魔獣創造がはっちゃけた   作:静かなるモアイ

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復活のエンマ(笑)


サプライズ!!死んだかな?

11月4日の深夜。時間としては5日の深夜2時。

 

危険物を示すドクロマークを荷台に描かれたトラックが出雲大社の裏側に侵入した。

 

「火影様!例の物はスウェーデンから来ましたよ!発酵も丁度良い感じです!」

 

トラックの運転手は運転席の窓からひょっこりと、顔を出して下に居る人物にそう言った。

 

「ふふふ…遂に、遂に俺がプロデュースした新作のシュールストレミングの出番が来るな」

 

このトラックで運んできた物を手配したのは、日本以外の国では死亡扱いされた我らが火影 千手エンマである。

彼はミカエル達が吸血鬼を滅ぼす為に解き放った、戦略爆弾(核兵器級だが、放射能が出ないので核爆弾ではない)の爆発に捲き込まれて世間的には死人扱いである。勿論、このドッキリには真実を知ってる国民の皆様もノリノリで協力しており、新聞の一面には『火影、吸血鬼の難民を救うために死す』とデカデカと書かれている。

 

因みに海外では完全に千手エンマは死んだと見なされており、二代目火影にトビオが就任したのは周知の事実だ。だが、トビオはエンマほどぶっ壊れていない為か、神々や世界の首脳陣とミカエル達は安心している。ぶっ壊れの初代火影様が生きてるとは知らずに。

 

「しかし…この数日間は大変だったな。色んな意味で」

 

この数日間。エンマは日本以外の国々と勢力に生きている事を悟られない程度に、国内で羽を伸ばしていた。カタッシュ農園で農作業をしたり、アリスを連れて日本各地を旅行したり、火影様死亡事件の真実を知らないアリスの父親が久遠寺屋敷に飛び込んできたりと、色んな意味で大変だったのだ。

 

「それじゃあ、運転手さん。物は此方で貰うさ。お客さんにばれないように巻物に封印しないとな」

 

エンマは笑みを浮かべ、巻物にトラックの荷台に入っていた物を封印した。その物には『火影様プロデュース。愉悦激辛シュールストレミング』と書かれていたのだ。

 

11月5日。神在月の始まりであり、今日は首脳会談としてミカエルとその護衛達も出雲にやってくる。

 

神在月と神無月に付いて説明しよう。これは旧暦の10月の11日(旧暦)から17日までに日本中の神々が出雲大社に集まり、人々の縁結びを決めるのだ。とは言え、縁を結ぶとは言え完全に決まる訳ではない。切っ掛けを作り出し、それで結ばれやすくするのだ。

言わば、神々が宴会をしながら1週間の期間を用いて縁の切っ掛けを作るのである。そして、出雲では日本中の神々が集う為に神在月と称し、出雲以外では神々が出張してるので神無月と称するのだ。日本全体では神無月としての呼び方の方が正しいだろう。

 

とは言え、今は既に神仏の実在が明らかに成った時代。神々は実際に電車を使ったり、タクシーを使ったりして出雲にやって来た。

 

そんな神々は勿論のこと、今回はこの出雲大社で首脳会談が行われる。行われる首脳会談は勿論、ミカエルと日本政府総理大臣 神津総理に日本神話最高神天照大御神との会談である。その為か、多くの報道陣が駆けつけてカメラを回してる。

 

「未だ朝の8時ですよ?なのに回すんですか…」

 

現火影である二代目火影 トビオの付人としてやって来た一誠は苦笑いを浮かべる。無理もない、ここには海外の報道陣も多く居ており、海外からやって来た報道陣は『遂に日本が世界と和平を結ぶ!』と期待してやって来たのだ。だが、日本の報道陣は違うのだ。日本の報道陣の皆様は会談の様子は勿論、エンマが生きてるという衝撃の真実を知ったミカエルの顔を取る為に集まったのだ。当然、この日本陣営の報道陣もドッキリに快く協力してくれたのである。

 

「首脳会談の開始は10時だ。神々の集合は適当。だけど、八百万の神々が殆んど揃うのは珍しいからね」

 

