《キボウノハナー》
空から飛来してきた羽の生えた女性がオルガに当たり死亡したことで希望の花を咲かせ団長命令を響かせた。
「だからよ…止まるんじゃねえぞ…」
「オルガ!?」
落ちてきた光はオルガに当たり小さなクレーターを作っていた。慌てた智樹はオルガの元に行くとあるものが2つ写っていた。1つは左手の指を指しながら死んでいるオルガ。もう1つは羽が生えた女の子。
ピンク色のショートヘアでかなり露出度の高い服を着た女の子だった。
「(いやいやなんで空からこんな得体の知れないものが落ちて来るんだよ!?これ絶対未確認生物だろ!?しかもオルガが下敷きになって羨ま……死んでるし)」
取り敢えずオルガを起こす事にし、全力でオルガを揺さぶった。
「オルガ!起きろオルガ!」
「うっ………グッ……はっ!」
苦しそうにオルガが起き上がると辺り一面を見回し、落ちてきたら女の子を見た。すると、智樹の方に向き直り
「一体なにがどうなってやがる!?」
「いや、俺にもサッパリ…」
すると空からとても大きな轟音が鳴り響く。その音と共に巨大な瓦礫が広範囲で大量に落ちてきた。
が…その落ちてきた瓦礫達は通常ではあり得ない角度に曲がりだし一ヶ所に集中的に落ちてくるようになった。その一ヶ所というのは………
「まさか!智樹逃げろ!」
「うぇ!?」
オルガは横に倒れていた女の子と智樹を担いで遠くに投げ飛ばしたと共に集中的にオルガに瓦礫が飛来してきた。
「うおあああああああああ!!!???」
当選、飛来してきた瓦礫がオルガを幾度となく殺した。例え希望の花を咲かせようが団長命令を響かせようが蘇生する度に毎度毎度殺されていた。キボウノハナーもオルガの死にすぎで段々原型がなくなり不協和音となっていた。
「オルガっ!…ちくしょう!どうしたらっ!」
智樹は、殺られているオルガを目前になす術もなくただ立って見るだけしかできなかった。が…ふいに左手に鎖を握ってるようなような感覚が現れた。智樹は左手を見ると何やら手に鎖が巻かれてある。この先を見ると……なんと女の子が目を覚ましていたのだ。
「私は愛玩用エンジェロイドタイプαイカロス。マスターご命令を」
エンジェロイド?なんだそれ?
智樹はイカロスと呼ばれる女の子に対して様々な疑問を浮かべていた。が、そんな思考は瓦礫がオルガに集中的に飛来したくる音でかき消された。なりふり構わず智樹はイカロスにしがみついた。
「頼むっ!オルガを助けてくれ!」
「分かりました、マイマスター」
イカロスが頷くと智樹を担ぎだし翼を大きく広げてオルガの元に飛び立った。
「おおおおおい!?死ぬっ!死ぬぅぅぅ!!!」
瓦礫の雨に飛び込むイカロスだが、決して飛来してくる瓦礫に当たること等なく、スピードを落とさないままオルガを抱え大きく空に飛んでいった。
やがて瓦礫の雨は止まり、安全を確認した上でイカロスは智樹とオルガを地上に降ろした。
こうして智樹とイカロス、そしてオルガを交えた生活が始まったのであった。
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「ウッ………グッ……はっ!?」
ここは…智樹の部屋か?あれから俺はどうなった?確か…瓦礫の山が俺目掛けて降って来やがったから智樹と変な羽の生えた奴を投げて…その後が思い出せねえ。何が起こったのかすら覚えてねえな。
俺の体を見ても左手に鎖が巻かれてるくれぇだし横には布団で寝てる智樹と羽の生えた嬢ちゃんがパタパタと羽を動かしてるくらいで特におかしいとこはねえな。
…………ん?
