季節は冬を過ぎて春になった頃。行く道には桜が綺麗に咲き新しい出会いを感じさせるような、そんな気分だった。だったのだが…
「そこにあるコーラ取って〜」
「は、はい」
智樹が近くにあったペットボトルに入ってる飲みかけのコーラをある人物に渡す。渡し終えると智樹は俺を引っ張って部屋の隅っこに引っ張って行った。
「なあ、オルガ?あれ誰だ?」
変な汗をかいてそう聞いてきた智樹に対し俺はこう答えた。
「なんでもイカロスの後継機らしいが…」
「つまりエンジェロイド?」
「そうなるな」
「即刻帰ってもらえ!!」
智樹は初対面だが、前にイカロスを襲った
本当に突然だった。朝俺と智樹が起きるとなにやら茶の間の前でイカロスがオロオロとスイカ持ちながら歩き回ってたんで何をしてるのか気になって見てみたらこの有り様だった。水色のの髪をツインテールにしたそのエンジェロイドはテレビを見ながらポテチを食べていた。しかも目があったら「あ、おはよう」って言ってきやがる。その時はつい返事を返したんだが…。
「何よ、地蟲の癖にうるさいわね」
「地蟲?俺の事?」
「アンタとその横にいる変な髪型したアンタもよ」
どうやら地蟲ってのは俺と智樹に言ってるみたいだった。前にも言われたんで俺は対して気にしてねえが智樹は別だった。
「これ以上俺の日常壊すなぁぁぁぁ!!」
「智樹から壊しに行ってる気もするがな」
俺が小声でボソッと言うと何処からか取り出してきたハリセンでしばかれた。すると、ピンポーンと家のインターホンが鳴った。誰だ?って思うと俺と智樹が玄関に行く前に否応なく扉が開いた。「智ちゃーん!」って声がしたんでどうやらそはらが勝手に開けたみたいだった。
俺と智樹とイカロスはそはらのいる玄関向かうと、そはらだけでなく会長やミカ、守形の兄貴まで居た。ついでに後ろに「ブモッ!」て鳴き声したから恐らくプギーもいるな。
「おお、皆そろってどうした?」
「あのねオルガさん、皆で花見しようかなーって」
「花見?なんだそりゃ?」
「花見って言うのは桜の木を見て飲んだり食べたりする事だよオルガ」
俺の疑問にミカが答えた。成る程、だから皆来てたんだな。
「面白そうじゃねえか、なあ智樹?」
「花見…花見ねぇ。まあ、予定もないし行くか!」
よっしゃ、そうと決まれば話が早い。さっさとパジャマから着替えて花見ってやつに行こうじゃねえか!そんな事を思ってると
「何話してるのー?」
って茶の間からひょっこりと顔を出したニンフが声を掛けてきた。
「智ちゃんあの人は…?」
少しばかり殺気立てたそはらだったがそんな事気にすることもなく智樹は説明していった。
「俺にもさっぱりだが、なんかイカロスの後継機みたいらしい。名前は確か――」
「ニンフよ。アルファと同じエンジェロイドの1人よ」
茶の間から出るとペコッと頭を下げたニンフ。それを見たそはらは可愛いって言って抱きついていた。そんなキャラだったかアイツ?
横にいた会長が怪しげな笑いかたしてたから若干不気味だったが。
「今から花見しに行くんだ。お前もどうだ?」
「んー、行くわ」
そはらに抱きつかれて少々嫌がってるニンフだったが、俺達と花見をする事には同意した。また面白そうな事になりそうなそんな予感をしていたオルガだった。
「改めて見ると綺麗なもんだな桜ってのは」
そんな感想を呟いた俺は現在、桜の木を見ていた。桜が最も咲いていると言われている公園に来ていた俺達は丁度桜の木の下が空いていたのでそこにシートを広げて花見をしていた。まあ、花見ってよりほぼ宴会じみた事になってるがな。そはらや会長が持ってきてくれた食い物や飲み物、ミカん所の桜のばあちゃんが作ってくれた物等が広げられてそれはそれはとても豪華なもんだった。
あ、さっき桜の木下にシート広げたとは言ったが俺は離れて1人で桜を見ていた。何でかって言うと……
「ボカァね!イカロスが成長してくれて嬉しいんですよぉ!!」
「ひぐっ、えぐっ、イカロスさんがいつの間にこんなにおっきく…グスッ」
と、智樹とそはらが何故か酔っていた。しかも両方めんどくさい方の酔い方で泣き上戸だった。俺達は未成年だったから酒なんて持ってきてなかったし何より何回か確認したが酒らしき物は全くなかった。今もなお、あの2人がグビグビと飲んでいるのはコーラだった。コーラで酔えるなんて聞いたことねえし見たこともねえがあの2人は特別なんだろな。
「イカロスはね!すっごい優しくてね!」
「ひぐっ…そうだよ…イカロスさん優しいよ…ひぐっ」
智樹がイカロスの頭を撫でて、そはらはイカロスに抱きつきながら泣いてそう言っていた。俺のいる桜の木と智樹達がいる桜の木はちょっと距離があるがかなり大声で話してるのかここからでもよく聞こえる。相手している守形の兄貴と会長も頷きながら促していたが目だけはしっかりと俺の方を向いていた。こっちにこいっていう圧力が感じられるが俺は目を逸らして木の下で寝転んだ。
で、木の後ろにいるであろう人物に声を掛ける。
「いつまでもそうしてないで楽しんだらどうだ嬢ちゃん」
「へぇ、気づいてたのね」
ひょこっと木の後ろから顔を出したのはニンフだった。よく顔を見ていると意外だ、って顔をしていた。
「そりゃ俺とお前はちょっとした因縁みてえなもんがあるからな。意識はするさ」
「あら、告白?」
「茶化すな」
起き上がるとニンフは俺の隣に座るや否や、俺をジロジロ見てきやがった。なんだ?俺の顔になんか付いてんのか?
