女心を侮るな
ヤヴィンの戦いから3年が経った。
反乱軍はヤヴィン4から撤退して、現在は惑星ホスに基地を設営している。
反乱運動の傍ら、私はオビ=ワンの頼みに従って、ルークを鍛えた。ルークはフォースの使い方を学び、ライトセーバーの扱いを覚えた。型の基本であるフォームⅠを習得させ、多少は組み手ができるようになっていた。
「いつまで正座すればいいんですか?」
「反省するまで。」
そして今、ルークをベッドの上で正座させている。
理由は、私の訓練をサボった上に、偵察の帰りにワンパに襲われたから。訓練で教えたはずなのに、フォースで予知できなかったんだ。もし予期できていれば、無傷で帰れていた。
ルークの怠慢が悪い。
「アリス、その辺にしない?」
「レイア………」
ルークはレイアの登場に嬉しそうに顔を上げる。その後ろには、ソロとチューバッカがいた。レイアの機嫌が良くないのは、ソロのせいか。
ん?聞いた話だと、ソロは反乱軍を去ったんじゃ……?
「まだいたんだ。」
「悪かったな、姫が引き留めてくるんでな。」
「レイア、マジ?」
「違います。エネルギー・シールドが作動するのを待てと、ライカン将軍が言ったのよ。」
「俺みたいな良い男と別れるのが辛いからだろう?」
良い男?どこが?
「呆れたものね。一度精神医に診てもらったら?貴方が良い男なら、ルード議員はとても良い人よ。」
「待って、ダンタムは私の夫だから。」
「分かってるわよ。でも、ハンは違うわ。」
その言葉に、チューバッカは笑う。
「何がおかしい?このデカむく!おい!お前も笑うんじゃねぇ!」
「だって、青いなぁって!………ブフゥッ」
「笑い堪え切れてねぇぞ!」
経験者から言わせれば、ソロはレイアのことを何も分かってない。女の子はストレートに行けば良いものじゃない。それが嫌な人だっている。
「だが一度は止めようとしたろ?俺がいないと生きていけないってさ。」
「何を……よくもそんなデタラメを!2枚目気取りのこの大嘘吐き、恥知らず!」
「恥知らずはねぇだろうが!」
はっきり言うなぁ、レイア。
でも、同じ立場なら私も言ってる。間違いなく言う。それにナルシストも加えて言うな。
「自分の気持ちを知られるのが照れ臭くて、かっこつけてんだ。」
違うぞ、ソロ。レイアは本当のことを言っただけだ。よく言ったレイア。
「貴方に女の気持ちなんて分かるもんですか。」
次の瞬間、レイアはルークにキスをする。待って、君達兄妹だよね。2人共知らないけど、兄妹だよ。いいの?
『全士官は司令室に集合せよ!』
アナウンスが流れ、レイアはソロを睨み付けて出て行く。それを追って、ソロとチューバッカも出ていった。全士官ってことは、何かあったらしい。
「アリスは良いのか?」
「だって私、将軍辞めたし。」
「貴女もよ!」
「えー」
戻ってきたレイアに強引に連れ出されて、司令室へ向かう。
ライカン将軍が、お客が来たと告げる。レーダーが拾ったのは、ドロイドの電子音だった。何を言っているのか分からないけど、放置は良くなさそうだ。
「マスター・レイン、どう思う?」
「そのマスターってやつやめない?C-3POってどこにいるの?3POなら翻訳できるんじゃない?3POー!」
「はい!マスター・レイン!私めはここにいます!」
「このドロイド何て言ってる?」
3POに電子音を聴かせると、いつものように答えてくれた。
「このドロイドは、帝国軍の暗号を言っております。」
「帝国………」
「俺が調べてくる。」
「“ハン”」
ソロを呼び止めれば、目を見開かれた。
名前で呼んだのは、初めてだ。生意気で良い男とは言えないけど、行動力は称賛に値する。その敬意を込めての名前呼びだった。
「気を付けて。」
「ああ、分かってるよ。」
ソロはチューバッカを連れて、外へ向かう。帝国のドロイドだったら面倒だ。もしそうなら、この基地は撤退しなければならない。
反乱軍は、日に日に追い詰められている。
「戦闘準備をしてくる。」
「貴女まさか……」
「私も地上で戦う。大丈夫だよ、レイア。反乱軍の人達は必ず脱出させるから。」
「そうじゃないわ。貴女が脱出できなかったらどうする気?」
「ちゃんと脱出する。約束するよ。」
司令室を出て、ルークの部屋に行く。
ルークの傷はもう完治している。だけど、病み上がりのルークに地上はきつい。あの子はスノースピーダーに乗せよう。
「ルーク」
「アリス、一体何が……?」
「ソロが隕石を調べに行った。もしかしたら、帝国のプローブ・ドロイドかもしれない。撤退命令が出るかも。」
「貴女は?」
「私は地上で反乱軍を助ける。あんたはスノースピーダーに乗って。」
「アリス、待って!」
ルークの声に、立ち止まる。
「吹雪の中で、ベンが言ったんだ。ダゴバへ行けって。」
「ダゴバ………」
「知っているのか?」
「知ってる。でも、行くなら艦隊に合流してから。今は反乱軍を助けて。」
そう言って、今度こそ出ていく。
なぜオビ=ワンは急かしているのか、分からない。ルークをダゴバへ連れていく予定だったけど、どうして急かすのか分からない。瞑想でも、何も予期できなかったんだ。
『アリス』
その声に振り向くと、霊体のオビ=ワンが立っていた。わざわざ姿を現したオビ=ワンに、私はわざと無視する。こんな時に現れるなんて、どう考えても諭しに来ているとしか思えない。
格納庫近くの通路の壁に寄り掛かって、霊体の親友を睨み上げる。
「何の用?」
『お前は知らないだろうと思ってな。少し前、ヴェイダーにルークの素性を知られたぞ。アミダラ女王のこともな。』
「………」
『アリス、ルークをヴェイダーに会わせてはならん。』
「………分かってる。」
オビ=ワンに静かに答え、私は背を向ける。
『皇帝の関心がルークに向いたとはいえ、お前への執着は消えていない。決して侮るな。』
「用心する。」
振り返らずに告げて、格納庫へ入る。
ヴェイダーがルークの素性に気付いた。きっかけは、やはりサイムーン1だろう。自分のライトセーバーを、ルークが持っていたのだから。
更に、あの子が私とオビ=ワンの弟子だと公言したことも大きい。
もう少し自制心をつけてくれないと困るな。
スターデストロイヤーが空に映ったのは、それから数十分後のことだった。