魔獣創造がはっちゃけた   作:静かなるモアイ

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税関職員は今日も優秀です

――俺は戦争がしたかっただけなのに…

 

宇宙空間。地球の重力圏内から離れた無限に続く常闇の空間。そこを鉱物と生物の中間の存在に成ってしまった存在が漂っていた。

 

彼の名前はコカビエル。グリゴリの幹部であり、人間と比べれば圧倒的な力を有した至高の存在 堕天使である。だが、コカビエルは本来は有り得ない鉱物と生物の中間の存在に変えられていた。勿論、コカビエルが自力ではなることは出来ず…これは例の問題児が絡んでいるのは明らかだ。

 

何かの力で鉱物と合体させられたのだろう。よく見ると下の方には『駒王学園創設者 ゼクラム・バアルの像』と書かれており、コカビエルは何らかの手段で創設者の銅像と合体させられて宇宙空間に放り投げられたのだろう。

 

――なんでこうなった…ふざけるな…ふざけるな…あんな人間が居てたまるか

 

コカビエルは二度と地球には戻れなかった。最初の内は現実逃避として三大勢力の戦争を起こし、地球、冥界、天界を巻き込んだ大乱闘が起きたifを想像して楽しんでいたが…それは現実逃避。やがて認めざるを得ないのだ。やがて、コカビエルは考えるのを辞めた。

 

 

 

時は遡ること、2週間前に遡る。

 

2週間前…ドイツのとある町。そこは無惨に破壊し尽くされており、多くの人々が力なく倒れて亡くなっていた。家は燃えており、鼻には肉が焼け焦げる臭いが刺激する。車は勿論、戦車や戦闘機までもが破壊されて燃えており、エクソシストや軍人達の遺体が酷い状態で転がっていた。

 

「貴様…なにを」

 

この町はほんの2時間前までは健在であり、変わらぬ日常を過ごしていた。だが、未だ生きの有る軍人が何とか立ち上がろうとする。

彼は裏を知らぬ一兵卒だった。だから、町を襲撃してきた存在を見たときは信じられなかった。何かのテロかと思い、軍人が駆け付けた時…人間の敵も居たのだがその多くは黒い羽が生えた堕天使達だったのだ。堕天使達は光の槍を投げパトカーを破壊し中の人を貫き、光の剣で人々を切り裂き、指先から光線を放っては人々を焼いて戦闘機や航空機を問答無用に撃ち落とす。そんな存在に鍛えられているとは言え、普通の人間が勝てる筈は無く駆け付けた軍隊は壊滅…現地の警察は皆殺しにされたのだ。

 

「ふむ…やはり人間は大した事はないな。聖剣を持っているとは言え、俺からすれば小娘。雑魚に違いない」

 

ザッザッと足音が聞こえ軍人は何とか前を見る。そこでは上半身だけに成った若い女性の亡骸を片手で持つ、堕天使 コカビエルが居たのだ。

亡骸に変わり果てた女性の右手には一本の聖剣 エクスカリバーが握られており、コカビエルは彼女の手からエクスカリバーを奪い取る。

 

「ふむ…閃光の聖剣か。これで3本集まったな。だが、まぁ良いだろう。ここまで激しく町を破壊すれば、表側の連中も俺達の存在に気付く。ふふふ…これで、俺の夢である戦争が始まるのだ!!」

 

コカビエルの目的は世界を巻き込んだ戦争。天界、堕天使、悪魔を……そして地上を全てを巻き込んだ戦争を行うことである。

先ずは聖堂教会が保有する複数のエクスカリバーを強奪し、天界が管理する町を完全に破壊して多くの人々を殺してニュースに取り上げられる。そうすれば、表側にも堕天使の事は認知され、天界は堕天使と戦わざるをえないようになる。次に悪魔が管理する場所を滅茶苦茶にする…その際に魔王の妹が2人も居る駒王が良いだろう。駒王を破壊し、魔王の妹2人を凌辱レイプした動画を悪魔に送りつければ悪魔は此方の誘いに乗るだろう。

 

そうすれば、三大勢力と人間を巻き込み地球を舞台とした全面戦争の始まり…コカビエルの夢が叶うのだ。

 

「おっと…未だ生きている人間が居るか」

 

コカビエルは女性の亡骸を放り捨て、生きているが動けない軍人に近付く。そして、右足で軍人の頭を踏みつける。

 

「うぐ!?」

「安心しろ。直ぐには殺さないさ」

 

そう言うが、徐々に力を強めるコカビエル。足と腕では断然足の方が筋力は強く、最強クラスの実力(堕天使でわ)を持つコカビエルの筋密度は人間の何十倍も強いのだ。

 

「あっがぁぁぁあ」

 

ピキビキと軍人の頭蓋骨から軋む音が聞こえ、軍人は鼻と目から血を流し始める。

すると、コカビエルは有ることに気付いた。それはドイツ軍の無人偵察機のドローンが此方を見ていたのだ。ドローンはコカビエルを撮影し、ドイツ軍は勿論、様々な所に情報を流しているのだろう。

