医療ドロイドに完治したと認知してもらい、ようやく部屋を出られた。
いざ部屋を出ようとしたら、迎えに来たのはまさかのヘクターだった。そのまま任務に就くことはアソーカに伝えてあった。だが、まさかヘクターが来るとは思わなかった。
レックス達とは違い、本気で身体を鍛えていたのが一目で分かる。遺伝子操作による早老は不可避だけど、その点を除けばマッスルお爺ちゃんだ。リアルガチムチお爺ちゃんだ。
何が言いたいかと言えば、レックスを見慣れすぎていて、一瞬誰だか分からなかった。
「お久しぶりです、将軍。」
「久しぶり。あと、アリスでいいよ。もう将軍じゃないから。」
「承知しました。」
将軍というのは、共和国があった頃の呼び名だ。今はただのアリス・レイン。ジェダイではあるけど、ジェダイ・マスターでも将軍でもない。
「ヘクター、一瞬誰か分からなかったよ。」
「貴女も、文字通り変わりありませんね。レックスから聞いてはいましたが、少し戸惑っています。」
「不気味だよね。」
「確かに。」
「いやそこは否定してよ。中身はそのままですか。」
「貴女の中身も変わっていませんよ、安心してください。」
「何を安心すればいいのか………とりあえず、任務の話を。」
ヘクターは頷き、プロジェクターを開く。天井のレンズからホログラムが映され、ある星系図が拡大された。
「この任務は、我々にしかできません。」
「任務の中身は?」
「この惑星に、帝国の収容所があります。そこに収容された反乱分子を救うのが、今回の任務となります。ただ……」
「何か問題でも?」
「その反乱分子は元々、分離主義派に属していた者達です。貴女がジェダイだと知って、どう出るか……」
ジェダイが滅んだと言っても、分離主義同盟にいた者達はジェダイを良く思っていない。黙っていてもいつかは知られる。問題は、その反乱分子のリーダーだ。
「その反乱分子にラワイズ議員の親族がいるって、どんな因果だよ。」
「リーダーは彼の息子だそうです。」
クローン戦争時代、“ルード議員”の求婚騒ぎで一度は逮捕したラワイズ議員だ。ラワイズはムスタファーで死んだけど、息子はラタタックの為に反乱活動をしているという。その息子がジェダイをどう思っているのか、想像が付かない。
「なぜ私?」
「貴女の交渉の腕に懸かっているからです。その反乱分子だけでなく、帝国軍にも。」
「帝国軍にも?過激な交渉になるよ?」
「あの収容所には噂がありまして、今回は騒がしい任務になるかと。」
「私は教えてもらえないわけ?」
「この作戦の指揮官に任じられたのは自分です。」
アソーカの差し金だな。私が指揮官に向いていないと知っていて、ヘクターを指揮官にした。この時代で私が指揮官になったら、とんでもないことになる。
あの滅茶苦茶な指揮は、クローン戦争だから通用しただけだと思うんだよね。
「ヘクターがヘクターで安心した。」
「アリス、大丈夫ですか?」
「一応。」
出立の準備をして、ヘクターとシャトルへ乗り込む。
クローン戦争時代を思い出す。どっちが上官なのか分からないこのやりとりが、とても懐かしい。やっぱり、ヘクターは頼りになる。
ヘクターの指示で、作戦に必要な爆弾を積み込み、最後の積み荷を運んでいると、ダンタムがシャトルへ訪れた。
「何か用?」
「私も行くんだ。」
「はあああああ!?なんで!?」
「任務のメンバーはこの3人です。」
「いやいやいやいや!ダンタムはダメでしょ!?」
「出発してくれ、ヘクター。」
「ヘクタァぁぁぁ!!!」
あえて黙ってたなこの野郎!!
ダンタムを追い返す前に、ヘクターがハッチを閉めてしまった。
「え………真面目にこの3人?」
「そうだ。」
「アリスのストッパーとして必要ですから。」
「ちょっとおかしくない?」
「「どこが?」」
二人してハモるな。
私が暴れると思っているのか。心配しなくても暴れないのに。今回の相手は、ただのストーム・トルーパーだ。全力で戦う相手じゃない。
シャトルがハイパースペースへ入った後、一人部屋に篭って瞑想に没頭する。
「心を穏やかに、穏やかに………」
「アリス」
「できない。」
「邪魔をしてすまない。」
瞑想どころではなくなった。コックピットにいたはずのダンタムが、部屋に入ってきた。私は背を向けたまま、用件を聞く。
「何?」
「黙っていてすまなかった。だが、言ったら君は反対するだろう。」
「そりゃもう、猛反対だよね。」
ダンタムが付いて来ると思って、私の治療中に任務の話題は出さないでいたんだ。
彼は議員であって、軍人じゃない。護身術や体術の心得はあっても、戦略には疎い。もし私やヘクターが倒れたら、彼を守る人がいなくなる。
私の不手際で、ダンタムを巻き添えにしたくなかった。
「アリス、私が今まで安全だったと思うか?」
「………」
「この銀河に安全な場所などない。皇帝を支持していても、それは変わらない。修羅場なら、いくつも抜けてきた。信用してくれ。」
彼の言葉に、私はようやく立ち上がって振り向く。
帝国の元老院議員という立場上、安全じゃないだろう。ストーム・トルーパーがいたと言っても、反乱分子に襲われることもあり得る。人気のない場所、プライベートな場所、様々な場面で。自身で身を守ることも、致し方ない場合もある。
ダンタムがそう言うなら、元老院議員としての経験を信じよう。
「分かった。でも、もしもの時は貴方だけでも逃げて。」
「君を置いていけと!?」
「そうじゃない。ダンタムが無事なら、自力で脱出する気力は減らないから。」
「それでも、君を置いていくことはできない。」
頑固者が2人も揃うと、こうなる。
折れるのは、
「オーケー、降参。」
いつも私だ。
彼に振り向いた弱みだ。ダンタムを受け入れてから、私は立ち止まることを覚えた。守ろうとして遠ざければ、本当の意味でダンタムを失うと悟った。
大切な人がいなくなるのは、もう嫌だ。
「ごめん。何かあったら怖くて……」
「大丈夫だ。私はアリスの方が心配だ。」
「心配かけてごめんなさい。来てくれてありがとう。」
ダンタムが抱き締めてくれて、不安が和らぐ。
全ての不安が拭えたわけじゃないけど、少なくとも彼を失うかもしれないという不安は消えた。自分の愚かな行動で、周りの人がいなくなるのは耐えられない。その人達を利用されることも嫌だ。
恐怖は、毒のようだと思った。
毒、いや、ドラッグだ。
反乱者たち編、長いだろうか?
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長ぇ。さっさとローグワン編に行け。
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全然!作者のペースで!
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Let's ダークサイド♪