【完結済】Fate/Grand Order 煉獄魔境大罪記ゲヘナ/虚ろなる煉獄の聖杯【長編版】 作:朝霧=Uroboross
「礼装魔術! 『全体強化』!!」
立香が"礼装魔術"を発動する。立香の着る服装にダ・ヴィンチが備え付けた特殊な魔術。それが礼装魔術である、
立香が発動した魔術により、マシュを含める立香のサーヴァント達が強化される。
「たぁぁっ!!」
立香のおかげで、先程まで押されぎみだったマシュに余裕ができ、攻勢に出る。
マモンの大鎌を大きく弾き、体勢が崩れたマモンに向かって返す盾で槍のように突き打つ。その際に底部のバンカーを打ち出して大打撃を与える。
「ぐぼぁっ!?」
派手に吹き飛ばされたマモンは地面にバウンドしながら転がっていく。それでも四つん這いになり地面を砕いて耐え、ユラリと立ち上がる。
「ハハハ、ハーッハハハ! ンだよンだよ、思ったよりやるじゃねぇかガキィ!!」
瞳孔を見開き、狂喜するかのように笑みを深めるマモン。
ふと、立香がベルゼビュート側を見ると、黒い風が吹き荒れ、赤と緑の雷が絡み合っている危険地帯となっていた。あちこちの周囲、地面は戦闘の衝撃や余波でボロボロになっている。
「さぁもっとだ! もっと…………あァ?」
猛り叫ぼうとしていたマモンが、訝しげな声を上げる。その目線の先には、全てが真っ黒な蝶が飛んでいた。
その蝶はマモンの目の前で2、3程回ると、ベルゼビュートの元へと向かっていく。
「……な、なんだ? あれ」
「……チッ、興醒めだァ……。兄貴!!」
立香の疑問を余所にマモンがベルゼビュートを呼ぶ。丁度距離を取り合っていたベルゼビュートは目線だけでマモンを見ると、マモンと共に蝶が舞っているところまで下がる。
「随分とまァ早かったな……おいお前ら」
何事か呟いてからベルゼビュートが立香に話しかける。
「悪ィがここで幕引きだ、また会える日を楽しみにしてるぜ。それと…………オイ」
「アイッサー」
ベルゼビュートに呼び掛けられたマモンが、自身の腰にある布袋を探る。そして中から何かを取り出すと、ボソボソと呟いて立香達、もとい立香に向かって投げつける。
立香はそれを慌てて受け止め、手の中のものをみて驚く。
「……これって、聖杯!?」
「なぜ聖杯をあの人達が!?」
立香とマシュが驚きの声を上げると、ベルゼビュートが手を払うようにして振りながら立香に言う。
「お前らの欲しがってたモンだろ? くれてやるよ、オレ達にはいらねぇからな」
「そ、そうなんだ……」
そんな会話を交わす立香とベルゼビュート。その後ろではマモンがまた布袋から何かを取り出しており、それを虚空に刺している。すると、そこに巨大な漆黒の、それでいて精緻な細工の掘られた城門のような扉が現れる。
「兄貴、オッケーっス」
「おう。んじゃァなカルデアのマスター、また会おうぜ」
そう言って空いた門をくぐっていく二人。ふとベルゼビュートが何かを思い出したかのように足を止める。が、すぐに立香に向かって振り返り、
「……あー、言い忘れてたがな。
と立香の持つ聖杯を指差して言う。そうして「じゃあな」とそのまま扉をくぐっていってしまう。二人が通った後に扉は閉じ、消えていく。
丁度消えたタイミングで通信が入ってくる。
『あー、やっと通じた。そっちは大丈夫だった?』
「はい、一応なんとか」
ダ・ヴィンチの声が鳴り、立香はそれに応える。ふと、マシュが疑問を浮かべる。
「あの、どうして通信が途絶していたのでしょうか」
『んー、多分彼らの出す存在感で空間がねじ曲げられていたからだと思うよ?』
そう話していると、途中でホームズの声に切り替わる。
『あんまり悠長にはしていられないね。そろそろその空間が狭まっている。消滅が近いみたいだから早く帰ってきたまえ』
その通信を聞いた直後、立香達はレイシフトの状態へと移行する。
そんな立香達に近づいてくる気配を感じて、立香は振り返る。そこには、歩ける程度にはケガが治ったのか、ディルムッドとハサンの二人がいた。
「お別れ、ですか……」
「そうだね……大丈夫?」
立香が不安げに訪ねると、ディルムッドは微笑みを浮かべてこう返す。
「えぇなんとか……此度は感謝します、異邦のマスターよ」
「他の者等も奴等に挑んだが、ついには勝てなんだ。だからこそ、感謝する」
そう言う二人はどこかホッとしているようで、清々しそうにしていた。立香もそれに頷き、そして彼らしく言葉を紡ぐ。
「それじゃあ……また会おう、二人とも」
「あぁ」 「えぇ、その時は是非」
お互いに言葉を交わして、立香達はカルデアへと帰還していく──────────。
────────異邦のマスター達が去り、静寂な街を見つめるディルムッド。これで我らが呼ばれし使命は終わった。一息ついて、そう気が抜けて瞬間────────ズブリ。
「カッ!? ハッ…………」
何かが自身の胸部を貫く感覚がする。胸元を見ると、腕のようなものが自身の胸元から出ている。そのまま勢いよく引き抜かれ、ディルムッドは地に伏す。
顔を上げて背後を見ると、ハサン──────ではない。ハサンを模したナニカが蠢いていた。
「貴様…………っ、何者だ…………っ」
最後の力を振り絞りつつディルムッドはソレに問う。ソレの背後からコツコツと硬い靴音が鳴り、異質な空気を持つ女性がソレの隣で立ち止まる
「あら? まだ生きてるわよ? 早くトドメを刺さなきゃね?」
「そうだな、ここまで英霊がしぶといとは計算外だった。とはいえ、それは彼の神殿で思い知っていたがね」
そう言ってソレ──────青年の姿に変わった男が腕を振り上げる。それと共に、ディルムッドの意識は闇の中へと落ちていく。
「うふふ……始まるわよ、"宴"が」
「あぁ、始まるな……あのカルデアがどこまでやるか見物だな」
彼らのその会話だけが、彼が最後に聞いたものであった──────────。
実は眠気と戦いながら書いてます。
割とマジで辛いっス(遠い目