by智樹
「……おい智樹、どうすんだよこれ」
「………行くしかないだろ。お前も昨日ノリノリだったろ?一緒に行こうぜ?」
「ああ、しっかり落とし前つけに行かなきゃならねえな…」
俺と智樹が起きた朝、黒焦げた智樹の部屋で嫌な汗をかきながら喋っていた。天国だった筈の家がいつの間にか
こんな事になったのは昨日まで遡ることになる―――
事件を終えた次の日、この時は学校が休みなんでそはらに朝起こされる事もなくはなかった。しっかりと朝早く起こしに来たようで俺はともかく智樹は若干ウトウトしてたな。部屋を出ると茶の間辺りからすげぇいい匂いがきた。
恐らくイカロスが朝食でも作ってくれたのだろう。階段を降りて茶の間に入ると―――
「すまんイカロス、醤油取ってくれるか?」
「はい、分かりました」
守形の兄貴がいやがった。しかも朝食を食べながら。ちゃっかりそはらも朝食食ってやがる。
「って!守形先輩がなんでここにいんだよ!それとそはら!お前も一緒なって食うんじゃねえ!」
「
「食べ終わってから喋れ!」
そんな漫才コントを気にも掛けず黙々と飯を食べる守形の兄貴。
「で、守形の兄貴はなんでここにいるんだ?」
「ふむ、まあいい匂いがしたのでな。寄ってみたらたまたま智樹の家、だったということだ」
「つまりただ飯食いにきただけかよ…」
結構いい性格してんな守形の兄貴。まあでも、少人数で食べるよりか大勢で食べた方が楽しくていいがよ。取り敢えず、智樹をなだめて飯食おうじゃねえか。漫才してる智樹をなだめるとテーブルについて飯を食べ始めた。
「しっかしイカロス。こんな食材家になかった筈だけど一体どこから持ってきたんだ?」
「はいマスター。以前使ったカードを使って呼び出しました」
「あー…あのカードね…」
「ですが、これはあくまで旧式です。昨日使ったような新型のカードはマスターが夢にしてくれとおっしゃったので使えませんが旧式なら何枚かあります」
ピッとイカロスが数枚のカードを取り出した。そはらが横で「何それ私も欲しい」と智樹に言っていたがどうどうと智樹になだめられていた。
「旧式と新型になんか意味あんのか?」
「はいオルガさん。新型は何でも取り寄せますが、旧式は中身がわからないまま1つだけしか取り寄せる事ができます」
「中身が解らねえんじゃな…」
話終わる頃には全員飯を食い終わっており、そはらは家に守形の兄貴も何処かに消えていった。ホントに飯食いに来ただけだったのかあの先輩…。イカロスと共に食器類を洗っていると何やら茶の間から光が放たれていた。
「おわっ!?なんだぁ!?」
「どうした智樹!?」
食器類を壊さず置いてすぐに智樹の元に駆けつけた。駆けつけた頃には光はなくなっており、智樹にもこれといった変化は見られなかった。
「いやさ、このカードがエロい事できる奴ならいいな〜って考えてたら突然光出してさ」
「朝からなんて事考えてやがんだ…」
はぁ…。まあ、智樹になんもなけりゃそれはそれでいいんだけどよ。と、すると開けていた窓から一羽の鳥が茶の間に入ってきた。随分物好きな鳥だなと思ったがよく見てみると、足はねえわ頭もねえわな妙な鳥だった。
「って智樹!それ鳥じゃねえぞ!?」
「ん!?これは…まさか!?」
「それは下着ですねマスター。どうやらさっきのカードは無機物に命を与えるカードだったみたいですね」
「おお…これが…」
何感心してんだ智樹。まあ、気持ちは分からんでもない。下着ってのはある種、男のロマンみてーなもんだし気になるのも仕方ねぇ。流石に裸は勘弁してもらいてーが…。
「マスター。大規模の飛行物体がこちらに向かってきます」
「飛行物体…?」
「え?なんだそれ――」
智樹がそう呟くと同時にとんでもねえ量の下着が家に入って来やがった。
「ぶほっ!?」
「うおあっ!?」
どんどん命を宿した下着が入り混んでくる。しかもなんだか妙に温かい。これは…!?
