うずくまっていた智子も復活し、無事に女湯に入る事ができた俺達。この風呂屋自体はそれほど大きい場所でもなかった。備え付けられたシャワーがかなり有るが湯船自体は2、3個程度の物だった。ここが女湯じゃなければさぞゆっくりできたんだがな…。
「なあオル…鉄子?なんで水着姿なんだ?」
そう聞いてきた智子は俺の姿に疑問を抱いていた。ちなみに鉄子ってのは流石オルガって名前のままじゃヤバいって思ったんでついさっき思いついた名前だ。鉄華団の「鉄」から取ったんだ。いいネーミングセンスと思わねえか?なあ?
話が逸れた。なんで水着姿なのかって言うとこの水着を取ったが最後、もう二度と
「こっちにだって色々あんだよ」
「そ、そうか…。それより!見ろよこの絶景!」
智子が指し示すその光景は確かに絶景ではあった。男じゃまず見れないであろう光景。普段なら服を着たりして決して見えない部分が全て見えるこの場所で俺は―――
「って、なんで目を閉じてんだよ!?」
智子にも言われた通り、俺は目を閉じていた。
「うるせえ!今目を開けちまったら、それこそ何回死ななきゃならねえのか分かったもんじゃねえ!」
「はあ…。この手は出来るだけ使いたくなかったんだが…、聞こえるかイカロス?」
『はい、いかがされましたかマスター?』
「オルガの目を強制的に開け続けるように装置で書き換えてやりなさい」
『分かりました』
おい!?なにふざけた事イカロスに頼んでんだコイツ!?
や、やべえ、閉じていた目が段々と開かれていく。自らの意思で開けてる訳じゃねえから余計質が悪い。そうして、完全に目を開けた俺は…見てしまった。女の子の裸という裸を。しかも生で。俺の意識は飛ぶ……事はなかった。
「あ、あれ?」
「やったな鉄子!遂に慣れたんだな!」
女の子の裸を見ても死ぬ所か気絶すらしなかった。でも興奮してるのは確かだった。
「お、俺は…遂に…」
「よし!早速鉄子に命令だ!そはらの背中を流してこい!」
「お前は俺に死ねって言ってるのか?」
「よく考えろよ鉄子。今の内に女の子の肌とか慣れとかないと何か緊急時の時に偶然女の子の肌に触って動けなくなった時どうする?それにこの前海に行った時だってなんとかそはらを砂浜まで連れてくことができたけど万が一にも沈む可能性あったろ?」
「うっ…ぐっ…」
智子の言うことは一理あった。確かに女の子の肌を見るだけならまだしも触った事で舞い上がりキボウノハナールート直行は免れない。そはらの件に関しても死ぬ間際なのに死ぬ気で耐えるなんてわけのわからねえ事をしたくらいだ。
「……わかった。俺は智子の案に乗る」
「よしよし。なら俺は会長の所にでも行きましょうかね〜」
手をワキワキさせながらゲス顔で智子は会長の方に向かっていった。………よし、俺も根性だしてやらねえとな。せめてそはらに失礼のないようにしねえと。
俺は歩いていき出来るだけ冷静を保ちながらそはらのいる所に向かう。すると、何処から視線を感じた。まるで俺を見守ってるかのような…そんな視線だった。辺りを見回すがこれといって俺に視線を向けてる奴なんざいなかったので気のせいかと思い足を動かした。
これはオルガの知る由ではないがオルガが感じた視線は確かにあった。それは風呂の壁に大きく描かれている歌舞伎の絵――に化けている守形先輩の視線だった。
「(ファイトだオルガ)」
そう、守形先輩は智樹とオルガの勇姿を見届けるためわざわざこんな絵に化けていたのであった。
そんなことはさておき、遂にシャワーで体を流してるそはらの元にたどり着いたオルガ。
「あ、あのそはらさん」
「へ?……あ、さっきの!えっと…」
「鉄子です」
「鉄子さん!私に何か用?」
「あの…背中流させて貰えませんか?」
特に隠す事もなく率直に言ったオルガ。まあいきなり初対面の人間に背中流させてくれってどう考えてもおかしい気もするが…。
「いいよ。ありがとう〜」
