【完結済】Fate/Grand Order 煉獄魔境大罪記ゲヘナ/虚ろなる煉獄の聖杯【長編版】   作:朝霧=Uroboross

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1-4 罪禍司りし者達

 ────〈十九世紀 ロンドン? 〉

 

 人気のないロンドンの街の中、激しい剣戟の音が鳴り響く。人の生きる気配もしないために、刃物がぶつかり合う音だけが、遠く大きくこだまする。

 広場に戦闘音をかきならしながら現れたのは4騎のサーヴァント達だった。

 

「────────くっ!」

 

 〈セイバー〉────『ディルムッド』は、自らの背に、悪寒にも似たおぞましい何かが走るのを感じていた。目の前で接敵するは、黒く背広なロングコートを着た、真名の知らない緑髪の〈ランサー〉。

 そして、自身の視線の奥にて戦うは〈アサシン〉────恐らくは名高いハサンの系譜────と、同じく黒い背広のロングコートを着た〈バーサーカー〉と思われる紅髪のサーヴァント。

 

「…………フーッ、フーッ…………」

 

 ────まずいな、ディルムッドは自身の額に嫌な汗が流れるのを感じていた。幾度となく刃の応酬を重ねたが、未だに本気を出していないことがよく分かる。そして、手加減されてまでなお自身が競り負けていることも。

 息を吸い、呼吸を整え、ディルムッドは意を決して剣先を向けて声高々に名乗り上げる。

 

「────我が名は、誇り高きフィオナ騎士団が一人、ディルムッド・オディナ! 貴殿の名を問う、〈ランサー〉!!」

 

 その声明に驚いたのか、目を軽く見開く〈ランサー〉。そして髪をかきあげるような動作をするとニヤリとして揚々と答える。

 

「…………へぇ? 中々勇ましいじゃァねぇか。いいぜ、答えてやろう。────────オレの名は『ベルゼビュート』。〈七大罪の悪魔〉が一角、『暴食』のベルゼビュートだ!」

 

 

 

 

 

 

 〈アサシン〉──────瞬雷のハサンは焦っていた。相手は〈バーサーカー〉、まともにやり合って勝てるはずもなし。そう思い距離を置こうとしても、気付けば回り込まれている。

 

「────せォらァッ!!」

「──ぬぅっ!」

 

 大鎌の刃が、風を切り裂きながら頭上を通り抜ける。

 眼下では先程声高々に名乗りを上げた〈セイバー〉と〈ランサー〉がめぐるましい程の戦いを繰り広げている。

 まずは距離を離してから、そう思い気付かれぬよう飛び退こうとした時だった。

 

「────────させるわけねェだろ」

 

 まだそうそうに近くにはこれない程度の遠くにいたはずの〈バーサーカー〉の声が背後から聞こえた。と、次の瞬間、

 

「ぐっぬぅぅっ!?」

 

 強い衝撃と共に、今の今まで立っていた民家の屋根の上を転がっていく。勢いを利用しつつ向き直ると、〈バーサーカー〉の手には身の丈程もある巨体な戦槌が握られていた。

 ────おかしい、彼奴の獲物は大鎌のはずでは。さう驚きに目を見張っていると、不意に〈バーサーカー〉が腰の布の小袋から先程の大鎌を取り出していた。

 

「なっ!?」

「ハッ、こンなもんまだ序の口なんだがなァ?」

 

 そう言って一気に距離を詰められ、戦槌と大鎌の二つの武器による連擊が繰り出される。

 雷速のハサンはなんとかして避けていくが、それでも少しずつ追い詰められ、ついには戦槌の一撃をモロに食らってしまう。

 

「ぐぅっ!!?」

 

 屋根の上を転がり、重い一撃を食らったがために起き上がれず倒れ伏す雷速。そこへ戦槌を引きずりながら歩み寄る〈バーサーカー〉。

 

「これで終いだな────、あーばーよ、っ!」

 

 戦槌が振り上げられ、今叩き落とされようとした────が、次の瞬間、

 

「──────オォ、ルァ!!」

 

 赤い稲妻がほとばしり、目前まで迫っていた戦槌を弾き飛ばす。あまりの勢いの強さに〈バーサーカー〉が数歩よろめき、その隙を突いて稲妻が飛び込む。

 しかし、それを見越していたかのようにニヤリと笑うと、下げていた大鎌を下から切り上げようと腕を上げる。

 

「────哀しい。野猪のように突撃していく卿の短絡さが哀しい」

 

 そんな声と共に竪琴のような音が聞こえてくる。と思えば、敵に向かって無数の斬擊が降り注いでいる。

 

「私は哀しい……マスターを置いていくのはどうかと思いますよ」

「うっせぇ! てかそれより外してんじゃねぇかトリ野郎!」

 

 敵が目の前にいるというのに堂々とケンカをし始める二人。さも長年の付き合いのように言い合う二人に対して、雷速が唖然としていると、

 

「大丈夫? 間に合って良かった」

 

 そう声をかけられた方へ顔を向けると────────《令呪》を持った少年がいた。

 

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