8月後半のある日だった。
「ホッホホ!やはり、日本人は美人な女が多いの!」
日本と和平を結びたいオーディンは付き人にヴァルキリーのロスヴァイセという女性を連れて、日本にやって来ていた。だが、オーディンは日本が大好きのようで、観光もしたいようなのだ。
オーディンが日本政府に要求した観光名所はキャバクラ、おっパブ、風俗、等々の何処から見ても健全な場所ではない。当然ながら、オーディンの好みな観光希望は全て却下されたのだ。
彼等が今居るのは日本上空。そこを眼下に町並みが見える程度の高度で空を飛ぶ馬車に乗って観光しているのだ。この空を飛ぶ馬車はオーディンの私物であり、空を飛べる分新幹線や車を使うよりも距離と時間を短縮できるので便利である。
「しかし…風俗やキャバクラに行けないのは残念じゃ」
オーディンはそう言うと向かい合うように座っている2人の人間を見る。その人間は日本政府の代表である神津総理、そして神津総理の護衛を任されたエンマである。だが、エンマの服装は上忍の忍び装束の上から白い羽織を羽織っており、その背中には『火影』の2文字が描かれていた。
「当然です」
オーディンの希望であるキャバクラへの接待をバッサリと切り捨てるように言う神津。
「所で…火影とは何ですか?」
ふと、オーディンの付き人であるロスヴァイセがそう言った。そう、エンマの羽織に書かれた火影の事だ。元と言えば原作ナルトで火の国にある木ノ葉隠れの忍の長を火影と称する。火の国最強の忍であり、火の国を護る影だからこそ火影なのだ。
だが、エンマが着ているこれはコスプレではない。何故なら、エンマは正式に火影に成ったのだ。
「これは失礼。改めて日ノ本を護る影、日ノ本最強の戦士(存命及び人間)として火影の称号を日本神話より授かりました」
エンマがそう言うと、ロスヴァイセは納得したように頷き…オーディンは顎髭を撫でる。
原作ナルトでは火の国最強の忍だったが、この日ノ本では違う。日本では日本神話と日本政府から指名される日ノ本最強の戦士に付けられる称号だ。裏側の驚異から日ノ本を護る最強の影であり、襲名されるのは人間に限定される。とは言え、エンマはぶっちゃけ人間を殆ど辞めてるがDNAでは人間の為に問題は無いだろう。
「ふむ…だがの。いくらお前さんが強くても、護衛がお前さんだけとはな。お前さんよりもワシの方が強いぞ?」
「それは恐れ入ります」
一瞬、ピクリと蟀谷辺りに怒りマークが出たエンマ。しかし、ぶちギレて「あっ?なんだ爺。そこまで言うならやってやろうじゃないか」とやれば国際問題に大きなヒビが入ってしまう。エンマはおバカだが、外交官であり立場のある火影。勿論、ふざける時とそうでない時の区別はついている。
(成長したな…エンマ。昔のお前なら、間違いなく)
そんなエンマの様子を見て安堵する神津総理。神津はエンマとは10年以上の付き合いが有るが、20代前半のエンマなら間違いなくオーディンの言葉に手が出ていただろう。
「しかし…空の護衛はこれで大丈夫なのかの?」
オーディンは馬車の窓から外を見る。空を飛ぶ馬車だが、勿論、周囲にも護衛は控えている。それはエンマが魔獣創造の力を用いて作り出した、レッドアイズ・ブラックドラゴン×4である。
レッドアイズは御存知、大人気カードゲーム 遊☆戯☆王に出てくるドラゴン族のモンスターだ。星の数的には戦闘力は低いが派生カードやサポートカードも豊富で使い方では大変強いカードである。
「御安心を。彼等が倒されたら、ラーの翼神龍を口寄せしますので」
「ふむ…まあ、期待しないでおくかの」
だが、エンマは火影に成ったとはいえ人間。オーディン達神々等の超常の存在よりは弱いと言うのが常識なのだ。
