御坂美琴になったけどレベル5になれなかった(更新停止中)   作:無視すんなやごらぁぁぁあああああ!

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 実はまだ暗部抗争編に行きません。



16話

 これは、暗部抗争編が始まる少し前の出来事。

 

「……暇だなぁ」

 

 公園の一角で、御坂が呟いた。彼女は今、日向ぼっこと呼ばれる暇つぶしをしていた。

 

「お隣り、失礼しますね?」

「どうぞ~」

 

 特に気にすることもなくそう言った。なにしろ、今日は原作でも何があったか明確に明言されていない空き期間。

 特に大きな問題は起こることはないと高を括っていたのだ。

 だが、この世界は小説とは違う。現実の世界。

 つまり

 

「それでは先生、また後で」

 

 何が起こるか分からないものなのだ。

 御坂の隣に座った女性が、すぐに去っていく。連れてきていたゴールデンレトリバーを置いて。

 

「さて、初めましてだね」

 

 そんな声が、聞こえた。

 

「……精神感応(テレパス)か?」

「私だよ。君はよく知っているだろう?これまでの行動から推察するとそういう類のはずだが?」

 

 そこでようやく気付く。喋っていたのはゴールデンレトリバーだということに。

 

「……大物に会うことになれた自分が怖くなるな。感覚麻痺って来てるじゃねぇか。どうしてくれるんだよ『木原脳幹』さんよぉ」 

「それは少なくとも私のせいではないね?」

 

 科学者でありながら犬の体で、魔術を知らずして『魔神』をも殺せる存在。そんなバケモノが今目の前にいる。

 

「で?もうこれしきの事じゃ驚かなくなったスーパー御坂さんに何の御用で?」

「……ふむ」

 

 脳幹は背負っていたカバンから飛び出たアームに差し出された葉巻を咥え

 

「安心するがいい、今日は私の独断専行と言う奴だ。アレイスターは関係ない」

「どっちにしろ安心できる要素はないな」

 

 こいつについて少しだけ説明しておこう。

 簡単に言えば、木原の親玉的存在。ロマンチストで、元は人間だったが、犬の脳に演算回路を外付けして自身の脳を拡張し天才的な頭脳を持って生まれたキチガイ。

 そして、アレイスターの友人であり、彼の計画の要の一つでもある。

 

「それで?本当に何の用なんだよ。俺はこの後準備があるんだが」

「どう見ても暇そうだったがね。……私の目的は、計画(プラン)を歪める存在の排除だ」

「じゃあ安心しろ。俺はアレイスターの計画を邪魔しようとは思っていない」

「その言い方は、彼の計画を知っていると捉えて良いのかね?」

「オーケーオーケーオーケー牧場」

「先ほどと随分キャラが違うようだが?」

「馬鹿になってるんだ察しろ天才」

 

 無茶ぶりもいいところである。

 

「では、少し真面目に答えてもらおうか」

「『位相』を消してまっさらな世界を取り戻すこと。あとは……、いや、これは今はいいか」

「あぁ、十分だ。やはり魔術についても理解があるか」

「まぁな。後、アレイスターの呪いのことも言ったほうが良いか?」

「そこまで行くとなると、こちらのことは筒抜けのようだね」

 

 原作知識と言うのはこういう時チートだ。

 

「では本題に入ろう。学園都市から出て行ってくれ」

「唐突だな。そんなに俺が邪魔か?」

「あぁ。それで、返事は?」

「嫌だ」

 

 即答だった。

 

「ふむ、理由は?あぁ、出て行った後のことを気にしてるなら問題ない。ある程度の支援もするし、君の家族や無関係な(・ ・ ・ ・)友人が傷つくこともないよう善処する。出ていく理由(カバーストーリー)もこちらで用意するし、行きたいところがあるなら国内外を問わず、好きな場所を言いたまえ。指定された場所での君の最低限の生活、そして安全は保障する」

「そういう問題じゃない」

「……」

「これはまぁ、もう意地みたいなものだ」

「ほう……」

 

