御坂美琴になったけどレベル5になれなかった(更新停止中) 作:無視すんなやごらぁぁぁあああああ!
砲撃の直撃と、御坂の攻撃。
この二つの攻撃に挟み撃ちにされれば、
「やったか?」
「上条さん、それフラグだから」
だが、相手は並の相手ではない。
爆発の余波で発生した煙が晴れ、中から、ほぼ無傷のキャーリサが現れる。
「ほら言わんこっちゃない!全部上条さんのせいだからな!」
「なんでだよ⁉俺何もしてないだろ!」
だが、御坂にもこの程度で倒れないのは分かっていた。
「いいや、流石に今のは、ちょっと効いたし」
「ちょっとって、嘘でしょ?」
「本当はもうちょっと危機感を煽って、母上のエリザードを招き寄せてから使う予定だったんだけど」
そういったキャーリサは、自身の胸に手を入れ
「エロいな」
「だな……って何言わせんの⁉」
キャーリサは胸の中から、トランシーバーを取り出した。
「ドーバーで哨戒中の駆逐艦ウィンブルドンに告ぐ。バンカークラスター搭載の巡航ミサイルを発射するの。照準はバッキンガム宮殿!」
あ、やばい。御坂は素直にそう思った。
「バンカークラスター……ッ!」
軍用のシェルターを破壊するために開発された、特殊弾頭だ。空中で分解を起こして、一発から二百発ほどの小弾をばらまく。
一発で半径三キロ四方が吹き飛ぶような代物である。平たく言うと――
「――正気かテメェ!そんなもの使用したら、宮殿どころじゃない!ロンドン市街が吹き飛ぶぞ!」
上条が叫ぶが、当の本人はどこ吹く風だ。
「やらせはしません。空中に防護結界を張って迎撃します」
「マッハ五で飛来する巡航ミサイルに、間に合えばな」
神裂は、空中に半径百メートル単位でワイヤーを張り巡らせた。
聖人の領域にいるからこそ可能な、街のブロック一つを覆う防護魔術。
「無防備だな。思惑通りだし」
それを分かっていたとばかりに切り裂くキャーリサ。
その直後、バンカークラスターの小弾頭が降り注ぎ、御坂達は吹き飛ばされた。
どれだけ眠っていたかは分からない。だが、目覚めなければならない。それは分かっている。
だから、彼女は目を開けた。
「……くッ!」
「御坂⁉無事かお前⁉」
全身ボロボロの上条が、御坂の身を案じる。
「なんとかな……」
だが、言葉とは裏腹にそこまでダメージはない。
爆発を受ける直前に雷神モードになり、自分の周りを砂鉄バリアで覆ったからだ。
だが、砂鉄で完全に防ぐことなどできるはずもなく、ダメージをある程度受けてしまった。
「後で新しい服買わねぇとな」
「――駆逐艦ウィンブルドンに告ぐ。バンカークラスター、続けて発射準備せよ」
キャーリサが無線で指示を出した。
「諦めて……たまるか……っ!」
「あはは!でもどうするの?二発目のバンカークラスターはもう到着するの」
彼女の言う通り、既にバンカークラスターは目と鼻の先にあり
「吹き飛べ愚民ども!これが我が『軍事』の本領だ!」
そうして、またしてもイギリスが吹き飛ばされ――
「ゼロにする!」
――ることはなく、バンカークラスターは途中で勢いを失い墜落した。爆発も起こらない。
「このクーデターが終わったら、私の首は跳ねてもらって結構。ですが、その下準備は我らの手で」
いつの間にか現れていた
「願わくば、再びあなた達王室派が力を合わせ、フランスやローマ正教と正しく向き合ってくれることを!」
そう言って、騎士団長は上条達のほうを向き
「すまない。我が国と王女の行く末を、君達に預けっぱなしにしてしまったな」
「おう。あいつを止めるために、協力してもらうぞ!」
「騎士団長。さっきの姉上の狡猾な演説に踊らされたか?」
「あなた様をお助けする原動力となるならば、それも一興でしょう」
それを聞いたキャーリサは
「忌々しいが、バンカークラスターを使い切るしかなさそうだな」
