御坂美琴になったけどレベル5になれなかった(更新停止中)   作:無視すんなやごらぁぁぁあああああ!

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 今更だけど劇場版のほう全く進んでないじゃん。



四話

「いつでも戦えるように、あっちこっちに置いておいたんだ。でもって感覚器官は宝の持ち腐れだから、センサーとして兼用させていたんだけど……やっぱり使い回しは良くないか。さっきも『木原』とかいう車椅子にすり抜けられたし。目や耳は生きているはずなんだけど、情報を処理する自我の方が『正しい今の自分』を見る事を拒否っちゃってんのかね」

 

 これ一つではない。何か仕方がない事情があり人間に加工を施すのでもない。

 取りあえず周囲一帯に。たとえ使わないとしても被害をキープする。

 

「……生きてるって言えるのこれ?」

 

 御坂が褐色少女に問いかける。

 

「さぁ?でも、出ていくんなら障害物を壊せば良いと思うよ。まーそれってつまり生きている人間の胴体を真っ二つにする事と同じだから、ちょっとばかし苦労すると思うけどね。多分、スーパーで売ってる包丁ぐらいじゃ刃こぼれすると思うなあ、背骨の辺りで。まず鈍器で骨を砕いてから切断にかかるべきだろうけど、それにしたってぬめった脂肪が絡み付くと切れ味も鈍るしね」

 

 そんな生々しいことを聞きたい訳じゃないのに。と、御坂はため息をついた。

 目の前の四角い物体は、「元は」人間だったのだろう。しかし、今の姿を人間と言えるのか。しかし、確実に人間だったものだ。

 自分の身を守るため、これを障害物として破壊するべきか。それとも人間とみて別の方法を考えるか。それを間違っていることと思うべきか、正しいと思うべきか。

 御坂達は顔を見合わせて、小声で作戦会議をする。

 

「(……どうするね?)」

「(やりたくないけど、そこの敵性個体を撃破して退路を作るしかない)」

 

 雲川が近江に尋ね、近江は案を出す。

 

「(そんな簡単に行くとは思えないけど)」

 

 御坂が四角い物体を流し見てそう言う。

 そんな三人を見ていた褐色少女が、待ちくたびれたように言った。

 

「作戦会議は終わったー?じゃあ――」

 

 褐色少女が鋸や黄金の金槌を持って突進してくる。

 

「あーそういえば、まだ名前聞いてなかったわね?」

 

 特に作戦が思いつかなかったので時間稼ぎをする御坂。

 

「マリアン=スリンゲナイヤー。死ぬ前に覚えておきな。学園都市!」

 

 全く止まることなく向かってくるマリアン。

 どうやら、御坂の放つ電撃から、彼女の力が学園都市製であることを見抜いていたようだ。

 時間稼ぎも効果はなかった模様。尤も、本人にその記憶はないが。

 

「学園都市製なら、ますます見逃すわけにはいかないんでね!」

「チッ!やるわよ!」

 

 御坂が全力で、周囲に構うことなく放電する。

 

「な……ッ!」

「チッ!」

 

 その無差別っぷりは、味方をも巻き込みかねないものだった。

 そして、それを躱し、電撃の隙間から御坂の懐に飛び込もうとするマリアン。

 

「ふっ!」

 

 そんなマリアンに向けて、サイドに分かれていた近江が、クナイのようなものをマリアンに投げた。

 それを鋸で防ぐマリアン。

 

「これが私の……」

「バカめ!」

 

 御坂が更に取り出した銀貨を、指で上空に弾く。

 そんな隙だらけの御坂に再び突進するマリアンを――

 

「ふん!」

 

 ――今度は雲川が、足を振り上げて妨害する。

 雲川に向けて黄金の金槌を振り下ろすマリアンだが、その金槌を数ミリ単位でギリギリ躱し、顎を蹴り上げ、バク転するように回転する雲川。

 蹴り上げられつつも、足は地面から離れなかった。ギリギリで踏みとどまるマリアンだったが

 

「全力だァァァァァアアアアアア!!!」

 

 御坂落下する銀貨に、最大限の電撃を発生させた手で掌底を放つと、銀貨は弾丸の如く発射された。

 その一撃は、先ほどまでの牽制用とは比較にならないものだった。音速に匹敵する速度で、マリアンの腹に向かって飛んで銀貨。

 御坂は敢えて時間をかけることで、この一撃の威力を増大させ、スピードを上げ、四角い物体が追い付けなくしたのだ。

 見事銀貨はマリアンを吹き飛ばし、退路を作った。

 

