「ん…」
気がつくと見知らぬ場所にいた。さっきまで皆を逃がすためにギャラルホルンと戦って……そして……
「あの後どうしたんだっけ?」
よく思い出せない。戦ってる途中に意識が持たなくなり気がつくとこの場にいたのだ。
「そうだ……俺、死んだんだな…」
そうとしか思えない。何故ならここは火星とはまるで環境も景色違うからだ。ということは、ここは死んだ後の世界か?そう考えてる内に1人の老婆に話しかけられた。
「あんた、大丈夫かい?」
「……俺の事?」
「あんた以外、誰がおる?」
キョロキョロと周りを見渡して見るが誰もいない。
「確かにそうだね。………ありがと。大丈夫だよ」
「散歩がてらこの道を歩いてたらあんたが倒れてるもんだから少し焦ったもんじゃ」
顔や手足を見るとかなりシワがでているが、それでも老人とは思えないほど元気そうな事が分かった。俺はその場から立ち上がろうとしようとした瞬間、グゥと腹の音が鳴った。
「…そういや俺何も食べてないや…」
ギャラルホルンに追われ、鉄華団の皆を逃がすために少しでも時間が惜しかった為飯すら食べてなかった俺は今更の空腹に困惑していた。すると、おばあちゃんが笑いだし
「ホッホッホッ、腹の音が鳴る事は元気の証拠じゃ。どれ、ワシの家に来て飯でも食ってくか?」
「いいの?」
「ああ、いいとも。ここら辺はあまり人が寄らなくてな、別に寂しくはないんじゃがアンタみたいなのは珍しい。それに、腹が減ってる子供を見捨てるのはワシの生に合わんのでな」
このおばあちゃんから特に悪意やこれと言った感情は見受けられなかった。初めて会った自分に飯を食べさせてくれるのは正直怪しい気もするけどどっちにしろ行くあてもないので感謝の礼をした。
「そういやアンタ、名前は?ワシは桜っていう名じゃ」
「三日月。三日月・オーガス」
桜っていうおばあちゃんの案内を受けて道なりに進んで行くと、1つの家にたどり着いた。家自体は何の変哲もない、おばあちゃん1人で住むには少し大きい程度の家だったけど、それでも驚いたことがあった。この家の後ろには一目みても分かるくらい広大な畑が広がっていた事だ。
「凄い…これ全部桜ちゃんの?」
「いきなりちゃんづけか…。まあ、いいが。そうじゃよ、かなり向こうまで広がっているがワシの畑じゃよ。主に野菜を栽培しておる。さ、家に入るといい」
玄関に案内されて家に入ったがやはり何の変哲もない普通の家だった。テーブルにキッチン、畑に行くための入り口なんかがあった。桜ちゃんに「ここで待っておれ。すぐに用意してやるからの」と言われテーブルの席についた。
それから間もなく桜ちゃんがやって来ると料理が運ばれてきた。主に野菜を炒めたものがおかずで米と野菜の具が入ったスープだった。一言「いただきます」と言って口に料理を運ぶと一気に目を見開いた。
「美味しい…」
「そうか、そうか。口に合って良かったわい」
それからは早めペースで料理を食べた。なんせ、美味しいものだから食べても食べても次々と口に運んで行ってしまう。それを見てる桜ちゃんはニコニコしながら俺の事を眺めていた。
「ごちそうさま。これ、台所に持っていけばいいの?」
「お、偉いねぇ。そうさね、台所にでも置いておくれ。ワシゃ畑の仕事でもするんでゆっくりしとけばいいさね」
「じゃあ、俺も手伝う」
そう言うと桜ちゃんは驚いたようにこっちに振り返った。
「別にいいんじゃよ?」
「いや、飯まで食べさせて貰って何もしないってのは駄目だ。恩を仇で返すなってオルガ…俺の家族に言われてるから」
「…それじゃ頼むとするかね」
「うん、任せて」
それからというもの、俺は桜ちゃんの畑仕事を予定より多くした。本来なら今日しなくても良いところまでしてしまい桜ちゃんが「若いのは元気があるねぇ」なんて呟いていた。
桜ちゃんが持ってる畑はそれこそかなり大きな規模なんだけど半分近くは触れられてすらなかった。桜ちゃんが言うには1人だとどうしても負担が掛かる事と奥の畑に行くと森があってその森から猪が畑を荒らしに来るんだとか。今度そいつが来たら追い払うって桜ちゃんに言うと「無茶せんでおくれよ」と言われた。
それからというもの行く宛もなかったのでどうしたものかと困っていた所、なんと桜ちゃんからこの家に住んでもいいと言ってくれた。流石に迷惑はかけられないと言ったが
「なぁに、人が1人増えた所でワシは困らんよ。それに三日月が居ることで畑仕事が捗るからの。まあ、ワシの家で良ければの話じゃが」
「……ありがとう、桜ちゃん。あまり迷惑はかけないようにする」
こうして、俺は桜ちゃんの家に住まわせて貰う事にした。
しばらくしてある日の事……
「ブモォォォォォ!!」
森の方からドスンドスンと大きな足音が響くとかなり大きな猪が鼻息を荒くして現れた。
畑の端から端まで距離はあるはずなのにここからでも猪の鳴き声が届き今にも畑を荒そうとしている。
「ああ、あの猪が来てもうた…また畑が荒らされる…。すまんの三日月。アンタが一生懸命耕してくれた畑が無茶苦茶にされるのを見てワシはどうする事もできんのじゃ…」
桜ちゃんが弱々しくそう言った。
「大丈夫、桜ちゃん。俺ちょっとアイツ追い返してくる」