「せめて、お前さんは日本政府の首相を護る事を考えれば良い」
オーディン国王。火影の実力を知る一時間前のセリフであった。
約40分後。突如として、エンマのスマホが鳴り響く。このような場所での電話は不適切だが、ねんの為にエンマはスマホの画面を見る。通話の相手は成田空港からであり、何事かと思いエンマは通話に出る。
「もしもし?申し訳ないが…今は」
『エンマさん!!成田空港が何者かに破壊されました!』
破壊…間違いなく成田空港の職員はそう言った。
「破壊!?何が起きた!?」
まさかの事態に慌てるエンマ。勿論、エンマの言葉を聞いて神津総理やオーディン達も顔をしかめる。
成田空港には日頃から働く職員も多く、更には日本の窓口である国際空港の1つ 成田空港には常に多くの人々が利用する。その成田空港が突如として破壊されたのだ、只事では無いだろう。
「エンマ。スピーカーにしてくれ」
総理に言われ、エンマはスピーカーモードにする。すると、成田空港の職員は慌てるように告げた。
『それが…転移等で不法侵入した存在は国際空港の税関に強制転移されるんですが…』
そう、今の日本では転移等で違法入国するとパルキアの力で何処かの国際空港の税関に強制転移されるのだ。どうやら、その強制転移された不法入国者が成田空港で問題を起こしたようだ。
『その人物は北欧神話のロキと名乗り…人間ごときが神に指図するなと告げて、成田空港を破壊しました』
北欧神話…ロキ。そこから連想されるのは1人しか居ない。オーディンの弟又は息子であり、巨人ラウフェイの実子である悪戯の神 ロキである。
「無事か?被害は」
『はい…奇跡的に死者は出てません。ですが、旅客機等は殆ど壊され…損害ははかり知れません』
どうやら死人は出てないようだ。それだけで幸いだが、旅客機は勿論、成田空港の設備は殆ど壊されてしまったようだ。
「そうか。分かった。俺の木遁分身を介して、火星ゴキブリや回復魔法の使えるホイミスライム等を送ろう。それで負傷者の治療や救助を行ってくれ」
エンマはそう告げると通話を切り、日本の色んな所に居る自分の木遁分身に指令を出して火星ゴキブリと回復魔法の使えるモンスターを成田空港に送った。
「総理。ここは避難を」
「そうだな…非常事態発生だ」
成田空港がロキと名乗る何者かの腹癒せに破壊され、大損害を受けたのだ。これは只事では無い、エンマは一先ず総理とオーディンを安全な場所に避難させる事を決める。いざ、飛雷神を使おうとしたその時。
「フッハハハハ!!まさか、北欧の神とあろう物がこんな底辺の国と会談をしたいとはな!」
と…やけに高笑う声が外から聞こえ、エンマは外を確認する。外には仁王立ちで腕を組み、宙を浮かぶ男が立っていた。男の髪型はぬらりひょんのような髪型をしており、神性を感じる。
「ロキ!?一体どうして!?」
オーディンはその男を見て、ロキと言った。恐らくだが成田空港を破壊した犯人の可能性も高い。ロキを視界に入れたエンマはパルキア(常に側に木遁分身のエンマか本体が居る)の力を使い、ロキと自分達を例の採石場に転移させた。
「えっ…ここって?」
先ず、始めにそう言ったのはオーディンの付き人であるロスヴァイセだ。彼等はエンマのポケモンであるパルキアの手で、例の採石場に移動しており先頭にエンマが立ち、彼の後ろに神津総理やオーディン、それにロスヴァイセが立っていた。
そして彼等の視線の先300メートル程離れた所にはオーディン曰くのロキが立っており、ロキは興味深そうに周囲を見回す。
「此方は日本政府だ、質問に答えてもらう。成田空港を破壊したのはお前だな?」
言葉に魔力を乗せて遠くまで響くようにしてエンマはそう問う。その言葉を聞いてロキはニヤリと笑みを浮かべて告げた。
