【完結済】Fate/Grand Order 煉獄魔境大罪記ゲヘナ/虚ろなる煉獄の聖杯【長編版】 作:朝霧=Uroboross
うわやっべ、連休ボケして日曜だと思ってた。あっぶなー……。
長らく続いたこの作品も、もう十話足らずほどで終わりとなります。
いやはや、感慨深いですねぇ……。
塵となって崩れ去っていくサタナエル。それはまるで、石造りの神殿が崩壊していくかのような、硬いものが砕けていくようであった。
サタナエルを討伐したことで、宝具解放や、これまでのダメージにより疲弊しきったサーヴァント達。大半は肩で息をするかのように憔悴していた。
「終わった……の?」
「おそらくは、ね。………まさか、僕の宿願が、ここで叶うなんてね……」
"王"を喪ってもなお燃え盛る荒野。七大罪達もかなり体力を消耗していたらしく、もう動けないとばかりに休息を取り始める。
ふと、そんな立香達の元に、車輪が走る音が向かってくる。振り向くと、決着を感じたらしいシャドウ・ボーダーが走ってきていた。
「先輩、お疲れ様です。……結局、私だけ間に合いませんでした……」
「仕方ないよ。最初にあんな戦闘があったからね」
「ギクゥ………スマセーン…」
駆けつけたシャドウ・ボーダーから出てきたマシュが、いざというときのために"
マシュを慰める立香の台詞に、気まずそうに視線を逸らして謝るマモン。そんな空気に、皆気が緩んでいた。
────二人を除いて。
「──────ッ!小娘!護れっ!!」
「!?ッ──―っきゃぁっ!」
「マシュ!?」
重い発砲音。その直前にルシファーがマシュを叫び、驚きつつも咄嗟に立香の前で盾を構えたマシュ。幸い、マシュの盾によってその凶弾は弾かれたものの、マシュは鉄球を投げつけられたかのように弾き飛ばす。
立香がマシュの身を案じて支えつつ、その攻撃された方向を見ると、そこには──────
「ハァ、ハァ………これしきで、このオレを倒せたと思い上がるなよ小僧…ッ」
「っ────サタナエル!」
石化したかのようになっていた自らの亡骸を破壊して現れるサタナエル────否、魔皇サタン。息も切れ切れながら、その目はまだ生きていた。
サーヴァント達は立香の前に集おうとしたが、既に魔力を使い切ってしまっており、動くことすらままならなかった。
「ハァ……フン、虎の子の英霊も、そのザマでは形無しよな」
「……なんで、まだ生きているんだ」
立香は、その背中に走る戦慄を、出来る限り隠しながらサタンに問う。ビーストであった時、ましてや先程の決戦のときも、最早魔力は枯渇しているといっても過言ではなかった。
皮肉げな笑みを浮かべると、サタンは自身の胸元に掌を向ける。すると、サタンの体内から赤黒く禍々しい"聖杯"が現れる。
「これこそは、我が身に宿されし魔の
妖しく輝く聖杯。否、それは最早、聖剣と呼んでいい代物なのか疑わしくなるほど禍々しくあった。見た目は今まで見てきた聖杯となんら遜色ない。が、問題はその赤黒い色と滲み出ている魔力にあった。
早速とばかりにスキャンにかけていたダヴィンチを始めとするボーダー乗員一堂は検出されたソレに目を剥く。
『なんだアレ!?叩き出す結果が全部"虚数属性"だって!?』
「当然よ。……フン、態々説明する義理はないがな」
そう言うと、サタンはその聖杯を体内に戻す。だが、少しでも体外に出していた影響か、空にいくつか亀裂が走る。
『や、ヤバいぞ!"この世界"自体が崩壊しかかっている!!』
「あぁ、そうだな。この世界はじき砕け散るだろうよ。だがな──────オレの前から逃がすつもりなぞ、到底持ち合わせておらんぞ」
スキル『魔皇のオーラ』────溢れんばかりの、圧迫感を与える
瀕死であろうはずなのに、なおも衰えを見せないその姿にたじろぐ立香やサーヴァント達。
だが、そんな彼らの前に立ち、立ち塞がるように現れる影。
「悪いが、私のマスターは殺させない」
「沖田オルタ………?」
彼女だけではない。立香を守るようにして、武器を構えるベルゼビュートとルシファー。
「……おい、俺達はこれ以上激しい動きはできねぇからな」
「無念だが、貴様がやれ。貴様の主ぐらいは護ってみせよう」
「あぁ、感謝する」
腰を沈め、沖田さんと同じ構えをしてサタンと相対する魔神沖田。そのサタンの両手に炎が迸り、二丁の
魔神沖田の闘気が膨れ上がり、オーラを相殺する。舌打ちを一つすると、次第にサタンの身体に炎が吹き出し、そして纏っていく。
「来るがいい!抑止に造られた偽善者よ!!我が怒り、我が復讐、持ちうる全ての力を以て、貴様らのその希望を絶望に変えてやる!!」
「私達はお前を倒し、未来を取り戻す!──────魔神・沖田総司、参る!!」
魔神沖田が突貫し、サタンは長銃を構える。二つの影はその距離を詰めていき──────放たれた銃弾を真っ二つにする。
忌々しそうに顔をしかめ、すぐさま下部の剣刃で迎え撃つ。その鍔競り合う音を皮切りに、今、最後の決戦が始まる──────。
―所詮人間なぞ、期待するだけ無駄なのだ。自然であれ、同族であれ、搾取し切っては廃棄し、軽蔑し、足蹴にする。自らを救済する光さえも拒絶しては貪り尽くす、醜いケダモノよ。
………だがもし、それでもなお己を克己せんと、失ったものを取り戻さんと生き足掻くのならば。見せてみろ、貴様ら人間の価値というものを―
~魔皇目録:訣別の刻より~