 御坂ははっきりと自分の意見を口にする。

 

「確かにこの街や、お前らのやろうとしていることには危険が多い。元々御坂美琴はお前らのプランに深くかかわっていない以上、ここで学園都市を去るのは最も安全な選択だと思う」

「ではなぜ?」

「でも、ここでしか見れないものもある。ここで過ごしていて分かった。この世界は二次元(フィクション)なんかじゃない。現実(リアル)だ。だから、決められた物語に従って生きるのは嫌だ」

「……」

「ちょっと怖いが、それをするのが少し楽しい。これは、この街にいるからわかったこと。だから、ここを離れる気はない。汝の欲するところを為せ、それが汝の法とならんってな」

「なるほど、それが君のロマンか」

「そういうこと。……あ、そうだ」

 

 丁度いい、欲しいものがあるんだ。

 

「なにかね?」

「いやあのね、対魔術式駆動鎧(アンチアートアタッチメント)頂戴?」

「……」

 

 なんかすごい睨まれた気がする。

 

「……それを知っているのは予測していたが、寄りにもよって欲しいと言うか」

「いいじゃん、いずれは御坂美琴が入手するものなんだし」

「……本当か?」

「マジ」

「……だが、能力者の君が使えば反動が出るぞ?」

「安心して、言うて鼻血が出るくらいだから」

「……そんなに欲しいのか?君にはもう十分力があるだろう?」

「こんなんじゃ『魔神』にゃあ遠く及ばないしな。それに、すぐに戦力はインフレするから」

 

 原作御坂はこれを借りパクしてたが、正式に貰えば文句は言われないはず。

 

「生憎、あれはまだ完成していない」

「お、ってことは?」

「あぁ。完成した場合、二つ目を君に合わせたものとして送ろう。アレイスターには私から説明しておく」

「あざっす!」

「その代わり、アレイスターの邪魔になるようなことは控えてくれよ?」

「大丈夫ですよ。俺の知識にある通りに動くんで基本は邪魔にならないはずっス」

 

 流石木原センセイ!話が分かる!

 

「……はぁ、どうしてこうなったのか」

「あ、弟子さんが来たぞ」

「む、もうかね?」

「先生、そちらの方に飲み物をと思ったのですが」

「あ、貰います貰います。……く~、普通のお茶って旨い!」

「では、この苺おでんを頂こう」

 

 え、それ飲むの?

 

「この時期だ、熱いものでもいいだろう?」

「先生、そういうことじゃないと思います」

「?」

「意外とまともな感性してるんですね木原唯一さん」

「そうでもありませんよ御坂美琴さん」

 

 ……さて

 

「そろそろ行きますわ。またなセンセイ。……あ」

「どうしたのかね?」

「……いや、やっぱ何でもないです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……浜面のこと言い忘れてたな。……ま、いっか。説明めんどくさいし」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ、連絡は一件、アレイスターか」

『……なんのつもりだ?彼女に……いや、()にあれを与えるなど……』

「落ち着け、彼女は君の邪魔をしようとするわけではない。君も見ていただろう?」

『……』

「彼女は君の邪魔をしたいわけではない。彼女のやりたいことが偶々君の邪魔に繋がっているだけだ。それに、これからはある程度自粛してくれるだろう」

『……だからと言って……いや、そうだな。万が一の時はすぐさま排除すればいい』

「彼女の知識と運を持ってすればすべて無駄に終わりそうだがね」

 

 御坂美琴の深い事情を知るのは、今のところ彼らだけである。

 

「それに、()がかつていた世界は……、世界が異なるとはいえ、『純粋な物理法則が支配する世界』だ。言わば、貴重なサンプルでもある」

『あぁ、だから私もある程度は目を瞑ってきた』

「なら、もう少し待つといい。彼はきっと、君に貢献してくれるはずだ」

 

 御坂美琴がアレイスターの計画に完全に協力するのは、まだ少し先の話である。

 

 

 

 

 




 次こそは暗部抗争編を……っ!

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