受けループ使いがジムチャレンジをするのは間違っているだろうか 作:zetta
野生のポケモン、道端のトレーナーとの戦闘を終えて、俺は今ジムチャレンジ開会式の会場であるエンジンシティに来ている。特にワイルドエリアを抜けるのは滅茶苦茶に大変だった。周りには他のトレーナーも居たため
手の内をさらすまいと、ドヒドイデだけで攻略したのが間違いだった。
やっとのことでエントリーを済ましてジムを出ようとしているところだったのだが、
「しかもよ、、」
「お、そこにいるのはレイジか?お前も今到着かよ!俺らよりもあんなに早く出て行ったのに。驚いたぞ!」
「結構早い再会だったね!レイジ!」
「ユウリにホップか。のろくて悪かったな。そりゃ会うさ、明日開会式なんだからな」
もう少し早くついてホテルで休んでいれば、こいつらと接触せずに済んだのだが。
「あのな、レイジ。俺この前のバトルで分かったぞ。俺が軽々しく言っていた、チャンピオンになるって事は俺の思っている、何倍も難しいことだったんだな!しかも、俺が不甲斐ないせいで一度はサルノリにも嫌われちまった。でも、ここまでの道のりでサルノリと心を通わせてまた一つ強くなれたぞ!これもお前がくれた、きせきのタネのおかげだぞ!あれは、「こんな所でへこたれるな。早く上に上がってこい」って事だよな!」
う、うぜぇ。そう言うのは心の中にしまっとくもんだろ。俺のマネまでしやがって。ポップにいじられること以上にこの世で屈辱的な事があるだろうか?
「つ、つまり 何が言いたいんだ」
「レイジ!これからバトルだぞ!」
「断る」
「なんでだよ!」
お前こそ、いつも驚いた時にそのおかしなポーズとるのなんでだよ。
「普通に疲れたからだ。明日は開会式だろ、英気を養え。それにお前とはつい最近やったばかりだろう。今のお前に戦う価値はないな」
「じゃあ私は?」
「ユウリとは、ここで戦わなくてもいずれ戦うだろう。」
「へー私が怖いのかな?」
「ああ、怖いよ。お前は強いからな戦略も心の強さも、認めている。そんなにバトルがしたいならポップとすれば良いんじゃないか。今日は本当に疲れているんだ。勘弁してくれ」
「み、認めてくれてるんだ。ありがと!レイジ!」
「ユウリとは、もう何回もバトルしてるぞぉ」
「で、どうなんだ?」
「俺の全敗。自信なくすぞ!」
「だろうな」
「おい!」
「はぁ、おいポップ。俺とやりたいならその失った自信とやらを取り返してからこい。じゃあな。俺は一足先にホテルに行ってる。お前らはせっかくエンジンシティに来たんだから、ブティックにでも行って来な」
ブティックと言った瞬間、ユウリの瞳は光輝き、ポップの目から、ハイライトが消えたことで、少し気が晴れた。
○
「たしか、ココだよな。ホテルスボミーインってのは」
ホテルに入るとエントランスへは、二つの階段があり、その中央にはかつて世界を救ったとされる英雄の像が鎮座している。本来ならこの像が一番目立っていなくてはならないホテル内だか、一番目立っていたのは受付の前に居座っている見るからに柄の悪い集団だった。
「あの、イタイ服装、、、もしかして」
あの集団に少しばかり心当たりがあったので近くにいたジムチャレンジャーに何があったのか、話を聞いてみることにした。
「おい、何があったんだ?」
「まいったよ。あの、いかつい集団がチェックインしようとすると邪魔をしてくるんだ」
「はぁ、相変わらずだな」
「おい!お前どこ行くんだよ!?まさかアイツらとやり合うのか?」
そんなはずはない。生憎、俺は疲れているんだ。ああいう奴らは頭が弱い奴が多いからな。言って聞かせるのが一番だ。受付に陣取っている集団のリーダーとおぼわしき人物に話しかける。
「おい、お前ら」
「ん?なんだ?私たちは田舎から遥々あるトレーナの応援のため都会にやってきたeー」
「もういい、みなまで言うな。エール団だろ?誰の応援だ?毎年ネズさんは、絶対に開会式には来ない。ネズさんでは無いとすると、、今年参加してるって言っていたネズさんの妹さんか?」
「何で知っているんだ?!お前?私たちはマリィー」
「だから、もういいって。それで、こんなことしてるのか?」
