「フロム・インダストリー所属、橘花・エアーストです。 気軽に橘花と呼んでください。 趣味はツーリングと釣りあとゲームです。 これからよろしく。 ……あぁ、 それと我らがフロム・インダストリーでは現在、 将来性のある
さて、 自己紹介はそつなくこなしたし社長からの依頼も済ませた。
まぁこんな空気では何人がキチンと聞いていてくれたかもわからないが…… 次がたしかこの空気の原因であるこの学園唯一の男子生徒の番なのだが、
「織斑君? …… 織斑一夏君!」
こいつすごい。 何が凄いって真横で話しかけてるのに全く気づかないところがだ。どれだけ考え事に集中してるんだか、 横の席のよしみということで助け舟を出すことにした。 しかし声を掛けても無駄だろう、 ということで--脇腹を小突いてあげた。
「ひぎゃぁ!? なにすん… 「自己紹介、 次あなただよ。」… 悪い。」
なかなかいいリアクションだ。 その後しばらく横の人と真耶先生が互いに謝り合い、 ようやく自己紹介が始まった。 さて何を言うのかな、wktk
「織斑一夏です。」…ん?
まさかそれだけ? あれだけ引っ張ってそれだけなんてはずがないよな? そしてようやく彼が口を開くのを見て私とクラスメイト全員の期待が高まり-- そして--
「以上です。」
ズッコケた。
お笑い芸人もびっくりなくらい完璧なこけ方だったと思う。 出会ったばかりのクラスに一体感が生まれた瞬間だったと一年一組の生徒は皆、 後にそう語っている。
「貴様はまともに挨拶も出来んのか?」
ドゴン!という銃声に似た音を立てて出席簿が織斑君の頭に刺さる。
「げェェ‼︎ シュワちゃん!?」
「だれがターミネーターだ。 馬鹿者め。」
再び爆音を立てて、織斑君が叩かれた。 彼まだ生きてるのかな?
「諸君、入学おめでとう。 私が担任の織斑千冬だ。 私の仕事は君たちの価値を虫けら以下の現状から一人前にまで持って行くことだ。 故に私の言うことはよく聞き、 よく従え。 わかろうがわかるまいが返事はしろ、 いいな?」
どこの士官学校だよ、 普通の高校にこんな教師がいるわけがないし、 こんな挨拶も受け入れられるわけがないだろう……
「「「きゃーーー!!」」」
「千冬様よ!!」
「本物のブリュンヒルデよ‼︎」
「私千冬様に会うために修羅の国から来ました!」
……めちゃくちゃ受け入れられとる。 つか修羅の国ってどこ?
「…… まったく、よくもまぁ毎年こんな馬鹿者ばかりを集めたものだ。 ある意味感心するよ。」
「イーヤァッホォッッー 千冬様最高‼︎ もっと罵って!」
「そしてたまに優しい笑顔をみせて。」
「それでいて調子に乗らないように厳しく躾けて‼︎」
何このクラス…… 正直怖いんだけど、とてもじゃないが倍率一万越えの受験戦争を勝ち抜いたエリート達の姿には見えない。 そんな事をしていたからだろう
--クラスの半数以上が自己紹介を終えることなくSHRが終わってしまった。
結局自己紹介のために1限目の授業は潰れ、すこし、というかだいぶ不機嫌そうな千冬先生が出て行ったところで私は客寄せパンダ… じゃなかった織斑君に声をかけられた。
「橘花… さん? 自己紹介の時はありがとう。 助かったよ、 俺は織斑、 織斑一夏だ。 一夏って呼んでほしい。」
「どういたしまして。 客寄せパンダ……じゃなくて一夏君。 」
「ひどすぎやしな「一夏、 ちょっといいか?」 箒か! すまん、 すこし行ってくる。」
「行ってらー。」
別に私に謝らなくてもいい気もするのだが、 意外と律義な人なのかな?
