御坂美琴になったけどレベル5になれなかった(更新停止中) 作:無視すんなやごらぁぁぁあああああ!
次に目覚めた時、俺は見渡す限り真っ暗な世界にいた。
「……いやいや、流石に『あそこ』じゃないよな?あくまで俺の精神世界とかそういうあれだよな?」
『ねぇねぇ、なんで君はこの街で起こっていることを無視できるの?』
……
(いや待て、確か木山先生の時は僅かだがその場所に至っていたはず)
……もしかしたら
『知ってるでしょ、「暗闇の五月計画」。それに、本来行われるはずだったクローンを使った悲惨な実験』
見つけろ、どこかにあるはずだ、ここを抜ける出口が。すると、目の前に一条の光が……消えたし。
「……駄目だ、体が勝手に動きやがる」
……ん?誰かが近づいてくるような。
「……あれは」
御坂を探していた上条の前に、全身真っ白の天使のような女性が姿を現した。
「まさか……御坂⁉」
その声に反応し、御坂(?)は上条に電撃を飛ばす。それを右手をかざして打ち消す上条。
「……あぶねぇ、明らかに普通の能力じゃねぇが、右手で打ち消せる。なら――」
しかし、御坂の攻撃はそれで終わらなかった。彼女は電磁力を使い瓦礫を大量に集め、巨大な弾丸にする。
「いやいやいや!それは反則だろ!」
その弾丸を、白い翼が吹き飛ばし、破壊する。
「……え?」
「おい、大丈夫かお前?」
「……あ、この前の……垣根!」
「おう、確か……上条つったか?あとは俺に任せてとっとと避難しな」
「気遣ってくれるのはありがたいけど、あいつは友達なんだ。他人には任せられない」
「安心しろ、俺もアイツとは知り合いでな。分かったらさっさと――」
「ちょ!前々!」
二人が話し合っている間にも、御坂は次の準備を進めていた。先ほどよりも数を増やした瓦礫の塊が迫っている。
「ハイパーエキセントリックウルトラグレートギガエクストリームもっかいハイパーすごいパーンチ!」
そんな掛け声とともに岩石が吹き飛ばされる。
「危なかったなお前ら!」
頭に鉢巻を巻き、学ランを羽織った男が姿を現した。
「……え?」
「なんだテメェ?」
「いや~にしても、なんかすげぇのがいるな!角生やすとか根性あるな!……よし、後は俺に任せとけ」
「あァ?何言ってんだテメェ、俺を誰だと思ってんだ?学園都市レベル5、第二位様だぞ。テメェこそさっさとこいつ連れてどっか行きやがれ」
「レベル5?お前も?なんだ、根性あるやつなのか、じゃあよし!」
「いやいやいや、お前らだけにやらせねぇよ⁉俺もやるからな!っていうか、倒すんじゃない。なんか、操られてるって表現のほうが近いみたいだし」
「操られてる?そりゃあ根性が足りねぇな、俺が注入してやる!」
「いやだから聞けよ!」
そんな風に言い合う三人をよそに、御坂は三つの雷撃を放つ。
彼らはそれぞれ、掻き消し、はたき落とし、吹き飛ばす。
(雷撃をはたき落とした?)
(雷撃をかき消した?)