「私のソーロルムの術式は、カーテナには及ばずとも、バンカークラスター程度なら攻撃をゼロにできます。それでも無駄遣いなさる気ですか?」
「当然織り込み済みなの。ウィンブルドンから二十四発、キングヘンリー・ザ・セブンスから二十六発、シャーウッドから十五発、私がどれかを幻術で隠せば、標的を定めねば使えないお前の術式では防げまい」
「くっ……ッ!」
「待機中の全駆逐艦に次げる。巡航ミサイルを全弾発射せよ――」
キャーリサが指示を出そうとした瞬間、彼女を巨大な黒い影が覆った。
「ッ⁉」
いやな予感がしたキャーリサは、咄嗟にその場を離れる。
次の瞬間、彼女の頭上から何かが飛来してくる。
「なッ!アンテナ⁉」
それは、巨大なアンテナだった。
「これで、軍への無謀な指示は出せまい」
そしてその上に、誰かが立っていた。
「なるほど、余計な真似をしてくれるし……ッ!」
非常に忌々しいと言った様子で、アンテナの上に立つ人物を睨みつけるキャーリサ。
「アックア!」
上条が、その名を叫ぶ。神の右席にして、後方を司るもの。傭兵であり、イギリスの為に戦った男。
ウィリアム=オルウェル。またの名を、後方のアックア。
「遅れたか。科学については不得手でな。付近の軍用アンテナを、片っ端から破壊するのに手間取ってしまったのである」
「……頭おかしい」
思わず御坂が呟く。
彼女の言う通り、まともな人間の思考ではない。脳筋は極めるとやばいを体現している。
ウィリアムは騎士団長の隣に立つ。
「よもやこの人生でもう一度、お前に背中を預ける時が来るとはな」
「せいぜい足は引っ張らぬようにな」
「ぬかせ。行くぞ!互いの十年の研鑽を、それぞれ点検してみることにしよう!」
僅かに、ともに戦えるのが嬉しいというように、騎士団長は叫ぶ。
「……こっちも準備しとくか」
そう、御坂が呟いた。
そうしている間にも、騎士団長たちはキャーリサへと向かっていく。
「チッ」
騎士団長は左から、ウィリアムは右から、それぞれ攻めていく。
キャーリサは騎士団長に残骸をぶつけ動きを封じ
「切り飛ばすぞ首!」
ウィリアムとキャーリサが打ち合う。だが、その反動に、キャーリサの方が耐えきれず、僅かに押し戻される。
その瞬間
「二人だけで戦ってると思わないことです。『唯閃』!」
キャーリサの隙を突き、神裂が攻撃する。その攻撃を全力で回避し、三人に残骸物質をぶつけるキャーリサ。
残骸物質の質量を支えきれず、三人がそれぞれ吹き飛ばされていく。
聖人や、それに匹敵する怪物が、三人もいるにはも関わらず、キャーリサはそれを圧倒している。
「なんて……ッ!」
上条が思わずつぶやく。
キャーリサは再び残骸物質をぶつけようとするが、神裂たちは既にそれを見切り、完璧に残骸物質を切り裂いた。
そして、ウィリアムの攻撃の余波で小石がキャーリサに向かって飛んでいく。
もちろん、今までの彼女なら、この程度は気にすることではない。今まで通りなら。
「ッ⁉」
小石が額に当たった瞬間、キャーリサは思わず後ずさった。
「……そろそろお手玉の許容量を超えたか。さすがに聖人級の怪物三人は面倒だし」
「特別な人間だけですべてを成し遂げられると思わないことです。我々が力を出せるのは、それを支えてくれる者がいればこそ」
神裂の言葉に、キャーリサは
「かもしれない」
あっさりと認めていた。
そして、だからこそだろう。
「だからこそ、そこに勝機があるとは考えなかったの?」
そんな残酷な手段を、簡単に実行できるのは。
キャーリサが空中を円を描くように切り裂く。すると、そこから残骸物質が出現し、神裂たち
「しまった!」
彼女の狙いは、戦いについていけず置いてけぼりにされている『騎士派』の騎士たち。
