御坂美琴になったけどレベル5になれなかった(更新停止中)   作:無視すんなやごらぁぁぁあああああ!

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 イギリスクーデター編ようやく終わりが見えてきたぜ。



27話

 砲撃の直撃と、御坂の攻撃。

 この二つの攻撃に挟み撃ちにされれば、並の相手では(・ ・ ・ ・ ・ ・)ただでは済まない。

 

「やったか?」

「上条さん、それフラグだから」

 

 だが、相手は並の相手ではない。

 爆発の余波で発生した煙が晴れ、中から、ほぼ無傷のキャーリサが現れる。

 

「ほら言わんこっちゃない!全部上条さんのせいだからな!」

「なんでだよ⁉俺何もしてないだろ!」

 

 だが、御坂にもこの程度で倒れないのは分かっていた。

 

「いいや、流石に今のは、ちょっと効いたし」

「ちょっとって、嘘でしょ?」

「本当はもうちょっと危機感を煽って、母上のエリザードを招き寄せてから使う予定だったんだけど」

 

 そういったキャーリサは、自身の胸に手を入れ

 

「エロいな」

「だな……って何言わせんの⁉」

 

 キャーリサは胸の中から、トランシーバーを取り出した。

 

「ドーバーで哨戒中の駆逐艦ウィンブルドンに告ぐ。バンカークラスター搭載の巡航ミサイルを発射するの。照準はバッキンガム宮殿!」

 

 あ、やばい。御坂は素直にそう思った。

 

「バンカークラスター……ッ!」

 

 軍用のシェルターを破壊するために開発された、特殊弾頭だ。空中で分解を起こして、一発から二百発ほどの小弾をばらまく。

 一発で半径三キロ四方が吹き飛ぶような代物である。平たく言うと――

 

「――正気かテメェ!そんなもの使用したら、宮殿どころじゃない!ロンドン市街が吹き飛ぶぞ!」

 

 上条が叫ぶが、当の本人はどこ吹く風だ。

 

「やらせはしません。空中に防護結界を張って迎撃します」

「マッハ五で飛来する巡航ミサイルに、間に合えばな」

 

 神裂は、空中に半径百メートル単位でワイヤーを張り巡らせた。

 聖人の領域にいるからこそ可能な、街のブロック一つを覆う防護魔術。

 

「無防備だな。思惑通りだし」

 

 それを分かっていたとばかりに切り裂くキャーリサ。

 その直後、バンカークラスターの小弾頭が降り注ぎ、御坂達は吹き飛ばされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どれだけ眠っていたかは分からない。だが、目覚めなければならない。それは分かっている。

 だから、彼女は目を開けた。

 

「……くッ!」

「御坂⁉無事かお前⁉」

 

 全身ボロボロの上条が、御坂の身を案じる。

 

「なんとかな……」

 

 だが、言葉とは裏腹にそこまでダメージはない。

 爆発を受ける直前に雷神モードになり、自分の周りを砂鉄バリアで覆ったからだ。

 だが、砂鉄で完全に防ぐことなどできるはずもなく、ダメージをある程度受けてしまった。

 

「後で新しい服買わねぇとな」

「――駆逐艦ウィンブルドンに告ぐ。バンカークラスター、続けて発射準備せよ」

 

 キャーリサが無線で指示を出した。

 

「諦めて……たまるか……っ!」

「あはは!でもどうするの?二発目のバンカークラスターはもう到着するの」

 

 彼女の言う通り、既にバンカークラスターは目と鼻の先にあり

 

「吹き飛べ愚民ども!これが我が『軍事』の本領だ!」

 

 そうして、またしてもイギリスが吹き飛ばされ――

 

「ゼロにする!」

 

 ――ることはなく、バンカークラスターは途中で勢いを失い墜落した。爆発も起こらない。

 

「このクーデターが終わったら、私の首は跳ねてもらって結構。ですが、その下準備は我らの手で」

 

 いつの間にか現れていた騎士団長(ナイトリーダー)や、『騎士派』の騎士たちが、キャーリサに立ち向かっている。

 

「願わくば、再びあなた達王室派が力を合わせ、フランスやローマ正教と正しく向き合ってくれることを!」

 

 そう言って、騎士団長は上条達のほうを向き

 

「すまない。我が国と王女の行く末を、君達に預けっぱなしにしてしまったな」

「おう。あいつを止めるために、協力してもらうぞ!」

「騎士団長。さっきの姉上の狡猾な演説に踊らされたか?」

「あなた様をお助けする原動力となるならば、それも一興でしょう」

 

 それを聞いたキャーリサは

 

