すっごいエタりましたが元気です!
ニンフは今、目の前で起きたことが理解出来なかった。オルガに対して「家を出る」と言ったぐらいで間違ってもこの場所に来ることなんて微塵も思っていなかったからだ。
「なんで・・・来たの・・・?」
「決まってんだろ。家族を守るために来たからだ」
オルガは真っ直ぐとニンフを見つめる。その表情は固く決心をつけた顔だった。ハーピー達に向けていた銃口をゆっくりと下ろすとオルガが一歩前に出る。
「俺たちの団員に手ぇ出したこと、お前らわかってんだろな?」
「ふん!たかが人間の癖に生意気ね!」
「今なら泣いて土下座して謝るなら許してやっても構わないわよ?」
「あ?お前ら状況わかってんのか?そのセリフを吐けんのは俺らかお前ら、どっちだ?」
見下した相手に対しての上から目線の言葉で挑発するオルガ。ハーピー姉妹はオルガの挑発に完全に乗り、オルガを焼き殺そうとプロメテウスを発射させる。人間一人を殺すのには余りあるその熱量と威力はオルガに当たるどころか目の前で掻き消された。
いや、正確には叩き潰されたと言ったほうがいいのだろうか。ハーピー姉妹から放たれた
「オルガに何しようとしてんの?」
ドスの効いた声で答える三日月。完全に防ぎきられるとは思ってもみなかったのかハーピー姉妹は少し狼狽える。が、姉の方のハーピーが空を見上げると上空に待機しているグレイズ2機に指示を出した。
「グレイズ!あの図体のデカい奴を叩き潰しなさい!」
すると、先程まで待機していたグレイズ達はスラスターを吹かし空いていた左手にバトルブレードを装備してバルバトスにスラスターの勢いに任せてブレードを振り下ろす。
だが三日月は躱す動作をする事はなく、メイスを横にして構えるとグレイズの攻撃を難なく防いだ。ガキンと金属と金属がぶつかる音が響くが、特に気にすることはなかった三日月はオルガに向けてある事を聞いた。
「オルガ、大丈夫?」
そう、ミカは聞いてきやがった。アイツが俺に聞いてきたのはミカがドンパチやって俺に危険が及ぶとか、そういう事を聞いてるんじゃねえ。ようは覚悟の問題だ。
俺があのエンジェロイド2人相手にケジメをつけれるか、バルバトス越しとはいえ俺に期待するあの目がヒシヒシと浮かび上がる。勿論俺が言う事は決まっている。
「ああっ!こっちは俺に任せろ、そっちは任せたぜミカァ!」
「ああ、任され・・・たっ!!」
俺が大声で返すとミカはそれがさも当然かのように答え、そして勢いよくグレイズ2機を押し返すとそれに追従するかのようにスラスターを吹かせた。
さて…ミカの方は大丈夫としてこっちだな。
「てなわけだ。お嬢さん方には覚悟決めてもらうぜ」
「ふ、ふん!さっきは少し驚いたけど、所詮はただの人間。あのでっかいロボがいなきゃ何も出来ない癖に!」
あー・・・こりゃ埒があかねぇな。
「仕方ねえ・・・智樹!皆!ニンフに繋がってる鎖の事は任せた!こっちの2人は俺に任せてくれ!」
「え!?オルガ大丈夫なのか!?」
「俺を誰だと思ってやがる!俺は鉄華団団長のオルガ・イツカだぜ?こんくらいなんてことはねぇ!」
その俺の言葉を聞いた姉妹エンジェロイドは感に触ったのか俺に向けて再びあのバカでけえレーザーを撃ってきやがった。しかも2人同時に。
一瞬の判断が遅れた俺は避ける事が出来なかった。まあ、判断が遅れてなからうが避けねえがな。なんせ、避けようが何しようが俺の能力かどうかまでは分からねえがまるで吸い込むかのように俺に追尾してくるもんだから避ける必要がねえ。当たって死んでも蘇るしな。
だが、レーザーは俺に当たる事はなく突然目の前に現れたバリアによって防がれた。
「大丈夫ですか、オルガさん」
バリアを貼ったのはイカロスだった。智樹の近くに居た筈のイカロスは既に俺の横に立ち並び、姉妹エンジェロイドに相対したんだ。
「ああ、大丈夫だ。それよりどうしたイカロス?手伝ってくれんのか?」
「はい、オルガさん1人だと負ける事はなくても勝てる見込みはありません。ニンフを助けたいという気持ちは同じです。それに――」
イカロスの顔を見ると目の色が
「私は、オルガさんのやろうとしている事を手伝いたいんです」
・・・・・・フッ。そっか、あの感情の乏しい嬢ちゃんがここまで言ってくれるってのは光栄だな。なら、それに応えるのが団長ってもんだ。
「こっからは大仕事だ。付いて来れるよなイカロス?」
「勿論です。寧ろ、オルガさんが付いて来れるか心配です」
「生意気言いやがって・・・。んじゃ、行くかぁ!」
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「オルガ・・・」
どうして助けに来てくれたのかまるで分かっていなかった。正直な話、そこまで長い付き合いでもなければ寧ろ最初に出会った時は敵対していた間柄だ。
アルファの後継機…いわば妹みたいな物だから?
