メタボなおっさん改めて黒のセイバーのマスター、ゴルド・ムジーク・ユグドミレニアに連れられた一誠は黒の陣営の本拠地にやって来た。
「随分と大きな城ですね。ゴルドさんの家ですか?」
「いや、私の家ではないぞ。ユグドミレニア家の本拠であり、ユグドミレニア当主のダーニック様の所有物だ。さあ、入ってくれ」
黒の陣営の本拠地は大きな城 ミレニア城。昔から存在する城であり、トリファスの名物だ。トリファスを管理してるのがユグドミレニア一族であり、魔術協会からの派遣チームである赤の陣営は敵地であるトリファスで黒の陣営と戦う訳だ。
地の利は断然黒の陣営に有ると言えるだろう。だが、一誠の把握してる限りで黒のサーヴァントはジークフリートとヘラクレス。赤のサーヴァントはモードレッド、トール、カルナ。いくら地の利が有るとは言え、相手は魔術協会…カルナやトールに匹敵する英霊を間違いなく用意してるだろう。
「正直に答えて…勝てる算段は有ります?」
「地の利は我々に有る。それに、ダーニック様のサーヴァントはルーマニアでの知名度は高く、指定した領土で有れば絶大な力を発揮できるんだ」
どうやら、黒の陣営の代表とも言えるダーニックという男は地の利を絶大に活かせるサーヴァントを召喚したようだ。
「ルーマニア?もしかして、ヴラド三世ですか?ルーマニアって言ったら彼ですし」
「そうだ」
ヴラド三世。ルーマニアの英雄であり、吸血鬼伝説のモデルと成った人物だ。領主であり、知名度としての補正も得られるなら彼も一騎当千の大英雄と互角に戦えるだろう。
だが、知名度が高いと言う事はそれだけ真名が分かりやすいと言う事だ。勿論、ヴラド三世は吸血鬼ではなく生粋の人間であり太陽の光や水銀にニンニクには強い。
しかし、サーヴァントには宝具と呼ばれる必殺技が有るのだ。カルナやジークフリートのように武具として持っている物や、逸話が能力として昇華した宝具も存在する。ルーマニアでヴラド三世の事は直ぐに分かるので、有るとすれば敵兵を串刺しにした逸話等だろう。知名度が高ければその分、能力も推測されやすいのだ。
一誠がヴラド三世に付いて考えながら、ゴルドに着いてミレニア城の中に入る。中は豪華絢爛で広く、中では召使いのような服装をした人らしき人物達が多く働いていた。ハルバートや弓を持つ衛兵のような役割をする人、メイドのような仕事をする人など様々だ。
だが、一誠はエンマとの修行で得た特殊能力で、見抜いた。彼等は全員が人間ではなく、人工生命体であるホムンクルスであると。
「彼等、ホムンクルスですよね?」
「分かるのか?あのホムンクルスは私が作ったのだ!」
ドヤっと胸を張るようにそう言ったゴルド。どうやら、あのホムンクルス達はゴルドが錬金術で作り出したホムンクルスであり、このミレニア城での警備や雑用、更には有事の際の雑兵を任されるようである。
だが、一誠はこのミレニア城の中で6つの大きな気配を感じる。1つは一誠とゴルドの後ろで霊体化を行う黒のセイバー ジークフリートであり、ジークフリートの他に5つ大きな気配を感じたのだ。
――む?サーヴァントらしき気配が6つしか無いぞ。1つはセイバー、もう1つがヘラクレスさん、ヴラド三世だとして残り3つ。でも、サーヴァントは基本七騎だよな?一騎居ないぞ。
一誠は心の中で疑問に思うが、口には出さない。もしかすれば未だ最後の一騎をユグドミレニアが召喚していないだけかも知れないのだ。
「ここだ。既に話は通してるから、君だけが行くと良い」
やがて一誠は重厚な扉の前に案内され、実体化した黒のセイバーが扉を開ける。
奥に進めと促された為に、一誠は奥に進む。
「貴様が赤き龍を宿した赤龍帝か。話はセイバーのマスターから聞いているぞ」
その声が聞こえ、周囲は明るくなる。一誠の前は一段と高くなっており、そこには王が座る玉座が有り玉座には1人のサーヴァントが座っていてサーヴァントの後ろには1人の男が控えていたのだ。
「初めまして。貴方がダーニックさんですか?」
「ダーニックは余のマスターであり、臣下だ。余はこの領地の領主 ヴラド三世。此度の聖杯戦争ではランサーのクラスで現界した」
厳格な雰囲気を出しながら、黒のランサー ヴラド三世はそう言った。どうやらヴラド三世の話が正しければ、ヴラド三世とダーニックの主従関係は逆転しており、ヴラド三世が主でダーニックが家臣と成っているようだ。
「ロード。此処からは私が彼と話しても宜しいですか?」
「構わぬダーニック」
