御坂美琴になったけどレベル5になれなかった(更新停止中)   作:無視すんなやごらぁぁぁあああああ!

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 四巻バゲージシティ編開始でーす!

 御坂は第三次世界大戦の事はトールからある程度聞いているので、上条達の事なんかは分かります。
 それ以外の……木原とかは専門外ですね。




二話

 格闘大会、『ナチュラルセレクター』。

 東欧のバゲージシティにて開催される、格闘大会。一対一のトーナメントで雌雄を決し、優勝者には『学園都市製の超能力に代わる、グローバルスタンダードの証明』が与えられる。

 参加資格、年齢制限、性別は問われず、舞台は直径三十メートルの円形ステージ。試合開始と共に全ての入口は塞がれる。

 脱出は不可能、攻撃により壁が破壊されてしまう事自体に罰則はないが、そこから外へ出た場合は場外とし失格。

 

 他にも細かいルールはあるが、取りあえず省略。

 

 御坂美琴は、その大会の会場に来ていた。

 

「……暇ね」

 

 彼女のいる場所は、観客席ではあるが、正直格闘大会など欠片も興味がない。なので、目の前で凄い戦いが繰り広げられても、うわーすごーいくらいにしか思えない。

 

「それ以前に……ここで何が起こるんだっけ?」

 

 確か『グレムリン』の提唱する『全体論の超能力』が深く関わっていたはずだ。

 

「……こんなむさ苦しいの見てても気が滅入るわ。移動しましょ」

 

 そういって、御坂は観客席を降りていく。

 しばらく会場を歩いていたのだが

 

「……ん?」

 

 ふと、開きっぱなしになっているドアを見つけた。

 

「……お邪魔しまーす」

 

 気になって中を覗いてみると

 

「はぁ、はぁ……ッ!」

 

 軽薄そうな金髪の男が、歯が折れ、血まみれの状態で、息絶え絶えで横たわっていた。

 その奥には、虚空を見つめたまま機械のように固まる、サングラスを頭にかけた男性がいた。

 

「……どういう状況?」

「!……、侵入者?まさか、また学園都市が……がッ!」

 

 嫌な予感がした御坂は咄嗟に電撃を放ち、死にかけの男を気絶させる。

 ボーっとしている男はいつまでも御坂に気づかない。

 

(!……、電撃……確か、御坂美琴も出せるけど……やり方なんて分からないのに、どうして?)

 

 それは言ってしまえば、条件反射。無意識の行動だった。

 学園都市の治安の悪さや、数々の死線を潜り抜けたおかげか、そう言った反応を無意識に行えるようになっていたのだ。

 

「……痛ッ!……なに、今の頭痛……?」

 

 突然、御坂に頭痛が襲い掛かるが、すぐに収まった。

 もしや、記憶が戻る前兆か何かか?ならば、やはりここに来たことは間違いではなかったのだろう。

 

「……とりあえず、この二人は縛っておいて……どうやって?」

 

 ……仕方ない。剥ぐか。

 そう思った御坂は、二人をパンイチの状態にし、近くに落ちていたA4の何も書かれていないクリアファイルに、それまた偶々落ちていたペンで『極小』・『不能』とそれぞれ書き、それぞれの股間に置き、二人から剥いだ服で二人を亀甲縛りにした。股間には余った布地をバラまいていった。

 まさに鬼畜の所業。そして、それを躊躇いなく行えることに疑問を持ちつつ、関係ないかと思い、二人を目隠しして放置した。

 

「……にしても、何が起こってるのかね~」

 

 あの二人は、少なくとも自分が知る限りの知り合いではないし、大会の関係者ではないだろう。

 ならば、これくらいは許されるはずだ。

 

「……ん?」

 

 今日は随分と人と会うな。

 御坂の目の前には黒髪お団子ヘアの少女が、首元からぶら下げた携帯を揺らしながらやってきた。

 普通ならスルーするべきだろうが、何故かその少女から、御坂は目が離さなかった。

 

「あっ」

 

 少女は御坂の存在に気づくと

 

「うんうん。間違いない、本物の御坂美琴だよ」

「……アンタ誰よ?」

「?」

 

 御坂が突如話しかけてきた少女に質問すると、何故か不思議そうな顔をされた。

 

「なによ?」

「知らないの?私のこと。御坂美琴(・ ・ ・ ・)なのに?」

「どういうことよそれ……」

 

 すると、少女は何か考え込むような動作をした後

 

「うん、辛いけど。しょうがないよね?『木原』ならそうするんだよね?数多おじちゃん?」

 

 瞬間、爆ぜるように突進してくる少女。

 

「ハァ⁉」

 

 その動きに驚きつつも、咄嗟に距離をとる御坂。

 少女は何事かを呟きながら、御坂に殴りかかるが、捌くのに必死な彼女の耳には内容が入ってこない。

 

(ちょっ⁉どんな動き……可笑しいでしょこれ⁉)

 

 どう考えても小学生ほどの少女がしていい動きではない。一体どうやっているのか。

 まぁ、それ以前にその動きについていける御坂も十分やばいのであるが。

 

「けど……!」

「うん。美琴お姉ちゃんなら、次は雷神モード(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)だよね(・ ・ ・)?」

 

 御坂は天井に電撃を放ち(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)照明を落とす(・ ・ ・ ・ ・ ・)

 

「ッ⁉」

「残念だったわね。こっちの手の内を予測してたみたいだけど、その様子じゃ当てが外れたのかしら?」

 

 少女は首にぶら下がっている携帯端末で壁中にモニターのようなものを展開することで、僅かに明かりを確保した。

 

「どうして……?美琴お姉ちゃんは、こんな頭のいい戦い方はしない……っ」

「バカにしてんのか⁉」

 

 少女が何を言っていたのかは分からない。だが、これは好機。

 なにしろ、相手は光のない場所で活動できないようだ。無論、それは御坂も同じこと。だが、彼女には生体電気を感知する力がある。

 これにより、少女の居場所は大体把握できる。少女に向けて電撃を放とうとすると

 

「もしかして……忘れてる?」

 

 少女の何気ない一言。だが、一瞬動きが止まった御坂。

 

(忘れてる?もしかして、この子と私は知り合いなの?)

