パルパティーン皇帝、もといシディアスは、私の変わらない姿を見て満足そうに笑う。
こっちの苦労も知らないで、本当に腹立つ。
いろいろ文句を言ってやりたいところだけど、今回は私が不利。黙って会話するしかない。かなり不本意だ。
『今回は来てくれると思っていたぞ。』
「不可抗力だよ。ていうか、ホログラム越しなんて、失礼じゃない?」
『統治は簡単ではないのだよ、アリス。皇帝というものは、多忙を極める。尋問官、席を外してくれ。』
「仰せのままに。」
尋問官は皇帝に従い、部屋を出て行く。
『やはり、オリジナルである其方は素晴らしい。その表情、その感情を、クローンでは再現できん。其方の存在こそ、余の望みを叶えてくれるのだ。』
「不老不死に加えて、未来を支配しようなんて、どこまで強欲なの。」
『それこそがシスだ。欲無くしては、シスではない。』
「欲にも節度がある。あんたは私を欲しがって、一線を越えた。心から軽蔑する。」
クローン戦争とは違い、シディアスが作ったクローンは私欲の為のものだ。しかも、条件を満たさないからと、そのクローン達を処分してきた。私のクローンが、殺されてきたんだ。
たった一人の私欲の為に。
『アリス、欲とは底無しなのだよ。其方の愛情と同じようにな。』
「っ!」
『あれだけフォースで通じ合っていて、気付かぬと思ったか?ジェダイにはないその概念が、一層魅力的なのだ。余が欲しているのは、未来の知識だけではない。』
全てお見通し。
思わず後退ると、シディアスは嫌な笑みを浮かべる。
『では、次の疑問に答えよう。其方はなぜ、フォースの意志に縛られると思う?』
「縛られる……?」
『不思議に思わんかね?あり得ない記憶、知識、概念。その全てが、この銀河のものではない。』
「意味が分からないんだけど。」
『選ばれし者が、一人ではないとしたら?それは一体誰だ?』
選ばれし者は、今も未来も過去も、アナキン一人。例外はない。一人を除いたら、だ。
『異なる銀河から呼ばれた選ばれし者、それが其方なのだよ。』
頭が痛くなりそうだ。
クワイ=ガンがヴィジョンで言っていた。フォースの意志は私を許さない、と。こういうことだったのか。
逃げたから、フォースの意志が私を歴史に縛り付けた。
フォースのバランスを崩したのは、紛れもない私だ。
「ふっ…ふふっ!あははは!何それ……私の自業自得ってこと……」
あ、目から涙が………
どうしよう、ルード議員に会いたい。もう会ってはいけないのに。苦しくて、心臓が裂けそう。
大きな闇が、押し寄せてくる。暗黒面が、弱っている私を襲う。シディアスの笑みが酷く憎たらしい。
『今なら、暗黒面の力で修復できる。其方が望めば、な。』
「馬鹿にしないでくれる?」
『何だと?』
「これでも私はジェダイだから。暗黒面に踏み込む気はない。」
ルード議員の存在がなければ、私は暗黒面に踏み込んでいた。その関係がイレギュラーだとしても、私はシスに下ったりしない。アナキンの子供達に、胸を張れるジェダイで在りたい。
落ちぶれたババアではなく、誇れるおばさんになりたい。
「それに未来の記憶を欲しがってるけど、私はもう憶えていない。残念だったね。」
『其方のことだ。対策くらいはしてあるだろう。』
「どうかな?もし忘れたくて何もしてないとしたら?その記憶のせいで親友を失ったのに、残すと思う?」
メモリークリスタルに記録はしてあるけど、もう私には前世の記憶はない。
『アリス……暗黒面を甘く見るな。光と闇は表裏一体。其方が拒めば拒む程、押し寄せる闇も大きくなる。覚悟はあるのか?』
「もうできてる。」
『そうか……其方を“処分”するのは心苦しいが、致し方ない。』
奴がそう言うと、さっきの尋問官が部屋に入ってきた。
『あの女を殺せ!』
シディアスは、尋問官に命令する。
振り向いた私はフォース・チョークされ、気道を絞められた。
「陛下の情状を無下にした報いだ。」
その殺意に抗う為、私は手錠された手を前に突き出す。フォースに意識を集中させ、尋問官のライトセーバーに狙いを定めた。次の瞬間、奴のライトセーバーを引き寄せ、尋問官の顔を切り裂く。尋問官は呻いて倒れ、私はチョークから解放されて部屋から逃げようと走り出した。
だが尋問官は、顔を押さえながら私をフォースで捕まえる。
「逃がすか………!」
必死に抵抗して、赤いライトセーバーを尋問官に投げ付ける。ところが、ライトセーバーはフォースで押し返されてこちらに飛んでくる。私は捕まったまま避けられず、身を捩った瞬間に背中を切られてしまった。
痛覚をコントロールし切れず、あまりの痛みに呻く。
「いっ…!」
「甘いんだよ!」
フォースからは解放されたが、背中の痛みに膝をつくしかなかった。
ライトセーバーが喉元に突き付けられ、嫌な汗が頬を伝う。
「生か死か、お前に選ばせてやる。」
まだ死ねない。私には、やり残したことがある。未練を残して死にたくない。
脳裏に、ルード議員の顔が浮かんだ。
私が死んだら、議員は悲しむだろうな。いや、怒るかもしれない。軽率な行動をした、と。
「尋問官、私はこの光景を予期していた。」
ロザルで見たヴィジョンが、この未来を示唆していた。ケイト・ニモーディアの岩山と、スターデストロイヤー、そして、シディアスの悪意とこの尋問官。ヴィジョンが現実になろうとしている。
「自分の死に様か?だったら、答えは聞くまでもねねぇな。」
「本当に?フォースの意志はあんたと私、どちらと共にあるんだろうね?」
その言葉を聞いて、尋問官はライトセーバーを引く。
目を閉じ、フォースの導きを感じて死を待つ。今抵抗してはいけない、そんな気がした。死ぬなら、せめて安らかに逝きたかった。だが、私に楽な死に方は望めない。
フォースの導きに従おう。
我はフォースと共に。