(なんなんだこいつら?俺レベルで常識が通じねぇじゃねぇか)
「……へっ、俺は削板軍覇。お前らは?」
「……上条当麻」
「垣根帝督。っていうか、削板ってことは、第六位か」
「よっしゃ!足引っ張んなよお前ら!」
「こっちのセリフだ!」
「精々役に立つんだな」
一人の少女の暴走を止めるため、
そしてその様子を、御坂は見ていた。
「上条さんと削板はまだわかるけど、なんで垣根もいんの?」
意味が分からない。まぁ、戦力が多いに越したことはない。どうせ、体を操ることはできないし。今回は観戦しよう。
「……せめて、あの理解が及ばないものは出さないようにしないとな」
まぁ、あれは本来の御坂美琴の学園都市の闇の部分を消し去りたいという思いが引き寄せた者。俺は別にそういうの気にしないから大丈夫だろう。
御坂の電磁力で飛ばされた鉄骨を
「そらよ!」
削板が頭突きで吹き飛ばす。
「面白れぇ技だが、そろそろ飽きたぜ!」
そういって、凄まじい衝撃波を放つ削板。
「あれは……まさか、砂鉄か?」
「みたいだな。砂鉄を磁力で引き寄せて、バリアにしてるってとこか。どう見てもアイツの能力限界を越えてるがな」
「へぇ、根性あるのかないのか分かんねぇ奴だな」
すると、御坂は再び瓦礫を投げ飛ばす。
「いい加減、レパートリーを増やすんだな」
今度は垣根が、未元物質による未知の法則で、瓦礫を砂に変える。
「うっわ、岩が砂になるとか怖っわ」
「面白れぇなお前、今度手合わせ願いたいぜ」
「お断りだ」
すると今度は、今まで動かなかった上条に雷撃を飛ばす御坂。だが
「そら!」
彼がその右手をかざすと、
「お前の右手も面白れぇな!」
「どんな能力だよ、能力を打ち消すとか聞いた事ねぇぞ」
「出来れば、こいつであいつが元に戻るか試したいんだが」
御坂は今、砂鉄で作った繭に閉じこもっている。あれを突破するには少し骨が折れるだろう。
「……地味にいやらしい戦い方しやがるぜあの女」
「同感だ、もう少し難易度下げろよ」
すると、攻めてこない彼らに業を煮やしたのか、砂鉄で攻撃してくる。削板と垣根は跳躍して躱し、上条は砂鉄に触れることで磁力をかき消し砂鉄を無力化する。
「……どうやって近づく?」
「……よし、任せとけ」
今度は削板が、二人の前に立ち腰を少し落とす。
「超……凄い……パーンチっ!」
彼が前方に正拳突きを放つと、そこから衝撃波が出てきて御坂のバリアを一瞬で破壊する。
「お、道が開いたな。よし、行くぞ上条」
「え、ちょちょちょ!飛んでる~っ!」
上条の右手に触れないように持ち上げ、
「行ってこい!」
そして、ある程度接近したら上条を投げ飛ばした。
「うっそだろおい!なんでどいつもこいつも俺を投げ飛ばしたがるんだよ!」
つい最近も聖人に投げ飛ばされた上条が言うと悲痛さが違う。
上条はそのままの勢いで御坂に接近する。彼女は再び砂鉄でバリアを張るも、上条の右手はあっさり防御を崩し間合いに入る。
「ヤケクソだクソがぁぁぁあああああ!」
叫びながら御坂の肩に触れる。その瞬間、彼女の肩が一瞬元に戻った。
「どうだ⁉」
「……ん?」
今一瞬、体の制御が……!
「今なら!」
「……駄目か?」
彼が肩に触れたが、すぐに元に戻った部分は戻ってしまった。失敗か、そう思った三人だったが。
『うぉぉぉおおお!根性だ御坂美琴!ファイト!一発!』
突如、今まで一言も喋らなかった御坂が言葉を発する。
「……これは」
「成功……したのか?」
『あ、やっぱり無理!喋れるけどそれ以外何にも出来ない!』
「ダメみたいだぞ」
しかし、御坂を知らない削板はともかく、彼女をそれなりに知る二人からすれば、結構余裕があるようにも見えた。
「結局、完全には戻せなかったか」
『何やってんだよ上条さんよぉ!ただでさえ今のアンタは右手しか取り柄ないんだからさ!もうちょっとシャキッとしなよ!』
「削板、やっぱりアイツぶっ飛ばしてくれ」
『待って!世界最高の原石の拳とか死ぬ!余裕で死ねる!分かったから!こっちでも色々頑張るからお願い諦めないでください!』
今まで相当シリアスな空気を保っていたのに、喋りだした途端これである。
「……まぁ、取りあえずは第一関門クリアってところか」
「思ったより根性ありそうなやつだな!」
「……根性……なのか?」
疑問しか残らない上条であった。
『……あ、やばい。進化する』
「「……は?」」
唐突の御坂の発言に、唖然とする上条と垣根。すると、彼女の発言通り御坂の体が形を変えていく。
「……おい、マジでなんか変わったぞ」
「……どうする?」
「いや、どうするって言われても……どうしよう?」
『……あ、削板よけろ』
「なにを――」
その言葉が続くことはなかった。御坂に増えた翼が、削板を吹き飛ばしたのだ。
「……そ、削板ぁぁぁあああああ!」
「よっと!」
「え、復活早!しかも、あれ喰らって無傷とかどんだけ――」
「おい、ちょっと根性を入れねぇとやばいぞこれ」
削板が僅かに声を低くして言う。よく見ると、彼の額から血が流れている。鉄骨に頭突きをしても無傷だった頭にだ。
それだけで、今までとは格段に変わったことを悟る上条と垣根。
「……っていうか、お前のその姿は何なんだよ?」
『あ、そこから説明ね。……これは、所謂
「あ?