「よっしチャンス!行くわよ!」

「全く、突然放電した時はどうしたかと思ったぞ」

「危うくこちらまで巻き込まれるところだったな」

「悪かったわよ」

 

 御坂の放電は、味方さえ巻き込みかねないほど無差別なほどだった。だが、それが逆にマリアンから逃げ道を奪い、このわずかな圧勝展開を作り出したのだ。

 マリアンが放電の隙間を通って仕掛けてきたが、それは御坂が意図的に作り出したレール。マリアンはそれに乗っかってしまった。その時点で、この展開は既に決まっていたのだろう。

 

「まぁ、アンタ達がついてこれなきゃやばかったかもだけど」

「あまり忍者を舐めないでもらおうか」

「はいはい。凄いわね忍者。しかも、アルコールなんて何処からだ出したのよ?」

 

 それだけではない。四角い物体が彼女たちに追撃をしてこないのも、近江のサポートがあったからこそ。

 彼女が突如取り出したアルコール。度数は七十度前後。ただし一口にエチルアルコールと言っても、蒸留の仕方で性質は大きく変わる。まともにグラスで吞んだら象でも倒れるものだ。

 それを周囲の四角い物体……人間に使用した。それにより、物体はマリアンの指示をまともに聞けなくなったのだ。

 

「そういえな、最初に撃ったお前のアレは、防がれてなかったか?」

 

 雲川が言うのは、御坂が不意打ちで放った電磁力砲(コイルガン)のことだろう。

 

「多分だけど、あの時も、私たちには見えない速度で、四角い物体を出して防いでたか、単純な威力不足のどちらかね」

 

 しかし、過ぎたことを考えても仕方がないだろう。

 それよりも

 

「雲川なんかしたっけ?」

「マリアンを足止めしてやっただろうが!」

「いや、多分あれ近江でもできたと思うけど」

「その時はアルコールを巻いてたから無理だな」

「ほら見ろ!私だってちゃんと手伝ったぞ!」

「はいはいそうですねー」

「軽い⁉」

 

 しかし、不可解な点もある。

 なぜ、近江はアルコールが四角い物体に効くと知っていたのか。あのアルコールは、どう考えても前もって準備されていたものだ。

 つまり、それを必要とする、この展開を知っていたということ。

 

(ま、それはあとでいいか。下手にツッコんで面倒なことになるのも御免だし)

「にしても、あの程度の異能の力なら、甲賀の一部として組み込む意義は薄そうだ」

 

 そんな近江がぼそりと呟いた言葉を、御坂は聞かなかったことにした。

 

「……、」

「どうした御坂?」

 

 しばらく走ると、御坂が立ち止まった。怪訝な視線を向ける二人に対し御坂は

 

「……誰かいる」

「え……?」

「!……、」

 

 雲川が疑問を浮かべ、近江が警戒する。

 

「あら?バレた?」

 

 すると、通路の分岐点から金色の髪と青いドレスを着る女性が姿を現した。

 

「あ、私は別に『グレムリン』でも学園都市の人間でもないから。ただのナチュラルセレクターの参加者ね」

「そうなの?」

「あぁ。サフリー=オープンデイズ」

「取りあえずついてきて。安全な場所は欲しいでしょ?」

 

 そういって、勝手に先行していくサフリー。三人は顔を見合わせた後、取りあえず休み場所は欲しいということで彼女についていくことにした。

 しばらくして、たどり着いたのは医務室だった。更にそこには、ナチュラルセレクターの参加者までいた。

 

「にしても、なんか寒くない?」

 

 御坂が体を擦りながら呟いた。確かに、先ほどから室内にいるにも関わらず吐いた息が白い。

 サフリーの話では、温水暖房施設が破壊されているらしい。残っているのは火力発電所だけで、そこもいずれ落とされるだろうという。

 しかも、それをやっているのは『木原』らしい。

 

「……あ、ちょっと眠い」

「え、おい!寝たら死ぬんじゃないか⁉おい!」

 

 むきゅう~。

 そんなかわいらしい声を出して、御坂は眠りについた。一応、凍死はしなかったと伝えておこう。


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