どうやら、ヴラド三世の後ろに控えていた男性がダーニックのようだ。しかし、ダーニックの容姿は若く何処から見ても青年だ。だが、一誠は気配からダーニックの年齢を理解する。
――えっ?このダーニックさん。何処から見ても年若いけど、実年齢100歳近いじゃないか!?これが、魔術師か!?そういや、アリスさんも若いし…そう言うことか。
一誠。アリスという前例が居た為か、ダーニックの年若さを納得する。
「私がダーニック・プレストーン・ユグドミレニアだ。赤龍帝、君の事を教えてくれるかな?君の事はゴルドから聞いたが、観光でルーマニアに来て聖杯大戦に巻き込まれたのだろう。
私は君の口から改めて聞きたいんだ。良いかね?」
「はい。ゴルドさんにも言いましたけど、俺は外交官に成りたくて勉強を兼ねて観光で来ました。草原の開けた所で、赤のランサーと黒のセイバーの戦いを目撃して今に至ります」
一誠は嘘と真実を交えてダーニックに説明する。
「そうか。それは大変だったね。折角だ、何かの縁だろう。トリファスに滞在する間は此処を使って構わない。君の個室も用意しよう」
「タダって事は無いですよね?物事には代価が必要だと思いますよ」
一誠の言葉を聞いてダーニックは口角を上げる。本来ならば一誠を徐々に懐柔し、此方の戦力にしたかったダーニック。まさか、一誠から代価の事を言われるとは思わなかったのだ。
「そうだね、それではこうしよう。君は巻き込まれた人間だ、無理強いで戦う必要は無い。
だが、赤龍帝には倍加の他に譲渡と呼ばれる力も有った筈だ。君もその若さで禁手を使えるなら、良く知っているだろ?君の譲渡は可能性の塊だ。魔術礼装を作るにしても、ゴーレムを作るにしても、時間がかかる。だが、私の予想が正しければ譲渡を使えば時間が短縮出来る筈だ」
赤龍帝の力は倍加だけではない。譲渡と呼ばれ、倍加で膨れ上がったエネルギーを他者に渡す譲渡と呼ばれる力もあるのだ。譲渡の対象は広く、物質や魔術にも使うことが出来る。
「其方側から俺への代価は?これを確認しないと俺は納得できませんよ。それではまるで、悪魔の契約ですしね」
「食事付き、個室完備、私が許可した魔術の資料も自由に読んで良い、それと嫌だと言うなら何時でも出ていってくれて構わない。但し、赤の陣営に協力しないという絶対条件付きだがね。取り合えず、今日は泊まって行ったらどうかな?勿論、今日の代価は取らないよ」
そして…一誠はダーニックのお言葉に甘え、今日は泊まる事にしたのだ。
『敵襲!!敵襲だ!!』
その声が突如として響き、一誠は勿論、ダーニックと黒のランサーは臨戦態勢に突入する。
『赤のバーサーカーのマスターが沢山増えて何処から出現したぞ!!』
――イナバ!?いきなり突撃してきた!?
「バーサーカーのマスター?第6の魔法使い千手エンマの息子か!奴の目は絶対に見るな!幻術を掛けられて終わるぞ!!」
まさかの突撃のイナバ。恐らく、魔術で探知されないドローンか何かに飛雷神のマーキングを仕掛け、それで敷地内に侵入。敷地内に侵入してから更にマーキングを仕掛け、影分身軍団を送り込んで来たのだろう。
ダーニックが指示を出すが、イナバを良く知る一誠からすれば手遅れだ。
「どうしたんだい?緊急事態発生だよ?おにーさん!いや、お爺ちゃん」
その声が聞こえ、一誠は声の方を見る。そこにはダーニックの腕と頬に飛雷神のマーキングを仕掛け、ダーニックの背後から笑みを浮かべるイナバが居たのだ。
「貴様…いつの間に!?」
「飛雷神と瞬身を使えばチョチョいのちょいさ!」
そして…そのイナバはボフンと消えた。どうやら、影分身のようである。
『ハッハハ!!イナバさん完全勝利!!フィオレちゃんは学校でお世話に成ったから殺さないよ?あとフィオレちゃんが悲しむから、黒のバーサーカーのマスターは半殺しで許してあげる。
フィオレちゃん以外のマスターさんと協力者さんには飛雷神のマーキングを仕掛けたからね?何処に居ようが俺からは逃げられないよ。勿論、そのマーキングは俺が消さない限り絶対に消えないから宜しくー!!
今から1週間経過したら、順番にフィオレちゃんと黒のバーサーカーのマスター以外を1人づつ忍殺していくからね?宣言したよ?勿論、最初のターゲットはダーニックさん!貴方さ!コンティニューは出来ないよ』
何処から聞こえるイナバの声。ふと、一誠は自分の右腕を見る。そこには飛雷神のマーキングが施されていた。
火影(当時は未就任)の子供からは逃げられない。
VRではなく、現実世界での聖杯大戦でも黒の陣営は飛雷神のマーキングをされました(笑)