『同じようなもんだな。そんでもって、これにたどり着くのは学園都市の最終目的でもある。後、計算上これにたどり着けるのは一方通行だけってことになってるんだ』
「それ以外だとどうなるんだ?」
『まずそいつは死ぬ』
「死……っ!」
『その余波で学園都市は壊滅する。だから早く助けてください』
「……そう言われたら黙ってるわけにはいかねぇが、実際どうすりゃいいんだ?」
『とりあえずお前らは時間稼ぎしてくれ。俺を暴走させてるのは
多分、と心の中で御坂は付け足す。
「……にしても、早いとこ体の制御を取り戻さないとな」
こうしている間にも、自分の体は変化し続けている。いずれは彼らでもどうしようもないところまで行くだろう。
「……不味いな、全く分からない」
そもそも演算を行っている気がしない。レベル6ってのは本当に只の能力なのか?
「……あ~あ、本当に最悪だよ」
どうしてこうなった?……全部幻生のせいだ。あのジジイマジで死ね。
「……あ、また進化するし。折角上条達が頑張ったのに。……ん?なんか体が引っ張られるような」
「……おい、また進化したっぽいぞ」
削板の言う通り、御坂の体は先ほどとは比べ物にならない変化を遂げた。
まず、顔が見えない。闇に覆われているように。
「嫌ぁあああああ!」
すると、御坂の中から御坂が現れた。……は?
「いてて、どうなってんの?」
「……御坂?お前何やってんの?」
「それはむしろ俺が聞きたいぞ」
「……あれ、なんか髪の色が黒くなってんぞ」
そう言われて、御坂は近くに偶々落ちていた鏡を見る。
確かに、自分の髪の色が変色している。だが、変化はそれだけではない。
「……能力が、使えない?」
「……え?」
「やばい、いつもみたいにビリビリしないぞ⁉どうしよう⁉」
「いや、どうしようって言われても」
「おい、ちょっとふざけてる場合じゃないっぽいぞ」
垣根の言葉で御坂と上条がはっとなる。もう一人の天使のような御坂は、『窓のないビル』に右手を向けると、彼女の足元に闇が展開された。
そして、その闇が、徐々に球体のように形を整えていく。
「……御坂さん、あれはどうしたらいいんでしょうか?」
「……何言ってんの、お前には右手があるじゃん」
「無理だから!あれはどう考えても処理落ちするから!」
「……っち」
「今舌打ちした?」
「してない」
しかし、実際どうしたものか。彼女とて右手が通用しないのも分かっている。
そもそも、能力を使えないというのが不可解だ。何か理由があるはず。
「……おい、またなんか変わった……っていうか、消えてくぞ」
削板の言う通り、球体が徐々に力を失っていく。
「もしかして、食蜂が何とかしてくれたのか?」
「……は?食蜂?」
「あぁ、俺の友達だ。レベル5の第四位の」
いや、そこではない。……え、なんでこいつ食蜂の事覚えてるの?おかしくね?
「……まぁ、後で考えるか」
すると、雷神御坂がこちらを向き、突撃してきた。
「え、ちょ、待――」
凄まじいスピードに反応できず、二人の御坂は激突し、姿を消した。