それとも別の理由があるから?
何を根拠に助けに来てくれたのか全く分からなかった。
「今、どうして来たのって顔してるなニンフ」
そう言ったのは智樹だった。
だってそうでしょう?私とアンタ達の間になんの関係もなかったんだから。
智樹は少し笑うと、こう告げたのだ。
「お前自身がどう思ってるのか分からねえけど、少なくとも俺達全員はニンフの事大事な仲間だと思ってるぞ?」
「どうしてよ!?何がどうなったらそう思えるのか分からないわよ!」
「理屈で答えられるわけ無いだろ馬鹿か?」
「何ですって!?私が馬鹿ならアンタ達の方がもっと馬鹿よ!」
そう答えると守形やそはら、会長が次々と私に近寄った。
「ならばニンフ、何故オルガや智樹に黙ってあのエンジェロイド達と戦っていた?」
口を開いたのは守形だった。それに付け加えるかのようにそはらと会長が語っていく。
「貴方の本来の目的の為なら、寧ろあの場所に居続けて奇襲とか色々したほうが効率良かったのにね〜?どうしてこんな事になったのかしら〜?」
会長が言った言葉に口を塞いだ。その反応を見たそはらがとどめ一撃かのように私の心の内を暴くかのように語った。
「ニンフちゃんはきっと・・・オルガさんや皆を危険に晒したくないから1人で行ったんじゃないかな?そうじゃなきゃ・・・ここまでボロボロになんてなれないよ」
ええ・・・ええ!そうよ!短かったけどあのバカバカしくともおかしな時間はシナプスに居た時よりもずっと楽しく思えた!けど、私に繋がれたこの鎖と首輪のタイマーがそれを許してくれなかった。なら、せめて危険に晒されないようにするって思えたのは短くともその思い出があったからだ。
そこで、ハッと気付かされた。
「やっと気づいたか。理屈じゃ語れないって事が」
智樹に言われてオルガや皆がどうして助けに来てくれたのかようやく理解できた。私が思ったように…オルガ達も同じ思いだったのだ。
理解すると自分でも分かるくらい顔が真っ赤になり、それを気づかれまいと顔を俯かせた。
「さて・・・この鎖どうするかね・・・」
「取り敢えず持ってきた斧で斬っちゃえばいいんじゃないかな智ちゃん?」
「ふむ・・・とすれば、鎖を捻らせてからの方がより斬りやすいな」
「それじゃ英ちゃんと私で鎖を持つから、桜井君と見月ちゃんで斬っちゃえばどうかしら〜?」
皆が私を助けようとする、それだけで少し動力炉が暖かくなったかのような気がした。そして私は、何よりも一番最初に助けてくれたオルガの戦っている姿をずっと見続けたのだった。
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何よ!あの人間!!ただの人間じゃないの!?
