「おぉう…勇者よ死んでしまうとは情けない」
「生きてますよ!中断しただけですよ!!」
VR訓練を中断し、現実世界に意識を戻してきた一誠。ふと彼はVRとは言えイナバに付けられた飛雷神のマーキングが有った右腕を見る。当然ながら、現実世界での体に飛雷神のマーキングは無かった。その事に安堵した一誠は小さく、ホッとして息を吐き出すのだった。
「良かった…流石に現実世界と飛雷神のマーキングは共通してなかったか」
「む?飛雷神のマーキング。一誠、お前…黒の拠点であるミレニア城にイナバが突撃し、飛雷神のマーキングをされたのか?」
エンマの言葉を受けて一誠は驚きながら頷く。そう、一誠はミレニア城に突撃してきたイナバの手で飛雷神のマーキングを施されたのだ。飛雷神のマーキングを施されたのはフィオレ以外の黒のマスター達、序盤から絶望的な状況に追い込まれたのだから。
「あれ…実際に起きたからな。 まあ、そこで中断したなら序盤の序盤だな。
絶望は未だ始まったばかりだぞ?あの頃のイナバは今よりも荒れてたからな。俺やアリス、フィオレの制止がなかったら…怪しい奴を見付け次第に写輪眼や万華鏡で幻術をかけてたし、やりたい放題だったな」
「ですよね!!てか、コンティニューする前に万華鏡でホモ幻術喰らったら、知りましたよ!!」
「今のイナバはいきなり、写輪眼で幻術をかける事は無いから安心しろよ。今では人の話も少しは聞くように成ったし、多少は心が人間に近付いたからな」
どうやら、エンマが言うには過去のイナバは人間と言うよりも神の擬人化に近い存在だったようだ。
他人の話は一切合切聞かず、平気で写輪眼を使い、平気でホモ幻術を使う。それも完全に敵と判断する前からである。
「生まれつき写輪眼を開眼してたし、俺がアイツを保護した時、イナバは6歳だった。だが、その頃には万華鏡を開眼してたし…大変だったよ。
あれじゃ小学校にも通わせられない。通わせたら、何が起きるか分かったもんじゃ無いからな。暫く過ごして、魔眼封じの眼鏡をかけさせて小学校にも通わせたが、瞳力が現界突破を起こし、眼鏡が破損。その後はまあ、ロード・エルメロイ二世と共に時計塔を脅し、フィオレが制止係り向こうでの保護者に成って時計塔に預けたんだが…」
エンマは大きく溜め息を吐き出し…
「時計塔のロード・エルメロイ二世のパソコンでの格闘ゲーム MUGENで阿部さんを見たイナバはアッチ側に覚醒してしまった。ニコニコなんか見せたらダメだな」
「ロード・エルメロイさーーん!!なに阿部さん使ってんのーー!!」
久遠寺イナバ覚醒の原因ロード・エルメロイ二世が使っていたMUGENのキャラだった阿部さんであった。
「聖杯大戦が終ってからは、俺と日本に短期留学してきたフィオレの手でイナバを再教育。その結果、イナバは完全に敵という事を理解しないかぎりは初っぱなから万華鏡での幻術を使うことは無くなった」
「おう…序でに普通の幻術も教えてやってください」
なにはともあれ、エンマと無事に生き延びたフィオレのお陰でイナバは民間人相手には万華鏡写輪眼を使わないという最低限の自制心を身に付けたようだ。
「そういや…聖杯大戦って結局どうなりました?イナバと赤のバーサーカー、カルナ、フィオレは生き残ったのが分かりますけど」
一誠は誰が生き残ったのか、結末が気になるようだ。まあ、再現されたVRとは言え一誠はあの聖杯大戦の本当の行く末が気になるのである。
「結果から言えば、勝ち負けは無かった。
聖杯大戦を生き延びたのは黒の陣営ではフィオレ、カウレス、ゴルド、アストルフォ。ネタバレに成るが、ジークフリートの意思を継いだ少年だな。ヘラクレスは本体が生きてるけど、サーヴァントとしては消滅したからノーカン。
赤の陣営ではイナバ、トール、カルナ、赤のセイバーのマスター、赤のセイバーだけ。
後は…ルーラーだったジャンヌ・ダルクとジャンヌの依り代に成った少女か」
思いの外、少ないメンバーしか生き残らず一誠は唖然とした。ダーニックやセレニケ、それに自分よりも年下なロシェが死んでしまった為か悲しそうな顔をする。
「そうですか…ダーニックさんやロシェが」
「聖杯大戦ってのはそう言うものだ。まあ、言っとくがイナバは彼等を殺していないぞ?ダーニック達が死んだのは別の原因だ」
どうやら、イナバの殺す宣言は不発に終ったようだ。
「あと…一誠、アドバイスだが。VR訓練で聖杯大戦を再開した時、間違っても黒のアサシン ジャック・ザ・リッパーと戦うなよ?
