【完結済】Fate/Grand Order 煉獄魔境大罪記ゲヘナ/虚ろなる煉獄の聖杯【長編版】 作:朝霧=Uroboross
『エキドナ』
ギリシャ神話におけるティアマト的存在。ただしこちらは魔獣の母であり、向こうは神々の母。
ネメアの獅子、ケルベロス、ヒュドラといった有名な怪物達の母。蛇の胴体を持ち、翼を生やした美女。ラミアとは似て非なるものであり、どちらかと言うと〈竜〉の分類。
神話における死後、煉獄にて過ごす。ゲーム上でのクラスは〈ライダー〉。
血走った、まるで自我がないかのような目をする巨大な蛇の女性に、リリスの目は愕然と見開かれていた。
この巨大な敵の正体を知ってるであろう反応をするリリス。だが、ここは戦地であり、茫然としているリリスを、立香は我に返すことを含めて大声を上げる。
「リリス!」
「──ッ!」
立香の上げた大声に、体を小さく跳ねさせて我に返るリリス。
だが、そんな彼女を撥ね飛ばすかのように、その巨体から放たれる薙ぎ払う尾が迫り来る。
「■■■■■■ー!!」
当たる寸前、ヘラクレスがリリスの前に立ち、その尾を石斧で受け止める。多少下がりはしたものの、その場に留まり攻撃を防ぎきる。
唖然とするリリスに、ヘラクレスは顔を少し向けると、小さく頷く。ハッとするリリスは、すぐさまその目を鋭くし、かつての狂える友を見据える。
「エキドナ、ですか……。その名、久々に耳にしましたね」
「■■■■……」
いつもの優しげな顔を引っ込め、真剣に、そして完全に臨戦体勢に入っているケイローン。そして眉を寄せながら、その巨体を見上げるヘラクレス。
『Aaaaaaaaarrrrrrrr────―!!』
「これが、あのエキドナですか……。当時より随分とヒステリックになっていますね」
「おかしい……。私が居た頃よりも随分と狂化している」
同じく怪物として恐れられたメデューサとゴルゴーンが、エキドナの違和感に気付く。彼女達の認識では、エキドナは確かにヒステリックを起こしやすくはあったが、それも子を殺され続ければを考えれば妥当なところ。
しかし、今目の前にいるエキドナは、まるで復讐に狂っているかのようで、何かに恐れているようにも見てとれる。
「────おっ?そこに気付く辺り、流石はギリシャ神話の怪物さん達だネェ?」
「「ッ!?」」
この混沌とした場に似つかわしくない、朗らかな声が背後より聞こえる。咄嗟に手に持つ鎌と蠢く蛇をもってして背後を裂く。
しかしヒラリと避けられ、曲芸師のような見事な空中捻り回転を決めたのは、白黒のピエロのような仮面の男────アザゼルであった。
「ひゃぁー、怖い怖い。もうちょっと穏便に行こうよー」
「どの口がいいますか外道」
油断なく鎖鎌を構えるメデューサと、蛇の鎌首をアザゼルに向け続けて威嚇させているゴルゴーン。更にはアザゼルの登場に気付いた面々が、警戒態勢を限にまで上げていた。
それでもなおおどけるようにフラフラとするアザゼル。それはまるで挑発しているようであり、ふざけているようでもあり、嘲笑っているかのようでもあった。
「ンッフフー、やだねぇヤダヤダ。怖い人ばーっか。せっかくイイコト教えてあげようと思ったのに~」
「……何の用だ」
鋭い目線でアザゼルを睨む立香。今まで出会ったいかなる敵よりも悪辣で、猟奇的で、快楽主義者であるということを、立香は今まだの行動から解っていた。
アザゼルは、その仮面の中の口角を、笑みを浮かべるかのように引き吊り上がらせ、その濁った瞳孔に恍惚を滲ませながらに口を開く。
「彼女にはネェ~……キミ達への憎悪をたぁーっぷり入れ込んだのサ。それこそ、魂が崩壊するほどに、ネ」
「なっ!?そんなことをしたらエキドナは!!」
驚き、そして何とおぞましいものを見るかのように、声を上げて叫ぶリリス。その声を聞いたアザゼルは、愉悦感たっぶりにクスクスと嗤う。
まるでそれは、他人の魂を、存在を、オモチャであるかのように容易く弄り、壊し、いらなくなれば棄てる。まさしく外道の如き所業であった。
「アハァ♪ま、せいぜい楽しんで
言うだけ言って転移して去っていくアザゼル。残されたのは未だ気が狂ったように暴れ続けるエキドナと、何かすることもなく、去るのを見つめていた立香達のみ。
遠方では、未だに悪魔の軍勢とぶつかり合う仲間達。立香はただ俯いて、歯を食い縛るだけしかできなった。
「先輩……」
心配そうに声をかけてくるマシュの声。どうにか声を上げようとする立香。
そんな立香の肩に手がのせられる。それにつられて顔を向けると、立香を落ち着かせるような穏やかな表情のケイローンがいた。
「あっ、先生……」
「マスター、彼のことは後回しです。そして、エキドナのことは我々にお任せを」
そう言うケイローンの後ろには、ヘラクレスを始めとして、アキレウス、アタランテ、メデューサ、ゴルゴーンなどと言った、ギリシャに謂れのあるサーヴァント達が集っていた。
「我々ならばエキドナのことを知っていますので、幾ばくかの対処はできます。なので、その間にマスターは元凶の元へと向かって下さい」
「でも……っ」
立香は思うように言葉が出ず、詰まらせてしまう。
それに優しく微笑み、立香の目を見てケイローンは語る。
「いいですかマスター。エキドナは本来我々ギリシャの者達が生んだもの。であれば、我々がその相手をすることは道理に敵っているのです。何より、同郷のものがこうなっているというのに、それに何もしないのは我々としても心苦しいのです。ですからお願いです、マスター」
「…………解った。ここを、エキドナをお願いします。ケイローン先生、皆」
その立香の返答に、ケイローン達はただ静かに、しかし力強く頷き返す。
そして、立香はマシュや同行する者達を連れてバベルの街へと入っていく。リリスはそれに追随し、ケイローンとすれ違う瞬間、目線で意思を伝え、対して黙って頷くケイローン。
「さて、では行きますよ、皆さん」
「「「おう(はい)!」」」
アザゼルは愉悦部。
Q,アザゼル君は何したのー?
A,煉獄内に渦巻く怨念やら憎悪やらを、エキドナの魂に入☆魂し続けたのー。さらに耳元でエキドナさんのトラウマを刺激し続けて精神も破☆壊したのー。
正直言ってゲスいやり方なのー☆
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