外が騒がしくなって、ヴェイダーは拷問を中断する。報告に来たトルーパーが、恐る恐る独房に入ってきた。報告に来ただけとはいえ、ヴェイダーの怒りは買いたくないだろう。
「ヴェイダー卿、ターキン総督がお呼びです。」
「すぐに向かうと伝えろ。」
ヴェイダーは、トルーパーを見ずに答える。
「了解しました!」
トルーパーが出て行き、ヴェイダーは喋り始める。
「何かを予期しているな。」
「………知らない。」
「知っていることを言え。」
「それは無理。」
拒むと、ヴェイダーは私の顎を掴む。
「断る余裕がまだあるか。」
「かつての友人として、忠告してあげる。あんたは物事の本質が見えていない。」
私の忠告に、ヴェイダーが何かに驚く。そこまで馬鹿なこと言った覚えはない。ジェダイの立場から言っただけだ。
「………」
「何?」
「やはり、お前はジェダイ・マスターだ。」
「え?今更?」
「そういう意味ではない。お前はマスターの称号を否定した。だが、ジェダイ評議会の決定は間違っていなかったということだ。」
ヴェイダーは間を置き、静かに告げる。
「残念だ、マスター・レイン。」
その一言だけ残して、ヴェイダーは出て行った。
最後の言葉の意味が分からない。私がマスターの称号を嫌っているのは、奴も知っているはず。なのに、あえてマスターの敬称を付けた。
本質を見抜けていないのは、私も同じかもしれない。
何時間か後、誰かの気配を感じた。
私はその気配を知っている。その気配に、失いそうだった意識が鮮明になる。痛みによる吐き気なんて、どうでも良くなった。
扉が開き、フードを深く被った男が入ってくる。
「お前は本当に変わらないな。」
彼は拘束具を外し、私の肩を支える。
「そういうあんたは老けたね、オビ=ワン。」
支えてくれる男、オビ=ワンに軽口を叩く。
19年ぶりに会ったオビ=ワンは、とても老け込んでいた。フォースも衰え、今ではクローン戦争当時の風格すらない。だけど、オビ=ワンはオビ=ワンのままだ。
拷問室を連れ出され、私達は武器庫に身を潜める。
「甘んじて拷問を受け入れたのは、姫の為か?」
「あの子のことを知ってるでしょう、オビ=ワン。姫はとても勇敢な子だよ。ここで失うわけにはいかない。」
「だが、お前が拷問を受ける理由にはならない。」
「ヴェイダーが拷問したから、あんたはそう思うだけ。あいつ、無意識にあんたが来ることに気付いてる。ここにいることも分かってるよ。」
拷問の時、奴はその感覚の正体が分からなくて、私から聞き出そうとした。教えなかったけど、オビ=ワンがデス・スターにいる今は、その正体が分かったはずだ。2人の死闘は避けられない。
「ヴェイダーと対面する気だよね?」
「今のお前では無理だろう。」
「そうだけど、会わずに逃げることもできる。」
オビ=ワンは、デス・スターでヴェイダーに殺される。フォースは衰えても、彼はジェダイ・マスターだ。私ではルークを鍛えられない。ルークを鍛えられるのは、オビ=ワンしかいない。
「宿命なのだよ、アリス。今のお前になら、分かるだろう。」
「じゃあ、私が暗黒面に堕ちるのも宿命だよね。」
「………」
「そういうこと。」
オビ=ワンは納得したように、私を見つめる。
「ルード議員か。」
「うん。」
「いつ結婚した?」
「16年前。」
「随分早かったな。」
「彼が追いかけてきたから。」
武器庫の医療パッドを開封して、私は左肩に貼り付ける。
そろそろ私の脱走が気付かれる頃だ。
「レイアを助けに行かなきゃ。ルーク、いるんでしょう?」
「ああ。船がハンガーにある。その前に、トラクター・ビームを無効化しなければならん。」
「“子供達”は任せて。」
出て行こうとすると、オビ=ワンに呼び止められる。
「フォースと共にあらんことを。」
「フォースと共に、オビ=ワン。」
ブラスターを持って、人気のないエリアを抜けて、レイアのいる監房ブロックに向かう。
向かうにつれて、強いフォースをはっきりと感じた。ルークのフォースだ。父親譲りの、強いフォースを持っている。
監房ブロックAAに辿り着くと、そこは封鎖されていた。
ロックをフォースで解除して中に入ると、3人にブラスターを向けられた。レイアがすぐに気付き、2人を止める。彼女は私が無事だと分かり、抱き締めてきた。
「アリス!あぁ、殺されてなくて良かったわ!」
「貴女がアリス・レイン!?」
「よろしく。」
「自己紹介しているところ悪いが、敵が来るぞ。」
ソロが私達に警告したのも束の間、ドアが壊されて、トルーパーが中に侵入してくる。
奥に逃げ込み、私達は陰に隠れてレーザー弾から身を守る。ルークがC-3POに逃げ道を聞くが、正面しかなかった。
「どうして作戦を立てなかったの!?」
「俺じゃねぇ!ルークの案だ!おいあんた!あの爺さんと同類なんだろ!何とかできないのか!?」
「宛にする割には、結構言ってくれるね。若いあんたに指図される覚えはないよ。」
「何だと!?」
「いい加減にして2人共!もう任せてられないわ!」
レイアはルークのブラスターをひったくり、ダストシュートに向けて撃つ。格子に穴が空き、レイアはそこに飛び込む。逃げるには、入るしかないみたいだ。
後でオビ=ワンに訂正しなきゃ。レイアは勇敢だ。それは間違いない。でも、大胆。
パドメにそっくりだ。