御坂美琴になったけどレベル5になれなかった(更新停止中)   作:無視すんなやごらぁぁぁあああああ!

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 食蜂と上条と御坂が交差するとき、物語は変わる。

 つまり、三人の出会い編です。回想ではありません。




番外編:とある過去の消失物語(ロストストーリー)

 どこにでもある学区の、どこにでもある交差点。

 そこで、三人の子供たちが邂逅する。

 

「きゃあっ⁉」

「わっ、悪い!」

「うぎゃぁぁああああ!小指に携帯がぁぁぁああああ!痛ってぇぇえええええ!」

 

 とある夏の日。

 それは、ツンツン頭の少年と、小柄で華奢な少女と、サングラスを掛けた少女の出会いの一ページだった。

 

「ぐぉぉぉおおおおお!冬だったら死ぬ痛み!何すんだこのツンツン頭!」

 

 サングラスを掛けた茶髪の少女は、サンダルを履いていたようで、飛んできた携帯に小指をぶつけ悶えている。

 

「わ、悪りぃ……って、それ俺の携帯!」

「え?……あ、はい!」

 

 偶々携帯を持っていた金髪の少女、食蜂操祈は、咄嗟に携帯を返す。

 

「すまん!俺急いでんだ!説教は今度にしてくれ!」

 

 そういって、ツンツン頭の少年は走り去っていく。

 

「……はぁ、つい素が出ちまった。やっぱ、御坂の喋り方は慣れないなぁ。……うん、もうやめよ。普通に喋ることにしよう。それに、携帯も渡せたし!」

「……え、ちょ、え?」

「あ、大丈夫かアンタ?」

「え、えぇ。……あ、ありがとう」

 

 金髪の少女を、茶髪のサングラスの少女が引っ張り上げる。

 

「どこも怪我はないか?じゃあ、俺も行くわ」

「……俺?」

「じゃあな」

 

 そういうと、茶髪の少女も去っていった。訳が分からないと、金髪の少女がその場に取り残された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 三人の邂逅から数日。

 

「……あれ、待てよ。上条さんが蜜蟻助けたら、食蜂が記憶をリセットするんじゃ……」

 

 よし、行こう。そう思い、彼女がいるであろう場所に向かっていく。

 途中で、大慌てで走りゆくツンツン頭の少年を見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 交差点での出来事から数日。

 この日は、魔が差した食蜂操祈が、自身の記憶をリセットしようとしていた。

 

「あれ?何してんのアンタ?」

 

 その時突如、女の声が食蜂の耳に入ってきた。

 

「何でもいいでしょぉ……」

「でもその恰好じゃ、ぱんつ丸見えだぞ。こっちの隣にいる奴なんか、お前のスカートの中を凝視してるし。まさかそのためにここに来たのか?」

「ちょ!凝視はしてねぇよ!ちょっとちらっと見てるだけっていうか……。っていうか、俺はこの辺りで落とした携帯を探しに来ただけだっつうの!」

記憶を消去(・ ・ ・ ・ ・)ッ!!」

 

 瞬間、バチィっ!と言う音とともに少女がふらついた。それに合わせ、がくんと少年が体勢を崩し、右手で頭に触れながら食蜂を見上げ。

 

「???恥ずかしいのは分かったけど、そんな風に記憶を消せるわけないだろ。つーか(・ ・ ・)貧乳が何を色気づいて(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)やがるんだか(・ ・ ・ ・ ・)、誰にも言ったりしないから早く立てって」

「はぁ⁉」

「いや、多分精神操作系の能力者だぞそいつ。俺の電磁バリアが反応したもん。危うく記憶を消されるとこだったぞ」

「え……、マジで⁉パンツごときで危なすぎだろ!」

「……ち、ちなみに私が今日穿いているのは?」

「「蜘蛛の巣の刺繍」」

「記憶を消去ッッッ!!!」

 

 しかし、何度やっても二人の記憶を消すことはできなかった。

 

「……ぜぇ、ぜぇ。もう三十八回目、アナタたち、どうしてそんなに私の下着を目に焼き付けてるのよぉ⁉一体どれだけ変態力が漲ってる訳ぇ⁉」

「おい!俺をこの変態と一緒にすんな!」

「お前もいきなり人の事を変態呼ばわりすんなよ!あと言っておくが、あいつに取っちゃお前も同類だからな!」

「それ、自分が変態だって認めてるじゃん」

「……あ」

 