「おいオルガ!これ多分脱ぎたてだぞ!」
「ウ゛ッ゛!」
スケベ親父の顔をしながら脱ぎたてホヤホヤの下着に埋もれた智樹がそう言うと意識したのかオルガは鼻血を再び吹き出した。
《キボウノハナー》
大量出血で死亡したオルガは希望の花を咲かせたが特に団長命令は響かなかった。
「で、これどうすんだよ智樹」
死から甦った俺は腕を組みながら智樹に聞く。どうやら俺が甦る頃にはカードの効果は切れていたみてーだが、いくら命を宿したとはいえ元々人の物だろ?こんなに大量に下着があったら何言われるか分かったもんじゃねえ。
具体的にはそはらに話し合いって名の殺人チョップが炸裂するかもしれねえから正直怖え。
「取り敢えずダイブしてみろよオルガ」
「は?何言ってんだお前?」
「とっても…とっても気持ちいいぞ」
「お前な…懲りるって言葉知らねえのか?」
「うるせー!黙ってダイブしやがれ!師匠命令だ!」
突然の逆ギレを起こした智樹は下着の山から飛び出てくると俺の服の襟を掴んで下着の山に投げ飛ばした。
ボフンと山の中にに沈み込んだがこれが絶妙に心地よかった。下着がほんのり温かいせいか何故か温かい何かに包まれていく感覚を覚える。まるでいるべき場所に帰って来たかのように、優しく包んでいく。ああ、そうか。ここが俺の辿り着くべき場所――
「何してるのオルガさん」
なんて事はなかった。気配どころか足音すら立てていなかった、だが殺気はこれ以上ないくらい放っていたそはらが右腕を上げて茶の間の入り口の前に立っていた。
「ま、待ってくれ!智樹に言われてやった事なんだ!智樹なら殺してくれ!何度でも殺してくれ!首を跳ねてそこら辺に転がしちまってもいい!だから、俺だけは!」
「オルガ!?お前卑怯だぞ!?」
「へぇ〜…智ちゃんがねぇ…」
ゆらぁ〜っと近づいてくるそはら。あのチョップを喰らうなんて正気の沙汰じゃねぇ!悪いが智樹には囮になってもらうとするか。
「ところでオルガさん、その手に持ってる下着誰のか分かる?」
「ん?これか?」
右手を見てみると確かに下着はあったが…真っ白な奴にミニキャラ?みてーな犬が描かれている下着だった。普通に考えるとこりゃ小さい子どもが好むような下着だな。
「多分だが…子どもが着てた下着じゃねえのか?今時俺らくらいの年で付ける下着の柄じゃねえだろうな」
「へぇ…子ども…」
「だがよ、それが何か関係あんのか?」
「それ、私の下着」
「…………え゛っ!?」
そう言った瞬間そはらは真っ先に超スピードで俺に近づき殺人チョップを繰り出す。脳天からチョップされたお陰で俺の頭はチョップされた所だけ凹んだ形になり床にめり込むように叩き潰された。
《キボウノハナー》
希望の花を咲かせたオルガを気にも掛けず次は智樹の方に振り返った。その右手をオルガの血で染めながら。
「ま、待ってくれそはら!この通りだ!勘弁して――」
言い切る前に智樹の脳天にチョップが炸裂し智樹の頭も変形した。どうやらオルガの「仲間のダメージを肩代わりする」能力はキボウノハナーで死んでから蘇生するまでの間は効果が適用されないらしく、智樹はそのままそはらのチョップのダメージをモロに喰らったのであった。
「しっかりとその下着は捨ててよね、智ちゃん!オルガさん!後、私の下着は持って帰りますから!」
「あ、見送りします」
そはらが下着を持って帰ろうとするとイカロスが自ら見送りを申し出る。特に断る理由もなかったのでそはらは快く受け入れてくれた。が、問題は智樹とオルガである。
「だから…言ったじゃねえか…懲りろって…」
「オルガもそれなりにノリノリだったろ…?」
そはらのチョップのダメージがまだ抜けてないらしく床に倒れ伏せながら震え声で話す2人。結局、チョップのダメージが回復するのは晩御飯ができた時でありそれまでの間はイカロスに介抱されていたそうな。
「で、振り出しに戻った訳だが…どうすんだよこの下着類」
こんなもんあったらまたそはらのチョップが炸裂するかもしれねえ。早々に処分してえ所だが智樹は…駄目だコイツ、全く懲りてねえみてえだ。その証拠にいかにもよからぬ考えをしている顔だ。
「そうだな…これを部屋に飾るか」
「なんでそんな考えに至るんだよ!」
「何言ってんだオルガ。下着は飾るもんだろ?」
「お前のその思考が、俺にはわからねえよ…」
下着を飾るだぁ?大体下着は着るもんであって飾るもんだとは間違ってもねえぞ?煩悩だらけで頭おかしくなったんじゃねえか?
