休憩室のベンチに座り、膝を抱えて顔を突っ伏す。
ここにオビ=ワンがいたら、絶対に説教される。あの人が死んだ今、ルークを鍛えるジェダイはいなくなった。誰かがルークを鍛えなければならない。
でも、それは私じゃない。
聴こえた声に、否定した。
「違う。私にはできない。」
私にルークを鍛える力はない。
「追手が来るぞ!」
「っ!」
ソロの声に、ベンチから立ち上がる。ソロが銃座に着き、私はコックピットに走った。操縦席にはレイアがいて、座席に座る私に目を見開く。
「アリス、」
「しっかりベルト締めて!」
舵を握って、深呼吸する。
センサーを見ながらエンジンを全開にして、ブーストのスイッチを入れた。オビ=ワンお墨付きのこのスクラップなら、帝国軍から逃げられる。シールドを前方に回して、舵を目一杯引き船を旋回させる。
マスターの目の前では、絶対にできない操縦だ。
『おい!俺の船で無茶なことをするな!』
マスターの前に、ソロにキレられた。
「怒る前にTIEを撃ち落としてね〜」
『この野郎!!』
ルークとソロがTIEファイターを撃ち落とし、船はハイパースペースへと入る。
ソロがコックピットに戻ると、チューバッカに操縦席から剥がされた。これにはレイアも同意なようで、呆れた視線を向けられる。
「将軍か何か知らねぇけどな、これは俺の船だ!今度あんな操縦してみろ!船から叩き出してやるからな!」
「………ごめん、申し訳なかったよ。」
「それと!ポンコツ船って言ったら二度と乗せねぇぞ!」
「言わないって。」
心の中でそう思ったことは黙っておこう。
そういえば、ヴェイダーは自分で追って来なかった。あいつのことだから、ポンコツ船ごときを逃がすわけがない。ビーコンでも仕掛けられていそうだ。
「アリス、動いちゃダメよ!」
「大丈夫、ちょっとだけ。」
コックピットから出て休憩室に入ろうとすると、目の前が真っ暗になった。
拷問を受けた後にヴェイダーに切りかかったのは、さすがに無謀だったらしい。体力はほぼ無いに等しく、精神的にも消耗していた。無理に動くんじゃなかった。
気が付くと、ファルコン号の個室で寝かされていて、ルークが私の看病をしていた。なんて良い子なのルーク。
「良かった。目の前で倒れたから心配したんだ。」
「ありがとう。」
「レイアを呼んでくる。」
あら、2人はいつの間に仲良くなったの?
すぐにレイアが来て、起き上がる私を強引に寝かせる。レイアの後ろにはルークがいて、同じように止めてくる。ずっと寝ている程、私は重傷じゃない。
「拷問を受けていたのは知ってるわ。」
「やっぱ聴こえてたんだ。」
「ええ。ヤヴィンに戻ったらすぐ処置しましょう。」
「ちょっと待って。ダンタムには、」
「言うわ。」
「なんで!?」
「バレる嘘を吐いても仕方ないでしょう?」
お姫様の仰る通りだけど、どういう反応をするのか目に見えている。どうしよう、会いたいけど、会いたくない。かなり矛盾してる。
「ルークが貴女に話があるそうよ。」
「え?私?」
「マスター・レイン」
「え?」
「え?」
「え?」
マスター呼びをされて聞き返したら、また聞き返された。
「マスター呼びされるのは、嫌いだと知っています。ベン……オビ=ワンから、聞きました。」
敬った話し方をしてきて、ルークが真剣に話していると分かった。
「ベンは、貴女からジェダイの訓練を受けるように、と。」
「ごめん、ルーク。私には無理。」
「けど、貴女なら、」
「私は確かにジェダイ・マスターだった。オビ=ワンと同じように。ただ、決定的に違うものがある。」
「違いません!ベンが貴女は良きジェダイだと言っていた!間違っていない!」