 すると、二人の顔を見て何かに気づいた食蜂が言う。

 

「……交差点の食パン激突男にサングラスヤクザ女」

「食パンは咥えてねぇよ」

「誰がヤクザだコラ」

 

 すると、少女の頭から静電気がビリビリと発生する。

 

「え、お前なんかビリビリ言ってるぞ!」

「ん?あぁ、これ俺の能力。一応、レベル4(・ ・ ・ ・)電撃使い(エレクトロマスター)だ」

「マジで?大能力者(レベル4)って結構凄くね?俺なんて無能力者(レベル0)だぞ」

「へぇ。っていうか、そっちのお前、その制服。常盤台中学の生徒だろ」

「なるほど、自意識過剰のイタイお嬢様と遭遇しちまったというわけか」

 

 瞬間、再び食蜂は二人に洗脳を施そうとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 またある日。

 学校で最近女子らしさが無くなっていると言われ、せめて服装くらいはそれらしくしろと友人に言われた御坂は、偶々出会った食蜂に服選びを頼んだ。

 

「……う~ん、服選びってのは中々うまくいかねぇな。めんどくせぇしジャージでいいか」

「いいわけないでしょぉ!偶々出会って、いきなり服選びに連れていかれたと思ったら、なんでいきなり諦めてんのよぉ!判断力絶望的過ぎるわよぉ!」

「うっせぇな、こんなもん適当でいいんだよ。ほら、このゲコ太とかいいじゃん」

「それはやめなさい。いくらなんでも子供っぽすぎるでしょ。幼稚力全開か」

 

 御坂の選んだ服に食蜂がマジレスしてくる。

 

「じゃあもういいよ、やっぱジャージで」

「よくないわよぉ!こうなったら、私のハイパーお嬢様力でとびっきりの服を選んであげるんだからぁ!」

「お、おう。そこまで無理してもらわなくても……」

「うるっさいわね!いいから黙って着せ替えられてなさい!」

 

 その後、食蜂によってたっぷり着せかえ人形にされた御坂であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 またまたある日。

 

「食蜂君や、君にプレゼントがあるのだよ」

「プレゼントぉ?あなたの絶望的なセンス力には欠片も期待できないんだけどぉ」

 

 しかし、言葉とは裏腹に少し楽しみでもある食蜂だった。

 なにしろ、彼女は精神操作能力者。他人に欲しいものを頼めばどんなものでも手に入れられる。だから、自分の欲しい物しか手に入れてこなかった。

 しかし、目の前のいる少女は自身の能力が通用しない。なら、一体どんなプレゼントをくれるのか?最近は上条にホイッスルを貰ったから、少しばかり期待もしていた。

 

「じゃーん!ゲコ太ストラップ!」

「……」

 

 目の前に出されたストラップを見て、開いた口が塞がらかなかった。

 未だにこんな幼稚なものを持っているのもそうだが、それを他人に薦める感性はどうしたものか。

 

「この間、適当にガチャポン回したら手に入れたんだ」

「私はゴミ箱じゃないのよぉ⁉」

「失礼な、二回回してダブったからプレゼントしてやったんだ」

「それをゴミ箱扱いしてるって言ってるのよぉ!」

 

 その後、結局ゲコ太は食蜂のものになった。この時、一年後に出来る派閥のものにゲコ太仲間と誤認されるのはまた別のお話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、運命の日。

 すべてが終わり、消えてなくなる日。

 

「……ん?なんかの爆発か?」

 

 御坂はいつものように、夜遅くに自宅に帰ろうとしていた。これは、彼女にまつわるとある事件が起きていないか調査するためでもあり、別に夜遊びが好きと言うわけではなかった。

 しかし、今回ばかりはその習慣があってよかったと御坂は思った。

 

「あれは……食蜂と上条さん?っていうか、何だあのヘルメット集団」

 

 そこまで確認して、はっとなる御坂。

 そうだ、確かこの時期は、食蜂操祈が『簒奪の槍(クイーンダイバー)』、デッドロックに命を狙われる時期でもあった。内容は掠れていて余り思い出せないのが痛いが。

 ここ最近ですっかり食蜂とも仲良くなった御坂に、助けないという選択肢はなかった。そもそも、相手の対策はあくまで食蜂のみ。

 自身の能力の対策など欠片もされていないだろうと思っていた。

 