と言って背中を見せるそはら。俺が言うのもなんだが少しは疑うってこと知らねえのかそはらは?ともかく、お許しが出たので体を洗う用のタオルを手に取りゆっくりとそはらの背中を流した。
「鉄子さんの手って大きいんだね」
「あ、あはは」
ゆっくりと丁寧に丁寧に背中を流す。スベスベしたその素肌はなんとも言えない肌触りとなっており変な気分を抱かせた。決してやましい気持ちなどではなく奇妙な感覚だった。そして、背中のほぼ全体を洗った俺はシャワーでそはらの背中を流す事にした。
「そはらさん、背中流しますね」
「うん、おねがい〜」
シャワーの栓を開けてお湯を流す。そはらの背中についている石鹸の泡を隅々まで流し綺麗にした。
「ありがとう鉄子さん。今度は私がしてあげるね♪」
「え!?いや、その…」
「大丈夫大丈夫!私こう見えても人の背中洗うの得意だから!」
いやそういう問題じゃねえんだが…。そはらに促されるがままに小さめの椅子に座らされそはらが俺の背中を洗い始めた。
「うわぁ〜ホントに凄いね鉄子さんの体。まるで男の子みたい」
「ど、どうも」
適当な会話をしつつ背中を洗って貰う。と、そこで思わぬアクシデントが起こった。
「きゃっ!?」
すぐ近くから悲鳴にも似た声がした。声がした方に振り向くとなんと智子が会長の胸を触っていた。
「 YES!!」
「なにやってんだアイツ!?」
智子が暴走していた。最早ゲス顔のスケベジジイと化していた智子は会長の胸をこれでもかというくらい触りまくっていた。そして、飽きたと言わんばかりに会長から離れ次は近くにいた違う女性の胸を触りだしていた。しかも何故かは知らんが股間が光っていた。
「アイツ止めねえと…おっ!?」
「あ、ちょ!?鉄子さん!?」
そはらに背中を洗ってもらってる最中だったが智子の暴走を止めねえと俺達の事がバレてしまうかもしれねえから急に椅子から立ったのが悪かった。なんせ背中を洗ってたもんだから床下は泡だらけになっていて運悪く足を滑らした。しかもそはらの方に向かって。
「痛って……ん?」
そはらに向かって倒れる形になった俺だがここである事に気づいた。顔が何かに挟まれているかのような感覚と手がずっしりと柔らかい何かに触ってる事に気がつくと悪い予感がしてすぐに顔を上げた。
「痛ったた…もう気を付けてよ鉄子さん…」
そはらは俺が女になってるから特に気にすることもなかったが俺はそれどころじゃなかった。俺はそはらの胸を触っていた。それどころか胸と胸の間に挟まれていたみてえだった。それを意識した途端すぐさま手を離しそはらの元からダッシュで離れ風呂に暴走した智子を置き去りにして風呂から出た。
瞬間、俺の体が光だし際どい水着姿から元の姿に戻っていた。
「あ、危ねえ…」
間一髪だった。後もう少し反応が遅れたらそはらの目の前で元の姿に戻っていたら確実に殺されるとこだ。流石に死にたくはないんで智樹をここに置いて囮にするとするか。
俺はバレないようにコソコソ女湯から出て風呂屋から出た。その時、後ろから光が出ていたので恐らく智子から智樹に戻ったのだろう。智樹には悪いが今回は俺は逃げるぜ。逃げて俺は素知らぬ顔でいるんだ。そうして俺は風呂屋から駆け出し家に帰ったんだ。
「逃がすと思う?オルガ」
駆け出した瞬間、凄い力で俺の肩を掴んだ奴がいた。聞いた事がある声だったんで恐る恐る後ろを振り向くとそこには満面の微笑みをしたミカがいた。
「み、ミカ?どうしてここに――」
「ごちゃごちゃうるさいよ」
今まで見たことがないくらい笑顔なミカだがそれとは裏腹に声は物凄くドスがきいていた。
「たまたまさ、ここに通りすがったらイカロスがいたから何してるのって聞いたらオルガと智樹が変な事してるって聞いたんだ」
よく見ると後ろの方でイカロスが後ろの方で悲しそうな目をしながら少し頭を下げていた。
「もう、分かってるよね?」
「ああ…わかってる…」
この流れはあれだな。確実に死ぬ流れの奴だな。俺は意を決してミカに向けてるいい放つ。
「俺は止まらねえからよ!俺がすすみ―――」
