「ただいまー」
「帰って来たぜぇ」
「お帰りなさいませ、マスター。マスター(小)」
学校から帰って来た俺達を出迎えてくれたのはイカロスだった。心温かく出迎えた…かは分からねえ。何せ無表情だからな。
初めての学校はまあまあよかった。授業もいいし、クラスの奴らは皆フレンドリーだった。幸先がよかったが、昼飯を用意できてなかったのは痛かった。
幸い、智樹とそはらが飯を分けてくれたから午後の授業はなんとか凌いだがな…。
んで、守形って奴にも会ってきたが…ある意味すげえ奴だったな。思わず兄貴呼びしちまったよ。
智樹がべちゃくちゃと俺の事を(ほぼ巻き込むような形で)喋りやがったせいか「火星もまた新大陸の1つ」なんて言われたな。
まあ、変な奴って思われるよりかマシか。
「イカロス、しっかり留守番してたか?」
「はいマスター。ご命令通りしっかり留守番していました」
「そっかぁ!サンキューなイカロス」
「はい、ありがとうございます。マスター(小)。―――ではマスターとマスター(小)、楽しめる事を何なりとご命令下さい」
「命令?」
「はいマスター。私は愛玩用エンジェロイドです。主を楽しませる事が私の喜び。何なりと」
………智樹の事はマスターって言うがなんで俺は(小)なんだ?確か0.5割くらいしか命令権ないだったか?それなら確かに(小)だが……いかんせんむず痒いな。
「なぁ、イカロス。智樹の事はともかく、俺の事はマスター(小)なんかじゃなくてオルガでいいぞ?」
「それはご命令ですか?」
「え…あ、いや命令じゃねえな」
「では、お断りします。マスター(小)はマスター(小)のままでよろしいですね?」
「まっ、待ってくれ。その…なんで(小)なんて俺に付くんだ?」
「それはご命令ですか?」
「は?いや…別に命令ってわけじゃ…」
「なら問題はありません。マスター(小)はマスター(小)でよろしいですね?」
「ちっともよくねぇよ!」
なんだよこの嬢ちゃん!?なんか当たりきつくねえか!?智樹に対しては従順な所ありそうだが俺の場合妙にキツい気がするぜ…。後(小)ってなんだよ(小)って。
おいこら智樹。見せもんじゃねえんだぞ。腹を抱えながらゲラゲラ笑うな。お前のおかげで少しイラッてきたぞ?
「イカロス。オルガもそう言ってんだからそうしてもいいんだぞ?」
「はい分かりましたマスター。では、これからマスター(小)からオルガさんに呼び方を変更します」
負に落ちねえ。俺の事は聞かねえのに智樹の言うことはすぐ聞くってかなり贔屓してんじゃねえか?
「オルガさんはあくまで0.5割です。絶対的な命令権さございません」
「…ああ、そうか」
「でもさ、イカロスって具体的には何できるの?」
「はいマスター。大体事は何でもできます。ご命令をくだされば今すぐ実行するようにできているので」
「じゃ、じゃあさ!その…か…からっ…金かな…!」
智樹ちょっとチキッたな。しかし金か…。イカロスといえども今すぐ金を持ってくるなんてそんな大層な事はできねえだろ。
「1000億ほどあればよろしいですか?」
何処から取り出したのか、いつの間にかイカロスの手には一枚のカードが握られていた。
「確かにそれだけあれば困らないよねー。……いやいや、冗談!冗談だからな?」
「
イカロスの持っていたカードがキューブ状に分解されると光だしちょこんと小さな羽とアンテナがついた電卓みてーなもんが現れた。イカロスがそれを操作しチーンと軽快な音を出すと―――
「どわっ!?」
大量の札束が降って来やがった。そして……
「ウ゛ッ゛!」
札束に直撃した俺はそのまま死亡した。
《キボウノハナー》
「だからよ…上から物降らせるんじゃねえぞ…」
また希望の花を咲かせ団長命令が響いた。
「うーん、オルガって薄ペラ耐久なのな」
「はい。オルガさんは薄ペラ耐久ですね」
「うるせぇ!こっちだって好きでやってるわけじゃねえよ!」
札束に埋もれながら智樹がそう言うとイカロスも便乗してきやがった。札束に埋もれて死ぬなんて何処の国行っても1人もいねよ!
