【完結済】Fate/Grand Order 煉獄魔境大罪記ゲヘナ/虚ろなる煉獄の聖杯【長編版】   作:朝霧=Uroboross

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すみませんねぇ、また長くなっちゃいましたよコンチクショウ!
このアザゼルとサタンは、とりわけ自分が好きなのと、何かと過去がつらい二人なのでつい長めになっちゃうんですよねぇ。


BGMで『消えない想い』聞きながら読むと、書いてる自分も泣きそうになっちゃいましたよ………。だまされたと思って聞いてみてください。













8-幕末・裏 いつか君と見た夕陽

 

 

 

 ──かつて、神■■■■は人の営みを管理するため、人類監視機関『エグリゴリ』を造った。総勢200人程の天使達によって組織されたそれは、創設以来何年間も人々を監視していた。

 だが、その内に人間達に恋をしてしまい、今は中東地方に聳えるヘルモン山にて長達が集い、互いに誓いを立ててその恋を叶えていった。だが、その恋は成就することなく、彼らは地上に厄災を招いた反逆者──堕天使として、地の底のさらに奥地へと追放されていった。

 

 

 そして──────アザゼルもまた、その堕天使の内の一人であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぁーぁ………」

 

 まだ大地が緑に地の溢れていたころ、アザゼルは近場の丁度いい木の上で昼寝をしていた。彼はエグリゴリの中でも、人間の監視という役目に関心を持てない異端児でもあった。

 そうして、またいつも通りの昼寝(サボタージュ)をしていると、不意に、下から声をかけられる。

 

「ねぇ!そこの貴方!」

「ん?誰だい?」

 

 微睡みから覚めて下を見る。そこには、一人の人間の女性がいた。まだ年若く、少女のようなあどけなさを残していた、まさしく花のような乙女。

 とは言え、アザゼルは人間自体にさほど興味がなく、面倒臭いと思いながら視線だけ向ける。そんなアザゼルに対し、目を輝かせる乙女。

 

「貴方、天使様でしょう?お名前は?」

「教えないよ。というより、なんでそんな事を君に教えないといけないんだい?」

 

 普段なら無視を決め込むか、さっさと追い払うアザゼル。だが、今回ばかりは、なぜか会話を望んでいた。本人はそのことに気付いていないが、例え気付いていたとしても解らなかっただろう。

 乙女は、茶目っ気のある笑みを浮かべて、アザゼルへと話しかけ続ける。それは、来る日も、来る日も。太陽が天長に至った後の、麗らかな光が訪れる時だった。

 

 呆れたような態度で返事をするアザゼルと、朗らかな表情で語り合う乙女。それは次第に、互いに柔らかな笑顔を浮かべて語り合う仲へと進展していった。

 しょうがないとばかりに付き合い、天然の混じった彼女にあれこれと教えるアザゼル。そんなアザゼルの優しさを受け取り、天然なところを指摘されて照れる乙女。

 春の陽気な空気のように、暖かく、そして心地の良い、何の他愛もない話で、二人は談笑するようになっていった。それは、アザゼルが感じたこのない『幸せ』であり、いつしか彼女に惹かれるようになっていった。

 

 

 

 

 そんなある日、アザゼルは自身を含め、20人近くいる長達の会議へと呼ばれる。やや面倒臭がりながらも、会議の場所と指定されたヘルモン山の頂上へと降りる。

 そこには、エグリゴリのリーダーである『シュミハザ』を始めとして、アラキバやラメエル、ラムエルと言った天使長達が一堂に集っていた。しかも、その空気は重く、皆なにかしらを抱えているかのような、悩ましい顔つきであった。

 

「んで?どうしたのさリーダー。急に僕らを集めるなんて、何かあったのかい?」

「我々は、人間に恋をした」

 

 重い沈黙。アザゼルも、この唐突かつ衝撃的な告白には流石に閉口してしまう。人間を監視するための組織であるエグリゴリの構成員が、人間に恋をする。へたをすればそれは、重罪どころか反逆者となってしまう案件だった。