ウラヌスクイーンの戦闘力は予め聞かされていたからまだ分かるものの、あの人間だけは訳が分からなかった。私たち姉妹の遠距離武装はウラヌスクイーンに撃つとうが何処に撃とうが必ずあの人間に吸い込まれるかのように向っていく。そして死ぬのだ。
死んだ筈なのにすぐに蘇り私達が放った倍の威力のレーザーを何の変哲もない銃で放ってくるのだ。
それならばと、近接攻撃を仕掛けるとあの人間の前髪?みたいなのをぶち切って腕に付けると私達エンジェロイドでも見切れないくらいの速さで切ってくるものだから侮れなっかった。
その上に、ウラヌスクイーンが攻めてくるものだからたまったものではなかったのだ。
「どうしたお前ら!!そんなんじゃ俺を殺すことはできないぜっ!」
「ちっ!」
大声を挙げながらも上空を飛んでいる私に銃弾を当ててくる人間に対して苛立ちを覚えた。さっきから何度も何度も死んでいる癖に。ウラヌスクイーンと対峙している妹の方を見てみるもまだ倒れてないとはいえ、劣勢な事には変わらなかった。
このままでは不味い。かなりの賭けになるが、あの人間の仲間であろうロボと戦っているグレイズ1機だけでもこちらに呼び込んで数の有利でも取らないといずれジリ貧でこちらが負けてしまう。そう思った時の事だった。火を噴いたグレイズ2機が落ちてきたのだ。
「ちょ、グレイズ!?」
外見だけでも深くダメージを負っていることが分かるくらいに潰されているグレイズ。見上げるとグレイズと戦っていたあのロボは全くダメージを負っていなかったのだ。
「そ、そんな・・・」
「隙だらけだぜ?」
瞬間、私の真横にあの人間が放ったレーザーが通ってきた。後数センチ、ズレていれば私はとんでもないダメージを受けていただろうと思うと背筋が凍ったかのように思えた。妹の方も既にボロボロの状態でありとても戦える状態などではなくウラヌスクイーンに見逃されているくらいだった。
そしてすぐ近くで大きな光が輝いていた。
見てみると人間たちがニンフのインプリティングの鎖を切っていたのだ。
「あっちも終わったみてえだな。で、どうする?」
あの人間は銃を構えて私達にそう言った。
グレイズは大破、私達はボロボロ。向こうはまだやりあえるだけの力はあるしウラヌスクイーンには見える損傷はない。どう考えても勝機がある状況ではなかった。
「くっ・・・覚えてなさい・・・」
私はそうセリフを吐き捨ててボロボロな状態の妹を抱え、シナプスに帰還していくほかなかったのだ。
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「大丈夫かニンフ?」
戦いを終えた俺たちは、すぐニンフの所に戻ったんだが思ったよりもニンフの怪我の具合が悪そうだった。
だが、流石はイカロスと同じエンジェロイドといったどころだろうか思ったよりも元気そうな返事が返ってきた。
「大丈夫、私は平気。それよりもオルガ、あなたこそ大丈夫なの?」
「あん?俺を誰だと思ってやがる。鉄華団団長、オルガ・イツカだぜ?こんくらいなんてことねえよ」
「フフッ、何それ」
クスクス笑いながらニンフはそう返してきやがった。笑う元気があるくらいならもう大丈夫みてえだな。
すると、笑っていたニンフは少し恥ずかしそうにしながら「皆、ありがとう」って言葉を伝えてきた。
その言葉を聞いた俺達はやっと一息をついたんだ。
「しっかし一時はどうなるかと思ったぜ。なんせオルガがこっちは任せてくれー、なんて言うからよ」
「けどイツカ君頑張ってたわね~。イカロスちゃんと一緒に大立ち回りしていたし」
「それは皆がいてくれたから出来たことだ。俺1人じゃ無理だった」
流石の俺でもニンフを見ながら戦うことは不可能だ。ましてや、相手はMSまで引き連れていたからな。
「それでもニンフちゃんの為に果敢に立ち向かっていったのは凄いよ!」
今までがアレだったおかげか、褒められている事にむずかゆい気持ちになり自分でも分かるくらい顔が赤くなっている事が分かった。
「ほ、褒めても何も出ねえぞ!さっさとニンフ連れて帰るぞ!」
「照れて話を逸らしたな、オルガ」
守形の兄貴が図星をついてきたが聞かなかったことにしてそそくさ帰ることにした。が、そこで1つ問題が起きやがった。もう既にある程度は回復しているはずのニンフが立ち上がらなかったんだ。
しかも、両手を広げながら俺をじっと見てきやがる。
「・・・まさかおぶれって言うんじゃねだろうな」
「私まだ動けなさそう」
絶対に嘘だろ。だがニンフはあの目を見るにてこでも動かねえ様子だった。他の皆を見ると誰一人として目を合わせるやつがいねえ。ミカはミカで「頑張って」だけ言ってどっかに行くしイカロスに至っては皆の行動にオロオロしてるだけだった。俺は仕方がなくニンフをおぶってやるとぎゅうっと少し力を込めて抱きついた。
「…オルガ、ありがと」
「ああ、どういたしまして」
その様子を見ていた皆は(イカロス除いて)ニヤニヤしていたのは言うまでもなかった。