【完結済】Fate/Grand Order 煉獄魔境大罪記ゲヘナ/虚ろなる煉獄の聖杯【長編版】 作:朝霧=Uroboross
以下修正点
・行頭空白を入れました。
・線を書き直しました。
・これまでの第話の誤字等修正しました。
吹き飛んできたモードレッドは、ベルゼビュートを警戒して、しかし訝しむように睨む。
「おいマスター、なんでまだこんなとこいんだよ」
モードレッドがベルゼビュートから意識を離さず立香に語りかける。立香はどう言おうか逡巡している。
ちなみに件のベルゼビュートはと言うと、自らの槍を地面に突き刺してはもたれ掛かり、手空きではない暇そうに欠伸をしている始末である。
「さっきの今でそこまで離れられるわけがないだろう? それに複数人いるなんて僕らも知らなかったんだし」
そうモードレッドに教えるようにして言い返すジキル。その傍らには、ジキルに肩を貸されながら足を引きずり歩くディルムッド。息は切れ切れで今の状態ですら辛そうにしている。
「間違いなく敵でしょうに、それすらわかりませんか? 卿は」
そう言って立香の近くにトリスタンが降りてくる。脇にはぐったりとして動かない、というよりも動けなくなっているハサンが抱えられていた。
よく見ればトリスタンも怪我をしており、かなりの戦闘があったことがわかる。
「チッ、うっせぇなぁ、わかってらぁよンなことはよ。………………おい、そこのお前! 何だ!」
不機嫌そうにベルゼビュートに向かって叫び聞くモードレッド。内容に軽くこけるジキルを尻目にしてベルゼビュートを睨み続ける。
隣へ来た紅髪の男と何かしら話していたベルゼビュートは、モードレッドの問いかけに不思議そうにして向き直る。
「あん? 何ってお前…………それじゃァ悪魔としか答えれねぇよ」
呆れたように、そしてどうしようもないかのように肩をすくめるベルゼビュート。その反応にモードレッドは軽く眉間を震わせて言い直す。
「じゃあテメェらは何者なんだ?」
状況が違っていれば今すぐにでもキレて殴りにいきそうなモードレッドを見て、立香は軽く自分の頬がひきつるのを感じていた。
ベルゼビュートは「及第点だな」と呟くと、手に持つ槍を立香達に向けて言う。
「初見が多いからな、改めて直らせてもらうぜ。オレは《ベルゼビュート》。『七大罪』の魔王が一人、『暴食』のベルゼビュートだ!」
「そしてオレは同じく『強欲』の《マモン》様だ! よくよく覚えとけよ?
ベルゼビュートに続き紅髪の男──────マモンも立香に名乗り上げた。これで立香は、ディルムッドらと交戦していた悪魔たち二人の真名を知ったことになる。
「ケッ、知るかよ。オレはお前らがなんだろうとぶっ飛ばすだけだ」
口元を手の甲でぬぐいながら剣先を向けるモードレッド。既に他の面々も臨戦体勢に入っている。先に戦いに参戦していたディルムッドとハサンは近場で体力を戻すことに専念している。
「ハッ、そうだな。じゃァたっぷりと楽しませてくれよ」
腰に槍を抱え直しすベルゼビュートと、戦槌を掲げ、大鎌を後ろにして体をひねり、突っ込もうとするマモン。
両者の中間点で火花が弾けるような空気が流れ──────────
────────先に動いたのはマモンだった。
「そォるァッ!!」
立香を狙い、戦槌と大鎌を交差させるように振るマモン。しかし、その攻撃は立香に届くよりも先に現れた巨大な盾によって防がれる。
「チィ! 抜け目ねぇなガキンチョ!!」
「先輩には手出しさせません!!」
せめぎあっていたところを、マシュがシールドバッシュで弾き、そのまま盾でマモンを殴る。
マモンは防御体勢を取るが、そのまま吹き飛ばされる。しかし舗装された地面を砕きながらもブレーキをかけて耐える。
「ぐぉっ、こんの…………ぬぉぉ!?」
マモンが顔を上げるまでの一瞬の隙を突いてトリスタンが弦を鳴らし、無数の斬擊を飛ばす。始めこそ驚いたマモンだったが、避けるうちに余裕が出たのか、時折逆に切り裂いていく。
「そらそらそらァ!! ほい兄貴!!」
「おゥらよ!!」
マモンが弾き返しきった間隙を狙ってベルゼビュートが突風を纏って突進してくる。それを赤い雷を纏ったモードレッドが突っ込みながら迎え撃つ。
両者の攻撃がぶつかり合い、風と雷を撒き散らしながら競り合い、互いの勢いで弾かれながら下がる。
「やるじゃねぇか騎士サマよ!」
「テメェもな風ヤロー!」
お互いに好敵手を見つけたかのような笑みを浮かべながら再び衝突する二人。
ベルゼビュートの突きを避け、隙を見たモードレッドの剣を仰け反ってかわしながらも地面に槍を刺して、ブレイクダンスのように蹴り上げる。それを剣の腹で流しながらそのまま腹でひねりを加えた一撃を加える。
「ウゥゥァァァッ!!」
「うぉ!? らっとォ!」
そんなラッシュの中の一瞬を突いてフランがメイスでベルゼビュートに殴りかかる。しかしベルゼビュートはそれを難なく避けて距離を空けてしまう。
ふと、琴弦を弾くような音が聞こえたベルゼビュートは、危険を感じてそこから飛び退く。
「ハハハ! 集中砲火かよたまんねぇな!」
「私は哀しい……これでも当たりませんか」
先程までマモンを引き離すために斬擊を飛ばしていたトリスタンが、ベルゼビュートに向かっても攻撃を加えていく。
一方のマモンはどうやってか二人に分身し、マシュの猛攻とジキル────ハイドを相手取っていた。
「ヒャーハハハハ! 殺してやるぜぇ!」
「ハハハハハ! なんだオメェ、さてはヤベェ奴だなぁ!?」
ハイド側のマモンは、ハイドのナイフを愉快そうにしながら避け、大振りなナイフを二刀、逆手に持って戦っている。
「くっ!」
「未熟! 未満! そして無力!! ンな程度でオレ様の相手なんざ千年早ェ!!」
大鎌を両手持ちにして猛攻を仕掛けているマモンと、それを受けるばかりで一向に攻めきれないマシュ。その後ろでは立香が立っていた。
そして、意を決したかのように、立香がマシュ達に向かってある魔術を発動する。