超能力者(レベル5)に死を」

超能力者(レベル5)に死を」

 

 そのまるで、得体の知れないカルト儀式のようなものを見て

 

「我らからすべてを奪った、超能力者(レベル5)に死ぶべらッ!」

 

 無性に腹が立ちぶん殴ってしまったのは仕方ないかもしれない。

 

「お前は……、御坂⁉」

「ちょ、なんで御坂さんがこんなところにぃ⁉運命力高すぎて、操祈ちゃん引いちゃうゾ!」

「うっせぇな!助けてやったんだから文句言ってんじゃんねぇ!逃げるぞカミやん!」

「なんでお前がその呼び方すんの⁉」

「ちょ、なんであなたにお姫様抱っこされるの御坂さ~ん!」

 

 食蜂の言う通り、彼女の運動音痴を知っていた御坂は彼女を抱きかかえ上条とともに逃げる。逃げる。逃げる。

 そして

 

「……誘いこまれた、ってとこか」

「やられたな……」

「……」

 

 逃げ切ることはできなかった。

 すると、真紅の『簒奪の槍(クイーンダイバー)』が、食蜂ではなく上条と御坂に向かって言った。

 

「まだやるのか?」

 

 それは、手を引けば助けてやるという譲歩だった。

 

「「まだやるとも(に決まってるだろ)」」

 

 即答。

 上条達に迷いはなかった。しかし、食蜂やデッドロックたちには理解できない。ほんの少しの付き合いしかない食蜂の為になぜそこまでなれるのか。

 

「そこまで言うからには、よほどの能力者か?そちらの少女が大能力者(レベル4)クラスなのは既に把握している。しかし、道具に頼る我々を侮るなよ」

「そこまで大したもんじゃねぇよ。ただの無能力者(レベル0)さ。……それでも、許せねぇことはある。だったら拳の一つくらい握ったって構わないだろうが」

なるほど(・ ・ ・ ・)同類か(・ ・ ・)。ならば、お前は何故だ?力がある故の傲慢か?」

「はぁ?馬鹿じゃねぇのお前?」

 

 御坂は、はっきりと、自身の言葉を口にした。

 

友達(・ ・)を助けるのに、深い理由がいるのかよ」

「……」

 

 その瞬間、彼らの雰囲気から余裕が消えた。

 

「君たちは、おかしいとは思わないのか?」

「何を」

「全てだ。この絶体絶命の状況で食蜂操祈のために戦うと決めたこと自体、既に彼女の『心理掌握』に操られているとは思わないのか?」

 

 AIM拡散力場、というものがある。

 能力者が無意識に発生させる、極ごく小さな力。炎の能力者なら熱。電気能力者なら電気、といった具合に。実際、御坂も無意識のうちに静電気を発している。

 では、食蜂操祈の場合はどうだ?彼女の能力は、何を司る?

 

「あ……。あああああああああああああああ!あああああああああああああああああああああああああああああ!」

 

『それ』に気づいた食蜂が叫ぶ。別に彼女は、人を操ることに罪悪感を感じるわけではない。ただ、自分の管理下にある以上正しく扱われるべきだと思う普通の能力者だ。

 知らなかったですまされるだろうか。自身の能力で誰かが不幸になっているのを、誰かが死んでしまったかもしれないのを。

 

「茶番だな」

「興味ない」

 

 それでも、二人はどこまでも食蜂操祈の傍に立つ。

 

「自分の失敗を他人に押し付けて何が楽しい?検証不能であればあるほど、反論の余地だってなくなるんだ。アンタたちは、まず自分が失敗してもいい理由を作ってから、安心して怠けようとしているだけだ。……本当は挫折の原因がこの子のせいじゃないって分かってるくせに」

「かもしれない」

 

 真っ赤な『簒奪の槍』はそういった。激昂するでもなく、冷静に。

 

「自分でも思う、これで本当に正しいのかって。食蜂操祈という超能力者(レベル5)を攻撃しようとするたびに、まるで俺自身の良心のようなものが疼く。すべて我々の弱い心が生んだ怪物の仕業であり、食蜂操祈なんて言う外的要因は一切関係ないのかもってな」

 

 でも、と彼は言う。これまでのすべてを否定するために。

 

