尋問官のシャトルを盗んでゴーストと連絡を取ると、私が無事なことにヘラが安堵する。こんな奴でも、心配してくれて嬉しい。ヘラが母親に見える。
あれ?私の方が年上だよね?
『すぐ迎えに行くわ。座標を送って。』
「ありがとう。」
座標を送った後、私もシャトルのハイパードライブを起動させる。
ハイパースペースに入って、瞑想に入る。いつものように心を無にしたが、今回はいつもと違った。深層心理まで沈む直前、あの意識が私に干渉してきた。
“シディアスの干渉”だ。
私があのクローンを負かしたことを、残念そうにするどころか、とても喜んでいる。あれは私にとってもシディアスにとっても、クローンに過ぎない。奴と共通の認識はそれだけだ。
ただ、シディアスがやろうとしたことは許せない。
アラートの音に目を開けると、シャトルはハイパースペースを抜けていた。
『アリス、無事で良かったわ。』
「迎えに来てくれてありがとう。」
『ドッキングして。そのままハイパースペースに入るわ。』
「了解。」
シャトルをゴーストにドッキングさせ、ゴーストはハイパースペースに入る。
接続部へ向かうと、懐かしい姿を見つけた。
「レイン将軍、お変わりないようで?」
「レックス、もう将軍じゃないから。」
キャプテン・レックス、アナキンの補佐官だったクローン・トルーパーだ。
クローン戦争が終結してから何も聞いていなかったけど、元気そうで良かった。
「ウォルフとグレガーも一緒でした。」
「ウォルフが……彼も元気?」
「ええ、恙無く。しかし、若い御姿なのはなぜです?」
「えぇっと……シスの秘術を受けてね。」
もう説明が面倒臭い。毎度説明しなきゃいけない大変さを知れ、シディアス。あいつ、私を不老にしただけじゃなく、私のクローンまで作った上に、毎回説明をしなければいけない手間をかけさせた。もし捕まって会うことになったら、とことん罵倒してやろう。
あ、それじゃああいつは喜ぶだけか。
あああああああかなり面倒臭い!!
「私のことはアリスでいいから。」
「了解です、アリス。」
レックスとゴーストの休憩室へ向かうと、ケイナンが待ち構えていた。
「アリス、何か言うことはないか?」
「何も?」
「あるだろ!コリバンに行く意味を分かっているのか!?」
「分かってる。私だって不本意だよ。」
「不本意だと?どういうことだ?」
やべ、口が滑った。
でも、行こうと思って行ったんじゃない。モールに、強制的に同行させられたんだ。私の意思じゃない。
「古い……知り合いと会って、強制的に同行させられただけだから。」
「全く……あんたは本当に自由すぎる。」
「自分も同意です。貴女の話は、クローン戦争中に様々なことを聞きました。とんでもない方です、本当に。」
「レックス、やめて。」
なぜここまでまともじゃないと言われるのか。クローンのキャプテンとコマンダー、共々横に繋がりすぎじゃない?そういう情報交換は要らんでしょ。
「ウォルフが苦労したのがよく分かります。」
「精神的ダメージって言葉知ってる?」
「本当のことだろう。」
「ケイナン、ちょっとお黙り。」
そこへ、休憩室にヘラとアソーカが入ってきて、反乱軍の現況を教えてくれた。
フェニックス艦隊は、助っ人としてレックスを引き入れたという。彼は軍事知識も豊富だし、歴戦の猛者だ。軍事知識は、反乱軍に必要不可欠。
「あれ?エズラ達は?」
「新しい任務よ。医薬品が不足してるの。」
「あぁ、それでレックス?」
「ええ。貴女が合流する前に、レックスがリストアップしてくれたわ。」
「レックス、本当に優秀だよね。なんでコマンダーの階級が嫌なのか分からないわ。」
「恐れ入ります。しかし、自分はキャプテンの階級があってこその自分だと思っていますので。」
「へぇ、そうなんだ。」
共和国の古い医療ステーションへ行ったらしい。今でも在庫リストが残っていればいいけど。14年くらい経っていたら、破損していてもおかしくない。
「アリス、貴女にも任務があるわ。」
「へ?私に?」
「そうよ。」
ヘラは表情を翳らせる。
何かあったらしく、続きを促す。
「ルード議員の補佐官が、帝国に逮捕されたの。」
「逮捕?ルード議員は表向き、帝国に賛同してる。その議員の補佐官がなんで?」
「その補佐官は、ルード議員のスパイよ。リステ大尉に近付いて、情報を集めていたのよ。反乱軍の為にね。」
補佐官も、自らの意志で潜入していたという。
尋問官やヴェイダーに尋問されれば、誰の差し金なのか知られてしまう。それがルード議員だと知られれば、彼は反逆罪として帝国に捕まる。ルード議員が危険だ。
「救出任務ってことでしょ?行くよ。」
「待て!罠かもしれないんだぞ!」
「構わない。」
罠だとしても、補佐官を連れ出せばいいだけ。
休憩室を出て、シャトルへと戻る。
ハイパースペースを出てすぐドッキングを解除して、補佐官が捕まっているというスターデストロイヤーをデータベースから探す。案の定リストにあって、その船がいる星系の座標を入力する。
ハイパードライブのシステムを立ち上げていると、誰かに肩を叩かれた。
「へぁっ!?」
「驚かせてごめんなさい、アリス。」
「アソーカ!付いてきたの!?」
アソーカが副操縦席に座り、私はハイパードライブのレバーを引くことを躊躇う。
「私一人で大丈夫だよ。」
「いいえ、良くないわ。それに、疑問が解けていない。」
「何の疑問?」
「貴女とルード議員の関係よ。」
彼女は気付いていないけど、何かを感じている。私と議員の他にも、同じような関係を知っているから。ただ、確信がないだけ。
「話したくないのは分かるわ。けど、帝国……皇帝が利用しないとは限らないのよ。」
「利用なんてさせない。私が許さない。」
「アリス……」
「議員を守る為なら、何だってする。私に責任があるから。」
私が議員を受け入れたから、私に責任がある。皇帝、シディアスの狙いは私だ。議員が利用されるなら、私のせいだ。
「何があっても、無茶はしないで。貴女に何かあれば、悲しむ人がいるのよ。」
「………分かってる。」
そう答えて、レバーを引く。シャトルはハイパースペースに入り、自動操縦に切り替える。
何度目かの議員との密会で、彼に約束させられたことがあった。
もし議員に何かあっても、絶対に暗黒面へ踏み込まない、と。
昔、尋問官に手を下してしまったことが原因だ。あの日、私は一度だけ暗黒面に触れた。手を下したことに対して、快楽を感じた自分が怖くなった。議員がいなければ、私はそのまま暗黒面に手を出していた。
もう暗黒面に頼らない、彼とそう約束した。
二度と、議員を悲しませたくない。