【完結済】Fate/Grand Order 煉獄魔境大罪記ゲヘナ/虚ろなる煉獄の聖杯【長編版】 作:朝霧=Uroboross
『うーん、成る程……、まぁ事情はわかったよ』
ダヴィンチのうなる声が聞こえる。このダヴィンチが偽物だと思うと、立香は複雑な気分になる。
そう思っていると、ベルゼビュートがコッソリ耳打ちしに来る。
(おう坊主、さっきは信用できねぇとは言ったが、この男女については多分本物だから気兼ねすんな)
(え?あ、そうなの?)
困ったようにうなり続けるダヴィンチを他所に、立香は思わず安堵する。
何しろ今まで頼りにしてきたダヴィンチが偽物だとしたら、恐らく立香は本格的に疑心暗鬼に陥っていただろう。
────とは言え、まだ確証はできねぇんだがな──。誰にとも言わず、ただ一人ベルゼビュートはダヴィンチを改めて考察する。
イマイチ掴み所のない言動、はっきりするところははだきりしているが、性別などあやふやなものを残し続ける不可思議さ。そういった点で、ベルゼビュートはダヴィンチを観察していた。
『ま、とりあえずはそっちにシャドウ・ボーダーを送らせるよ。でも付いてったサーヴァント達は一回休みね』
サーヴァント達から不満の声が上がる。
無理もない。いざ大罪悪魔を討伐せんと赴いたはいいものの、当のベルゼビュート戦においてはアキレウスとアンリマユの独壇場。やったことと言えばバイクチェイスをしたぐらいだ。
「あー、横から失礼、っと」
立香がダヴィンチに返答しようとすると、横からひょっこりとアガリアレプトが顔を出す。
「あやっべ忘れてた」と小声で気まずそうに呟くベルゼビュート。それに泣きそうな顔をしながらも、アガリアレプトは通信に割り込む。
「とりあえずそっちはお迎えさんだけでいいぜ。行きは
『その相手が信頼できる可能性は?』
今度はダヴィンチではなくホームズが返答する。
それに関して、アガリアレプトは前もって用意していたかのような返事をする。
「そんなに心配ならアンタさんが見に来りゃいいだろ?ってぇのはともかく信頼できる筋なのは違ぇねぇぜ」
手をひらひらと振りながら、気だるそうに言うアガリアレプト。"これ以上は疲れるからご免だ"とども言いたげな態度に、ホームズは考えて込んでしまう。
『んーじゃあこっちは迎えだけでいいのかな?』
「そういうことだねぇ」
ダヴィンチが代わり、アガリアレプトはのほほんと返す。
『それじゃあそこのサーヴァント達の迎えと、追加の護衛達とプラスしてホームズ君も連れていくってことでいいのかな?』
「うん、お願いします」
話の内容を再確認する声に、立香は理解を示す返答をする。
『おっけー』という声と共に通信が切れ、立香は緊張の糸を解く。
「おいおい……オレが近くに居ンのに、そんな油断してていいのかよ?」
「?でも、もう戦うつもりはないんでしょ?」
そんな気の抜けた立香の言葉に、ベルゼビュートは思わずと言った風に絶句する。
そこに休んでいたアキレウスが歩み寄り、ベルゼビュートの肩に手をかけながら、同情を含んだ声をかける
「懸念はわかるんだけどよ…これがうちのマスターなんだわ…」
「……なんつゥか…心配になるな、これは……」
肩と目線を落として大きなため息をこぼすベルゼビュート。その様子を、立香は理解できず首をかしげる。
・
・
・
────やがてしばらく経ち、遠くから走行音が聞こえてくる。恐らくはダヴィンチらシャドウ・ボーダーの音だろう。
ちなみにベルゼビュートは手元の蝶と戯れていた。
『おっまたせ~!迎えと、中々濃いメンツだけど代わりの護衛を連れてきたよー』
停車したシャドウ・ボーダーからダヴィンチの声が鳴り、中からホームズを先頭として交代の面々が現れる。が────、
「ふふふ、恐らく次は情欲の悪魔だろうと踏んで参りました。もちろん、護衛はしっかりと務めさせて頂きますとも、えぇ」
「はっ、どうだかな。貴様のことだ、情欲に溺れきって護衛のことなぞ頭から抜けるのではないか?兎も角、俺が呼ばれたことには悪意を感じるぞ」
異様にソワソワしているキアラと、不貞腐れて機嫌が悪そうにしているアンデルセン。
「いまいち私が呼ばれる理由がわかってないんですが……この女と一緒にするってことは同じ情欲のくくりで見られてます?」
「煩いわね、私だってこんな簡素で粉っぽいところに来たくなかったわよ。こんなところじゃ、私の"
同じく機嫌悪く文句をいい続けるカーマと、さらに不機嫌そうにしているメルトリリス。
そして──────、
「なぜ朕が呼ばれたのかは知らんが、完璧に人選ミスを感じるぞ」
始皇帝が遠い目をしながら腕を組んでいた。
その時、立香とベルゼビュートは同時に思ったことを口にする。
「「いやなんで?(だよ……)」」
キアラ、カーマ、メルトリリス、アンデルセンは確定でした。「あと一人だれがいっかなー」と考えて、「んー……始皇帝でいっか!面白そうだし!」とぶっこみました。
反省も後悔もしていない。むしろ面白そうだ!