「忌々しいが、バンカークラスターを使い切るしかなさそうだな」

「私のソーロルムの術式は、カーテナには及ばずとも、バンカークラスター程度なら攻撃をゼロにできます。それでも無駄遣いなさる気ですか?」

「当然織り込み済みなの。ウィンブルドンから二十四発、キングヘンリー・ザ・セブンスから二十六発、シャーウッドから十五発、私がどれかを幻術で隠せば、標的を定めねば使えないお前の術式では防げまい」

「くっ……ッ!」

「待機中の全駆逐艦に次げる。巡航ミサイルを全弾発射せよ――」

 

 キャーリサが指示を出そうとした瞬間、彼女を巨大な黒い影が覆った。

 

「ッ⁉」

 

 いやな予感がしたキャーリサは、咄嗟にその場を離れる。

 次の瞬間、彼女の頭上から何かが飛来してくる。

 

「なッ!アンテナ⁉」

 

 それは、巨大なアンテナだった。

 

「これで、軍への無謀な指示は出せまい」

 

 そしてその上に、誰かが立っていた。

 

「なるほど、余計な真似をしてくれるし……ッ!」

 

 非常に忌々しいと言った様子で、アンテナの上に立つ人物を睨みつけるキャーリサ。

 

「アックア!」

 

 上条が、その名を叫ぶ。神の右席にして、後方を司るもの。傭兵であり、イギリスの為に戦った男。

 ウィリアム=オルウェル。またの名を、後方のアックア。

 

「遅れたか。科学については不得手でな。付近の軍用アンテナを、片っ端から破壊するのに手間取ってしまったのである」

「……頭おかしい」

 

 思わず御坂が呟く。

 彼女の言う通り、まともな人間の思考ではない。脳筋は極めるとやばいを体現している。

 ウィリアムは騎士団長の隣に立つ。

 

「よもやこの人生でもう一度、お前に背中を預ける時が来るとはな」

「せいぜい足は引っ張らぬようにな」

「ぬかせ。行くぞ!互いの十年の研鑽を、それぞれ点検してみることにしよう!」

 

 僅かに、ともに戦えるのが嬉しいというように、騎士団長は叫ぶ。

 

「……こっちも準備しとくか」

 

 そう、御坂が呟いた。

 そうしている間にも、騎士団長たちはキャーリサへと向かっていく。

 

「チッ」

 

 騎士団長は左から、ウィリアムは右から、それぞれ攻めていく。

 キャーリサは騎士団長に残骸をぶつけ動きを封じ

 

「切り飛ばすぞ首!」

 

 ウィリアムとキャーリサが打ち合う。だが、その反動に、キャーリサの方が耐えきれず、僅かに押し戻される。

 その瞬間

 

「二人だけで戦ってると思わないことです。『唯閃』!」

 

 キャーリサの隙を突き、神裂が攻撃する。その攻撃を全力で回避し、三人に残骸物質をぶつけるキャーリサ。

 残骸物質の質量を支えきれず、三人がそれぞれ吹き飛ばされていく。

 聖人や、それに匹敵する怪物が、三人もいるにはも関わらず、キャーリサはそれを圧倒している。

 

「なんて……ッ!」

 

 上条が思わずつぶやく。

 キャーリサは再び残骸物質をぶつけようとするが、神裂たちは既にそれを見切り、完璧に残骸物質を切り裂いた。

 そして、ウィリアムの攻撃の余波で小石がキャーリサに向かって飛んでいく。

 もちろん、今までの彼女なら、この程度は気にすることではない。今まで通りなら。

 

「ッ⁉」

 

 小石が額に当たった瞬間、キャーリサは思わず後ずさった。

 

「……そろそろお手玉の許容量を超えたか。さすがに聖人級の怪物三人は面倒だし」

「特別な人間だけですべてを成し遂げられると思わないことです。我々が力を出せるのは、それを支えてくれる者がいればこそ」

 

 神裂の言葉に、キャーリサは

 

「かもしれない」

 

 あっさりと認めていた。

 そして、だからこそだろう。

 

「だからこそ、そこに勝機があるとは考えなかったの?」

 

 そんな残酷な手段を、簡単に実行できるのは。

 キャーリサが空中を円を描くように切り裂く。すると、そこから残骸物質が出現し、神裂たち以外(・ ・)を狙って飛んでいく。

 

「しまった!」

 

 彼女の狙いは、戦いについていけず置いてけぼりにされている『騎士派』の騎士たち。

 当然、それを許す神裂たちではない。三人は全力で騎士たちを守ろうとし――

 

 

 

 ――突如、残骸物質が爆発した。

 

 

 

「……は?」

 

 一瞬、何が起こったか理解できなかったキャーリサ。それは他の三人も同様だ。

 しかし、その爆発に覚えがあったのか、キャーリサは、はっ!と御坂のほうを見る。

 

「やはり……お前か!」

「あれ?バレちった?」

 

