【完結済】Fate/Grand Order 煉獄魔境大罪記ゲヘナ/虚ろなる煉獄の聖杯【長編版】   作:朝霧=Uroboross

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サタンの過去語り兼煉獄の最後by悪魔側となります。

ちょっと、というより、かなり長いと思われるので、気長にお読み下さい。

<ユックリデイイヨー





8-幕末 彼は、何故に怒るのか。

 

 目の前で、己が召喚した『煉獄の門』が閉じていく。その最中で、他の悪魔共が奴らに別れを告げている。

 やがて、門は閉じ切り、消える。そして悪魔共は、崩壊する煉獄の中ででも己の住処へと戻っていく。

 

 灰塵と帰した己が街のガレキの一つに背中を預け、残った片腕でタバコを取り出す。普段使っていたライターを探すも、消し飛ばされた半身にあったことを悟り、舌打ちをしてから炎を出して火をつける。

 火のついたタバコを吹かしながら、魔皇は空洞の空を見上げる。最早身体は終わりを待つばかりの身となり、次いで、何も成し遂げられなかった自身に、呆れを含んだため息が出た。

 

「ふぅ──────……強かったぞ、お前達の"子"は」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 サタンがまだ、悪魔になる前の頃。彼は唯一無二の創造主■■■■に仕えし大天使にして、全ての天使達を統制する最強最高の存在だった。

 しかし、そんな彼に課せられたのは『楽園の守護』という、まさしく無駄遣いの極みだった。

 それでも彼は、それが主命ならばと守護者に徹し続けた。やがて、地上に命が生まれ、生命の流れが生まれ、死が生まれた。

 

 死した獣・植物は天へ召し上げられ、楽園に住まうことを許された。次第に、楽園には清らかなる命が溢れ、美しい景色を造り上げるようになった。

 

「ヨゥ、サタンの旦那ァ~」

「……サマエルか。貴様がここに来るのは許されておらん。徒く失せよ」

 

 

 大蛇の下半身に、張り付けたような気味の悪い笑みを浮かべる、これまた蛇面の天使────サマエル。

 主からでさえもあまり信用されていない彼は、この楽園に入ることを禁じられていた。しかし、それを彼は一度破り、楽園に"果実"を植えてしまった。それによって、このような醜い見た目となっている。

 

 そんなサマエルが、このような不信極まりない笑みを張り付けていること自体が怪しい他ならない。サタン────サタナエルは、警戒度を上げていく。

 

「旦那ァ、知ってますかい?最近、神サマはお新しい生命(いのち)を創り出したとかなんとか」

「…………」

 

 サマエルの飄々とした態度を、右から左へと聞き流していく。それでもなおベラベラと話すサマエル。

 最近、主は新しい生命を生み出そうとしていることは知っている。というよりも、聞いている。その"名"は、『人間』。神に等しい、所謂主の子分身のようなもの。

 

「煩いぞ、サマエル。いい加減、失せろ。さもなくば、今すぐ貴様を消し飛ばしてやってもいいのだぞ」

「うへェ、そら勘弁勘弁。んじゃまぁ、あっしはここでサヨナラさせてもらいますわ」

 

 そのままスルスルと下がっていくサマエル。サタナエルはその背を、消えるそのときまで油断なく見つめ、いなくなったのを確認してため息を吐くのであった。

 

 

『楽園』にはある二つの生命が居た。その名は、『アダム』と『イヴ』。昔には『リリス』というものがいたそうだが、サタナエルが守護者に就任する前に追放されたという。

 その"人間"と定義された生命達は、サタナエルのことを兄と呼び慕い、無愛想ながら、よき相談者として、よき教育者として二人と共に居た。

 

「兄さん、あれは?」

 

 アダムが指を指して聞いたのは、遠くになっているとある"果実"であった。それは、かつてあのサマエルが植えた忌々しい果実。

 

「あれには近寄るな。あれは、お前達が触れてはならないものだ」

 

 そう忠告し、彼らは去る。だが、彼らは知らなかった。その後ろ姿を見つめる蛇がいたことを──────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何故です!彼らが何をしたというのです、主よ!!」

『彼らは食してはならぬものを食した。故に、罪である』

 

 頭に血が昇るのを感じるサタナエル。イヴが神の果実を食したという密告を聞いた彼は、そんなことは有り得ないと直談判するも、聞く耳すら持たれない。

 その最中、ふと主の背後を見たサタナエル。そこには、これでもかとほくそ笑んでいるサマエルの姿を見つける。

 

「サマエル──────貴様かぁぁぁぁっ!!」

 

 サマエルの元へと勢いよく駆け出すサタナエル。だが、主の周囲に控えていた天使達がサタナエルを捕らえて床に張り付ける。

 歯を食い縛りながら、サマエルを睨み続ける。一方相手は、サタナエルの眼光に怯みつつも、嘲笑うかのような笑みを絶やさなかった。

 

『……理由を問おう、サタナエル』

「主よ!そこにいる其奴が二人を嵌めたのです!」

 

 噛みつかんばかりにもがくが、天使達の拘束は続く。元より名無しの天使とは、これといった人格のない完全なる神の下僕。

 だからこそ、その拘束は主の命あるまで解かれることはなく、サタナエルもまた、離されるはずもなかった。

 

『最早既定のこと。アダムとイヴは地上に堕とす』

「な!?彼らは悪くないはずだ!!」

『故意であれ、他意であれ、禁忌を犯した。故に堕とす』

 

