【完結済】Fate/Grand Order 煉獄魔境大罪記ゲヘナ/虚ろなる煉獄の聖杯【長編版】   作:朝霧=Uroboross

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長いよ長いよ、長くなったよぉ(´д`;;)


1-5 会敵

 〈十九世紀 ロンドン? 〉

 

 立香達は異常があった、かつて第四特異点の舞台ともなった十九世紀のロンドンの街へと降り立つ。しかし、違和感を感じて不思議に思う。なぜなら────

 

「…………先輩、この街に、人の住んでいるような気配がありません」

 

 そう、人の気配が全くしないのである。辺りを見渡して人影を探すも、その欠片一つとして見当たらないのだ。不思議というよりも、どこか怪しむ立香。

 ふと、カルデアから通信デバイスに連絡が入る。

 

『おーい? 繋がってるー?』

「あっ、繋がってるよ」

「はい、大丈夫です」

 

 立香とマシュが、デバイスから流れるダ・ヴィンチの声に返事を返す。第四特異点のような霧がないとは言え、通信が繋がらない場合があるというのは事前に聞いていたことだ。無事に繋がり、安堵する二人。

 

「おい、早く行く先教えろよ。じれってぇな」

 

 鎧を鳴らしながら足踏みして、苛立ちを隠そうともせず露にしているのはモードレッドである。

 その横で、竪琴の様な弓を持った男、トリスタンがモードレッドにやや呆れたように言う。

 

「私は哀しい……。忍耐も騎士として必要ですよ、モードレッド卿」

「うるせぇ、テメェに忍耐どうこう言われたくねぇよトリ野郎」

 

 威嚇するようにトリスタンを睨み付けて言い返すモードレッド。そんな様子に後ろでやれやれとばかりに肩をすくめながら首を振っているのはジキルである。

 

「はぁ……全く、どうしてこうも噛みつくかな……」

「うー?」

 

 そんなジキルに、心配しているかのような反応を見せるフランケンシュタイン。

 レイシフトする前にダ・ヴィンチから許可が下ろされた同行者。立香が選んだのはマシュを含めるこの五人だった。

 

『はいはい、じれったいのは分かったよー。じゃあそこから北西にしばらく行ったところでどうやら戦闘中らしいから、まずはそこへ向かってくれる?』

「了解!」

「安全第一ですね、先輩」

 

 二人がそう返事をすると、デバイスから満足そうな雰囲気が流れ、その後に通信が切れる。

 立香達は小走りながらも、その戦闘中の場所へと向かっていく。

 

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 ・

 

 立香達がダ・ヴィンチから教えられた方向へと向かっていると、その先には噴水広場のような開けた場所があった。

 そして広場へとあと少しというところで、突然モードレッドの目が鋭くなる。

 

「────悪ぃマスター、先行くぞっ!」

 

 剣呑な空気を帯びて立香にそう告げると、赤雷を纏って駆け出していく。あまりに突然の行動であった為に、立香は返事することさえできなかった。が、慌てて指示を出していく。

 

「ト、トリスタンっ。モードレッドをお願いっ」

「御意に(イエス,マイ マスター)」

 

 立香の指示にトリスタンが頷くと、飛び上がって屋根伝いにモードレッドを追いかける。

 トリスタンはあの一瞬の間にモードレッドがどこへ向かったかというのをしっかりと判っていた。なぜなら、向かった先には〈アサシン〉らしき気配と、曰く形容し難い妖しい気配がぶつかっていたからだ。

 

「────オォ、ルァッ!!」

 

 モードレッドの叫びが聴こえる。小さなため息を吐きながら、トリスタンはその後少ししてモードレッドに追い付く。

 

「はぁ……哀しい。野猪のように突撃していく卿の短絡さが哀しい」

 

 弓に張られた弦を爪弾く。するとそこから無数の斬擊が矢のように、雨のように妖しい気配の元へと飛んで行く。しかし、その全てが避けられていることに、トリスタンは驚く。

 ──────ふむ……これは少々不味いでしょうか────そう思い、モードレッドと合流する。

 

「私は哀しい……マスターを置いていくのはどうかと思いますよ、(サー)

「うっせぇ! てかそれより外してんじゃねぇかトリ野郎!」

 

 モードレッドの怒号が隣に聴こえる。とは言え本人も力量差を感じ、本気で突っかかるつもりではない様子。

 ふと、後ろからマスタ────藤丸立香の気配を感じる。どうやら、背後の〈アサシン〉に手を差しのべているようだ。

 ────……いささかどうやって登ったのか気になりますね────そんな関係のないことを思い、自らの緊張感を多少なりとも和らげる。そうでもしなくては勝てない相手だと、トリスタンは悟っているからだ。