 驚き閉口していたアザゼルは、すぐさま視線を鋭くして追及する。

 

「それは……どういうつもりか、解っているのか」

「解っている。だが、我々は愛してしまった。だからこそ、ここに我らで誓いを立てる」

 

 よくよく見れば、天使長達の全員がシュミハザと同じなのか、皆覚悟の決まった顔つきだった。

 アザゼルは、確かに惹かれはしていたが、どちらかと言うと、他の人間とは違うからという程度であり、まだ恋というほどではなかった。だがしかし、自身もまた、人間に入れ込んでいるという事実に変わりない。

 

 彼らは誓いを立てた。それがどんな内容だだかは、文献はおろか、アザゼルの記憶にすら残っていないことだが、それを契機として、彼らが人間と交際するようになっていったのは確かである。

 

 

 

 

 

 

 

「ねね、知ってる?天使様達と一緒に居れるんだって」

「知ってるよ。というか、当事者にそれを言うってどうなんだい」

 

 いつもと同じ場所で、いつもと同じ他愛のない会話。けれどその距離(・・)は今までよりも近く、お互いに気を許している証左であった。

 ここは誰もこないような郊外にあり、さらには海が近く、静かなさざなみが聴ける場所でもある。そして、その地平線に沈む夕陽は、何よりも美しかった。

 

「あたし、やっぱりここ好き。静かで、きれいで、あの綺麗な夕陽が、すっごく好き。それに────貴方とも、アザゼルとも居れるから」

「……はいはい、ノロケをどうもありがと。でもま、この場所が好きっていうのは同感かな」

 

 アザゼルは呆れたような顔をするものの、夕陽を背に照らされる彼女の柔らかな笑顔は、とても美しいと思った。そして、いつまでもこの夕陽を見つめていたいと、二人は思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 エグリゴリの面々が付き合いはじめてしばらく、天使達は、自らが神に教わった技術を人々に授けていた。あるものは化粧の仕方、ある者は呪いのかけ方など、と。

 そしてアザゼルは、時折エグリゴリの仲間から鍛冶場に呼ばれることがあり、そこで武器の加工の仕方や盾の工夫などを教えた。ただ、ある程度鍛冶場を貸してくれることの代金代わりであり、本人は億劫そうにしていたが。

 鍛冶場を借りてアザゼルが作っていたのは、小さな指輪。綺麗に輝く宝石を嵌め込んだそれを、アザゼルは満足そうに眺める。これを、いつも何の理由もなく会いに来る彼女に、今度感謝代わりにでも渡そうと思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だが、その日がやってくることはなかった。

 

 

 

 エグリゴリの面々と人間との間に産まれた、『巨人(ネフェリム)』と呼ばれる、およそ人とは思えない存在が世界を焼き付くし、数多の命を奪っていった。

 ──────その災火に、彼女も巻き込まれたのだ

 

 

 

 

 燃え盛る平原。命の気配はなく、遠くではいくつもの巨人が暴れまわっている。そんな死の平原を、アザゼルはただ一人走る。

 街のどこにも彼女の姿はなかった。なら、居るとすればただ一つ、あの場所だけ。そう思い、ただ"生きててほしい"と願いながら走り続ける。

 

 そして、ようやくそこにたどり着いたアザゼルが見たのは──────血塗れで、周りが焼ける中、ただ一本だけ無事な、いつも寝ている木の下に横たわる彼女の姿。

 

「おい!おい、死ぬな!まだ、まだ渡してないものも、伝えてないこともあるのに!死ぬな!死なないでくれ!頼むから!!」

 

 涙をこらえて、アザゼルはか細い息をする彼女に声をかける。やがて、彼女は薄く目を開いて、淡い笑みを浮かべる。

 

「あ………来て、くれたんだ……嬉しい、な……。貴方に、会いたくて……来ちゃった……」

「バカか君は……ッ、どうして来たんだ!早く逃げれば良かったものを……ッ」

 

 アザゼルは知っている。逃げたとしても、神が裁きを下して、この地上を浄化するだろうと。だが、逃げてほしいと思ったのは本当のこと。

 今になって気づいた。────────好きだった、愛していた。彼女だから、ずっと手を取り合って生きていたかった。彼女と一緒なら、堕天しても、人間になっても構わなかった。