そんな一誠の疑問に答えるように二代目火影の羽織を羽織ったトビオが答える。そう、今日から神在月が始まり、多くの神々が日に日に集まっていく。初日から全ての神々が揃うことは無いのだが、それでも20を越える神々がこの出雲大社に集まってきたのだ。

 

「それに…今日は一般客の参拝は禁止だからね。来てるのは報道陣に神在月に参加する神々、そして警護の私達ぐらいさ」

 

ふと、その声が聞こえて一誠は声の方を見る。そこにはSPのようにスーツ姿のサーゼクスが居た。勿論、サーゼクスは天照大御神や神津総理の護衛の為にやって来たのである。

 

「これはサーゼクスさん」

「二代目火影。既に初代火影は定位置に着きましたよ」

 

そう…サーゼクスの言うエンマの定位置とは、出雲大社の会談室に隠れているのだ。エンマが現在居るのは会談室の床下。宮司と大国主に許可を貰い、三日前に隠れれるようにしたのである。

会談室に入るのはミカエルとその護衛、天照大御神と神津総理。神津総理と天照様の護衛を行う二代目火影であるトビオ。そして日本の報道陣と各国の報道陣数名である。

 

「そろそろ…ミカエルが出雲大社にやって来るな」

 

床下に潜み、スマホのパズドラをしながら時間を潰すエンマ。今、エンマは死亡を完璧に演じる為に影分身も木遁分身も一体も出しておらず、各国に生存を悟られないようにしている。

 

「あー…暇だ。マジで暇だ…さてと、そろそろ息を潜めるか」

 

エンマはそう言うと、スマホの電源を完全に落とした。そして同時に、ミカエルを乗せたリムジンが出雲大社に到着した。

 

ミカエルはビシッとスーツ姿であり、出雲大社の鳥居を潜る前に外国の報道陣に囲まれる。報道陣はミカエルが日本政府と日本神話と共に和平を結べると思っており、ミカエルは笑みを浮かべてインタビューに答える。

 

「ミカエル様!一言!!この会談の意気込みを教えてください」

「そうですね。出雲大社は縁結びの神社と言われてます。正に今まで…日本は我々と手を取り合ってはくれませんでした。

それに日本最強と言えた千手エンマが…あろうことか人類に仇なす吸血鬼の生き残りを逃がすために亡くなったのは皆さんの記憶にも新しいでしょう」

 

生きてますよ(笑)

 

「彼は確かに日ノ本最強の戦士 火影に相応しかった。ですが、彼は自分の正義の為に吸血鬼を助けて死を選びました。

彼を死なせ、魔獣創造と木遁がこの世から喪われたのは非常に残念です。ですが、我々は和平を結んで…明日を生きます」

 

ミカエルはそう言うと、護衛と共に会談が行われる会談室に向かっていった。

 

 

会談室。ミカエルが護衛と共にそこに向かうと、スーツ姿の神津総理、十二単を纏った天照が既に椅子に座ってミカエルを待っていた。そして神津総理と天照の後ろには二代目火影であるトビオ、一誠が控えていた。

 

「お待たせしました。神津総理、天照」

「ミコーン!所で聖書の神様はどうしました?私が出てきましたし、そろそろ彼が出てくると思ったのですけど」

 

天照の言葉にミカエルはギクッと顔を強張らせる。無理もない。ミカエル達は絶対に聖書に記された神が崩御された事を知らされてはいけないのである。

 

「神様は多忙なのです。なにせ、この世を作った創造主なのですから」

 

誤魔化すようにそう言ったミカエルは椅子に座る。いよいよ、日本政府&日本神話と聖書の首脳会談が始まったのだった。

 

「では始めましょう。和平に着いてですが」

「む?ミカエルさん。私達は何時、和平を結ぶと言いました?」

 

神津の言葉にミカエルは驚く。ミカエルの記憶が正しければ、先日に天照は各国との付き合い方を考えると言っていた。そう言ってたのならば、普通は和平を結ぶ筈なのだから。

 

「神津総理。私は先日、其方の天照から『各国との付き合い方を考える』と聞いてますが…どういう事ですか」

「その通りの意味だ。ミカエル…貴殿方は命をなんだと思ってます?確かに吸血鬼が人間の命を奪うのは確かでしょう。ですが、ひっそりと人間を殺さずに生きてきた吸血鬼の集落に貴殿方は核兵器に匹敵する爆弾を落とし、跡形もなく消し飛ばしましたね」