「その通りだ。こうして他のチャレンジャーのチェックインを邪魔すれば、マリィがチャンピオンになるのに有利に働くだろ。邪魔をするならポケモン勝負だ!」
その方法だと解決するには確実だか、手の内を晒しかねないし何より今日は疲れている。ポケモンバトルなど、愚の骨頂だ。
「あのさ、お前達の応援しているマリィってのはお前らがこうして手助けしてやらないと勝てないような脆弱な奴なのか?」
「ち、違う!そんな訳ないだろ!マリィはー」
「それに、そいつはお前たちが汚い手を使って自分がチャンピオンになれたとして、本当に心から喜べると思うか?」
「そ、それは、、、」
「悪いことは言わないからやめておけ。ネズさんの妹なんだろ?大丈夫だ。それにお前達の応援の気持ちは十分伝わってるよ」
「そうかぁ・・・?そうなのかぁ」
エール団が俯きながら何かをぶつぶつ唱え始めると、剃り込み入りの黒髪ツインテールに緑色の目、ピンク色のワンピースに黒のスタッズジャケット、足元はスパイク状のヒールという、パンク系ファッションに身を包んだ少女がこちらへ駆けてきた。マリィっていうのは見るからにこいつの事だろう。
「みんな なにしてんの?」
「マリィ!?いや あの ちょっと・・・」
「あんたたちが ジムチャレンジャーを気にするのは、わかるけどちょっとばかり 手荒すぎるって! ゴメン! エール団はあたしの応援団なんだけどみんな浮かれてるみたい・・・ほらみんな、帰って 帰って」
驚きを隠せないエール団はトボトボと重い足取りで帰って行った。
「あたしの 応援に 夢中で他の ジムチャレンジャーには刺々しい 態度になってるの不愉快な思いさせたら ゴメンね」
「ああ、それじゃあ、俺はこれで」
「まって!皆、良かれて思うてあたしんこと応援してくれとーけんなかなか言えんかったんや。やけん、あたしん気持ちば代弁してくれてうれしかった。ありがとう!・・・あ!」
訛ってる?兄であるネズさんは訛っていなかったはずだが、、、。
「あたし、またやってしもうたぁ・・・言葉が、、、出ちゃうんだよね。田舎者だって思われたかな、、、?」
「おい、俺がしたことは気持ちを代弁なんてそんな大それたことじゃない。ただバトルするのが億劫になっていたから諭してやり過ごしただけだ。もういいか?」
「だから待ってよ。あたしが感謝しているんだからそれでいいでしょ。何かお礼がしたいな・・・そうだ!この後時間ある?バトルカフェいこ。勿論私がおごるから。どうやらアニキの事知ってるみたいだしゆっくり話がしたいな。」
「はぁ、、新手のナンパか?」
すると、マリィは切長のクールな瞳を目一杯見開いた。
「はぁ!?そんなんじゃなか!!」
「じゃ、なんなんだよ」
「別に、、あたしはただ、、」
なんだかよく分からないが、とにかく俺はコイツとは関われない。今日は疲れていると言うのもあるが、俺が最も懸念している点は別にある。
コイツの兄、現スパイクタウンのジムリーダーであり、父さんの教え子であったネズさんは控えめに言ってシスコンである。つまりネズさんは俺の兄弟子の様なものなので、今こいつとカフェなんか行ったら次ネズさんにあった時に殺されかねない。
「じゃ、じゃあ、あたしとポケモンバトルしてよ!あんたが勝ったらその時は大人しく諦めるから!」
「それ、カフェいくよりダルいって話するか?」
「えーでも、あたしもうバトルしたい気分になっちゃったんだけど。もうカフェ行っても行かなくてもバトルするまで返さないから」
はぁ、、どうしてどいつもこいつもバトルジャンキーなんだ。まぁいいかバトルくらいならネズさんもトレーナー同士のコミュニケーションの一環として許容してくれるだろう。それにコイツがネズさんの妹ならかなりの有力株と言うことになる。力量を見ておくのも悪くないだろう。
「仕方ない。お互い手持ち1匹のルールで人気の少ない場所でならやってやるよ」
なるべく早く終わらせたいし、手持ちも技も見られたくないので条件としてはこんなもんだろう。
「よし、そう来なくっちゃね」
マリィの瞳に映る静かな闘志が、彼女の兄を彷彿とさせた。