「ん〜ふ〜ふふ〜ふ〜♫ 」
だべっていた相手も居なくなったので、鼻歌を歌いながら本を読んでいたら2人組に声をかけられた。
「ね〜ね〜 きっかー 自己紹介の時に言ってた話しについてくわしく聞きたいんだけど〜」
「んー まんま言葉通りよ? 詳しく言うならどっち志願か聞いて、 軽い質問と試験受けてもらって… んで合格なら採用って感じ。」
「試験って何するの?」
「えっと、レイヴン… あぁいやパイロットなら変わった性能の機体を装備させてどう動こうとするのか見たり、 技術者なら自由なコンセプトで一機、 お題付きでもう一機発想を出してもらう感じ。志願資格は根性と愛かな。」
質問に来たのはおっとりした感じが特徴的なのほほんさんとスポーティーな清香さんだ。(のほほんさんは同室なので、そして清香さんとはのほほんさんを通して友人になっていた。)
「なるほど〜 ところで何できっかーはパイロットの事をレイヴンって呼んでるの〜?」
「うちの会社って 部署ごとにエンブレムが決められててね、 パイロット部は鴉がモチーフなんだよね。 んで誰かがレイヴンって呼び出してそれが広まったの。 アーキテクトのほうは忘れた。」
そんな与太話をしている間に千冬先生が現れ、 休み時間は終わりを告げた。
「…… ですので、 ISの運用の… というわけです。 さて、 ここまでで分からない事が有る人は居ますか?」
流石にいないのではないだろうか… だってこの二限目のIS基礎運用の授業は少しばかし参考書を読んでいれば普通に分かる内容なのだ。 だと言うのに、 なぜ隣の席のこいつはこんなにもキョドフなんだろう。
周りの人のノートを覗き込み、 参考書と黒板を見比べ頭を抱える。 この流れを授業が始まって以来延々と繰り返していたのだ。予習とかしなかったんだろうな。 この不審者としか思えない様子に山田先生も気づいたのだろう、
「織斑君、 大丈夫ですか? わからないところがあるならどんどん言ってくださいね。 なんたって先生は先生なんですから。」
エッヘンなんて擬音が聞こえそうな具合にその馬鹿でかい胸を張りやがったのだ。
その直後、 その馬鹿でかい胸と自分のそれを見比べ。 頭を抱えて嘆いた生徒がいたが、 断じて私ではないと信じたい。
まぁ、 私なのだけれど……。
「あなたッ、 本気でおっしゃっていますの!?」
二限目に発生した、 持つ者と持たざる者の胸囲… じゃなくて驚異的なまでの格差に対するマリアナ海溝寄りも深い思考を止めたのは、 そんな叫び声だった。
「急に叫んで、 どうしたの? えぇと…… ウォルコットさん?」
「オルコットですわ。 織斑一夏さんとお話ししていたら代表候補生がなんだかご存知ない、 とおっしゃられまして。」
「なんだよ。 知らないことがそんなに悪いのかよ?」
どうやら彼はニュースとか見ない人なんだろう。 いや、 まさか……
「やめてあげて。 オルコットさん、 彼はTVを持ってないのよ‼︎」
真実はいつだって人を不幸にする。 私とオルコットさんは、 一夏君に心の底からの同情の眼差しを向けた。
「いやいや、 TVくらい有るからね!?」
…… どうやら真実で無いらしい、 だとすると彼はあれか! 興味が無い事の情報が全く頭に入らない系の子。 きっと会話に困るタイプだ。
「代表候補生というのは、 文字通り国家代表IS操縦者の、 候補生ですわ。 しかし唯一男性でISを操縦できると聞いていましたから、もう少し興味深い話が聞けるかと思っていたのですが……」
「俺に何かを期待されてもなぁ」
「もしもISについて分からない事が有れば、教えてさしあげますわ。 入試で唯一教官を倒したこのわたくしが。」
うそ、 オルコットさん
「ん? 入試ってIS使って教官と戦うやつ? もしそうなら俺も倒したぜ。」
「えッ!? 一夏君まで、 一体全体どうやって千冬先生を倒したのさ。私惨敗だったんだけど。」
「「…… え?」」
まるで 時が止まったかの用な沈黙にが発するプレッシャーに潰されそうになる私を…
キーンコーンカーンコーン。
3限目開始のチャイムが救ってくれた。
「この時間は、 実戦において使用するISの各種装備の特徴について説明する予定だったのだがその前に再来週に行われるクラス対抗戦にでる代表者を決めようと思う。 自推か他推かは問わない。ちなみに代表者は対抗戦だけでなく、生徒会の開く会議やなんかにも出席してもらう。 早い話がクラス長だな。 優勝したクラスにはいくつかの特典もつくことになっているから、 よく考えて選ぶように。」
千冬先生の説明を聞いて、ざわ…ざわ…と教室が色めき立つ。 がまぁ私には関係あるまい。 なんせ…
「織斑君を推薦します。」
このクラスには客寄せパンダの異名を誇る?彼がいるのだから。
「「「賛成です‼︎」」」
クラスメイトの大半が賛同を示したところで、一夏君も事態を把握したのだろう。必死に辞退しようとしていたが、 千冬先生にあっさりと却下されていた。
「だったら…… 俺は橘花さんを推薦します‼︎」
人を呪わば穴二つという奴か、 この野郎私にふりやがった。 ここは多くの女子の意向に従って辞退し…「あらかじめ言っておくが、辞退は推薦者の期待を裏切る事になる。 故に認めんぞ。」…… チクショーめ‼︎
「待ってください。 その選出方には納得出来ませんわ。」
凛とたち上がったのは、 先ほどのオルコットさん。 まじカッケェ!
クラスの女子の、この野郎出しゃばりやがって。みたいな眼差しを無視し、 最初に織斑君を推薦した生徒に問いかける。
「クラス代表は当然実力がトップの者がなるべきだとわたくしは考えます。 さて、貴女はなぜ織斑一夏さんが代表に相応しいとお考えになられたのですの?」
あんなに毅然とした態度で問いかけられて、 答えられる筈が無いだろう。 だってノリで推薦しただけだろうし。
「答えられませんか。 まぁかまいませんわ。 ですのでわたくしは自分自身を推薦し、 その上で推薦された方々全員での決闘による代表の選考を提案させていただきますわ。 このIS学園が何を学ぶための学園かを考えれば、 妥当だとおもうのですが。」
「ふむ…… いいだろう。 では一週間後の放課後に、 第三アリーナで行う。 各自用意しておくように。」
決闘か〜 大変そうだね。
「二人とも頑張ってね? 応援してるから。」
「何を言っているんだ? お前もやるんだぞ、エアースト。」
ーーゑ? なんだって?
次回は決闘までのそれぞれの様子をお送りしたいと思っております。
よろしければ、今しばらくお付き合いください。