「破壊?ふっ、笑わせるな人間。2度はないぞ?幾ら神であり、寛大な私でも限度は有る。
私はあの空港の職員達に躾をしただけだ。態度が気に食わんかったのでな…まあ、下々の人間など死んでも問題は無かろうよ」
当然と言いたげに告げたロキ。どうやら、ロキは破壊ではなく躾のつもりで成田空港を破壊したようだ。
「躾か?」
「そうだ。躾だ。何がパスポートを見せろだ、何がビザだ。この私を知らぬではこの国も終わってよう。
貴様に用は無いぞ、人間。私はオーディンに用が有るのだ。オーディン!!貴様…様々な国と和平を結び、更にはこの弱小国とも和平を結ぼうと言うのか!!」
オーディンに向けてロキは怒るようにそう言った。どうやらロキはオーディンが様々な先進国は勿論、聖書を含めた様々な神話と和平を結んだ事を良く思って居ないようだ。
「そうじゃよ。このままでは日本は禍の団の手で滅ぼされてしまう。ワシはそれを防ぐために、アザゼルやミカエル達の力に成るためにも日本と和平を結ぶつもりじゃ!!」
「笑止!!ならば…今此処で、貴様を殺して黄昏を始めよう!!そして、この国を滅ぼして本当の神とは誰なのかを、この世界に刻んでやるわ!!」
どうやら、ロキはオーディンを殺し、更には日本を滅ぼすつもりのようだ。その手始めなのか、ロキは指を鳴らして自分の僕を召喚する。
先ずは大きな白い狼、そしてその狼の子供と思われる2匹の狼だ。
「あれは…ロキの子フェンリル!!それに、フェンリルの子供スコルとハティ!!」
ロスヴァイセが驚くように告げる。そう、その狼は神話でもトップレベルで有名な狼 神殺しの異名を持つ獣 フェンリルとその子供だったのだ。
「未々居るぞ!私が量産した、ヨルムンガンドのクローン達だ」
今度現れたのは100を越える余りにも巨大すぎる大蛇の群。数は軽く100を越えており、大きさもその全てが50メートルを越えているだろう。
「ひゃゃゃゃゃ!!無力な人間どもに、誰が真の神なのかを今こそ知らしめてやるわ!!」
高らかに叫ぶロキ。しかし、エンマは決心するように瞳を一度閉じて、再び開く。すると、エンマの顔には隈取りが瞬時に描かれたのだ。
「分かった。火影の名に誓い、日本に危害を加える存在を此処で滅ぼす」
「いけぇぇぇ!!フェンリルにスコル、ハティ!!オーディンと人間を食い殺せ!!女のヴァルキリーは犯せ!!」
迫り来る神殺しの狼達。
「グルルル!!」
――仙法木遁
「「グルルルガァァ!!」」
――真数千手
刹那、物凄い勢いでフェンリルとその子供達はエンマ達の後方に吹き飛び…手足の骨がバキバキに砕け、背骨もグチャグチャに成っている。なんとか生きているのがやっとだ。生きてるのが奇跡と言っても良いだろう。
だが、ロキからはフェンリルとその子供がどうなったのかは分からない。何故ならロキの視線の先にはオーディン、ロスヴァイセ、神津総理を護るように立ち尽くす余りにも…そう、余りにも巨大すぎる木遁で作られた千手観音が立っていたのだ。
「なんだ…」
ロキは理解できない。
「なんなんだ…」
当然だ。
「なんなんだ…ソイツは!?」
この千手観音 真数千手は一瞬でエンマが木遁を使い作り出し、目に見えないほどの速度でフェンリル親子を倒したのだ。
いや、常識的に考えても真数千手はロキには理解出来なかった。先ず、その大きさだがウルトラマン処かゴジラを越えておりそこら辺の山すら見下ろす程である。
その全長は軽く見て1500メートル、1キロと500メートルよりも高いのだ。それをたった1人の男が忍術で一瞬で作り出したのだ。そんな事は神々でも不可能である。
