そらのオルガもの   作:ウルトラネオン

15 / 24
少し短いよ!


イカロスの涙

「誰よアンタ?もしかしてアルファーのマスター?」

 

ポケットに手を突っ込み仁王立ちしている目の前の地蟲(ダウナー)に問いかける。するとフッと不敵に笑い

 

「俺は…鉄華団団長…オルガ・イツカだぞ…!」

 

死にかけの状態で自己紹介してきた。

 

「……なんで死にかけなのよ?」

 

呆れと困惑の表情で地蟲(ダウナー)に聞いて見るが「さあな、よくわかんねえ」と次に話した時は既に元通りに戻っていった。目の前地蟲(ダウナー)――オルガ・イツカは片目を閉じジッと睨むような目で私を見ていた。掴んでいたアルファーを離し改めて向き直る。

 

地蟲(ダウナー)の癖に腹立つ目をするじゃない」

 

「そりゃ家族を傷つけられりゃ誰だってこんな目するさ」

 

「アルファーが?家族?…クスクス、面白い事言うねアンタ!」

 

こんな面白おかしい話しはない。私の足元で這いつくばってる大量破壊兵器が家族?アルファーの本当の姿を見てないからそんな事言える。目の前の地蟲(ダウナー)の頭はお花畑か何か?

 

「嬢ちゃんが何に笑おうがどうだっていいが…ここいらで引いてくれねえか?見たところイカロスと同じエンジェロイドみてえだからイカロスと同じ奴を殺したくねえ」

 

そう言うと地蟲(ダウナー)は来ていた服から一丁の銃を取り出し私に銃口を合わせた。ふぅん?たかだか地蟲(ダウナー)如きがが頭を回して作ったチンケな物で私に勝てると思ってるんだ?アルファーみたいに攻撃しないとでも思ってるのかしら?

 

「フフフッ、アンタってホント面白いわね。そんな物で私を倒せると思ってるんだ?」

 

「オルガ…さん…逃げ…て…」

 

「あら?まだ喋れる力は残ってるのねアルファー」

 

あれだけ痛め付けたというのに喋れるくらいはできるのね。私はアルファーの頭を足で踏みつけようとした瞬間、パンッと銃声が響き私の頬を掠めた。驚いて横を見ると地蟲(ダウナー)の銃口が煙を吹いていた。

 

「どうしてもイカロスをやるってなら俺が相手になってやるよ」

 

「へえ…死にたいんだアンタ?じゃあ…殺してあげるわっ!」

 

私は大きく息を吸い込む。そして、普通の地蟲(ダウナー)なら掠めるだけでも即死に至らしめる私の声を発射した。

 

「や…やめ…」

 

「【超々超音波振動子(パラダイス=ソング)】!!!」

 

放たれた声は音速のスピードでオルガを吸い込むように走っていく。当然、音速のスピードを出す攻撃をオルガは避ける事が出来ず命中してしまう。パラダイス=ソングが通った道は地面を抉り取り、それこそ消滅したかのように見えた。

 

「アッハハハハッ!弱いのに虚勢を張るからそうなるのよ!」

 

頭にノイズが走る。マスター(智樹)の次に色んな事を教えて貰い大事にしてくれた人が消滅した。幾らなんでも体が消滅したら蘇る事も不可能だと――そう感じられた。

 

「クスクス…さあアルファー。次は貴方よ」

 

目の前のニンフがそう告げる。普通ならば誰もが絶望する所だがそうはならなかった。むしろ―――私は涙を流した。

 

「あら?涙?アッハハハッ!アルファーも涙を流す……なんで涙を流せるの?私が解いたのは記憶域のプロテクトだけよ!?」

 

平常から戦闘モードへと切り替わる。私の目は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。全てのプロテクトを解除し、完全に相手を殲滅するための思考プログラム、感情、エネルギー転換し膨大なエネルギーの衝撃波を流す。その衝撃波にニンフも吹き飛ばされかける。

 

「まさか…貴方!?」

 

己の力全て解放した時――

 

「イカロス、そんな力使う必要ねえよ」

 

と声が聞こえた。するとニンフのパラダイス=ソングで抉り取られた地面からコンテニューとカタカナで書かれた土管がパンパカパンパンパ〜ンと軽快な音と共に現れ、その中からオルガさんが現れた。

 

「オルガ…さん?」

 

「はぁ!?どうして生きてるの!?アンタ私のパラダイス=ソングで消滅した筈じゃ!?」

 

放っていた衝撃波は既に収まり驚愕したニンフと信じられない物を見た目でオルガを見つめたイカロス。

 

「俺は鉄華団団長のオルガ・イツカだぜ?こんくらい、そはらのチョップに比べたらなんて事はねえよ」

 