 三人だけしか戦いについていけていない状況を見た御坂は、他の騎士たちが狙われても大丈夫なように、黒い球体を周囲に展開し、迎撃準備を整えていたのだ。

 

「余計なことを……ッ!」

 

 その瞬間、キャーリサの背後から、何かが現れた。

 

「……ようやく顔を出したの。元凶たる母上よ!」

「好きにやるなら私以上の良策を提示してもらわねばな。だが、私以下の展開になりそうなので止めに来たぞ」

 

 現れたのは、女王エリザードだった。彼女は『カーテナ=セカンド』をもってキャーリサと向かい合う。

 

「ほざけ。そうまでして玉座が惜しいの?」

「いいや。お前の小ささに呆れているだけだ。我が娘よ。本当に国を変えたいなら――」

 

 すると、エリザードはキャーリサに向かって、カーテナ=セカンドを投げつけた(・ ・ ・ ・ ・)

 それをあっさり弾き、キャーリサは問いかける

 

「何を……、考えているの?」

「変革だよ」

 

 そう言って、エリザードはどこからともなく、()を取り出した。

 

「王室専用の国家レベルの魔術の中には、こんなものも含まれてるんだよ!」

 

 エリザードは旗を掲げながら叫ぶ。

 

「ユニオンジャックよ!命じる!四文化から構成される、連合王国を利用して集められたる莫大な力よ。その全てを解放し、今一度イギリス国民へ平等に再分配せよ!」

 

 そして、キャーリサは愕然とする。

 

(カーテナ=オリジナルに注がれていた力が!)

 

 カーテナ=オリジナルから、力が失われていることに。

 

英国女王(クイーンレグナント)エリザードから全国民に告げる。クーデターの発生以来、わけもわからぬまま被害に遭ってる者も多いだろう。だが、今のお前達には抗う力がある。今宵この一夜に限り、お前達は平等にヒーローになれる。その上で選んでほしい。誰のために、誰と共に戦うかを。全てを、自分の頭で判断し、最後に残った正義と勇気と度胸にただ従え!さぁ!群雄割拠たる国民総選挙の始まりだ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いつの間にか、バッキンガム宮殿は、九千万人のイギリス国民に囲まれていた。

 

「……いや待って、多すぎじゃね?」

 

 その規模の大きさに、御坂が間抜けな声で呟く。

 その言葉に、賛同するように上条が言った。

 

「あぁ。あまりにも主人公が多すぎて、俺も御坂もインデックスも神裂もアックアも、みんな霞んじまってる」

「いや確かにそれもやばいけどさ。っていうか、インデックスは元々霞んでる――」

「何か言った短髪?」

「イエ、ナンデモゴザイマセン」

 

 割とドスの利いた声で問いかけるインデックスに、御坂が冷や汗を流しながら答える。

 

「にしても、九千万対一か。とんでもないクソゲーだな」

 

 しかし、キャーリサは諦めない。

 神裂たちが再び猛攻撃を仕掛けるも、それらを捌き続ける。

 

「こんなふざけた負の連鎖から、必ずあいつを引きずり上げてやる!行くぜ御坂!」

 

 そう言って、上条は駆け出した。

 

「……はぁ。へいへい。そんじゃあ、バカ騒ぎも、仕舞にしようか!」

 

 御坂も、手のひらにビー玉サイズの黒い球体を発生させ、キャーリサに向かって走っていく。

 

カーテナの軌道を上に(C T O O C U)斬撃を停止(S A A)余剰分の『天使の力』を再分配せよ(R T S T)

 

 それを援護するように、インデックスが強制詠唱(スペルインターセプト)を発動。キャーリサの持っていたカーテナ=オリジナルが、不自然に跳ね上がる。

 

「アックア!」

「!……、」

 

 上条の叫びに答えるように、足場にするようにアスカロンを差し出すウィリアム。

 そして、上条がその上に乗った瞬間、バットを振るように上条をキャーリサに向かって投げつける。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁああああ!」

 

 上条が右の拳を振るう。それは一瞬でカーテナ=オリジナルを破壊し、上条はキャーリサの真上を通過した(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)

 

「頼むぞ御坂!」

「ッ⁉」

 

 上条の言葉で、咄嗟にキャーリサは自身の目の前にいる存在に気づく。だが、遅い。カーテナ=オリジナルは破壊された。今の彼女に、御坂の攻撃を躱すだけのスピードはない。

 

「食らえ必殺、なんかよく分からない黒い球攻撃!」

 

 締まりのない言葉とともに、キャーリサに向かって黒い球体がぶつけられる。その瞬間、凄まじい爆発とともに、キャーリサは吹き飛ばされていった。

 

 

 

 




 いい加減黒い球体に名前が欲しいな。何か考えるか。

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