【完結済】Fate/Grand Order 煉獄魔境大罪記ゲヘナ/虚ろなる煉獄の聖杯【長編版】 作:朝霧=Uroboross
アスモデウスの追想。
実は追想話が一番書くのが難しいって話する?
私はアシュリー。『アスモデウス』の女性的性欲の現れとして女型の姿を採っている悪魔。そして、あらゆる悪魔の原典である、『人々の記憶上の存在』。そして、名だたる聖書の悪魔。
とは言っても本当の私はゾロアスター ──言うところの、『
それらを踏まえて改めて名乗るとするなら、私は聖書の悪魔、真名を"アエーシュモー・ダエーワ"かしらね。でも、そんな御託はどうだっていいの。
今でこそ『色欲』の悪魔だなんだと言われているけれど、ほんとの私は、純愛と純情を愛する恋の徒だったよよ。
────私は始めは滅びの悪魔として生まれた。人間が生まれる以前の魔界で、あらゆる者に滅びを与えるための、そういう装置として活動していた。
けれど人間が、アダムとイヴが地上におとされてしばらく、私は人間に、恋に興味を持つようになった。純愛、敬愛、悲恋、失恋、歪恋、──そして愛欲。
数多の恋愛のカタチを見て私は、それをとても尊く、美しいものだと感じるようになった。それと共に、人の心はなんと賛美に満ち溢れているのだろうと、私の心は撃ち抜かれてしまった。
強いていうのなら、『人間の心という宝石に恋をした』とでもいいのかしらね。
けれど、それはあの日、からくも崩れさってしまった。
とある何でもない日、私は悪魔として喚ばれることになった。それはいい、今までもあったことだから。
けれど、そこで見たのは、醜いほどの差別、肉欲、そして吐き気を催すほどの淫蕩な臭い。そんなものをまじまじと見せられて頭に来ない者はいないでしょう。
だから私は、喚びだした者含めてそのまま淫蕩な世界に溺れてしまえと呪いをかけた。それが"ソドムの街"。
だから、破滅しても私には関係ないと思っていた。
────けれど、神の裁きが下ることがわかって、私はなんとも言えない気持ちになった。"神がなぜ人の業に手を出すの?"、"なぜ人は変わらず愚かさを繰り返すというの?"。言ってみれば、人間のことに、神が手をだすことが許せなかっただけなのだけれど。
だから私は天使を装って、せめてあの中でまともなままであった人々のみは助けたいと、私はとある家族を逃がした。けれど、やはり許されないことだったのか、私と一番親しくしてくれた婦人は────そのまま塩の塊となって元に戻ることはなかった。
それから悠久にも似た時を、己の無力さに打ちひしかれながれ過ごしていた。そんな中でも勝負を吹っ掛けてくる相手には事欠かず、私は次第に悪魔の中でも恐れられる存在へとなっていった。
そんな中、私はふと思い付いたかのように外の世界へと出てみた。そこで私は、第二の運命の出会いをすることとなった。
私が入り込んだ人間──サラ、という名前の人間は、とても奇特だった。私にまるで友人の様に接し、手を取り、微笑んでくれた。私もつい、彼女に釣られて笑みを浮かべることも少なくなかった。
けれど、そんな心優しいサラを利用するような輩もまた居た。彼女の優しさを利用しようとする下衆、彼女の身体のみを求めようとするクズ。幸か不幸か私は人の心、よくに愛に関することなら判る。
だから、殺した。一人目は身体目当ての遊び人。ほぼ政略結婚に近かったけれど、私が彼女に成り済まして初夜を迎える日、男の首を締めた。
二人目は遺産目当ての愛のない男。これもサラを不幸にさせるだけとみて締めた。次も、次も、その次も。ろくでもないやつらばかりだった。
それが変わったのは八人目──トビアという男だった。気弱で、根性なしのもやしっ子。けれど、人一倍優しくて、人一倍誰かのために動ける男だった。そして、サラの本当の初恋の相手。
私は聞いたわ、「本当に彼でいいの?」って。彼女は答えたわ、「ええ、彼でいいの」って。というより、私自身もう彼以外いないだろうとみていたから、聞くまでもないことだったのだけれども。
そして私は、たまたま近くにいた"とある天使"に頼んで、『魚の内臓を香炉に入れて焚く』なんてバカげた払い方だったけれど、それでサラから出ていったわ。
「さようなら、幸せになって、
そして私は天使に連れられて、サハーラ──今じゃエジプトと言うのかしら?そこの奥地でしばらく身を隠しながらサラの様子を見て、彼女の最期を見届けてから魔界に戻っていったの。
あぁ、サラ。幸せになってくれてありがとう。そして、この世界のどこかで生きているサラの子孫たちを、私は決して喪わせない。そう誓ったのよ。
初めまして諸君。いや、『久しぶり』だと言うべきだろうか。
我──否、私はデール。先のと同じく『アスモデウス』の男性としての片割れ。そして、元魔神柱こと、ソロモン72柱の一柱、『アスモダイ』である。
とは言え、私はもはや敗残兵に過ぎず、すでに72柱としての権限は放棄されている。つまるところ、私はもう魔神柱にはなれんということだ。
時間神殿にて我らと貴様ら、互いにしのぎを削り、そして貴様らが勝ち、我らは敗北した。
後に、私とは違う方法で落ち延び、特使五柱と呼ばれるようになった彼らとは違い、私はすでに、魔神柱としては顕現できなくなっていた。虚数空間にて、このまま消え去るのだろう。と、半ば諦めかけていた。
────生きていたい。もっと、もっとあの人間が魅せた人の心を視たい──。虚空で不覚にもそう思ってしまい、私は誰とも知れぬ自嘲を浮かべた。
「──なら、一緒に視てみないかしら?」
"彼女"と出会ったのはその時であった。私と同じ存在名でありながら、その在り方、そしてその姿に、私は惹かれたのだろう。にべもなく、私はその手を取った。
それから私達は、この魔界でさらに実力を上げ、『七大罪』の悪魔とまで言われるようになった。
とは言えやっていることなぞ、人々の恋愛を覗いてはあれこれと意見を出し、一喜一憂し、そして喜び合う。まぁ、下世話なことだとは判っているのだがな。
まぁら前述の彼女と比べると、私は新参であるが故にそこまでの話はできないが、今の私は魔神柱であったころよりも生き生きしているのだろう。
人類の救済は我々"魔神柱"では不可能であった。そして我は力を失い、魔神柱ではなくなった。
ならば、いっそ己な思うままに生きてもいいのではないだろうか。そこに縛るものがないのなら、自由に生きてもかまわないだろう。それが人であり、そして私なのだ。
ふふふ、私も随分と人間くさくなったものだ。あぁ、自由とはこれほどまでに甘美であり、優雅であり、そして人間とは、これほどまでに物語に富んでいたのか。
私はそう感じずにはいられない。そして、それと同じくして、人間という種を滅ぼすことで救おうなどと、全くもっておこがましいのだと、改めて思い知ったよ。
色々長くなって申し訳ない。
もし内容についてなにかしらの要望があれば、逐次感想欄にてご提案頂けるとありがたいです。
ちょびっと大罪コラム
アスモデウスの二人は互いにベストパートナーとして認めあっているせいかよく恋人と間違われる。
けど間違っても本人たちの前で言ってはいけないぞ!彼らは兄弟みたいな関係であって、恋人というと魂の髄までスライムのように融かされるゾ!!