「だからこそ、怪しいと思わないのか?」

「「……」」

「俺が自身の良心だと思っているこの疼き、それ自体が誰かの利益のために生み出されたものである可能性も否定できないだろう」

「だったら、こうも考えられないか?」

「……?」

「お前が食蜂操祈を怪しい(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)と思う心自体が(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)誰かに操られたもの(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)である可能性は?(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)

 

 それこそ、妄想だと切り捨てられるべきことだろう。食蜂操祈の場合、「心理掌握」という根拠がある。だからこそ、彼らは行動を起こせる。

 しかし御坂は、そう思うこと自体が誰かに仕組まれたものだと言っているのだ。

 

「お前らの言い分は、食蜂操祈が無意識に発生させている力が自分たちを不幸にしたってとこだろ。そして、今もなおその影響を受けていると。……その考え自体が、食蜂操祈を恨む誰かに利用されているのではと考えないのか?」

「……、」

「ここは学園都市、超能力者が存在する世界だ。あらゆる可能性を否定できない」

「ならばこそ、俺はお前たちの怒りを正しいものと受け止めた上で、改めて問いかける。それが正しいものだとして、こんな理由でくたばるなんて間違っているだろう。どう考えても理に適わない。なら、理を歪めたのは何だ?誰が、何のために君たちを奮い立たせているのかを考えるべきだ」

 

 詰んだ、と食蜂は思う。

 今何を叫んでも、信用性に欠けるからだ。つまり、もう自分を助けてくれるものは誰もいない。

 

「決まってるだろ」

「あぁ、そんなもん」

 

 二人は、意図せずして全く同じタイミングで言った。

 

「「どうでもいいよ」」

「………ぁ……?」

 

 思わず、食蜂は掠れた声を出す。二人は振り返ることはしない。少年は右の拳を握り、少女は火花を散らす。

 

「得体のしれない陰謀論なんざ、一ミリも関係ねぇんだよ」

「そもそも、利益不利益のために俺たちはここに立ってるんじゃねぇ」

「いいか、チンピラ。俺たちの思いが、自分自身の思いから生まれたものだろうが、超能力者(レベル5)によって外から引っ張られたものだろうが」

「俺たちの本心だろうが、誰かに騙されたものであろうが」

 

 二人の友人(ヒーロー)は、その背中で語る。

 

 

「今にも泣きだしそうな女の子を守る側に立てりゃあ、こっちはそれで本望なんだよ」

「結局のところ、俺たちは理屈じゃなくて、その時の感情で動く説明の要らない生き物なんだよ」

 

 

 その二人の回答に

 

「くっ、はは、はははははははははははははははははははは!」

 

 嘲るわけでもなく、ただ笑い

 

「なら、覚悟はいいなピエロども」

「「おうよ、テメェらこそ、死ぬ気でかかってきやがれ」」

 

 瞬間、デッドロックは二人に殺到していく。戦いの火ぶたは、切られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 食蜂と上条と御坂は、必死に戦った。だが、彼らはスキルアウトとは違う。彼らは頭打ちになった能力者であり、ここには高位能力者もいる。

 三人はそれぞれで足りない部分を補い合い、懸命に戦った。

 だが

 

「下がって!くそ、この少女(・ ・)、ショック症状が出ている!とにかく我々に任せてください!」

「こっちの少年は……頭から血を流している。放っておけば後遺症の危険がある!」

「少年のほうはすぐに応急処置をして、病院に運べば何とかなる。だが、この子は……っ!」

 

 御坂の体には、深く突き刺さった燃料タンクの破片があった。

 本来、上条に刺さるはずだったそれは、御坂の放つ電磁力に吸い寄せられ彼女に突き刺さってしまったのだ。

 

「お腹のあたりに、燃料タンクが破裂した時の破片が刺さってるの。これだけでもなんとかしないとぉ……っ!」

「分かっています!だけど現状では無理なんです。ショック症状で体が痙攣しているから、こんな状態で処置を施せば余計に傷口を広げてしまう!」

「病院までは待てない!麻酔力とかで何とかできないのかしらぁ⁉」

「ショック症状の原因は血圧の低下なんです。麻酔なんて使ったらますます下がる。ショック症状を止めるために彼女の息の根まで止めてしまいかねない!そんな危険な方法は使えません!!」