 

「ふむ…神器も持っていない雑魚が。無様に死ね」

 

コカビエルは軽く力を入れて、軍人の頭蓋骨を踏み砕いた。辺りに青白い脳漿と赤い血液が辺りに飛び散り、軍人の頭部は潰れたトマトのように成ってしまった。

 

「ふふふ…ハッハハハハハハ!!やはり、気持ちいいな!!圧倒的な力で相手を蹂躙して殺すのはな!!」

 

周囲の人間を全て殺した。ここまでやっても天使は現れない。当然だが、天界はとある事情で天使を出し惜しみする傾向に有るのだ。

故に、この場に集まった天界+ドイツの戦力はエクソシストとドイツ軍の軍隊だけ。そんな程度の力でコカビエルとその配下を止められる訳がなく、町は崩壊した。

 

「そうだ…堕天使や悪魔、天使等が実在する事を裏を知らぬ存在にバラしてやろう!!ハッハハハハハハ!」

 

最強の問題児ではなく、レオナルド君に魔獣創造が宿った世界(原作)では裏側の事実を世界は知ることはなかった。だが、この世界では異なる。数日後…コカビエルは裏側の真実を世界にバラす事にするのだった。そして、今この時が今年コカビエルの一番輝いていた瞬間と成るのだった。

 

 

コカビエルが裏側の真実をバラす3日前。

 

コカビエル討伐及び奪われたエクスカリバーの奪還の命を受けて、2人の十代半ば程の年頃をしたエクソシストの少女が成田空港に降り立った。

1人はツインテールでそこそこ大きい胸をした紫藤イリナ。もう1人はイリナよりも大きな胸の青色の髪をした少女 ゼノヴィアである。

 

2人はジャネットさん率いる税関職員に止められていた。正確に言うと、ゼノヴィア1人が引っ掛かりイリナは待っている感じである。

 

「イリナさんはOKですが、ゼノヴィアさんは認められません。書類に不備が有ります」

「はっ!?何故だ!?ちゃんとパスポートも有るぞ!」

 

対峙するジャネットとゼノヴィア。その理由はゼノヴィアが日本に来る前に書くべきだった書類に不備が見つかった為である。

 

「ゼノヴィアさん。貴女ね…ちゃんと書類は書いたの?貴女が持ち込む筈だった武器は魔術で亜空間にしまう場合以外は事前に書類に書き込む必要が有るの。

ところで…持ち込み申請書に破壊の聖剣なんて書いてなかったわよ」

 

持ち込み申請書。それは武器以外にもチーズや乳製品、冷凍食品や飲み物等の飲食類を持ち込む際にも必要なのだ。何故なら肉類等には菌等が付着してる場合が有り、現地に持ち込めば生態系がずれて…最悪は壊れてしまう可能性が有るのだ。

エクソシスト等の武器の場合は普通は持ち込めない。当然だが普通の人は剣やピストルは持ち込めない為だ。エクソシスト等は仕事の一貫で許可されているが、残念ながら成田空港は書類が必要なのである。

 

「いや…イタリアの空港では普通に…」

「規則ですのでしたがって貰います。最近はエクソシストを称してテロ行為を行う輩も居るので、申請された武器以外は持ち込めません。

デュランダルと魔力式の黒鍵は亜空間に仕舞ってる及び、銃刀法違反ではないので許可しましょう。ですが、破壊の聖剣は没収させて頂きます」

 

他所は他所、内は内。イタリアは書類無しでもOKだが、此処は違うのだ。

 

「ゼノヴィア!この書類に書かなかったの!?シエルさんも書けってあれほど煩く言ってたわよ!!ちゃんと講義受けてた!?」

 

ソファーで座っていたイリナがゼノヴィアに駆け寄り、持ち込み申請書をゼノヴィアに見せる。確かにそこには『擬態の聖剣』と書かれていた。

 

「………すまない。寝てた」

「だから脳筋って言われるのよ!!このバカー!」

 

イリナとゼノヴィアは歳にしてはかなり優秀だ。だからこそ、コカビエル討伐を任されたのだろう。特にゼノヴィアは斬り姫と称えられる程の実力を持っているが、圧倒的体育会系統であり座学は苦手だ。ちょっとでも勉強すればオーバーヒートを起こし、寝てしまう。

 

その為…彼女は日本に向かう際は持ち込み申請書に書くことを知らなかったのだ。

 

「それじゃあ、破壊の聖剣は此方で預かります。お仕事頑張って下さいね。そうそう、お返しする際は手数料がかかりますので」

「私の破壊の聖剣!!!」

 

破壊の聖剣…没収!!だが、ゼノヴィアは知らない。色々あって、この破壊の聖剣を2度と握る機会は無くなり…日本政府ボケ担当その2に成ることを。

そして…イリナは鬼滅ラブが炸裂する事を。




次回!天界と教会にシュールストレミングが放たれる!?

そして…コカビエル、宇宙追放へのカウントダウンが始まる。

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