 

ミカエルの予想とは明らかに異なる答えを神津は告げた。ミカエルはてっきり、日本政府も和平を遂に結ぶかと思ったのだが、どうやら逆のようだ。

 

「ええ。人類を守るためですよ」

「初代火影から聞きましたが、貴殿方の軍隊はその戦略兵器を使用しなくても良かったでしょう?エンマが駆け付けた時点で、生き残りは極僅か。なのに貴殿方は戦略兵器の投入を決めて跡形もなく消し飛ばした。それは大義ではない、エゴの虐殺だ。

人外だとしても、人として過ごすならば人間として接する日本政府としてはそれは認められない。それは人に危害を加えず、ひっそりと生きる種族に対する宣戦布告と捉えられます」

「神津総理。撤回してください。我々がやらなければ、必ず彼等は人類に危害を加えますよ。それに、千手エンマ亡き今、日本の自衛力は僅か。このままでは日本は世界から相手にされなく成りますよ?千手エンマを無駄死にするつもりですか?」

 

ミカエルは吸血鬼への戦略兵器使用は間違っておらず、正当だと告げる。

 

「彼が無駄死に…ですか」

「彼が無駄死に…ねぇ」

 

「そうです。彼は無駄死にも同然だ、吸血鬼の助けを聞いて戦地に向かい…そして散った。無駄死に以外に何が有るんです?

ですが、和平を結べば彼の死は無駄にはならない「さっきから黙って聞いてたらグチグチと…誰が無駄死にだ…誰が無駄死にだ!?あ゛あ゛!!」は!?」

 

ミカエルが座っている椅子の隣の床が開き、何かが高速で飛び出して床に着地する。

 

その何かは男性であり、背中に『火影』と書かれた羽織を羽織った…そう!

 

「初代火影様。貴方に現職火影の権力、権限を返します」

 

トビオがそう告げ、男はミカエルの方を見る。その顔は紛れもなく。

 

「千手…千手エンマァァァァァア!!!!」

 

万華鏡写輪眼を発動させたエンマであった。そして、ミカエルは有り得ざる物を見てしまい…これまでしたことがない程に仰天した凄い顔をしてしまう。だが、その刹那…トビオがミカエルの変顔を写真に納める。

 

「トビオ。ツイッターで拡散させろ。タイトルはドッキリに引っ掛かった天使長だってな」

「もうやってますよ」

 

ミカエル、変顔をネットに拡散させられる。

 

「千手エンマ!?」

「なんで…初代火影が生きている!?」

 

ざわつく海外の報道陣達。無理もない、彼等は知らされてなかったのだ。エンマが生きていたという事を。

 

エンマは前に一歩踏み出し、報道陣の前に出る。だが、報道陣に向けて何かを告げる前にチラッと天照と神津の方を見る。天照も神津もエンマに任せると、言いたげにサムズアップした。

 

「さてと…テレビの前の諸君。始めましての人も居るだろう。千手エンマだ。

世間的には死んだと勘違いされてたが、生憎と俺は爆弾兵器程度では死なないし殺されもしない。

ゴホン!貴重な会談の時間を割いてしまって申し訳ない。だが…俺の話を聞いてほしい。俺が今から話すのは俺がルーマニアで会った少女の話だ。

 

少女のプライバシーに関わるから名前は明かせない。それは勘弁してくれ。

少女は人間と吸血鬼の混血だ。人を襲わなくても全然生きていける。日光にも当たっても全然へっちゃら。そんな…血筋は半分吸血鬼だが、至って普通の女の子だったよ。俺の息子や養子の娘と大して年の変わらない女の子だった。

でも、彼女は米軍とエクソシスト達に殺されかけた。彼女達が何をしたんだろうな?普通に過ごしてただけだぜ?家でゲームしたり、お洋服で綺麗にお洒落したり、本を読んだり…そんな日常を過ごしてただけで殺されかけた。

 

彼女が俺みたいに、何かを守る為に何かを切り捨て、何かを破壊して何かを殺した訳じゃない。俺は今まで、火影としての仕事は勿論、火影に成る前でも大切な人や国を守る為に殺したり壊したりしてきた。俺だったら、殺されかけても文句は言えないだろうな。ただ、自分の番が来た。それだけの事だ。

