【完結済】Fate/Grand Order 煉獄魔境大罪記ゲヘナ/虚ろなる煉獄の聖杯【長編版】 作:朝霧=Uroboross
前回→リンボ視点
今回→言峰視点
はっきりと言おう、戦況は絶望的だと。こちらは『ウィボス』と呼ばれた元人間の醜悪な塊を幾度も撃破してきたのに反比例し、気づけばマステマと名乗った悪魔から遠く引き離されている。
更には無尽蔵と言ってもいいほどに現れ続けるカタマリに、我々は押し込められていく始末であった。
「いい加減うっとおしいです────ねっ!!」
押し込められていくにつれて、我々は三方を壁に囲まれた地へと追いやられていった。
ここから出るには今来た道を引き返せねばならない。な、カタマリ共がその退路を阻み、当のマステマは上から覗きこむように嘲笑っていた。
「あははは、無駄無駄。そこはボクが喚んだ何百万もの
せせら笑う声。流す目でリンボを見てみれば、今にも苛立ちが振り切れそうになっている。
無数のカタマリ共に追われ、我らは互いに背中合わせとなる。切れる息を整えつつ、状況を確認していく────。
──キャハ
────キャハハ
「────キャハハハハハ!」「キャハハハハハハハハ!!」「ヒャハハハハ!」「ヒャーハハハハハハハ!!」「キャヒャーハハハハハハハ!!」
「な、なんなんですか──ッ!!」
「ぐぅっ……不協和音極まりない…ッ!」
唐突に脳を貫き犯すような嬌声を上げ始めるカタマリ共。気が狂ったかのようなその声は谷中に響き渡り、それが更に嬌声の強さを増していく。
耳を押さえても聴こえる甲高い笑い声。老若男女様々な音程の騒音となって我々の脳をかきむしる。
「くっ、これは……っ、"精神汚染"か!」
今の己の状態を瞬時に看破し、すぐさま黒鍵を取り出して周囲に投げつける。今までと同様、避けるのか避けないのかよくわからない緩やかな動きでその身を逸らすカタマリ共。
無論、大半が当たり一撃で溶け消えていくが、所詮は焼け石に水。即座に新しいものが現れる。
「はぁーい、
真上から彼の悪魔の声がする。上を見上げれば、我らの真上に彼の悪魔がニタリ笑いをしながら宙に立っていた。
「君達は神に対する忠が足りないようだ。そんな
先程までの慈愛と嘲笑に溢れた目から、ひどく冷えた冷徹な目をもって我らに語りかける。
直感した、このままでは不味い────。即座にリンボとタマモヴィッチへと目配せを行う。
「さぁ憐れで愚かなる信者達よ、その無為で無価値な徒花を、私は最上の慈悲を持って尊ぼう────。
『
マステマ。悪魔でありながら神への忠誠心と信仰心を問う者。そして────
「これは────"神聖宝具"、だと!?」
神聖宝具。正式には分類されないものの、神にまつわる絶対的なまでの効力を持つ、神に許された者のみが扱える宝具。例を上げるならばジャンヌ・ダルクであろう。
神聖的な光に満ち溢れ────と思えば世界が崩れていく。それはまるでガラスが割れるようで──、
「ぐぅ…っ!」
リンボ殿が突貫工事で呼び出したアサシンの霊基を使った大霊を身代わりで出してくれたが、突然現れた巨大な腕によって一撃で沈められる。
稼げた時間は一瞬。だが、それだけあれば充分だ。故に、私は聖句を唱える。
「────"私が殺す。私が生かす。私が傷付け私が癒す。我が手を逃れうる者は一人もいない。我が目の届かぬ者は一人もいない"」
黒鍵を構え、未だ翼を広げ続けるマステマへと駆ける。
「"打ち砕かれよ。敗れた者、老いた者を私が招く。私に委ね、私に学び、私に従え"」
襲い来るカタマリ共を、黒鍵を投げることで退けていく。
「"休息を。唄を忘れず、祈りを忘れず、私を忘れず。私は軽く、あらゆる重みを忘れさせる"」
またしても、漂白されたかのような真っ白で、それでいておぞましいほどの恐怖に満ち満ちた腕が襲いくる。
その猛攻をかいくぐり、段々と近付いていく。
「"装うなかれ。許しには報復を、信頼には裏切りを、希望には絶望を、光あるものには闇を、生あるものには暗い死を"」
近くにいたカタマリ共を足場に踏みつけ、宙に漂うマステマへと跳ぶ。
「"休息は私の手に。貴方の罪に油を注ぎ印を記そう。永遠の命は、死の中でこそ与えられる"」
足場を使い、漂うマステマの正面へと躍り出る。その顔には────笑みがはりついていた。
「"────許しはここに。受肉した私が誓う"」
その笑みに僅かな懐疑を抱きながらも、私は黒鍵を
「"────
交差された黒鍵を以てマステマを切り裂く。その瞬間に周囲の割れた世界は消え去る。それと共に、無数にいたカタマリ共も苦悶の声に上げながら次々に消えていく。
墜落するマステマを傍目に、私は落ちていく────。
イエース。
解る人はわかったであろう、ちょいとヘルシングから聖句調べて応用しました。
エレイソンに至ってはわざわざメモしましたw