「はぁ〜…。ガッカリだよオルガ。そんなんで団長名乗ってたんだな」
「な、なんだよ急に」
「団長ならば!踏み入れた領域を極限まで突っ走り!皆を先導していくのが団長だ!その団長がたかだかそはらのチョップ如きに屈し!逃げるような真似をして団長なんて名乗れると思うかぁ!」
「っ!」
再び、智樹の後ろにザバーンと波が立ち帽子をかぶった老人が見えた気がした。確かにそうだ。俺は…いや俺達はすでにエロスって名の領域に足を突っ込んでいる。なら!団長なら団員の手本を見せねえと示しがつかねえのも通りだ。
「ようやく目覚めたか、オルガ」
「ああ、すまねえ智樹。団長である俺がそはらのチョップにビビり過ぎてたな」
互いに手を差し出し熱い握手をする俺達。見てるかミカ?俺は止まんねえぞ。生きてる限り俺達の道は続いていくんだ。智樹の言うとおりこんな所じゃ終われねえ。
「俺が言うのもなんだがこの道は険しい道になる。決して人には理解されない道だからな。だがそれでも、俺を導いてくれるか、
「当然だ智樹!俺達の道は止まらねえ!生きてる限り終わりじゃねえ!例えどんな道でやべえ道だろうと、俺が連れてってやるよ!」
「ああ!その領域まで連れてってくれオルガ!」
「よっしゃ!なら、鉄華団初の大仕事だ!景気よく前に行こうじゃねえか!」
それからというもの俺達は下着であらゆる事を試した。
初めは部屋中に下着という下着を飾り付け、壁に張り付けたりもした。うOこの形した下着を作ってみたり下着版希望の花を何個も制作、庭を下着で芸術に仕上げたり色んなもんに下着を被せた。果てはパンツロボ1号やパンツオルガ・イツカ像なんてものを作り玄関前に飾った。
ひとしきり楽しんだ俺達は満足し布団に篭って眠った。
そして次の日――
ボンッ!
「うおあ!?」
「うああああああああ!?」
深い眠りについていた俺達を起こしたのは爆発だった。
「グフッ…一体なにが…」
「智樹!隣の家にいるそはらがカード持ってるぞ!」
智樹の部屋の窓からそはらの家がすぐ横なので見えるのだがなんと手には一枚のカードが握られていて、しかも光っている。
「そんな事だろうと思った。
「そ、そはら!一体何をした!?」
「あ、オルガさん。智ちゃんの事だからきっと下着捨ててないだろうと思ったから、カードの力で智ちゃんやオルガさんが下着をみたら爆発するようにしたんだよ。範囲は智ちゃんの家限定だけど下着捨てたなら特に問題ないよね〜。あ、イカロスさんは既にこっちに来てるから大丈夫だよ〜」
「な、なんて奴だ…。ここまでしやがるのか智樹の幼馴染は…!」
「くそっ、そはらの奴…!………あ、そーだ。そはら!お前の後ろにデカイ虫いるぞ!」
「え!?どこどこ!?」
俺が見ても何処にも虫なかんかいねえのに何言ってんだ智樹?と、思ったがそはらが窓から離れるとなんとパンツ一丁だった。まさか、智樹はこれを予測してたのか?
すると、そはらの下着からカチッカチッとタイマーの音が発せられた。
「っ!と、智ちゃん!」
「ハッハッハッハッ!幼馴染であるお前の事なぞ手に取るように分かっておるわぁ!」
瞬間、そはら下着が爆発を起こした。今さら俺が言うのもなんだがあれ大丈夫か?
これでようやく冒頭に戻る訳だが…
「オルガ…俺はどうすればいい?」
智樹が俺に聞いてくる。まるでかつてのミカのように。
「…………突っ走る」
「へ?」
「男なら貫かなきゃならねえ時がある。それをお前は昨日教えてくれたよな?なら例え下着が爆弾に変えられようとも俺達は止まる訳にはいかねえ。だろ?智樹」
「ああ…そうだなオルガ。俺達はもう引き返せない所まで来た。なら突っ走るしかねえよな」
「俺が先に行く。智樹は後ろから付いてきてくれ」
「いや、共に行こうぜオルガ。俺達は…家族みたいなものなんだろ?なら一緒に行かないなんて家族名乗る資格はねえ」
「智樹…。分かった、俺はお前の案に乗る!」
俺達は突っ走った。部屋中の…脱出するなら行かなくていいところまで隅々と。そして爆発した。飾ってるやつもうOこの奴も壁についてる奴もパンツロボもパンツオルガ・イツカ像も庭の芸術も全て。そして…町全体に響くくらいの爆発が続き俺が家から脱出すると共に音は鳴りやんだ。
途中、俺と智樹は何回死んだのだろうか?
でも、脱出した俺達が感じた事は―――
「「やべえ。このままじゃ死ぬ」」
その思いだけだった。