すると…真数千手は背部に有る千を越える拳の内、数十を振り上げる。振り上げた拳は解き放つだけであり、流星の如く降り注ぐ数十の拳は木遁の特性を持って伸び…一瞬でヨルムンガンドのクローン達を赤い染みに変えてしまった。早い話、神速で迫り来る拳の密集した壁で殴り潰されてしまったのである。
「嘘だろ……動くのか!?動くのか!?そんな…バカな!!」
それがロキの最期の言葉と成った。ロキは転移で逃走しようとしたが、パルキアの権能で転移が使えず逃げられない。自棄糞に成ったロキは真数千手目掛けて魔法(魔術)で攻撃するが、ダメージよりも回復が上回り真数千手にダメージを与えられない。
「ロキィィィィ!!」
だが、オーディンに取ってはロキは可愛い弟。オーディンは立場を忘れ、背後から真数千手の頭部に立つエンマ目掛けて…神槍グングニルからビームを撃って攻撃する。
ここでエンマをなんとかしなければ、ロキはエンマに殺されてしまう。だが、無情にも真数千手は数多の腕の一本を使い、グングニルのビームをハエを叩き落とすように払い落とした。
「あっ…」
ギロリと写輪眼を発動させた瞳でオーディンを睨み付けるエンマ。だが、エンマにはやることが有る。それはロキを、日本を滅ぼそうとしたテロリスト ロキを王子だろうが神だろうがなんだろうが、この場で殺すことである。
「頂上化仏!!」
真数千手の持つ全ての拳が振り上げられ、千を越える大質量の拳がロキに迫る。逃げられない、逃げることは不可能、ロキは呻き声を挙げる暇もなく…何千物拳を受けて塵に変わってしまった。その後は大地が抉れ、僅かな赤い染みが残っていただけである。
「オーディン国王。先程の攻撃はなんでしょうか?エンマを確実に狙いましたよね?
ロキは日本を滅ぼすテロリスト…本人がそう言いましたし成田空港を破壊しましたしね。そのテロリストを庇われるおつもりですか?」
ロキが死に、呆然とするオーディンに向けて神津総理が冷徹にも話しかける。
「確かにロキは其方の王族で神でしょう、其方ではどんな事をしても許されるかも知れません。しかし、日本では神だろうと人外だろうと人として扱う事がすでに法律で決まってます。テロリストを庇われる意味をお分かりですね?」
――弟を助けて何が悪い!!それに神だぞ!人間とは違うのだ!!
とオーディンは叫びたかったが、言えなかった。言えば今の段階で只でさえ不味い立場が更に不味くなる。
「成田空港の損害、被害者の医療費。全て其方で負担していただく。既に成田空港の事は北欧の各国にも届いているでしょう。
勿論、それ以外にも責任は取って頂きます。それに、日本が和平を必要としない意味を理解できましたか?」
オーディンは弟を失い、頷くことしか出来なかった。まさか、たった1人の人間の手でロキが死ぬとは思わなかった為だ。いや、死ぬだけ未だ良かっただろう。世の中には宇宙を漂うヤツ、岩と合体したヤツとか死ぬよりも悲惨な目に逢ったヤツが居るのだから。
北欧神話と北欧各国が日本に払った賠償が以下である。
成田空港の被害額全額(破壊された旅客機含む)軽く千億は越える。
ロキの襲撃で怪我をした人達の医療費全額。
フェンリル親子を日本政府及び日本神話に譲渡。更にヴァルキリー姉妹13人無期限出向。
そしてエンマの気分で、毎月アスガルド城にシュールストレミング100箱(勿論、代引き)である。
因みにヴァルキリー姉妹全員だが、有給使える週休2日、福利厚生充実という日本社会の恩恵を受けて大変喜んでいる模様。
因みにロスヴァイセさん(ハイD)、ブリュンヒルデお姉さま(fate)、フリストお姉さま(終末のワルキューレ)、末っ子ゲル(終末のワルキューレ)、オルトリンデ&スールズ&ヒルド(fate)で行く予定です。