 

では彼女は?何をしたんだ?人は殺してないし、悪いことはしてない。だけど吸血鬼の血を引いて産まれてきたのが間違いだと…少なくとも、この天使長はそう言ってる。

 

その子に2日前会って話をしたよ。その子、俺に会うなりなんて言ったと思う?助けを呼んでおいて巻き込んでしまって御免なさいってな。たった…たった…15歳の女の子だ。それなのに御免なさいだぞ!?こんなのあるか!?テレビの前の指導者!!考えて見ろよ!!アンタ達にも子供が居るだろ!!居なくても親戚の子供とか、近所の子供、それでも思い付かなかったら自分の子供の頃を思い浮かべて見ろよ!!そんな未来あって幸せに生きれる子供が…御免なさいって何なんだよ!!ふざけてるのか!!

 

神様が好き勝手に人間を殺すのはOK、天使様が魔女を裁いて殺すのはOK、魔術師が根源に至る為に人体実験はOK。でも…人に危害を加えずにひっそりと生きる子供は幸せに成るのはダメなのか。とんだふざけた心理だよ…。

 

この場で…今、世界中に宣言する。たった今から初代火影 千手エンマは種族問わず、行き場の無く恵まれない子供達を家族として保護する。既にその子達が暮らす家も用意した。

そして、その子達が死ぬべきであると…殺しにきた連中は誰だろうと火影として倒す(殺す)、神であってもな。事前に言っとくが、そこの天使様のように核兵器等の戦術兵器を使うのは出来ないぞ?俺がその気なら、日本以外の核分裂を停止させる事が出来る。簡単に言うとだな…核兵器は勿論、原子力空母、原子力潜水艦、そして原子力発電所は使い物に成らなくなる。聡明な指導者なら…俺の言ってる事が分かるよな?

 

それと……………………ミカエルさんは借りた物を還さない悪い人でーーーーーす!!」

 

エンマは最後に飛びっきりの笑顔でボイスレコーダーのボタンを押す。すると、ミカエルの言葉で幾つか言葉が再生される。

 

『きぇぇええええええ!!返します!直ぐに返します!!私が責任をもって返します!!』

 

「あと、私は今日迄に返すようにと手紙で伝えたのですが。あれ?ミカエルさん。もしかして、俺が死んだから良いと思ってたんですか?

全知全能の神様なら何でも出来るだろ。ほら、早く」

 

だが、ミカエルは渡せない。何故なら、自分達で直せる訳が無いのだ。草薙の剣を。

 

「日本の国宝を折り、その上…我が父の剣を神器に改造して神性を無くした鳩が。

ミカエル…お前では話にならん。早く貴様の主人を此処に口寄せしろ。妾の気持ちが変わらん内にな」

 

ミカエルの心を察した天照大御神の気配が代わり、天照大御神の尻尾が9本に増える。その時、ミカエルは余りの恐怖で震えが停まらない。何故なら、尻尾が9本の天照大御神はエンマよりも遥かにヤヴァイ存在だったからだ。その有り様に普通の人間が耐えられる筈がなく、海外の報道陣は逃げるように会談室から出ていった。

どれぐらいヤヴァイかと言うと、一瞬で聖書を滅ぼす事が出来るぐらいである。

 

「貴様等が妾の父親に何をしたのかも分かっている。だが、今の世の中でお前を殺せば多くの国で混乱が生じる。だから、猶予を与えよう。次の新月までに草薙の剣を修復して返せ。出来なければ…」

 

ぽふん!と煙と共に天照大御神の尻尾は1本に戻る。

 

「エンマプロデュースの新作シュールストレミングをYouTuberのライブ配信で、一気食いしてもらいまーーす!」

「安心しろ。普通のシュールストレミングよりもパワーアップしてる!」

 

翌日。開封した状態で、激辛シュールストレミングがアメリカに有るミカエルの家に転送された。

 

 




はい、ミカエルさんの五感は死にました(笑)

次回!久遠寺の屋敷…色々とパワーアップ!?そりゃあ、子供を保護するって宣言したしね。
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