 サタナエルは絶望の顔に染まる。無感情に告げられるそれに、納得がいかない。彼らは何も悪くないと言うのに、理不尽にまど貶められる。

 ふざけるな────サタナエルはそう叫びたかった。否、最早我慢の限界。だからこそ、サタナエルは力ずくで拘束を振りほどく。

 

「そんな────そんな理不尽が、貴様の選択なのか、■■■■──────ッ!!」

『堕ちよ』

 

 憤怒の相を一杯にし、主と仰いでいた神へと牙を向ける。しかし、たった一言で一蹴され、それどころかこれまで体験したことのないほどの重圧によって、天界から突き落とされる。

 だが、その一瞬の不意を突いて反撃し、神の片腕を吹き飛ばし、サマエルへと強烈な一撃を与えた────居場所を必ず把握するという呪い付きで。

 

 

 だが、これによって、サタナエルは大天使長としての地位と力の全てを剥奪され、地上のさらに下の下、永遠の罰を背負う煉獄の底へと叩き落とされるのであった。

 

 

 

 

 

 

 煉獄の底に堕とされたサタナエル────サタンに、まず最初に訪れたのは、身を焦がすほどの業火であった。次いで耐え難い障気、挙げ句の果てには原型すら留められないほどの苦痛。

 何日、何ヵ月、まして何年経ったのか判らなくなるほどに彷徨い、自我がなくなってしまいかけるほどにもがいた。

 

 

 その果てに、見つけたのだ。彼の聖杯を────。

 

 

 そして、彼は願った。──神に死を、悪徳に死を、理不尽を破壊し尽くせる力を────と。

 

 

 そうした彼は得た、得てしまった。あまねく全ての命を焼き付くす煉獄の魔銃と、神聖を極める神を呑み込み喰らうための存在────すなわち、『悪魔』へと。

 その後は、さらに地獄に堕ちてきた者を時に討ち、時に配下とし、時に消し炭にしてきた。

 その最中であった。『虚飾(アザゼル)』との出会いは。きっかけは、煉獄の果てにある不毛の荒野。その地平の彼方に、ただ一つだけ"ナニカ"があるのを見つけ、気紛れに訪れたのだ。

 

 そうしてアザゼルを解放し、それを起点として、サタンは煉獄、ひいては魔界の中枢を支配した。だが、そんな彼と同等の力を持つ六人の悪魔達のみ、自らと対等となす存在と認めた。

 それこそが『七大罪の悪魔』。悪魔達から、羨望と、崇敬と、畏怖を以て恭順される魔王達である。

 

 それから、その七大罪達の力を借りることによって、地上な観測に成功したサタン。彼は思っていた。『あのアダムとイヴの子ならば、さぞ清らかに、健やかに生きているのだろう』と。

 ──だが、そのサタンの思いは、またしても踏みにじられることとなった。

 

 地上では、神がアダムとイヴにしたように、理不尽な責め苦や、詭弁、さらには暴行といった悪徳が蔓延し、かつて愛した二人の輝きを失った、醜い者共の巣窟となっていた。

 

 故に、サタンは決心したのだ。神が、人が、人々が、理不尽と暴虐を持つ獣になるならば、ならばいっそ、絶望によってそれらを一掃し、理不尽なき『楽園』を創世してみせる、と──────。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ──────結局は……叶わぬ夢、か……」

 

 遠くを見つめ、ぼやくサタン。すで煉獄の半分は虚空へと消え、もう十分程度で自分ごと消え去るだろうと予測する。

 最期とばかりに、懐古の念に囚われながら、かつて愛した二人と、その子である人間達の営みを思い出す。

 

 人の営みは、確かに理不尽だらけだった。しかし、それでもなお逞しく生きる彼らに、心の底では、安堵と羨望を覚えていたのだ。それを、カルデアへの敗北で悟ることとなった。

 

「やほー、隣いいかい?」

「──ふっ、勝手にしろ」

 

 そうしていると、隣にひょっこりとアザゼルが現れ、己の隣に腰かける。カルデアに見せた無傷な姿はどこへやら、とっくのとうに限界を迎えた状態の姿がそこにあった。

 仮面はひび割れ、身体中から血をながし、自身と同じく満身創痍であった。それどころか、お互いに残存魔力が微々たるものとなっており、消滅を待つばかりの身となっていた。

 

「強かったねぇ、カルデア。君はどうだった」

「────、あぁ、良かった、そう思ったな」

「よく言うねェ。アソコ行く気ない癖に」

「当然よ。オレは人理の敵対者。ならばこそ、おいそれと彼処にいくわけにもいくまいて」

 

 崩壊する世界を肴にしながら、カルデアと相対した感想で団欒する二人。その姿は悪魔と言うよりも、古くからの知己が語り合う、平和で、穏やかで、そして哀しい姿であった。

 

 

 





『■■■■』の中は皆様自身の中でご想像下さい。ただし、名前を出すとややこしいことになりかねないので、答えは胸の内にしまっちゃいましょう。
オニィサンとのお約束だゾ。byマーリン風


アダムとイヴは人類史上最も有名かつ偉大な存在だけど、英霊ではないんだわな。もし英霊だったら、ザビ子ザビ男の身体借りてそう(小並感)。

0時にはサタンのサーヴァント情報載せる予定なので、しばしお待ちを。
明後日にはアザゼルの過去を書きますねぃ。

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