 

「────好きなの、貴方が。ずっと、出会ったときから、好きでした」

「──────」

 

 息を飲む。もう長くはない彼女の口から、自分のことを好きだと言ってくれた。嬉しかった。そして、喪いたくなかった。

 

「それを、言いたくて、来たの……でも、ごめんね……あたし……もう、ダメみたい………」

「やめろ……嫌だ、やめてくれ。頼むから……ッ」

 

 涙が溢れる。もう、我慢なんて出来なかった。ただ一人、つまらない世界に明るい色をもたらしてくれた、愛しい『人』。それを喪うなど、アザゼルには耐えきれなかった。

 必死に傷口を塞ぎ、自身の天使としての力で治そうとした。だが、次第に彼女の命の灯火は消えていく。

 

「行かないでくれ!まだ、まだ言えてないことがあるんだ!!僕は、オレは!君のことが──────」

「あり、が……とう………アザゼル………」

 

 アザゼルが、それを最後まで言い切らぬ内に、彼女は感謝を伝え、そして──────死んだ。

 

 

「────君が、好きだったんだ……『アリシア』……………」

 

 彼女の亡骸を抱え、燃え盛る大地の中、静かに涙を流していく。もう叶わない想い、そして、永遠に再開することのない愛する人。

 アザゼルは、遺体となったアリシアを、風に揺れる木の根元に横たえて、その手元に、手作りの指輪を置く。不意に立ち上がり、彼は彼女の遺体に背を向けて、未だ暴れる巨人と、同胞だった者達のもとへと歩みを進めていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『被告人、元エグリゴリ天使長2番、アザゼル。登壇せよ!!』

「…………」

 

 天界の裁判所にて、アザゼルは壇上に現れる。手も力も封印され、神の御前へと。

 アザゼルが犯した内容と、神からの裁きをそらんじるのは、かつて後輩として、天界でのあれこれを教えていたラファエル。

 

『被告アザゼルは、自らの役目を放棄し、監視するべき人間に対して恋慕の情を抱き、あまつさえその人間を殺した!さらには、同胞であった仲間達80人あまりを騙し討ちするという非道!最早許されざる!!

 

 

 

 よって!その者を極刑────"ダドエルの穴"に封印するものとする!!』

 

 天使達からの非難が飛び交う。彼は、アリシアを看取った後、あの様な惨劇を引き起こしたエグリゴリのメンバーの内、アラキバを含め、約半数を殺戮して回っていた。

 その途中、下界の惨状を収めるために降りてきたラファエルら四大天使に捕らえられ、今に至る。そらんじられた判決に、何も言わず沈黙し続けるアザゼル。

 

『被告、なにか言うことはないのか』

 

 かつての後輩に、厳しい目を向けられる。だが、アザゼルはそのようなことを気にした風もなく、顔をあげる。

 その顔は、かつて優しさと気だるさが合わさった柔和な天使長のものではなく、狂気と死の気配が合わさった死神のソレだった。

 

「言うこと?それボクに聞く?そんなの、あるわけないジャン。アンタらはボクらが疎ましかった、違う?そんなアンタらに語ることなんてないヨ」

『……そうか。では、連れていけ』

 

 そしてアザゼルは連行され、天界から地上、そして地獄の奥底まで続く大穴────"ダドエルの穴"へと、四肢を大岩に張り付けられて落とされる。

 落ちていく最中、彼は、アリシアと共に過ごしてきた日々を思い出していた。楽しかった毎日、二度と戻らぬ日々を夢想し、そして──────彼も、思い出すことはなかった。

 

サヨウナラ(さようなら)。楽しかったよ………アリシア………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





辛い………書いてて一番辛いよアンタ………。

本当に、自分の命かけれるほど好きな人がいる人ならわかるだろうけど、自分の大切な相手を喪ったときって、結構人間は狂気に呑まれるんだと思う。


ステータス、今度は遅刻しない………と、思いたい………

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