「何やってんだぁぁぁぁぁぁ!」
「どわっ!?なんだなんだ!?」
昨日から今日にかけてまでわけのわかんねえ事ばっかりだ。極めつけは今の状況だ。つい魂の叫び声を挙げちまって智樹を起こしちまったのは悪いとは思うが…
「おはようございますマスターとマスター(小)」
「マスター(小)ってなんだよそりゃあ!?」
「はい、昨日マスターである桜井智樹様にインプリディングをしたのですが何故かバグを起こしてしまいマスターが9.5、マスター(小)が0.5という割合で私の主と定めました」
「………正直ピンと来ませんね」
マスターってのはわかったが何故智樹と俺がそうなってるのかサッパリだ。割合もかなり低いし。それにインプリディングってなんだよ。
「智樹!何がどうなってやがる!」
「あー…えーとな…」
昨日の事をあらかた智樹が説明してくれたが…このイカロスって嬢ちゃんの事以上に驚いたのがあんだけの瓦礫が俺に目掛けて降ってきたってのに生きてるってどういうわけだよ?俺の体なのによくわかんねえよ。
「まあ、俺も細かい所はよく分かんねーけどな」
「そうか…サンキューな」
と、そこで家のインターホンが鳴りそれと同時にそはらの声も聞こえてきた。
「智ちゃん、オルガさん起きてるー?入るよー?」
ドアが開いた音がすると足音が段々と俺達のいる部屋に近づいてくる事が分かった。
「智樹…これやべえんじゃねえか?」
「同感だ。この露出度高い未確認生物をそはらが見たら間違いなく朝一番のチョップが炸裂するな」
嫌な汗をかいてる智樹と俺が同時に頷くと俺は急いで押し入れを開け、智樹がイカロスに「押し入れに隠れなさい」と囁いて誘導した。が、そこでアクシデントが発生した。
誘導してるところを智樹が布団に足を絡ませてしまい転けちまったんだ。それもイカロスに倒れこむような形で。
大きな音が家中に響き、そはらが「智ちゃんどうしたの!?」と足音が速まり階段をかけ上がってくる音がする。
しかもこんな時に智樹は倒れたイカロスの胸に顔を埋めてやがる。うらやま………じゃねえ。こんな状況をそはらに見られたら確実に殺されるぞ!急いで智樹を起き上がらさせようとしたが――――
「……何やってるの智ちゃん?オルガさん?」
「「あ…」」
この状況、端からみたら女性に男2人で襲ってる構図にしか見えねえ。やべえ、そはらの顔が段々黒くなってきたしヤベェオーラをビシビシ発してやがる!?何か弁解しねえと!!
「ま、ま、待ってくれそはら!これには深い訳があ」
「そそそそそうだぞそはら!オルガの言うとおり!深い訳が」
あるんだ、という前にそはらの豪速球チョップが近くにいた俺に炸裂した。
「ウ゛ッ!」
《キボウノハナー》
これまたとんでもない威力で俺を床にめり込ませた。そはらが死亡を確認すると今度は智樹に向かってチョップを素早く繰り出した。
「い゛っ゛て゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!!」
「あれ?」
が、オルガと全く同じ威力とスピードでチョップしたのにも関わらず智樹は痛みは感じるが死ぬまではいかなかった。まあ、精々たんこぶが2つできてるくらいか。
「智ちゃんを殺す気でしたのになんでかな?」
「いや人を殺すようなチョップしないでもらえます?」
頭を抑えながら言うものの智樹は気絶すらしてなかった。どうして殺人チョップのダメージが下がったのか。その理由はただ1つ。
「俺は…鉄華団団長…オルガ・イツカだぞ…!こんくれえなんてことはウ゛ッ!」
《キボウノハナー》
オルガが智樹のダメージを肩代わりしていたからだ。そはらのチョップから蘇生したオルガは今度は智樹のダメージがオルガに流れ込み再び死亡し、希望の花を咲かせる。
「だからよ…理由も聞かずチョップするんじゃねえぞ…」
団長命令が頭に響いたのであった。
あれから蘇生するとそはらに今までの経緯と事情を話した。時々顔色が怖くなったがチョップが出てくることはなかった。
で、今から学校に行くわけだが……
「この鎖どーすんだ…?」
智樹が言っている通り、俺達の手に付いてる鎖をどうにかしねえとイカロスが付いてくるはめになる。そうなったら学校に羽の生えた嬢ちゃんを鎖で引っ張ってくるっていう結構ヤバい状況になりやがる。
「それでしたら鎖は伸縮自在ですし、透明化することもできます」
「なんだよ…結構問題ねえじゃねぇか…ヘッ」
それなら話が早い。イカロスの説明通りならこんくらいなんてことはねぇ!一通り身仕度を終えた後、そはらが「早く行かないと遅刻しちゃうよー!」と声をかけてきた。
学校初日に遅刻なんてだせぇ真似はできねえ。ならとっとと景気よく行くかぁ!
「オルガ!早く来ねえと置いてくぞ!それとイカロス!家でしっかり留守番してろよ!」
「待てって言ってるだろうが!」
「はい、分かりました。いってらっしゃいませマスター。マスター(小)」
マスター(小)ってのがちっと気になるが…。智樹が先に家を出たため、俺も後に続いた。
ったく、団長である俺より先に出るとは中々いい根性してるじゃねえか智樹!俺も負けてらんねーな!
俺達は全速力で走った。田んぼを越え、民家を抜け商店街をくぐっていった。校門に入った瞬間学校のチャイムが鳴りなんとかギリギリセーフみてえだった。
ちなみに、学校での俺の事については事前に先についていたそはらが説明してくれてたらしく転校生という形で入る事ができた。智樹といい学校といい怪しむという事はしねえのか?まあ、ありがたい話だがよ。
教室に入室した俺は担任の先生とやらにクラスの皆に自己紹介してくれと頼まれた。まあ、初めての学校だ。舐められねえようにビシッと元気よく挨拶といこうじゃねえか!
「俺は…鉄華団団長のオルガ・イツカだ。皆ァ!よろしく頼むぜぇ!」
今度の挨拶は死にかけではなく団長としてビシッと言えたそうな。