【完結済】Fate/Grand Order 煉獄魔境大罪記ゲヘナ/虚ろなる煉獄の聖杯【長編版】   作:朝霧=Uroboross

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3-9 純真なる悪魔

 激闘の音がする。金属と金属をぶつけ合わせたような金鳴り音。その端々に聞こえる爆発音。目の前で戦う彼らは、何よりも怪しいであろう自分を守るために戦っている。

 対して、僕はどうなのだろうか。彼らになにか恩を返せているのだろうか。否、恩をつくるばかりで自分は何もしていない。

 そんなのは嫌だ。歯を食い縛り、叫ぶ代わりにすくんでいた足を前に出す。向かう先は己を守らんと戦う"友"の元に────────

 

 

 

 

 

 

 

 

「放てぃ!」

「おっとと、危ない危ない」

 

 信長の周囲に現れた火縄銃の銃撃を、手にもった剣で弾き返しながら避けていくルキフグス。

 その死角から沖田が迫り、その刃を突き立てようとする。

 

「覚悟!」

「甘い」

 

 死角からの一撃になるはずだった剣閃は、剣を軽く払われるだけで無情にも弾かれてしまう。

 その空いた胴体に鋭い回し蹴りが打ち込まれ、沖田は遠く離されてしまう。

 

「ぐはっ……ッ!」

「沖田!? ぬぅ!」

 

 蹴り飛ばされた沖田の心配をしようとした信長だったが、そんな猶予も許さないとばかりにルキフグスが迫る。

 自身の逸話も相増して吐血する沖田。そんな沖田に気を取られた信長もまた薙ぎ払われる。

 

「ぬぐぁっ!っ……マスターッ!」

 

 俯瞰して戦場を見るために離れていた立香に狙いを定め、一気に駆けるルキフグス。

 信長の叫び声に気づいた立香だったが、その時にはもうすでに敵は目の前にまで迫っていた。

 だが、

 

「っ!」

「そう易々と手を下せると思うなよ」

 

 立香の影からエドモンが現れ、ルキフグスを吹き飛ばす。

 身軽な姿勢で着地するルキフグス。互いににらみ合い、間合いをとる。

 

「ふふ、いいね…………。でもごめんね?こっちも仕事だから」

 

 そう言うと、おもむろに両手の剣に魔力を流しはじめる。すると、片方の剣は不可思議な光を放ちはじめ、もう片方の剣には幾何学模様が浮かぶ。

 

「じゃあ、まぁ…………死んで」

 

 先程までの優男じみた雰囲気とは比べ物にならない速度と威圧感を受ける立香。あまりの威圧感に立香の足がすくんで動けなくなる。

 そんな立香を護らんと前に立ち塞がるエドモン。その顔には焦りが見えていた。そして──────

 

「『絶凍監獄(コキュートス)』ッ!!」

「ごはっ!?」

 

 巨大な氷山がルキフグスを穿たんと登り、その胴体に命中する。

 そのまま吹き飛ばされ、受け身が取り切れず地面を転がながら倒れ伏す。

 立香が、先程聞こえた声の出所を振り返り見る。そこには、魔術を発動したであろう、手を伸ばして決心が決まった顔をするベルフェゴールの姿があった。

 

「ベルフェゴール!」

「遅れてごめん、話は後!僕が皆のフォローする!!」

 

 そう言うなりや否や、おもむろに腕をかかげ、それを勢いよく地面へと振り下げる。

 

「『限界突破(オーバーリミット)』!!」

 

 すると、ベルフェゴールの手の先から波紋のようなものが広がっていく。それが立香らの元までくると、立香達は自身の体の内からなにかしら沸き上がるのを感じとる。

 それまで軽く押されぎみだったBBたちにもすぐさまその効果が現れ、アガリアレプトを押し込んでいく。

 

「たぁっ!」

「うぉぁっ!?オイオイオイッ、これじゃオジサンジリ貧じゃないの!?」

 

 ジャックの短剣が自身の頬をかすり、冷や汗が流れるアガリアレプト。

 バックステップをとりながら倒れ伏すルキフグスの元へと近付き、肩を貸してルキフグスを立たせる。

 

「流石に退いた方がいいぜ"宰相"」

「ふふふ……そうですね……。久々にいいものをもらいました……」

 

 アガリアレプトのタバコの煙がルキフグス達を隠していく。

 

「逃がさないっ!『刻む命脈(アルデバラン)』!!」

 

 ベルフェゴールの魔術による追撃がかかり、その煙を晴らす。だが、二人はすでに撤退した後だった。

 肩を息をするベルフェゴール。そして、気が抜けたかと思えばその場にへたりこんでしまう。

 

「大丈夫!?」

 

 慌てて立香がベルフェゴールの元へと駆け寄り、その肩に手を置く。

 それを手で制して、至って平気そうな顔をしながら、しかし流れる汗をごまかせていない状態で答える。

 

「あはは……大丈夫。ちょっと、久々に無理しちゃっただけ」

 

 気の抜けた笑顔を浮かばせてへたりこむベルフェゴール。その側へロビンがやってきてベルフェゴールの腕を自身の肩へと回し、そのまま立たせる

 

「まったく、世話がやける脱獄者なこって」

「ははは……ごめん……」

 

 申し訳なさげにしょんぼりとするベルフェゴール。ロビンはため息をはきながらもまんざらでもないかのようにシャドウ・ボーダーへと連れていく。

 他の者達も、憔悴した表情はしているものの冗談を言い合えるくらいにはなっていた。

 

「先輩?」

「今いくよー」

 

 マシュにせかされ、小走りでシャドウ・ボーダーへと駆けていく立香。一抹の不安はあるものの、まずは拠点へと帰ることを優先するのであった。

 




ついつい長くなってしもうたぜ…
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