鉄華団の団長だとかそんな理由でどうなる事でもないし、ましてやエンジェロイドの攻撃よりも人間であるそはらのチョップのほうが余程痛いと言うオルガ。その表情はかなり余裕がある顔だった。

 

「ば、馬鹿にしてっ!」

 

「おっと、そうだ嬢ちゃん。これはほんのお返しだ」

 

と言って銃口をニンフを向けずかなりずらして銃を片手で構える。オルガが銃のトリガーを引くと普通ならば銃弾が発射されるものだがオルガの持っている銃からはニンフの放ったパラダイス=ソングの2回りも大きなレーザーが放たれた。そのレーザーは地面を削り取る所か奥に生えている草木までも消滅させた。

 

「なっ……」

 

「どうする嬢ちゃん?このまま続けるってんなら痛い目見る事になるぜ?」

 

「ぐっ……調子に乗るなぁ!」

 

叫びと共にパラダイス=ソングを放とうするニンフ。が、それを見た俺ははため息をついた。ここにはもう1人来てる奴がいる。そいつに任せるとするか。

 

「やっちまえ!ミカァ!」

 

そう――叫んだ瞬間、ミカが地面から這い出て今にも放とうとしていたニンフを()()()()()()()()()()()()()()()()()姿()()()()握られていたメイスを叩きつける。

が…ニンフは直前で気づいたのかパラダイス=ソングを撃つ前にとっさにシールドを張った為何とかして防いだ。それでもダメージは免れなかった。

 

「かはっ…!?」

 

シールド越しとはいえ物理的な力で押さえつけられたニンフはシールドごと地面に突っ込む形で倒れクレーターが作られる。等身大のバルバドスにもなるとミカはバルバドスのコックピットでバルバドスを操縦していた。叩きつけたメイスをもう一度振り上げ、叩きつけようとしたが…

 

「やめろミカ」

 

と、オルガが静かに言ったその一言で三日月はメイスを叩きつける事はしなかった。

 

「どうする嬢ちゃん?まだやるか?」

 

片やニンフ自身の唯一とも言える武器を使っても復活してくるオルガと、巨大な体躯を持った三日月が操縦する三日月に攻撃してこないとはいえウラヌスクイーンに目覚めたイカロス。どう考えても圧倒的にニンフが不利だった。

 

「ぐっ…覚えてなさい…!」

 

捨て台詞を吐くとニンフは翼を広げると空に飛び、遥か向こうに飛び立っていった。逃げていったニンフを確認するとオルガはイカロスに振り向く。

 

「大丈夫かイカロス?」

 

「………はい」

 

元々かなりのダメージを喰らっていたイカロスは小声でしか喋れなかった。それを察したオルガはイカロスに近づき一旦座らせようとするが……

 

「オルガさん…近づかないで下さい…私は…兵器なんです…」

 

と、弱々しく俯きながらオルガを拒絶した。

 

「かつて私は…沢山の人を殺しました。助けを求めてた人も逃げる人も全て…。私は、マスターが嫌いな兵器なんです。だから…」

 

「だからなんだ?」

 

頭に感触が伝わる。オルガの手がイカロスの頭に乗せたのだ。

 

「俺もミカもそはらも守形の兄貴も…そしてお前の智樹(マスター)もお前の事を嫌ったり、ましてや拒絶する事もしねえ」

 

「ですが…」

 

「そんなに不安なら内緒にしちまえばいい。イカロス、お前が兵器である事を隠して智樹とずっと一緒するってのもアリだ。な?ミカ」

 

オルガが後ろに振り返るとバルバドスから元の姿――三日月自身に戻ってオルガ達に近づいていた。

 

「俺もオルガも、イカロスが兵器だってことは誰にも言わない、約束する。でも、本当に決めなきゃいけないのはイカロス自身だよ。智樹にイカロスの事話すにしろ話さないにしろイカロス自身がこの先の事を決めなきゃいけない。だから、俺達はアドバイスぐらいしかできない」

 

「私は…」

 

赤くなったイカロスの目はやがてエメラルドグリーンに変わり涙が溢れる。

 

「マスターに…嫌われたくありません…」

 

震えた声でイカロスはそう言った。それを聞いたオルガは「そっか」と呟く。

 

「智樹に限ってそんな事ねえけど…イカロスがそう言うなら俺とミカはお前の秘密を内緒にする。約束だ」

 

ニコリと笑いイカロスの頭を撫でる。なんとなく、空を見上げた俺は空が曇ってる事、そしてあるものが降り注いでいる事に気づいた。

 

「雪…って奴か?タイミングがいいのか悪いのかな…」

 

火星じゃまず見かける事はなかった雪をまじまじと見つめる。ミカも気づいたのか物珍しそうに空を見上げた。

頬に当たるその白い粒は、何故かどこか悲しいようにも思えた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。