【完結済】Fate/Grand Order 煉獄魔境大罪記ゲヘナ/虚ろなる煉獄の聖杯【長編版】   作:朝霧=Uroboross

10 / 114
1-6 vs大罪魔王(立香side)

 ──────マモン。目の前で佇むサーヴァントはそう名乗った。デバイスから息を飲むような空気が伝わってくる。

 

『マ、マモンだって!? 聖書にも記されてる大物中の大物じゃないか!』

「はい! 七つの大罪のうち、《強欲》を宿すとされている大悪魔…………彼が、そうなのでしょうか」

 

 ダ・ヴィンチの驚きと焦りの声がデバイスから流れ、マシュは今まで以上に警戒する。

 だがしかし、モードレッドだけは違った。

 

「ハッ、マモンだかサモンだか知らねぇな。敵は潰すだけだろ」

「シハハ、違ぇねぇ」

 

 モードレッドのケンカを売るような発言に、マモンは笑いながら同意する。大鎌を引き抜き、モードレッドに向かって水平に構える。

 ふと、マモンが思い出したように立香に言う。

 

「そういや、下にアニキに一対一(タイマン)ふっかけてる命知らずもいるけどよォ。行かなくていいのかァ?」

 

 そのマモンの発言に立香は驚く。このハサン以外にももう一人ここにいたのか、と。逡巡する立香に、

 

「マスター! ここはオレとトリに任せろ! マスターがいると全力で飛ばせれねぇ」

 

 と、モードレッドが声を張り上げて言い、

 

「異邦のマスターよ。ここは良い、下へ向かってくれ。私も、もう動ける」

 

 と、ハサンが前に出て言う。二人の言葉を聞いて立香は心を決める。

 

「────先輩」

「……うん、任せよう。マシュ、フラン、ジキル、行こう!」

 

 三人の名を呼んで下へと降りていく。三人もそれ続いて下へ向かって降りていった。ジキルだけは「ボク案内しかできないんだけどなぁ……」と呟いていたが。

 立香達が降りたのを気配で知りながら、モードレッドは剣をマモンに向かって構える。マモンを中心にしてトリスタンとハサン、そしてモードレッドで三角形をつくるようにして取り囲む。

 

「さてと……んじゃ気の赴くままに闘り合うとしょうぜ」

「言われなくてもそうしてやるよ」

 

 マモンとモードレッドが向かい合い、互いに口火を切らす。互いに見合い、隙を見計らい、そして一瞬の隙を突き、激突する────────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 立香達が地上に降り立つと同時に、隣に人が吹き飛ばされ、壁に衝突し、土煙を上げる。

 驚く立香達が目を見張っていると、土煙の中からよろめきながら一人出てくる。

 

「──────ディルムッド!?」

「……っ? 貴殿らは?」

 

 手痛そうなダメージを負いながらも立つそのサーヴァントに、立香は駆け寄る。

 思っていた以上にダメージが入っていたのか数歩歩いて膝を着けるディルムッド。すぐさまジキルを傷を見て応急処置を行う。

 

「────……ん? なんだァ? …………あー、そうか、テメェらが星見(カルデア)か」

 

 そう言って、ディルムッドが吹き飛ばされてきた方向から歩み寄ってくる、マモンと同じ黒いコートを着た緑髪の男。この男もまた、カルデアを知っていることに、立香は警戒体制を取る。

 

「…………流石は、最強とも言われる大悪魔────《ベルゼビュート》だ。よもやここまでとは……」

 

 そのディルムッドの発言に立香達は驚き、ベルゼビュートと呼ばれた男を見る。それと同じくしてデバイスからホームズの声が出る。

 

『ベルゼビュート! 七大罪(暴食)の権能を持つ、七人の悪魔の中でも最強格の悪魔。マモンがアニキと呼ぶ相手がまさか君とはね…………』

 

 珍しくホームズの絶句するような声が鳴り、ベルゼビュートは肩に身の丈程もある槍を担ぐ。

 

「はっ、やめろやめろ。オレァそう大したもんじゃァねぇよ。……それに、ディルムッドだったなァ? テメェも中々の強さだぜ」

 

 空いた片手で払うようにしながら謙遜して、しかしディルムッドをその双眸でしっかりと見つめて言う。その口元には好青年のような笑みを浮かべている。

 そんな姿に、ディルムッドもまた笑みを浮かべて双剣を構える。

 

「……ふっ、悪魔とは言え、これ程にまで清々しい決闘をするとは……。ならば私も、誠意を持ってお相手しよう!」

 

 そう言って互いに互いを見合い、刃を交えようとする。だが、そこへ一人の影が入ってくる。

 

「う!」

「フ、フラン!?」

 

 その突然の行動に立香は驚き、慌てて引き戻そうとする。が、フランは頑なに動こうとしない。ジキルも引き戻そうとするものの、全く変わる様子がない。

 その様子にベルゼビュートは笑いを圧し殺しながら、

 

「ククク、構わねぇよ。そら、一人でも二人でもいいからかかってこいや」

 

 となんでもないかのように言いながら、槍を腰中段に、穂先を下に向けて構える。それはいつでも突きを撃てる構えであった。ディルムッドとフランもまた各々の構え方で戦闘体制を取る。

 少しばかりの沈黙が流れ、刹那──────ベルゼビュートが動き出す。一瞬遅れてディルムッドもまた駆け出し、共にぶつかり合う。

 ベルゼビュートの渦巻く風を纏った鋭い一撃を、ディルムッドは双剣を交差させて受け止める。そして、ディルムッドの背後からフランがメイスを振り上げてベルゼビュートに襲いかかる。だが、ベルゼビュートはそれを半身避けるだけでかわしていく。

 

「クハハ! いいねぇ! 即席なクセしていいコンビネーションじゃねぇか!」

 

 ディルムッドの双擊を、フランの重擊を、ベルゼビュートは槍を縦横無尽に振り回して流し、そして避けては攻撃を加えていく。

 

「そらァッ!!」

「ウゥゥアァァッ!!」

 

 ベルゼビュートの薙ぎを、フランはメイスで叩くようにして迎撃する。方々に風と稲妻が走り、周囲を破壊していく。

 そして、エネルギーが収束し、暴発する。二人はその勢いで弾かれたように距離を空ける。瞬間、ベルゼビュートの背後からその時を狙ってたいたかのようにディルムッドが低身で懐に潜り込む。

 

「そこだ! ────『憤怒の波濤(モラ・ルタ)』ッ!!」

 

 ディルムッドの宝具が、ベルゼビュートの間近にて発動される────。




波濤は『はとう』と読むらしいです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。