「違う。私は道を踏み外してる。オビ=ワンとは違ってね。」
道を誤った私に、教える資格はない。教えられるはずがない。一度タブーを犯したから、自信がない。
「ごめん。その代わり、良い先生を知ってる。その人から教えを受けて。」
「その方はどこにいるんです?」
「分からない。」
「分からないって……」
「探せるけど、私が探したら帝国に知られる。」
育つ前に毟られては、元も子もない。
アナキン……ヴェイダーはパドメの出産を知らない。子供達の存在を知らないんだ。その時が来るまで、ヴェイダーや皇帝に知られるわけにはいかない。
「分かりました。では、貴女が教えられる時が来たら、師事させてください。」
「あまり期待しないでね。」
船はハイパースペースを抜けて、惑星ヤヴィンの宙域へと出る。
ファルコンは、ヤヴィン4のグレート・テンプルに着陸する。ハッチが降りて、私は何事もなかったかのように降りた。ルークが肩を貸してくれようとしたけど、丁重にお断りした。元気なふりをしたいから、肩なんか借りれない。
司令部には予め連絡してあり、デス・スターの設計図を持っていることと、私とレイアがいることを伝えていた。着いて早々、ドドンナ将軍が出迎えて、私達は兵員キャリアーに乗って司令部へと向かう。
「ドドンナ将軍、“彼”は?」
「あぁ、ルード議員も待っているぞ。」
「アリス!降りちゃダメよ!」
「いや、本気で降ろしてください。」
降りようとしたら、レイアに腕を掴まれた。タオルを羽織っているとは言っても、顔色や傷は誤魔化せない。肩の傷だって隠したい。
案の定、司令部にいたダンタムの顔が……
絶対怒ってる。Uターンしたい。本当に逃げたい。
「レイア姫、ご無事で何よりだ。」
「私は平気です。しかし、レイン将軍が、アリス!待ちなさい!」
逃げようとすれば、レイアではなくダンタムに捕まった。
「ねぇ待って、本当に勘弁して。」
「議員、アリスをバクタ・タンクに放り込んでください。」
「もちろんだ。」
「モチロン!?」
医務室へ連れて行かれ、診台に座るように言われる。
怖くてダンタムの顔が見られない。
「アリス」
「………約束は守ったよ。」
「ああ、分かっている。だが、無傷じゃない。」
「……」
「何をされた?」
「言えない。」
タオルを剥がされて、左肩の傷を見られる。
ナイフで刺された痕を見て、ダンタムは溜め息を吐く。傷の下にあるアームカフが血で汚れていて、彼はそれをそっと外した。アームカフを手に取ると、ダンタムは医療ドロイドに私の手当てをさせる。
「もう一度聞く。何をされた?」
「言えると思う?」
「アリス、私が怒りを抑えられると思うのか?」
バレてる。拷問されたと、彼は分かってる。ダンタムは、私の口から聞きたいんだ。
「抑えてくれないと困る。」
「帝国がアリスにしたことは許せない。それでも、怒りを抑えろと言うのか?」
私の首筋にある注射痕を撫でて、ダンタムは辛そうに言う。
「貴方が癒してくれるから、それでいいの。」
そう言えば、彼は折れてくれた。
私はダンタムに弱いけど、ダンタムも私に弱い。
「アームカフ……汚してごめんなさい。」
「血は取ればいい。気にするな。」
治療が終わり、バクタ・パッチを貼られる。
医療ドロイドによれば、筋弛緩剤などの薬は当分抜けないらしい。拷問用に作られたその薬品類は、長く効くように作られているようで、短期間では抜けないとドロイドは分析した。医療ドロイドに、ただの人間ならまだ歩けないと言われるほど、面倒な薬みたいだ。
なぜ歩けるのかドロイドに聞かれたけど、私にも分からない。
しかし困った、インターセプターに乗れない。