「ていうかさ、イカロス。そのカードなんなの?」
「これはこっちで言うところの転送装置というものです。マスターが望んだ物をこのカードを媒介にしてシナプスから取り寄せてくる物で…」
「んん?シナプスってなんだよ?」
「すみません。それはお答えできません」
お?とうとう智樹にも反抗期か?
「私達エンジェロイドはシナプスに関する事全てに一種のプロテクトを掛けられています。ですので喋ろうとしても喋る事ができません」
………正直ピンと来ませんね。チラッと横目で智樹を見ると頭に花咲かせてやがる。恐らく智樹も何のこっちゃわかってねえんだろ。…………頭に希望の花咲かせてやがる。ヘヘッ。
「オルガさん。何故だかよく分かりませんが面白くないという感想を持ちました。………何故でしょう?」
「………すみませんでした」
ああ、これっぽっちも面白くなかったな。てかサラッと俺の心を読んで来やがったなイカロス?
「じゃあさイカロスこんなことできるか?」
智樹が何やらイカロスの耳にゴニョゴニョ伝えると「可能です」と言って再びカードを取り出し、装置を取り出した。その装置はというと―――
「グフッ…!グフフフッ…!」
ゲス顔で笑っている智樹と俺、イカロスはとある部屋に来ていた。そのとある部屋ってのはそはらの部屋なんだが………
「あの、マスター。これには何の意味が…」
「いいかねイカロス君!これは全国男子が望んで止まない願望の1つなのだよ!」
「ヘヘッ…」
「とうっ!」
「きゃぁっ!?」
智樹がそはらの胸を揉んでいきやがった。見事なたわわなそれはプルンと震えていた。
「ウ゛ッ゛!」
堪えきれなかった俺は大量の鼻血をそはらの部屋に放出し大量出血で死亡した。
《キボウノハナー》
「え!?何!?血!?」
「まずい!イカロス、オルガ連れて撤収だー!」
「了解しましたマイマスター」
智樹が急いでそはらの部屋を出ると、イカロスはオルガの頭を鷲掴みしてズルズルと引きずりながら部屋を出た
。そんなことも知らない部屋に1人残されたそはらは幽霊の仕業と勘違いし、目をグルグル回しながら絶叫するハメになった。
「オルガ!何でお前はそんなに耐性ねぇんだよ!」
「うるせぇ!エロい経験なんて今まで一度もねえよ!耐性なんかあるかぁ!」
前じゃ、女性と話した事は少なからずあるがそこまで行った思い出なんてこれっぽっちもねえよ!昭弘とミカがいい線いってたんじゃねえかぐらいかねえよ!
あ、でもおやっさんとメリビットさんはできてるって聞いた事はあるが…実際どうなったんだろな?
「え……?ないの……?」
「ああ、一度もな!」
「そうなんだなっ……グスッ……よく頑張ってきたなっ…!」
なんか智樹が泣き出したぞ。改めて考えてみりゃそはらにあんなこと(意味深)する当たり智樹は経験豊富なのか?
妙に手つきが慣れてたから恐らく……駄目だ。考えただけで虚しくなってきたな。
「よぉし!俺が一肌脱いでやるよ!」
「あ?どういうことだ?」
「俺がお前を男にするって言う事だぁっ!」
大声で智樹が叫ぶと智樹の背後にまるでザバーンと大きな波が立ったかのようなエフェクトが見えた気がする。
しかも…なんだこの感覚は!?智樹のオーラみてえなものが見えてく気もするし特に股関部分が強烈に強い気がするぞ!?
それだけじゃねえ、背後に変な帽子被った巨大なじいさんが見えやがる。一体何モンなんだ智樹は!?
「イカロス!俺の言いたい事は分かるな!?」
「イエス、マイマスター」
イすかさず数枚のカードをイカロスが取り出す。それからはかなり酷かった。透明化してるとはいえ裸にさせられるわ、ちっこくなって女性の谷間に入るわスカートは平気でめくるわ、ありとあらゆるエロすを智樹に見せつけられた。まあその度に毎度《キボウノハナー》が鳴ってたけどな!