「アンタってホント不思議よね〜」
「何がだ?」
「とぼけないで。ただの人間であるアンタがまさか人間離れした事するなんてね。私のパラダイス=ソングを避けれるなんてアルファーならまだしも貴方もできるなんてね」
「いや、避けてねえよ。しっかり喰らってしっかり死んだ」
「え?」
驚いた顔でニンフは俺の方を見つめる。まあ、知らねえのも無理ねえか。
「俺はな、幾ら死んでも蘇るんだよ。銃で撃たれようが何されようがな」
「あの威力が高そうなレーザーは?」
「あれはあの時できただけだ。今までできなかったんだがあの時何故かできるって確信を持ったからしたまでだ」
「えぇ…」
呆れた顔でニンフはそう言った。なんだよ、仕方ねえだろできたもんはよ。
「アンタって不思議な人間ね」
「まあ、あとはトラブルが起こらなければ万々歳なんだがな…」
「トラブル?」
「ああ、幾ら死なねえって言ってもちょっとした事で死ぬ事もある。一番酷かったのは下着で埋もれて死んだ事だな」
「えぇ…」
今度はドン引きしたニンフ。その顔は不思議な顔、と言うより信じられないと言った顔だった。仕方ねえだろそんな風になっちまうんだから。大体下着の中に埋もれて死ぬだけじゃなく鼻血の大量出血で死ぬなんて事も大概だしな。
「だから、あまり不幸な目に合いたくはえねな」
「ふーん…」
すると、ニンフが俺の頭に手を置いた。その手の平から小さな光が出ると俺の体に浸透していった。とっさの事だったんで成されるままだったがすぐにニンフから離れた。
「何しやがる!?」
「何って私のハッキングシステムで貴方のバイタリティを…あ、難しい話わからないよね?要するに幸運になったってことよ」
「そりゃ一体どういう――」
俺が言いきる前に空から何か落ちてくる気配があった。その気配がなんなのだろうかと上を見るとなんと空から札束が1つ落ちてきた。落ちてきたんだが……
「う゛っ゛!」
《キボウノハナー》
そこ落ちてきたたった1つの札束が頭にヒットした事で死亡し希望の花を咲かせたオルガ。その光景を目の当たりにしたニンフは髪を逆立てるくらい驚く。
「だからよ…止まるんじゃ…」
「きゃっ!?」
と、そこでたまたま通りかかった女性のスカートがオルガの目の前でめくれ上がった。一応オルガの名誉の為に言っておくがオルガはまだ蘇ってはいなかったためスカートの中を見ることはなかった。
が…オルガが目の前で寝転がっているものだから女性はオルガがめくったのだと勘違いした。
「何すんのよこの変態!」
「う゛っ゛!?」
ゴスッ
と倒れていたオルガを無理やり起こし左頬に強烈なパンチを叩き込んだ事でオルガは後ろにぶっ飛んだ。
「かはっ…」
《キボウノハナー》
オーバーキルのオルガは再び死亡し希望の花を咲かせると団長命令を響かせた。
「だからよ…止まるんじゃねえぞ…」
「さっきからろくな目にあってねえぞ…」
蘇ったオルガは開口一番にその言葉を言った。それを見ていたニンフも流石にオロオロしていた。
「あ、あの…ごめんなさい…」
本当に申し訳なさそうに謝るニンフ。がその顔を見たオルガはフッと笑うと
「別に気にすることねえよ。お前は俺の為に幸運を上げてくれたんだろ?まあ、あんまし効果はなかったが…それでも嬉しかったぜ?サンキューな」
その言葉と共にニンフの頭を撫でるオルガ。ニンフは「えへへ」と少し笑顔になったがすぐさまハッと気がつきすぐオルガから離れた。
「べ、別に勘違いしないでよね!別にアンタの事思ってやった訳じゃないし!ていうか、私達敵同士でしょ!?」
「別にお前の事を敵だなんて思ってねえよ」
「へ?」
キョトンとするニンフ。そんな姿のニンフに気にせずオルガは続けて言った。
「ニンフはイカロスの後継機なんだろ?ならニンフはイカロスの妹、いわば家族みたいなもんだろ?ならその家族を敵だなんて思わねえよ」
「……ホント、頭お花畑ね…」
そう呟いたニンフは、少し顔を赤らめてプイッと顔を逸らした。するとオルガはニンフに近づき肩をポンと叩いた。
「俺達は鉄華団だ。俺達はニンフの事も歓迎するぜ?」
そう、今日一番いい笑顔でニンフに語りかけた。ニンフは目を丸くし、顔を緩ませると
「なら…お言葉に甘えさせてもらおうかな」
と、笑顔でオルガにそう返した。
一方、その光景を遠目で見ていた人物がいた。1人はイカロス、もう1人はプギーの世話をしていた三日月だった。その光景を見ていたイカロスはホッと胸を撫で下ろし、安心していた。
「……頑張ってね、オルガ」
プギーの巨体に隠れていた三日月は少し笑ってオルガとニンフの姿を見ていた。オルガならばきっとニンフを救えるだろうとそう思いながら。
ついでにタグも追加しておきました