと切るように急かしてくる。
「アソーカ、もう行かなきゃ。すぐ戻るよ。心配しないで。」
『分かったわ。気を付けて。フォースと共にあらんことを、アリス。』
「フォースと共に、アソーカ。」
通信を切りモールに向き直ると、奴はとても不機嫌だった。
待たせたことは悪いとは思うけど、アソーカの悩みを増やしたくない。
暗黒卿の正体を、私の口から言ってはいけない気がする。ただ、ヴェイダーはアソーカの生存に気付いてしまった。向こうがどう動くか、はっきり見えないのが痛い。
「コリバンに行ったことは?」
「一度だけだ。ダース・シディアスと共にな。」
「へぇ、奇遇。私も一度だけ行ったよ。」
「なぜお前が?」
「ご覧の通り、不老の身体だから。シスの秘術を解きたくてね。無駄足だったけど。」
ハイパースペースを抜けて、コリバンの軌道へと出る。シス卿の集団墓地があるだけだからか、帝国軍の封鎖はなかった。ジェダイや反乱艦隊は来ないと思っているんだろう。
ファイターが渓谷に着陸し、マントを着てハッチのボタンを操作する。
「それで?私に用って何?」
「用と言うより、後始末だ。お前自身のな。」
「何の話?」
ハッチが開くと同時に、突然現れた尋問官が切りかかってくる。ライトセーバーで咄嗟に防御して、フォース・プッシュすれば尋問官は受け身を取って間合いを取る。尋問官は2人いて、モールも同じように対処していた。
「これが後始末?どういうこと?」
「シャドー、やはり気付いたか。」
私を襲った尋問官が、マスク越しに口を開く。
「シャドーって何?」
「追われているのはお前だけじゃないということだ。だがその最中、奇妙な奴に会った。それがあの尋問官だ。」
「シャドーというのは、標的のコードネームだ。」
「ご説明どうも。」
親切にも、もう一人の尋問官が教えてくれる。
「標的が2人も来るなんて、歓迎だね。」
「モール、どういうこと?」
「説明は後だ。まずは尋問官を倒せ。話はそれからだ。レイン、お前の相手じゃないだろう。」
「はいはい。」
ライトセーバーを構え直し、マスクをした尋問官に向かって走る。回転するライトセーバーを止め、膝蹴りを喰らわせた。私の膝を腹に受けて、尋問官は呻いて踞る。
「クソ……!」
「言葉遣いが汚いよ?」
「黙れ!!」
尋問官は怒りを利用するのではなく、怒りに身を任せて向かってくる。
感情で動きは読める。
突きを避け、フォームⅤの特性を使って尋問官のライトセーバーを弾き返した。虚を衝かれた尋問官は、バランスを崩す。私はそこを狙い、二の腕を切り裂いた。
痛みに呻く尋問官に、ライトセーバーを突き付ける。
「はい、終わり。」
「なぜ……!?」
「なんでって言われても、あんたが半端者だからじゃない?」
モールを見れば、奴は尋問官を殺していた。やはり元シス卿だ、躊躇いがない。綺麗に首を落としている。
「殺す必要がある?」
「お前ならしないだろうな。だが、ここで殺さないと後が面倒だぞ。」
「そうだとしても……」
「その甘さが命取りだ、アリス・レイン。」
ライトセーバーを突き付けられた尋問官は、そう言う。
私が殺さないのは、甘さからじゃない。ジェダイとしての自分の心を保つ為だ。ここで尋問官を殺せば、私はシディアスやヴェイダーと同じように成り下がる。
「躊躇っているんじゃない。殺そうと思えば殺せる。あんたを殺せば、私は帝国のように落ちぶれる。自ら沼に飛び込んだりしない。」
「ハッ…ご立派だな。さすがはジェダイ・マスターの称号を持つ者だ。」
「あのさぁ!私がマスターになったのは不本意だからね!」
その言葉の後、モールは尋問官にマスクを外すように命令する。訳が分からずモールを見るが、奴の意図が分からなかった。
「え、何、どういうこと?」
「俺がお前に用があると言ったのは、この為だ。」
モールは、尋問官のマスクを剥ぎ取る。
曝された尋問官の素顔に、私は吐きそうだった。
私と同じ顔、私と同じ声、同じ姿だ。一瞬でどういうことか理解できた。尋問官は、私だ。
「………皇帝の策略?」
「そうだ。奴は極秘裏に、お前のクローンを作らせた。自分に忠実なお前のクローンをな。だが、この尋問官には足りないものがあった。」
「お前の経験、未来の知識、そして未知の希望だ。」
「やばい、頭がおかしくなりそう。」
私が従わないから、クローンを作らせたって?キモッ。
しかし、シディアスはクローンでも満足しなかった。オリジナルの私、アリス・レイン本人を望んだ。その命令がクローンの嫉妬を強くしたけど、私とは似て非なる者だったらしい。
それに、一つだけ勘違いをされている。
「尋問官、未来の情報が足りないって?」
「陛下が言っていた。お前は未来を知っていると。私にそれさえあれば、完璧だと言ったんだ。」
「残念だけど、私に未来の記憶はもうない。」
その発言に、モールと尋問官の両方が目を見開く。
モールはその事実を知らないからで、尋問官は失望からだった。
「何だと!?」
「どういうことだ!?」
「普通に考えて、30年前の記憶なんてあるわけないじゃん。」
「お前……」
「モール、今ババアとか思ったでしょ。」
「………」
「図星か。やめてよ。」
否定はしないけどさ!
とりあえず、この尋問官どうしよう。
「で?この尋問官どうする?」
「言ったはずだ。後始末させる、と。」
「ねぇモール、私はあんたと違う。」
「こいつを生かしておけば、お前の悩みが増えるだけだぞ。」
次の瞬間、モールの赤いライトセーバーが、尋問官の首を落としていた。自分の首が切られているようで、気分が悪い。惨めな私のクローンに、同情をしてしまう。
「やっぱ、あんたとは相容れないわ。」
「同感だな、俺もだ。」
私はどこまでもジェダイで、モールも根っからのシスだ。
「私を置いていけばいい。一人で行って。」
「ああ、そうしよう。ここでお別れだ。その前に、お前に聞きたいことがある。」
「何?」
「ケノービは本当に死んだのか?」
本題はこっちだろう。モールは未だにオビ=ワンに執着している。彼を探し続けているんだ。
「さぁ……?私には感知できない。」
「信用できると思うか?ジェダイ・マスターのお前が生きているんだぞ。」
「信用するかしないかは、あんた次第。感知できないんだから、どうしようもない。」
モールは納得していないが、奴は私を信じるしかない。証拠もなければ、根拠もない。信じるか信じないか、その二択だけ。
「今のところは信じよう。さらばだ、レイン。」
モールはファイターに乗り、そのまま去っていく。
オビ=ワンの居場所が知られなくて、安堵する。彼には、アナキンの息子を身守る役目がある。まだ反乱には関与できない。意地でも知られるわけにはいかない。
奴の執着が離れなくても、遠ざけることはできる。
さて、コリバンとサヨナラしなきゃ。
尋問官のシャトル、パクっていいよね。
ドッペルゲンガーの夢を見たので、思い付いて書いたw
この世界の場合、ドッペルゲンガーというより、クローンだけど。