夜中になり飯時の時間だから智樹の家に戻ってきたがかなりクタクタになっていた。家に戻ってくる途中、イカロスに担がれながら帰って来たのは正直恥ずかったがよ。
「はぁぁぁ……結局一度も慣れることなかったなオルガ」
大きくため息をつきながらテーブルに肘を付いてる智樹。
なんか呆れた顔をしてるが仕方ねえだろ経験ねえんだから。
「マスター、オルガさん。ご飯できました」
厨房で飯作ってたイカロスが飯を持ってきた。テーブルに出された物はそれこそ絵本とかで出てくるような豪華な物だ。一言いただきますを言うとすぐさま飯にありついた。
「これめっちゃ美味ぇ!イカロス料理できたのか!?」
「はいマスター。食材は量子食材変換装置で…」
「ああ、細かい事はいいよ。にしても凄く美味いぞイカロス!ありがとな!」
「はい…」
飯がっつきながら智樹とイカロスを聞いてたが…なんなんだよありゃ。あれじゃまるで夫婦かなんかだぞ?しかも、イカロスは顔がほんの僅かだが顔が赤くなってやがる。
……ここは何も言わずそっとしとくのがいかもな。
「はぁ〜一杯食った〜」
「もう腹ん中になんも入らねえなこりゃ…」
腹をかなり膨らませたから茶の間で寝転ぶ俺と智樹。正直あんまし動きたくねえなこりゃ。
「あの、マスター。次のご命令はいかがしますか?」
「ん〜?そうだな〜…ここまでしてきたら後は世界征服くらいしかねえな!」
「世界征服…ですか」
世界征服…か。そう言えば、前じゃ俺は火星の王なんてもんを目指して……いや、正確には早く皆を楽にしてやりてぇって気持ちで目指してたが結果は言わずもがな、団員を死なせてしまった事もあったな…。あいつら、元気にしてっかな…。
「智樹、冗談に済ませる内はいいが世界征服とか…王とかになるのはあんまし勧めねえぞ?」
「何でだ?」
「王ってのは大きく視野を見る必要がある。だから…身近にある大切なもんを失う事になっちまう」
仲間の想いを無駄にしねえと言ったとはいえ王なるって急かしすぎたせいで多くの団員を失った。仲間を失えばその想いを無駄にしねえと息巻いてさらに戦う。そうする事で更に仲間を失う。
それを、死ぬギリギリまで気づく事ができなかった。そういう意味ではタカキの取った行動こそが正解だったのかもな。火星の王なんて身の丈にあわねえ、なんて事は言わねえがそれこそ家族とも言える仲間達を失うよりか遥かにマシだったがな。
「な、何だよ急に真面目になって。冗談だよ冗談!」
「ハハッ。まあ、死なねえ限り俺達はずっと歩み続けるんだ。後悔のねえ、自分が決めた事を心に刻んで歩めば…きっと悪くねえ人生になるんじゃねえか?」
「……かもな。だけどなオルガ、死にまくってるお前に説得力なくねえか?」
「かもな。じゃ、俺もう寝るぜ」
「おう、おやすみ〜」
「おやすみなさいませ、オルガさん」
次の日……
「智ちゃーん、オルガさーん早く起きないと遅刻しちゃうよ〜」
外からそはらの声が聞こえてくる。相変わらず大きな声だな。智樹と俺は布団から目覚めると家の玄関まで向かった。あ〜、寝癖で頭が変なことなってるな…こりゃ急いで髪整えねえとな。
玄関に着くと智樹が扉を開けそはらを出迎えた――が
「あれ?そはら」
そこは誰もいなかった。下を見ると何か服が落ちてやがる。
「なんだこりゃ?」
俺が落ちていた服を持ち上げるとスカートもあったんで恐らく女性がつける服だろう。しかもこの服は…
「それ、学校の制服じゃね?女が着るタイプの」
智樹の言うとおりこりゃ学校の制服だな。なんでこんな所に?と、そこで後ろからイカロスが出てきた。
「おっ、イカロスじゃねーか。おはようさん」
「イカロスおはよう」
「おはようございますマスター。オルガさん。後、数時間でこの世界の征服が完了します」
それは、早朝に聞くにはあまりにもデカ過ぎてぶっとんただ話だった。