【完結済】Fate/Grand Order 煉獄魔境大罪記ゲヘナ/虚ろなる煉獄の聖杯【長編版】 作:朝霧=Uroboross
立香達は声のした方向を見る。そこには紺色の髪をボサボサに伸ばし、蝙蝠に似た羽で滞空する、モノクルをかけた手のひらサイズの青年がいた。
はたと、自身に視線が集中してるとわかり、縮こまって顔を隠す青年。
「あぅぁ…………み、見ないでぇ…………」
そんな情けない声を出しながら、ひゅるひゅると床に落ちていく。ついには床に座り込んで萎縮したように丸まっている始末である。
「いや、突然声が聞こえたらそっち見ちゃうよそりゃ……」
立香の苦笑いを含んだツッコミに、青年はまたしても「あぅ……」とうめく。
チラリと顔を上げて、何かを諦めたかのようにかぶりを降ってまた飛び上がる。
「んんっ……ぇ、えっと……彼らは今、ここを攻めようとしています」
「「「「それはさっき聞いた」」」」
青年が説明を始めようと、先程言ったことを繰り返した。それに対する一同のツッコミに「はぅ」と、涙目になりつつも話していく。
「え、えっとね? なんていうかね? ここ邪魔だから攻めるーみたいな。その……、面白そうだから攻めるーみたいな感じなんです、はい……」
そんなもごもごとした要領の得ない説明に、一部の者達は苛立ったようにまくしたてる。それを一番始めに、そして誰よりも強かったのがモードレッドであった。
「ナヨナヨしてんじゃねぇよ、もっとシャキッとしろ!」
「ひぃっ!?」
モードレッドの苛立ちの声に、青年は驚きすくんで悲鳴を上げる。そんな彼を助けるかのように前に進み出る影があった。
「つまり、彼らは己の享楽と何らかの目的が相増ってここを目指している、ということかね?」
わかりやすく要約し、聞き返すのはアヴィケブロンである。
そのアヴィケブロンに対して、青年はその通りだと言わんばかりに首肯する。
「それはいいけどよ、その目的がわかんねぇとどうしようもねぇだろ?」
そこに横槍を入れてくるランサーのクー・フーリン。その言葉を皮切りにあちらこちらで相談しだすカルデアの面々。そこに──────、
「「それはいいけど、場所を変えようじゃないか(かね)」」
と、ホームズとアラフィフ──────もとい、モリアーティがハモって全員に言う。と同時に、二人の間に剣呑な空気が流れ始める。
それを見た立香は慌てて賛同し、皆を移動させようとする。
「ふ、二人の言う通りもう少し広い落ち着ける場所にいこう!」
「そ、そうですね! あっ、でしたら食堂がよろしいのではないでしょうか!」
場の空気を読んでいたマシュは、多少無理矢理感があるものの、皆を食堂に集めることを勧めて移動していく。
二人は未だ、笑顔のまま危ない空気が流れている。
「…………それはそうとして、それはどういう魔術なのです?」
「ふむ、僕も興味あるね」
「ふぇ、えっと…………」
そんな中でも青年に対して好奇心を隠せないパラケルススとアヴィケブロンは、いつの間にか青年の近くに寄って何かしらを聞いていた。
そんな様子に、立香は苦笑しつつも食堂に向かうのだった。
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〈カルデア 大食堂〉
「──────なるほど、ゴーレム技術と操作系の魔術、さらに死霊魔術など様々なエッセンスでできているのですね」
「ゴーレムにこれ程の可能性があったなんて……僕としたことが節穴だった」
移動中にあれこれと聞いていたパラケルススとアヴィケブロンは、納得した顔で頷いていた。当の青年はどこかしらぐったりとしており、気分が悪そうにしていた。
そんな光景を、立香は傍目に見つつ、皆が席に座ったり、壁に寄りかかったりしているのを確認すると、青年を呼ぶ。
「大丈夫? …………無理しなくてもいいんだよ?」
「だ、大丈夫だよ……無理でも、今しなきゃいけないから……」
そう言ってパタパタと飛び上がり、フロアの中心で止まる。もちろん、そこには集まっている皆の視線が一斉に集まっているため、青年は渋い顔をしていた。
しかし、意を決したような顔をすると、口を開き始める。
「スゥー、フゥー…………皆さん、初めまして。ボクの名前は《ベルフェゴール》と言います」
その名前に、知る者達は目を見開く。顕著に反応したのはホームズ、モリアーティ、天草四郎、ジャンヌダルクを始めとした者達であった。
それに気づいていたベルフェゴールと名乗った青年だが、気にしたのは風もなく話を続けていく。
「ボクは…………《七大罪》の魔王の一人であり、《怠惰》の権能を持っています。しかし、他の、彼らとは互いに相反する者であり、あなた達に協力する者です」
真剣な顔をして言い放つベルフェゴール。その話に、食堂に集まった者達は今度こそ、大きな驚きを見せていく。