ハイパースペースを抜けた後、シャトルは帝国の封鎖艦隊に出会した。
封鎖された惑星の名は、ケイト・ニモーディア。私のマスターが死んだ星だ。現在は、橋上都市の一部が刑務所になっている。補佐官は、スターデストロイヤーからこの刑務所に運ばれた。
シャトルを岩山に着陸させ、私達はハッチを降りる。
「アリス、その補佐官と会ったことは?」
「何度か会ってる。とても良い人だよ。私と議員の密会を、密かに手引きしてくれてた。」
フォースを通じて、橋上都市の刑務所を探る。
補佐官は、確かにいる。でも、何か違和感がある。その違和感の正体が分からない。
「アソーカ、何かおかしい。」
「やっぱり罠ね。一度引きましょう。」
「………もう遅い。」
その瞬間、尋問官が2人現れて、フォース・プッシュされる。岩壁に背を打ち、私はずり落ちて踞る。ぶつかった岩壁には、ヒビが入っていた。
呻く私に、アソーカが前に出てライトセーバーを構える。
そして、辺りにはストーム・トルーパーが現れて、私達を包囲する。
「アリス!!」
「大丈夫……」
目の前にいる尋問官が、ただの尋問官じゃないと気付く。今まで半端者ばかりだったのに、今回は違う。アソーカの相手する尋問官はともかく、私をフォース・プッシュした尋問官は、暗黒面のフォースが強過ぎる。
ヴェイダーに似たような圧迫感に、思わず怖気付いてしまう。
「何、これ……」
「俺を怖れているな。」
私の恐怖を感じ取った尋問官が、ライトセーバーを起動させる。
この尋問官が怖い。今までと同じはずの尋問官なのに、なぜか怖ろしい。心臓を握り潰されているみたいだ。
「あの補佐官を助けに来たか、ジェダイ共。」
「お前達は罠だと知って来た。だが、自ら飛び込んだのは褒めてやる。レインが来なければ、あの男は既に死んでいただろう。」
「外道め……」
私の罵言に、尋問官は笑うだけだった。
「今すぐ解放しなさい。彼に罪はないわ。」
「アソーカ・タノ、罪状なんざどうでもいいんだ。アリス・レインが来れば、それでいいんだよ。」
「あんた達のでっち上げか……!」
「いいねぇ、その怒り。陛下が喜ぶぜ。」
その言葉に、アソーカの相手をした尋問官をフォースで捕らえる。ところが、もう一人の尋問官は微動だにしない。私が捕まえた尋問官も、抵抗する様子はなかった。
数々の違和感を否定したくて、尋問官を投げ飛ばす。
その尋問官は“運悪く”、ケイト・ニモーディアの原住生物の怪鳥に喰われ、丸呑みにされる。残った尋問官は、仲間が丸呑みにされても無関心だった。奴の関心は、私だけだ。
「アリス!怒りを抑えて!」
「なぜ抑える必要がある?力の根源となるのに。」
「怒りは道を見誤る要因だからよ。」
アソーカの言う通りだ。怒りは、道を迷わせる。冷静さが欠け、重要なことも見えなくなる。
心を落ち着かせて、私はライトセーバーを起動させる。
「おっと、俺に手を出さない方がいい。」
「理由は?」
「ルードの補佐官が死ぬぞ。お前の身柄と交換で、解放してやる。」
「………」
全てはこの為、この交換の為だったのか。
来たのが間違いだった。補佐官は、ただの囮。拷問や尋問すらしていないだろう。私を誘う為の餌だったんだ。
自分の軽率さに腹が立つ。
「分かった。」
「アリス!?」
投降しようとすれば、アソーカに止められる。
「貴女も分かってるはずよ!補佐官が解放される保証はないわ!」
「随分信用がねぇな。」
「当然でしょう。どうして信用できると思うのかしら?」
「投降したレインは、抵抗しない。陛下はそう仰られた。レインさえ投降すれば、あの補佐官は必要ない。尋問したところで、価値はねぇ。」
情報を得る為の価値はない。尋問官はそう言っている。あるとすれば、私を誘う餌という価値だけ。
「アソーカ、補佐官を拾ったらすぐに脱出して。」
「アリス、」
「ジェダイ・マスターとして言ってるの。お願い、聞いて。」
私の意図を受け入れたのか、アソーカは不本意ながらも頷く。ジェダイ・マスターとして意見を言ったのは、これが初めてだ。ライトセーバーを渡せば、彼女は嫌々ながら預かってくれた。
手を差し出せば、私は手錠をされる。尋問官は通信機を取り出すと、どこかへ連絡する。これで、補佐官は自由だ。
「補佐官を解放しろ。」
『了解しました!』
「これでいいだろ?」
「当然でしょ。アソーカのことも、今回は見逃すと約束して。」
「………今回だけだ。」
私の価値は、それだけ大きいらしい。
トルーパーは撤収し、私は尋問官に引かれて、帝国のパトロール・トランスポートに乗せられる。残されたアソーカは、遠退く私を黙って見送るしかなかった。
尋問官に、再度釘を刺される。
「お前が抵抗すれば、すぐ補佐官を殺させる。無駄な抵抗はするなよ。」
「しないってば。それで?私はどこへ運ばれるの?」
「この上空にあるスターデストロイヤーだ。陛下がホロ通信でお待ちだぞ。」
「え、マジか。」
ホログラム越しだが、14年ぶりの再会だ。
ホログラムだとしても、できれば会いたくない………
「陛下がお前を欲しがるわけだ。その表情、実に面白い。」
「おかしいなぁ、他の尋問官はみんな理解してなかったのに。」
「大尋問官亡き後、俺が尋問官の中で一番手柄を立てている。それに、俺はヴェイダー卿に見込まれているからな。理解云々は関係ねぇ。」
「精々あいつを失望させないようにね。」
パトロール・トランスポートはハンガーに着艦し、尋問官に押されて下ろされる。
捕虜は丁寧に扱おうね?
「14年越しの再会らしいな。楽しみだろ?」
「どこが!?事情知ってるくせにそんなこと言うわけ!?」
「ハッ…哀れな奴だな。」
「?」
尋問官の言っている意味が分からなかった。
いや、正確には分かっているけど、分かりたくない。
「ほら、入れ。」
「私が先なの!?」
「お前に選択権があると思うのか?」
「え、ないの?」
「あるわけないだろ。」
「皇帝が欲した獲物なのに?」
「………」
無視された!!
いいですよ。分かってますよ。私が入りたくないだけなんだから。
着いた部屋のドアが開けられ、私は息を飲む。
『14年ぶりだな、アリス。』
玉座に座る、ホログラムのシディアスが私を見据える。
背中に寒気を感じながら、無言で前に進み出る。奴はホログラムなのに、暗黒面の力をひしひしと感じる。一人でいることが、どれだけ勇気のいることか、ようやく分かった。
さぁ、勇気を出そう。