 

 御坂が失った記憶は、主に人物や出来事などを司る記憶。故に、この少女が自分の知り合いかもしれないという純粋な疑問が、彼女の足を止めた。

 無論、本人と少女に面識はない。だが、互いが互いを一方的に知っているだけだ。

 その状況が、この停滞の時間を生んだ。

 

「……今日の所は勘弁してあげる。美琴お姉ちゃんならこう言うよね?」

「小悪党の逃げ台詞か!待てこら!わたしゃぁンな小物じゃねぇ!」

 

 そうこうしているうちに、少女はどこからかバズーカのようなものを取り出し、発射した。

 

 

 どかァァァァぁあああああんッッ!!!

 

 

 という音とともに、廊下に穴が開いた。

 爆風から目を覆っていた御坂だが、気が付くと少女はいなくなっていた。

 

「……あいつ頭おかしい」

 

 それが、御坂の少女への第一印象だった。

 

「……警備の人とか来たらやばいわね。さっさと逃げるか」

 

 そういって、急いでその場を離れていく御坂。

 

「……ふー。取りあえずこの辺まで来ればセーフかしらね?」

 

 いつの間にか、清潔な地下通路のような所まで来ていた御坂。

 

「……え、なんで?どうやったらそんなところまで来るの?」

 

 悲報。どうやら、御坂美琴は方向音痴のようだ。

 

「いや、これはどう考えてもそういうレベルじゃないだろ!」

「おい」

 

 一人で叫んでいる御坂の背後から、声をかける者がいた。

 

「……誰?」

「それはこちらのセリフだ。なんだこんなところで奇声を上げて。気でも狂ったか?」

「いきなり随分な物言いじゃない。ぶっ飛ばされても文句は言えないわよ?」

「ほう、随分と威勢が良いな」

 

 背後にいたのはメイド服姿の少女だった。年は恐らく御坂と同じくらいだろう。

 何故かあった瞬間から喧嘩腰な二人。

 だが――

 

 ――ゴッ!!と。

 

 いきなり頭上から土砂とともに戦車が降ってきた。

 

「うおッ⁉」

「チッ」

 

 二人はそれぞれ別れることで戦車を躱す。

 

「……なーんで上から戦車?降ってくるなら美少女でしょ普通」

「というか!いったい何だこれは⁉」

「五十トンもあるロシア製の弁当箱だ。文字通り踏み抜いたって事だろう。元々市街地を走らせるようには設計されていない!」

「弁当箱?中に食料でも入ってるの?日本食だと嬉しいんだけど」

「そういう意味じゃないんだが……って馬鹿っ、死にたいのか!」

 

 すると、メイドが戦車に近づこうとするが、それをもう一人の弁当箱がうんたらと説明した女の子が覆いかぶさって止めた。

 直後、戦車の表面で爆発が起きた。

 

「えぇ……なんで?」

「爆発反応装甲でびっしりと覆われている。いわばデカい不発弾さ。下手に近づくと巻き込まれるぞ」

「なるほど。だったら静電気の出番だ。信管を反応させて安全に爆破処理する。辺りには粉塵も舞っているし、ちょっとした理科の実験で簡単に放電できるはずだ」

「理科の実験って言うと一気に難易度が下がった気がするわね」

「やめろ」

 

 話を聞いた御坂は、試しに軽く戦車に電撃を放ってみた。

 その電撃に驚くメイドを他所に、戦車に近づいていく御坂。そんな彼女を、服の裾に手をかけているメイドが何とも言えない顔をしてみている。

 

「……あと一応言っておくけど、この戦車最初っから誰も乗ってなかったわよ」

「えっ」

「……本当だな。機関銃にモニターがつけられている。車内にケーブル、索敵に必要ないアンテナまで」

「……何故わかった?」

「まぁ、こういう能力だし」

 

 御坂が二人にも見えるように手の平で電気を発生させ、バチバチと音を鳴らす。

 メイドの方はほぉ、っと何やら納得したようで、もう一人は目を丸くしてそれを見ている。

 

電撃使い(エレクトロマスター)、学園都市の能力者か。無人かどうかの判断はどうしたんだ?」

「一応、生体電気を感知できるので」

「索敵に困らなそうだな」

 

 そりゃどうも。と、御坂はお礼を言いつつ上を見上げる。御坂はともかく、メイドたちは戦車に道を塞がれている。つまり、行く道は戦車が明けた頭上の穴だけということだ。

 二人もそれを理解しているようで、戦車を踏み台に崩れた通路から外に上がった。勿論御坂もついていく。ぶっちゃけ、一人でいると迷い続けそうで怖い……という訳ではない。断じてない!

 

「「寒いッッ!!」」

 

 そして、そこはマイナス二十度の極寒の世界だった。

 

 

 




 記憶を失ったり諸々の事情でシリアスがちょっと多いかも。

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