そらのオルガもの   作:ウルトラネオン

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イカロスが嘘つくよ!

ある日の事。智樹がオルガを引きずり回し、エロスという名の「修行」をオルガにつけさせようとして朝早くから外に出ていた。流石にイカロスがわざわざ作ってくれた朝食を食べないのは悪いので食べてからすぐに飛び出していった。そして、家に残ったのはイカロスとニンフだけだった。

 

「ふ〜んふ〜ん♪」

 

鼻歌を歌いながらテーブルに置いてある先輩を食べているニンフ。その視線の先にはテレビに移っているドラマを見ていた。一方イカロスはというと…

 

「…………(ニヤリ)」

 

前に智樹に言われて以降、ずっと笑顔の練習をしていたが、相変わらず擬音しか出ていない笑顔でなんとも言えなかった。やはり感情部分の機能が他よりも下回っているためやはり笑った顔を作るのは難しいのだろうか?

イカロスは考える。何故人間は笑顔を作れるのだろうか?マスターやオルガさんを含め、人間とは一体どういうものなのか。マスターはいつも人間らしく振る舞いなさいと言っているが…。そうしていると、テレビに映っているドラマのセリフがイカロスの耳に入ってくる。

 

『あ、アナタ!?嘘ついてたのね!?』

 

『フッ、人間とは嘘をつく生き物なのさ。人間は本心を嘘で誤魔化すもんなんだぜ?』

 

「人間は嘘つくもの…本心を嘘で誤魔化す…」

 

それが…それが人間というものなんですねマスター。オルガさん。私は早速実行することにした。

 

「ニンフ」

 

「ん?何アルファー?」

 

呼ばれて振り替えるニンフ。が、イカロスが次に言うことは悲惨なものだった。

 

「貴方は身長が高いわりには可愛くないわ」

 

「………へ?」

 

「それにあまり綺麗じゃない翼も頭が悪そうな所も全然可愛くないわ」

 

「へ?……え?」

 

ニンフの顔が驚いた顔から一気に涙を含んだ顔になる。だがその事を気にすることもなく、続けて言葉を言い放った。

 

「ここに来てから笑顔がそんなに増えてないけど大丈夫じゃないわね」

 

その最後の一言でニンフはノックダウンした。手足をついて涙を流しながら「私最近何かした…?」と呟いていた。

そしてイカロスは人間らしくできたと思っていたので余計に達が悪かった。

すると家の玄関のドアが大きな音を立てて開いた。

 

「オルガッ!いつまで死んでるんだよ!?早く起きろ!ここまで引きずるのツラいんだぞ!?」

 

玄関が騒がしくなるとイカロスは茶の間から顔を出すと智樹が既に死んでいたオルガを引きずって家に帰って来た事がわかった。

 

「智ちゃ〜ん?何処に行くのかな〜?」

 

「ひぃ!?オルガァァ!!起きてくれぇぇ!!」

 

どうやらまた智樹が何かやらかしてそはらに追いかけられていたようだ。

 

「マスター、そはらさん」

 

「あっ、イカロスさんこんにちわ〜」

 

「そはらさん!?イカロスに挨拶しながら俺にチョップしようとするのやめてもらえません!?」

 

今まさに智樹の胸ぐらを掴んで殺気を纏ったそはらのチョップを繰り出される寸前でまたもやイカロスは言葉を告げた。

 

「私はそはらさんが大っ嫌いです」

 

「…え?」

 

一瞬キョトンとするそはら。しかしイカロスは言葉を続ける。

 

「胸は小さいですし暴力的で短絡思考、後ちょっと痩せぎみな所とか。とにかくそはらさんが大っ嫌いです」

 

その言葉に硬直したそはらは遂に智樹を掴んでいた手は力が抜け、そはらの拘束を免れた智樹。だがイカロスが言った言葉にかなりの驚きがあった事でその場からは離れる事ができず、イカロスは続けて智樹にも言ってしまった。

 

「マスター、私はここにずっと居たくありませんしそばに居たくもありません」

 

智樹の場合、たったその一言で硬直してしまった。そしてイカロスはそのまま人間らしく振る舞おうと外に出ることにして、あまりのショックに動けずにいたそはらと智樹を置いていったのであった。

そして蘇ったオルガがいつの間にか手足をついて涙を流しているそはら、智樹、ニンフを見たオルガはかなり驚愕した。

 

「お、おいお前ら!?一体何があったんだよ!?」

 