アイツは俺と同じく頭の可笑しい神滅具保有者だ。間違いなく、ヤツは史実を見ても最強の絶霧だ」
「へ!?ジャック・ザ・リッパーってあのイギリスの殺人鬼ですよね!?神滅具を持ってたんですか!?それも絶霧!?」
神器を宿していた歴史上の人物は多いそうだ。とは言え、神器を宿していなくても歴史に名前を刻む凄い人も多い。だが、まさか世界史でも有名な殺人鬼切り裂きジャックことジャック・ザ・リッパーが神滅具 絶霧を宿していた事に一誠は驚いた。
「どんな神器も考えた方次第で、恐ろしい力を発揮する。魔術創造は俺が日頃からやってる通りだ。
では絶霧だが、物を好きな所に自在に転移できる。場所と場所を行き来する所を霧で自在に繋げる事が出来る。禁手を使うと自分の好きな空間を作る事が出来る」
絶霧の能力なら一誠も知っている。英雄派(笑)が逮捕された時にニュースで見たのだから。
「え…でもそれをどうやって攻撃に繋げるんですか?」
「宇宙空間を高速で漂う隕石を相手の真上に落とす。水圧で抑えられた深海の海水を前に解き放ち、大出力のウォーターカッターとして相手を切り裂く。マグマを相手の真下に出現させる。まあ、使い道はこんな物だ。
このお陰でダーニックは隕石でミンチ。ヘラクレスは海底海水カッターで2回死亡…残機が有るから平気だけどな。フランケンシュタインは口から侵入した霧を使い、内部からマグマで溶かされ殺された」
あと…数件、悲惨な殺され方をされたけどな。とエンマはボソッと告げた。だが、一誠には疑問が有った、それは黒のアサシンであるジャック・ザ・リッパーがどうして黒の陣営を殺したのかである。
「あの…なんで黒のアサシンが黒の陣営を?」
「それか。黒のアサシンは自分のマスターを半死半生の状態で禁手で作った亜空間に幽閉し、魔力タンクにするとイギリスに飛ぶ。その後、イギリスで目ぼしい人間を解体し、半死半生にすると同じく亜空間に幽閉して魔力タンクに生成。
その後、ルーマニアに飛んだがダーニックを隕石で抹殺。まあ、その後は好き勝手に暴れ赤のアサシンのマスターと協力関係を結んだって所よ」
結論、黒のアサシン。勝手に大暴れし、赤の陣営に着く。
「しかも…トールとヘラクレス、イナバの3人係りで漸く倒せたからな。黒のアサシンは」
「なんでイナバが黒の陣営に!?」
「それはネタバレに成るから言えんな。まあ、今度…その聖杯大戦の生還者が日本に来るから会いに行くか?」
エンマの言葉を聞いて、一誠は頷いた。
警察が使う犯罪者を輸送する輸送車両。その中で、腹部に飛雷神のマーキングを施された青年が居た。
彼こそはアーサー・ペンドラゴン。アーサー王(本物)の末裔であり、自称アーサー王と名乗っていた英雄派の幹部である。
「放浪息子の御帰還ですか」
アーサーは嘆き、羽田空港に輸送されていった。
果たして…一誠はVRのIf.とは言え、聖杯大戦の運命を変えることが出来るのか!?
次回!VR訓練ではなく、裁判を終えた英雄派(笑)の皆様。