「……、」

 

 このままでは間に合わない。いや、そもそもまだほんの十三歳程度の少女が、これだけの大怪我をして生きているのが奇跡のようなものだ。

 救急員たちの様子を見る限り、たらい回しにされているのは明白だ。

 

「麻酔を使わずに痛みを消す方法があれば、この場で処置は出来るかしらぁ?」

 

 食蜂は意を決して、提案する。

 自身の能力は精神操作の能力で、痛覚を消すことなど造作もないことを。

 救急員は僅かに思考するが、やがてまともな返事をよこさない無線機をフックに叩きつけ

 

「やりましょう。可能性があるなら」

 

 …………この時食蜂は、救急員に伝えていないことがあった。言っていれば間違いなく却下されていたであろうから。

 彼女の能力は、元をたどれば水分操作。それにより人の心を操るのだ。故に、極端に血圧の下がった、つまり水分のバランスに乱れがある場合、万全の効果を発揮できず、後遺症も残る可能性が高い。

 のちに、彼女たちを担当した医者が語った言葉がある。

 

『あのツンツン頭の少年は、所謂、記憶喪失にある。忘れているのはこの少女の事だけのようだがね。むしろ、問題なのはこの少女だ。これは記憶の破損と言うより、呼び出し経路の破損に近いね?質問して分かったが、この少女は、君の名前、君の顔、君の容姿と言った、君の存在は思い出せる。だが、君といつ、どこでどんな話をしたのか、そもそもいつ出会ったのか、それ以前に出会ったことも思い出せない。人の名前や顔は把握できるのに、その人物との思い出を思い出せないというのは、僕も初めてだよ。恐らく、君の能力でもどうにもならないね。後、脳のダメージのせいか僅かながら演算能力も低下しているね。この子は大能力者(レベル4)だそうだが、これからはそこまでの力は出せなくなるだろう。確実に、一つ位が下がる』

 

 この時の食蜂は、そんなことは考えていなかった。ただ、友人を救うか否か。それだけしか頭になかった。

 自分との出会いが思い出せないだけならともかく、レベルが下がるのは完全に予想外だった。本人はさほど気にしないだろうが、そうはいかない。これは彼女なりのけじめだ。

 今はまだ何も言えない。言ったところで忘れられるだけだ。

 食蜂は、彼女からもらったストラップを手に取り、思う。

 

「もしあなたが、私との出会いを覚えられたら、その時は……」

 

 謝らせてほしい。そして、感謝を言いたい。

 あともう一つ。

 彼女はあの時、自分のことを友達だと言った。一度もそんなことを言わなかったのに。それが当然のことであるように。

 ……だからこそ、一度ちゃんと言わせてほしい。と、食蜂は思う。

 

「……ちゃんと友達に、なってくれる?」

 

 そんな叶うはずのない願いを、食蜂操祈は祈り続けるのだった。

 

 

 

 

 




 番外編、つまり今回は過去編ですね。
 新約十一巻の話ではあるけど、正直早い段階で食蜂との意外な関係性を醸し出し過ぎた気がするのでもう書いちゃいました。

 まぁ取りあえず、ここでいったん全員の状態をおさらい。


 御坂の状態:食蜂の事は知ってる。でも、どこで出会ったのか分からない。それどころか初対面の感覚。上条さんとの出会いが殆ど食蜂が関わっていたので彼の事もまとめて忘れてしまった。
       目が覚めたら病院で、いきなりレベルが下がっててびっくりした。


 上条の状態:普通の記憶喪失。この時、御坂との思い出だけを忘れてしまった。食蜂たちに教えてもらう事も提案されたが、大事な存在は自分で思い出すと言って断った。
       結果、サングラスを掛けていたことは思い出したが、名前や具体的な容姿は思い出せず、ついに本人に出会ってしまった。


 食蜂の状態:御坂に思い出を忘れられたが、上条の事は好き。御坂は親友だと思っている。いつか彼女が自分との出会いを思い出せる日を待ち続ける。
       実はここだけの話、御坂は上条の事が好きなのではないか?と勘違いしているため、抜け駆けはダメだと上条に告白はしていない。


 ゲコ太先生:予想外の状態に仰天。救えなくて残念。


 あれ?なんか番外編なのに凄いシリアスなんだが。本編との温度差えぇ……。
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