言い終わる前にミカが既にメイスを振り下ろし鈍い音と共に叩きつけられた。その頃智樹はそはらにチョップされオルガは何回もキボウノハナーが流れたそうな。
ようやく外堀が冷めた頃、2人は女湯に入った罰として風呂屋の掃除をさせられていた。智樹はともかく、オルガは一応バレてはいないが三日月が監視していた為言い逃れができなかった。
そして、側にいたイカロスも何故か掃除しており、男女別々で掃除していた。
「オルガ…逃げたこと許さねえからな?」
「その分ミカから色々やられたんだ。勘弁してくれよ…」
「そ、そうか…」
掃除をしながら話していた2人だがそれを見ていた三日月の目が光る。
「ごちゃごちゃ言ってないでさっさと掃除して」
「「すんません」」
風呂掃除用のモップをゴシゴシと動かしながらせっせと掃除する智樹とオルガ。ふと、智樹はオルガと三日月にある事を聞き出した。
「なあオルガ、三日月。この前さイカロスがボロボロになって帰って来た時の話なんだけどさ、あの時はオルガがヘマしてイカロスにも迷惑かかったって言ってたけどさ……ホントは違うんだろ?」
あの一件の後、ボロボロになって帰って来たイカロスを見た智樹はかなり驚いていた。それを一緒になって帰って来た俺は「俺がヘマしたからこうなった」って言ってなんとか収まったが…やはり智樹も嘘だってこと薄々感じてたか。すると、女湯からコーンと物が落ちる音が響いた。………恐らくイカロスが動揺してんだろうな。
「なあ智樹?前にも言ったがそれは――」
「よくやったなイカロス!」
俺の返答も聞かず智樹は女湯の方に振り返るとそう言い放った。
「よくやく人間らしくすることができて俺は嬉しいぞ。人間にも隠し事の1つや2つ、あるもんだしな」
「智樹…」
「分かってるよオルガ。だってさマッハで空飛んだりするイカロスがちょっとヘマしたくらいであそこまでボロボロになることもあり得ないしな」
少し微笑みながら語る智樹。いくらエロに対して執念じみた物があったとしてもそこはしっかり気づいてる様子だった。流石にイカロスが兵器だってことまでは分かってはいねえと思うが…。そして智樹はイカロスがいるであろう女湯の方に再び振り向く。
「……俺達家族だろ?言いたくない事があれば言わなくてもいい。そんな事で嫌ったりしないしな。でも、いつかは話してくれると嬉しいかな」
優しい声でイカロスに語りかける智樹。すると、女湯から「はい、マスター」と震えた声でイカロスが返事をしていた。
だから言ったろ?智樹はそんな事で嫌わないって。なあ?イカロス。
〜シナプス〜
「無様だなニンフ」
玉座に座るその男はボロボロになっているニンフを見下ろし呆れ果てた口調でそう言った。ニンフの周りには他のエンジェロイド達がこぞってニンフを痛めつけていた。
「ウラヌスクイーンに負けるならまだしもただの
「で、ですがマスター。あの
「言い訳するなこの廃品め」
ニンフの意見など到底通るものではなかった。ニンフのイカロスとオルガとミカの戦闘を見ていればそんな事はなかったのだが生憎、玉座に座る男はニンフの戦闘などこれっぽっちも見ていなかった。それ故にニンフが本当の事だとしても男には言い訳にしか聞こえていなかった。
「なぁニンフ?チャンスが欲しいか?」
「チャンス…ですか?」
「ああ、お前が廃棄処分にならないチャンスだ。まあ、受けなければそのまま廃棄処分だが――」
「やります!やらせてください!」
藁にもすがるような思いで懇願するニンフ。その姿をみた男は大きく高笑いをした。
「では、ニンフよ。もう一度行ってくるがいい。今度は仕損じないようにな」
「は、はいマスター…」
トボトボと痛々しい体を手で押さえながらニンフはこの広間から姿を消した。
「では、私はこれから天使の元に行く。適当にニンフをウラヌスクイーンの近くで自爆させるといい」
そう、冷たく他のエンジェロイドに言い放つと玉座から離れ何処かに消え去った。それを聞いていた他のエンジェロイド達は口にはしないものの、同情と哀れみを抱かざるを得なかった。