【完結済】Fate/Grand Order 煉獄魔境大罪記ゲヘナ/虚ろなる煉獄の聖杯【長編版】 作:朝霧=Uroboross
気づけば空を見上げていた。体は動かない、自分でもわかるぐらいにボロボロだから。
────あぁ、負けた。既に戦闘の音は遠く離れており、だがしかし、小さくとも聞こえている。
ふと、いくつもの足音が聞こえ、マモンはただ静かに瞑目する。
「まぁ、なんだ……おめでとう。すげぇよ、お前らは」
自らの口から出たのは、そんな陳腐なものだった。己という悪魔────マモンを打ち倒したということに、倒された者からの、心からの賛辞を送る。
「……まだ、生きているんだね」
「あァ? あー……まぁ悪魔だしな」
立香の問いにクックックッと笑って返すマモン。その顔に以前までの凶暴さはなく、むしろ清々しいといった具合だった。
「なぁ、教えてくれよ。お前は、一体何を求めているんだ?」
今度はマモンから立香に問われる。立香は、少しだけ考える仕草をすると、苦笑いをして答えた。
「助けられる誰かを助けれる力、かな?」
「……そりゃご苦労なこってェ」
同じく苦笑いを浮かべるマモン。再び瞑目すると、少ししてから嘆息して、
「いるんだろ? 『
「…………うん」
そんなマモンの問いかけに、ベルフェゴールは反応して、立香の肩から顔を出す。
目を開けたマモンは、ある方向を指差して言葉を放つ。
「
そう言ったマモンにベルフェゴールは驚き目を見開く。それは立香らも同じで、まさかマモンがそんなことを言うとは思ってもみなかったからである。
「…………教える、の?」
「負けたからなァ…………ちっとは大人しくするわ」
ぐったりとして仰向けに倒れるマモン。そこに、先程まで着ていた黄金の鎧を脱いだ"賢王"としてのギルガメッシュが現れる。
「同情はせんぞ愚物。それは貴様が自ら招いたことだ」
「あたぼうよ、これぐらい自分でやれらァ」
そんなやり取りをしたマモンはゆっくりと、しかし力無く起き上がる。困ったように頭をかくマモンは、立香の方を向いて話しだす。
「まぁ、なんだ、言いたいことは色々あるだろうが、悪かった」
「えっ? あ、うん……」
突然謝られたことに、立香は少なからず驚く。なにせ謝られるなどと夢にも思わなかったのだから。
「この煉獄じゃァ強くなきゃ生きられねぇ。強さこそが絶対だ。オレ達すら倒せねぇならこの先は無理だ」
いきなり、なんの脈絡もなく語り出すマモン。しかし立香は、なにか大事な話をされている気がして、静かに聞き続ける。
「元々お前らを呼んだのは戦うためじゃねぇ、止めてほしいやつがいるからだ」
「っ…………それは…………」
ベルフェゴールがマモンの言わんとしていることに気づいたかのような反応を見せる。しかし、次の瞬間には口をつぐむ。なぜなら────
「っと、悪いが誰かは言えねぇ。そういうモンだからな」
そういい放つとマモンは立ち上がる。首を鳴らしながら真剣な顔付きで立香を見つめ、悪魔とは思えないような威厳を持って語り続ける。
「
「…………解った。必ず止める」
立香の返事に、マモンは深く頭を下げる。
「すまねぇ……恩に着る。この恩、この傷を癒して必ず返す。絶対にだ、約束する」
鋼のような意思が見えるマモンの瞳に、立香はただ頷き返す。
その姿を見たマモンは、何事かを呟くと、すぐさまマモンの愛機を持った悪魔達が現れ、マモンを丁寧に乗せる。
「監獄へ行った後はこの先にある荒野を目指せ。そこに兄貴がいるはずだ」
「うん、わかった」
そしてマモンは、「じゃあな」と言ってそのまま去っていく。マモンが去ると共に遠くで鳴っていた戦闘音も消えていき、ついには収まる。
しばらく立香達はマモンの去った方向を見ていた。
「……アイツも、色んなしがらみがあったんだな」
モードレッドがどこか遠くに思い馳せるような、それでいて何かやるせないものを想うかのような声音で呟く。
その後、しばらくは無言の空間が続いたが、少ししてマシュ達が立香らを呼び、立香達はそれに返してカルデアへと戻っていく。
────ここに、大罪魔王『強欲』との戦争が終結する。
マモン編完結となります。次章からはベルフェゴール編です。