当然、それを許す神裂たちではない。三人は全力で騎士たちを守ろうとし――
――突如、残骸物質が爆発した。
「……は?」
一瞬、何が起こったか理解できなかったキャーリサ。それは他の三人も同様だ。
しかし、その爆発に覚えがあったのか、キャーリサは、はっ!と御坂のほうを見る。
「やはり……お前か!」
「あれ?バレちった?」
三人だけしか戦いについていけていない状況を見た御坂は、他の騎士たちが狙われても大丈夫なように、黒い球体を周囲に展開し、迎撃準備を整えていたのだ。
「余計なことを……ッ!」
その瞬間、キャーリサの背後から、何かが現れた。
「……ようやく顔を出したの。元凶たる母上よ!」
「好きにやるなら私以上の良策を提示してもらわねばな。だが、私以下の展開になりそうなので止めに来たぞ」
現れたのは、女王エリザードだった。彼女は『カーテナ=セカンド』をもってキャーリサと向かい合う。
「ほざけ。そうまでして玉座が惜しいの?」
「いいや。お前の小ささに呆れているだけだ。我が娘よ。本当に国を変えたいなら――」
すると、エリザードはキャーリサに向かって、カーテナ=セカンドを
それをあっさり弾き、キャーリサは問いかける
「何を……、考えているの?」
「変革だよ」
そう言って、エリザードはどこからともなく、
「王室専用の国家レベルの魔術の中には、こんなものも含まれてるんだよ!」
エリザードは旗を掲げながら叫ぶ。
「ユニオンジャックよ!命じる!四文化から構成される、連合王国を利用して集められたる莫大な力よ。その全てを解放し、今一度イギリス国民へ平等に再分配せよ!」
そして、キャーリサは愕然とする。
(カーテナ=オリジナルに注がれていた力が!)
カーテナ=オリジナルから、力が失われていることに。
『
いつの間にか、バッキンガム宮殿は、九千万人のイギリス国民に囲まれていた。
「……いや待って、多すぎじゃね?」
その規模の大きさに、御坂が間抜けな声で呟く。
その言葉に、賛同するように上条が言った。
「あぁ。あまりにも主人公が多すぎて、俺も御坂もインデックスも神裂もアックアも、みんな霞んじまってる」
「いや確かにそれもやばいけどさ。っていうか、インデックスは元々霞んでる――」
「何か言った短髪?」
「イエ、ナンデモゴザイマセン」
割とドスの利いた声で問いかけるインデックスに、御坂が冷や汗を流しながら答える。
「にしても、九千万対一か。とんでもないクソゲーだな」
しかし、キャーリサは諦めない。
神裂たちが再び猛攻撃を仕掛けるも、それらを捌き続ける。
「こんなふざけた負の連鎖から、必ずあいつを引きずり上げてやる!行くぜ御坂!」
そう言って、上条は駆け出した。
「……はぁ。へいへい。そんじゃあ、バカ騒ぎも、仕舞にしようか!」
御坂も、手のひらにビー玉サイズの黒い球体を発生させ、キャーリサに向かって走っていく。
「
それを援護するように、インデックスが
「アックア!」
「!……、」
上条の叫びに答えるように、足場にするようにアスカロンを差し出すウィリアム。
そして、上条がその上に乗った瞬間、バットを振るように上条をキャーリサに向かって投げつける。
「はぁぁぁぁぁぁぁああああ!」
上条が右の拳を振るう。それは一瞬でカーテナ=オリジナルを破壊し、上条はキャーリサの
「頼むぞ御坂!」
「ッ⁉」
上条の言葉で、咄嗟にキャーリサは自身の目の前にいる存在に気づく。だが、遅い。カーテナ=オリジナルは破壊された。今の彼女に、御坂の攻撃を躱すだけのスピードはない。
「食らえ必殺、なんかよく分からない黒い球攻撃!」
締まりのない言葉とともに、キャーリサに向かって黒い球体がぶつけられる。その瞬間、凄まじい爆発とともに、キャーリサは吹き飛ばされていった。
いい加減黒い球体に名前が欲しいな。何か考えるか。