 弓を握り直し、相手を注意する。かなりの強敵であろう相手に、トリスタンは目が見えないことを焦れていた──────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────立香達はトリスタンが去った後、自分達も追おうとしていた。だが、トリスタン達が向かったのは屋根の上。

 

「どうする? 立香君、上へ行くならどうにかして道を────」

 

 そうジキルがいいかけた時、不意にフランケンシュタインがジキルと立香を抱え込んでくる

 

「うぅ――っ!!」

「うわわっ!?」

「うわぁっ!? ど、どうしたんだい!?」

 

 慌てふためく二人を、どこふく風とばかりに無視して跳び上がる。気付けば三人は屋根の上に立っていた。フランケンが二人に抱え、屋根の上へと跳び登ったのである。

 

「あ、ありがとうフラン……」

「し、心臓に悪い…………」

「うー?」

 

 唐突すぎてぐったりしかけている二人に、どうしたのと言わんばかりに首を傾げるフランケンシュタイン。

 なんとか気を持ち直してトリスタン達の元へと向かう立香達。すると、丁度トリスタンが弦を爪弾き、攻撃を加えてる場面に出た。その隣には膝を突いている〈アサシン〉────ハサンの姿があった。

 立香はそのハサンへと駆け寄り、手を差しのべる。

 

「大丈夫? 間に合って良かった」

 

 立香のその言葉に、ハサンは顔を上げる。表情は仮面をしていてわからないが、驚いているということはわかった。

 少しして、ハサンが立香の手をとる。

 

「あ、あぁ…………助かった、礼を言う……」

 

 少しよろめきながらも立ち上がり、そして視線を反らす。その視線を追って見ると、それはモードレッドが戦っている黒コートの男を見ていた。

 

「あれ……サーヴァント、だよね?」

「はぁ、はぁ……お、追い付きました、先輩。もう既に戦闘中でしたか」

 

 立香のぼやきに被せるようにマシュが遅れてやってくる。軽く息切れをしているが、立香はどうやって屋根まで登ってきたのかが気になった。だが、それを問うよりも、

 

「…………あれは、恐らく〈バーサーカー〉のサーヴァントだ。確証はないがな」

 

 と、ハサンが立香のぼやきに答える。それに答えるようにしてデバイスが鳴る。

 

『〈バーサーカー〉だって? あんなサーヴァント、カルデアの記録にないぞ?』

 

 デバイスから鳴るダ・ヴィンチの声、が訝しげそうに言う。カルデアの記録にないということは、未確認のサーヴァントか、もしくはカルデアが記録を採った後にサーヴァントになった者か、ということになる。

 立香が考えこんでいると、不意に黒コートの男がこちらを向いた気がした────と同時に、目の前に無数の短剣が現れる。

 

「────────えっ?」

「っ! 先輩、危ないっ!」

 

 咄嗟にマシュが盾を構えて短剣を弾き、事なきを得たが、もう少し遅れていれば立香の体が針山のようになるところであった。

 

「チィ! んにゃろぉっ!!」

 

 モードレッドが力任せに横薙ぎに剣を振り、男を弾き飛ばす。男は空中で綺麗に回転しながら、着地の瞬間にステップを踏むようにして体勢を整える。

 

「マスター! 離れてろ! コイツ、マスター狙ってんぞ!」

 

 歯噛みしながら相手を睨み付けつつ、立香にそう伝えるモードレッド。注視している相手はトリスタンの攻撃を難なくかわし続けている。

 攻撃の手が止み、互いに距離を取り合う。ふと、男が立香のことを見て口を開く。

 

「…………はァン? テメェがカルデアってとこのマスターだな?」

 

 得心が言ったように、口元に笑みを浮かべる男。

 カルデアを知っている。つまり、男はクリプター側のサーヴァントなのかと立香は思い、口にする。

 

「……そうだ。君は……クリプターのサーヴァントなのか?」

 

 立香の質問、と言うよりも返答に「ハッ」と鼻で笑う男。その眼をよく見ると、右眼が青く左眼が赤いオッドアイだった。

 

「バカ正直に答えるたァ…………テメェ、さては相当のお人好しだな? もしくは相当のバカか。ま、いいさ」

 

 そこまで言うと、右手に持っていた大鎌を振り回して地面(屋根)に突き刺し、片足を乗せて嘲笑うかのような目を向けると、

 

「クリプターだかコラプターだか知らねぇがオレ様には関係ねぇな。よく聞いとけ────────オレ様の名は〈マモン〉!! 《七大罪》の魔王が一人、『強欲』のマモン様だ! 覚えとけ、ニンゲン」

 

 そう高らかに名乗り上げ、立香に向かって指を指す。マモンという名、そして七大罪(強欲)という二ッ名。それはただ一つの答えを指し示す。そう──────敵は、かの《大悪魔》である。

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