「ま、待ってくれ!そいつは一体どういう…」
「マスターがおっしゃったように世界征服を実行しています。ですが、マスター、オルガさんの命令を忠実にこなす人間がいないため
「まさか征服って昨日俺が言った…!」
マジかよ!?イカロスの持ってるカードはそんな事も出来るのか!?
「おいイカロス!早く止めてくれ!」
智樹が懇願するようにイカロスの肩を掴むがイカロスの答えは非常だった。
「できませんマスター。私はそういう風に作られていないので…」
「………くっ!」
「あ、おい!智樹!」
イカロスの肩を放すとパジャマ姿で何処かへ駆け出す智樹。それを追いかけるように俺は走り、イカロスは空を飛んだ。
田んぼを通った。人はいない。
民家を通った。人はいない。
商店街に行った。人はいない。
公園、公共施設に行った。人はいない。
学校…も人はいなかった。
そうして町を走り回っても誰1人としていなかった。
あるのは居たという痕跡のみ。町を全て回っていくうちの夕方になる。昨日見た夕日は綺麗だったが何故か不気味に見えやがった。
「はは…誰もいない…」
「智樹…」
ベンチに座った智樹は顔を上げる事もなくずっと下を向いていた。
「申し訳ありませんマスター。てっきりご命令かと……。お望みとあれば私を廃棄処分になさいますか?」
「…………そう、だな…そうできたらどれだけい―――」
「分かりました」
イカロスがカードを取り出すと一丁の銃を呼びだした。
引き金に指をかけ銃口を頭に持っていく。
「待てイカロス!早とちりすんじゃねえっ!」
俺がイカロスを静止させる前にイカロスは引き金を引くと
パンッと重たい音が辺りを響いた。流石に智樹も驚愕した顔だった。が―――
「ウ゛ッ゛!」
至近距離で向けていたにも関わらず銃の弾丸はイカロスに当たることなく俺に当たりやがった。
「え……?」
「なんて声…出してやがる…!イカロス…!」
イカロスは困惑していた。それもそうだ。本来ならあり得ないことなんだからな。が…この力、なんとなく分かってきたぞ。
「智樹っ!イカロスを…押さえてくれ…!」
「っ!分かってる!」
こちとら瀕死の状態だからな、流石に動けねえ。しかもイカロスは一度命令を受けると中止しねえってんなら何回でも自分で自殺に走るだろうから智樹に止めてもらうっきゃねえな。智樹が走りだし、イカロスが困惑しているうちに取り押さえ急いで銃を取り上げた。
「マスター…どうして…」
「お前は早とちりしすぎだ!お前はただ俺の命令を聞いただけじゃねえか!俺は!お前の事を攻めてる訳でもなんでもねえよ!悪いのはお前にきっちり説明しなかった俺が原因だ!だから…!自殺なんてするなよ…!せめて…俺達と一緒にいろよ…!」
涙声で智樹はイカロスにそう言った。イカロスはその声に答えるように智樹を柔らかく抱きしめた。なんだよ…結構涙ぐましいじゃねえか、ヘヘッ…。
「オルガさんあれは一体…」
ん?あれ?ああ…さっきの銃弾の事か…。
「俺は…鉄華団団長…オルガ・イツカだぞ…!団員を守んのは俺の仕事だ!こんくらいなんてことはねぇ…!」
「オルガさん…」
とまあ、強がってみたが…やべえなそろそろ意識が飛びそうだ。でもまあ、強がって意気がってカッコよく決めるのが団長だ。こんくらいやっても…大丈夫だろ。
《キボウノハナー》
「だからよ…早とちりすんじゃねえぞ…」
今回はカッコよく希望の花を咲かせたオルガだった。
「ウッ…グッ…はっ!」
気がついた頃には夕方だった筈が朝になっていた。今回は復活すんのにやけに時間がかかったな。しかも起きた場所は智樹の部屋ときた。智樹は……横でまだ寝てるな。
「おはようございますオルガさん」
「おおっ、イカロスか。おはようございます」
寝てる智樹の横で正座していたイカロス。多分運んでくれたのもイカロスだろうな。智樹じゃ多分運べねえだろうし。
「あの…オルガさん」
「ん?どうした?」
「何故オルガさんはあの様な力があるのですか?」
あの様な力?ああ、キボウノハナーか。
「そりゃ俺にもサッパリだ。前はこんなもんなかったしな。だがな、1つだけわかった事がある。この力は、きっと団員を…それこそ命張ってでも守る力じゃねえのかなってな」
「団員…ですか?」
「ああ。お前も智樹も、俺からしたら鉄華団……家族みてーなもんだ。ならその団員を、家族を守んのは団長の俺が守んなきゃならねえ。……今度こそ」
「つまり、家族を守るという使命を持った力という認識でよろしいのでしょうか?」
「まあ、そんなもんだ」
思い返せばそはらのチョップしかりイカロスの件についてもそうだ。どんな形であれ、必ず死んじまうものだった。それを俺が受け止め変わりに俺が死ぬ。まあ、死んでもキボウノハナーで蘇生するから結局万々歳って事だ。
「そう、ですか。私には家族というものが分かりません。ですが…何故かマスターと一緒に居たいという事が頭の中で浮かびました」
「それもまた家族の有り方、なのかも知れねえな」
「さっきから人が寝てるってのに横でメチャクチャ恥ずかしい話するなー!」
ガバッと布団から飛び起きた智樹。なんだよ、起きてたのかよ。さっきの話聞いてたからか智樹の顔が若干赤くなってやがる。なんだ、恥ずかしいのか?
「おはようございます、マスター」
「ああ、うんおはよう。じゃなくてっ!」
普通に朝の挨拶をした智樹だったがすぐさま豹変し、俺に指を指して来やがった。
「オルガ!俺は鉄華団なんて訳のわからん物に入った覚えはないからな!」
「なんだよ智樹。つれねぇな」
「うるさい!」
「だがよ、智樹。これからどうする?世界中の人間が消えちまったんだからよ」
俺が昨日起こった事を思い出させるように伝えると智樹は思い出したかのようにハッとした顔になり、そして再び顔が沈んでいった。
「だよな…。俺のせいでそはらや守形先輩が―――」
「智ちゃーん!オルガさーん!いい加減に起きないと遅刻しちゃうよー!」
……………え?どういう事だ?イカロスのカードが俺達の言うことを忠実に聞く人間に変えたって話なのに恐らく言うことを聞いてくれないであろうそはらの声がなんで聞こえる?
「それでしたら昨日オルガさんが死亡した後、マスターが「全部夢であったらいいな」と仰ってたのでカードで全て夢になりました」
「「…………は?」」
マジかよ。イカロスのカードって現実を夢に変える事だって出来るのかよ…?
「あの、もしかして間違え――」
「いやいや!間違ってないぞイカロス!よくやった!」
「ファインプレイだったぞイカロス!」
「はあ…ありがとうございます」
そっかぁ!全部夢になったんだな!なら、何はともあれって奴だな。正直な話、ヒヤヒヤしたぜ…。
「あ、なんか大丈夫だって思った瞬間なんかどっと疲れがきた」
「奇遇だな智樹。それは俺もだ」
俺達2人は二度とこんな経験はしたくないと心の底から思った。