事情を聞こうにも何一つ言葉が届いてなかったので3人の呟いていた事を聞き、ある程度は察したオルガはとりあえずイカロスを追いかける事にした。

 

 

 

そしてイカロスは町を歩き、商店街やら民家やら出会った人に対し片っ端から人間らしく振る舞うという名の暴言を吐くエンジェロイドと化していた。道行く少年も、杖をついた老婆も商店街のおっちゃんでさえもその暴言に手足をついて泣いてしまう事態になった。

そして、学校によると偶々守形先輩が花壇で栽培をしていたので出会い頭に

 

「新大陸はありません」

 

と言いきってその場を離れた。幸い守形先輩は特に気にすることもなく学校の花壇で大根の栽培を行っていたという。

次に、偶々出会った会長には

 

「会長は…優しい人ですね」

 

「あら〜ありがとうイカロスちゃん」

 

と、褒めていた。勘違いをしていけないのはイカロスは現在嘘をついてる真っ最中なので会長に言った事は真逆の意味である。会長はうっとりと頬に手を当てて嬉しそうにしてるが知らぬが仏とはこの事であろうか。

しばらく歩いてると後ろから誰かが走ってくる音が聞こえた。その足音に振り替えるとオルガがイカロスに向かって走ってくる事がわかった。

 

「オルガさん」

 

「ハァ…ハァ…やっと追い付いた…ハァ…」

 

イカロスに追い付くと膝に手を置いてかなり疲れた様子だった。なにせ、智樹の家からここまでノンストップで走っていたので疲れるのは当然の事だった。

 

「いいかイカロス?智樹に何言ったかは知らねえがとりあえず―――」

 

「オルガさん、私は鉄華団ではありません」

 

「え?」

 

「私はマスターと同じくらいに侮蔑を感じています。これからも人間の事について教えて貰いたくありませんしマスターと同様側にいて欲しくないと思います」

 

「え゛っ゛!?」

 

「それと、どうかニンフと関わらないでください。あの子を笑顔にできないのはオルガさんくらいなものです」

 

「う゛っ゛」

 

《キボウノハナー》

 

あまりの罵倒と暴言にオルガの精神が耐えきれずショック死してしまい、希望の華を咲かせた。けれどもショック過ぎてろくに団長命令も響かせられなかったのか、無言のままだった。

 

「……何してんのイカロス」

 

今度は横から声がしたのでその方向に向くと今度は三日月が隣に立っていた。どうやら今のイカロスとオルガのやり取りをジーッと見ていたらしくオルガが死んだタイミングで声を掛けてきたのだ。

 

「三日月さん、私は――」

 

「待って」

 

三日月はイカロスが人間らしくするという暴言を吐く前に三日月は手の平をだしてイカロスの言葉を制止させる。

 

「なんでオルガが死んだか分かる?」

 

「……?」

 

三日月の質問に首を傾げるイカロス。すると三日月は死亡していたオルガを一瞥するとため息をついた。

 

「オルガはイカロスが言った事に対してショックを受けて死んだ」

 

「何故…ショックを受けるのですか?私はただ人間らしくしようと…」

 

「それは駄目だ」

 

強く言葉を発する三日月。だがその言葉には何処か呆れた事と優しさがあった。

 

「イカロスがしてること。それは人を傷つける事だ」

 

「傷つける…ですか?」

 

「うん。確かに人間は嘘をつく。でも嘘をつくって事は自分の本心を伝えないという事だからその人の事を信頼していないのと同じだし、本当の事を真逆に言ってしまうと言われた側は嫌な気分になる。それにさっきオルガに言ったことはイカロスに一番言われたくない言葉だった。だからオルガはショックで死んでしまった」

 

「私は…」

 

三日月の言葉に思う所があったのか少し申し訳なさそうな顔をする。改めて三日月にそう言われてると確かに他の人が嫌がるような事をした、という自覚を持った。なら、なら私はどうすれば――

 

「イカロスの思ったことは素直に言うといいよ。人間らしくするっていうならまずそこからだ」

 

「素直に…ですか?」

 

「イカロスが思ってること、決して悪いことじゃないと思う。だから、それをオルガや智樹、皆に言ったらいいと思う。皆はイカロスの言葉に応えてくれる筈だよ」

 

「はい…分かりました」

 

三日月の言葉で幾分か顔に自信が灯ったイカロスだったが「でも」と三日月は1つ言葉を付け加えた。

 

「なんであれ、イカロスがしたことは悪い事だ。だから謝らないと。謝るのも人間らしい所の1つだよ」

 

「はい、分かりました」

 

「んじゃ……オルガ、さっさと起きて」

 

希望の華を咲かせていてまだ蘇ってないオルガの片を揺さぶる三日月。だが、オルガの反応はなかった。

すると、三日月が立ち上がると体中が光だしバルバトスに変身を完了させた。右手に持っているメイスを大きく振りかぶってゴンッと鈍く重い音と共にオルガに叩きつけた。

 

「オルガ起きて」

 

「うっ…ぐっ…ハッ!み、ミカ?こりゃどういう…」

 

雑な起こされ方をしたオルガは目の前で自分にメイスが叩きつけられている事実に困惑していた。すると、イカロスがオルガに近づき頭を下げた。

 

「オルガさんごめんなさい」

 

「いや状況がよくわからねえよ」

 

そして、イカロスは事の顛末を話したのだった。

 

 

 

 

「しかしアルファーが嘘をねぇ…」

 

「ああ、あれは多分イカロスが言うから精神的なダメージがあるだけで他の奴が言っても多分ああはならねえだろうな」

 

イカロスの事情を聞いた俺はすぐに他の奴らの所に謝りにいった。つまる所イカロスが勘違いを起こしただけの話で別に悪気はなかったみてえだし皆もすぐに許してくれた。

だが会長は何故か妙に怒ってた気がするがなんでだろな?

そして全員に謝り終わって今は家の茶の間でニンフと一緒にテレビを見てるわけだが…。

 

「まあいいんじゃない?アルファーも人間らしく振る舞うっていうのをちゃんとしてるわけだし」

 

「まだ荒削りみてえなもんだがな」

 

「それは言えてるかも」

 

ニンフと俺は少し笑った。これからのイカロスを考えると智樹も苦労しそうだとどこか思えてしまいその苦労してる智樹を想像すると笑えてくる。ニンフも恐らくそう思ってるだろうな。そして俺はあることに気がついた。

 

「おいニンフ?その首輪の点滅どうした?壊れたのか?」

 

首輪の右側辺りが一定の規則で赤色に点滅している事がわかった。そしてニンフは左手でそっと点滅してる部分を隠し少し笑って「なんでもないわ」と言った。なんでもないならいいけどよ。そしてニンフは再び口を開いた。

 

「別に爆弾でもなんでもないわよ。……そうだ。私ちょっと用事を思い出したわ。ちょっと外に出掛けてくるわ」

 

そう言うとニンフは立ち上がり玄関へ向かおうとするがオルガの声で一旦足を止めた。

 

「おい?どうした急に」

 

「別にいいでしょ?永遠の別れになるわけじゃないんだし。あ、晩御飯オルガの鮭が食べたいから作っておいてね」

 

少し顔を振り返ってオルガを見つめると少し微笑んで玄関へ向かった。ニンフの言葉に「お、おう」としか言えずそのままその場でニンフを見送った。

 

「まあいいか」

 

特に気にすることもなかったのでオルガは夕飯の下準備をすることにした。本来今日はイカロスが当番する筈だったがたまにはこういうのもありだろ、という理由とニンフに焼き鮭作ろうとするためだ。

 

 

 

 

 

だが、夕方になろうが1日経とうがニンフが帰ってくる事はなかった。




捕捉
イカロスの嘘→本当の事

「貴方は身長が高いわりには可愛くないわ」

「貴方は小さくて可愛いわ」


「それにあまり綺麗じゃない翼も頭が悪そうな所も全然可愛くないわ」

「それに綺麗な翼も頭が良い所も凄く可愛いわ」


「ここに来てから笑顔がそんなに増えてないけど大丈夫じゃないわ」

「ここに来てから笑顔が増えて安心したわ」


「胸は小さいですし暴力的で短絡思考、後ちょっと痩せぎみな所とか。とにかくそはらさんが大っ嫌いです」

「胸は大きいですし静かで冷静な思考、後ちょっと太りぎみな所とか。私はそはらさんが大好きです」


「私はマスターと同じくらいに侮蔑を感じています。これからも人間の事について教えて貰いたくありませんしマスターと同様側にいて欲しくないと思います」

「私はマスターと同じくらい敬意を感じています。これからも人間の事について教えて貰いたいですしマスターと同様に側にいてほしいと思います」


「それと、どうかニンフと関わらないでください。あの子を笑顔にできないのはオルガさんくらいなものです」

「どうかニンフの事を見ていてください。あの子を笑顔にできるのはオルガさんくらいなものです」

といった感じです。




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