俺はそう言うと猪の方に振り向き駆け出す。駆け出した後ろの方から桜ちゃんの声が聞こえて来る。駆け出した後ろから無茶じゃ!とかやめるんじゃ!とか聞こえてくるけど今はそんな事関係ない。ここに来てからある程度分かった事がある。
まず、ここは死んだ後の世界じゃないこと。俺達のいた所とここは似てるようで全然違う所、そして――
「(
感覚が研ぎ澄まされる。すると、俺の体に変化があった。
まるで金属に包まれるような感覚が起き、体も顔も全て金属に覆われていく。そして右手からあるものが虚空から現れた。それはかつて自身が使っていた武器、メイスでありそれを握ると三日月は完全に別の物に変わっていた。
「じゃぁ…また行くか。バルバトス」
駆け出していた足がスラスターを備えたバルバトスの足となりスラスターを吹かせて猪に急速に接近していた。
「ブモッ!?」
そのとてつもないスピードに猪は驚愕していた。そして遂にの目の前に立ち持っていたメイスを振り上げ猪の真横に振り下ろすとことで猪の横に小さなクレーターを作った。
「今度畑荒らしにきたら叩き潰す」
とドスの効いた声で猪に言うと青ざめて森に猛ダッシュで逃げていった。桜ちゃんの所に戻るとかなりポカーンとしていたけど、正気に戻ると桜ちゃんはかなり驚いていた。
「三日月…アンタ一体…」
「何かできると思ってやってみたらできた」
あまり言い訳になってない言い訳を言うと桜ちゃんは呆れた顔でため息をついた。
また、ある日の事――
「ブ…ブモッ…」
あの猪がまた現れた。が、今度はかなり弱々しくやつれていた。恐らくこの間の一件以来、何も食べてないんだろう。バルバトスになってメイスでつついてみてもあまり反応を示さなかった。
「ちょっと待ってて」
「ブ、ブモ?」
俺は急いで野菜や作物を貯蓄している倉庫に入るとある程度野菜を持ち出しそれを猪の目の前に置いた。
「食べていいよ。桜ちゃんもきっと良いって言う筈だよ」
俺の言葉を理解したのか分からないけど、そう言うと猪はモグモグと野菜を食べだした。食べてる姿を見てると後ろから桜ちゃんが近づいてきた。
「腹が減ったならこっちに来れば…なんて動物には言えないねぇ」
「桜ちゃん、ごめん。勝手に持って行っちゃって」
「いいさ、いいさ。……三日月、アンタ優しいんだね」
「別にそうでもないよ」
猪が野菜を食べ終わると今度は俺に頭をこすり付けて来た。
「………何これ」
「おやおや、三日月アンタ好かれたみたいだね」
……正直困る。別に好かれたくて野菜とか無断で持ってきた訳じゃないし。
「どれ、三日月。この猪、飼ってみるかい?」
「……飼えるのこれ?」
「まぁ…餌を与えておけばなんとかなるじゃろ」
桜ちゃんも流石に猪の飼い方なんて分からないから曖昧な返事だった。
「…一緒に住む?」
「ブモッ!」
……多分これは了承してるんだろう。
そして桜ちゃんの家に新たに猪が増え、名前は「プギー」にする事にした。プギーは俺や桜ちゃんがやってる畑仕事を見ている内にプギーから畑仕事の手伝いをしに来るようになった。まあ、手伝いといっても道具とかまだまだ元気とはいえ、老人である桜ちゃんをおぶって移動したりとかだけどね。回数を重ねる事にいつの間にか俺や桜ちゃんが言わなくても勝手に行動して色んな事を手伝ってくれた。
そんな、桜ちゃんとプギーで畑を耕しているある日の事、突如大きな爆発音がなり響いた。
「三日月、今の聞こえたかい?」
「うん、それなりの距離から聞こえてきたね」
更に、爆発音が鳴った。今度はまるで爆弾が連続して爆発するかのような音が数分鳴り響いた。
「桜ちゃん、ちょっと俺見てくる」
「待ちな。それならプギーも連れてお行き」
「でも…」
「ワシは大丈夫じゃ。三日月に万が一の事があったら敵わんからの。プギー。三日月に付いてやっておくれ」
「ブモッ!」
まるで任せとけ!って言っているかのような声を出したプギー。
「分かった。すぐ帰って来るから」
「気をつけてな三日月や」
「うん。プギー、行こう」
「ブモッ!」
俺はプギーの背中にまたがるとプギーは走りだした。畑や田んぼを越えて民家や商店街をくぐり抜けてプギーは全速力で走る。途中で人に見られてかなり騒いでたけど特に気にすることなくそのまま走り続けた。
やがて、爆発音が鳴ったであろう場所にたどり着いた。
「プギー、そのままここで待機」
「ブモッ」
場所は一軒の家。少し離れた所でプギーを待機させ、ゆっくりと近づく。家の門前まで近づくと声が聞こえてきた。
「智樹ィ…これはちょっとキツイぞ…」
「うん…俺もそう思う…」
俺は耳を疑った。男2人の内、片方は聞いた事があるからだ。忘れる筈もない、もう会うことも喋ったりする事も出来ないと思っていた俺の大切な人――
「オル…ガ…?」
「ああ?誰だ俺の名前呼んだのは…………え?」
俺が姿を表すとオルガともう1人ボロボロの状態で寝転がっていた。そのオルガはと言うと信じられない物でも見たような顔をしていた。
「み…ミカァ!?」
どうやら、俺達はまた会える事が出来たみたいだった。
因みにこのプギー、2m半はあるんですが現実でこんなのいたら大問題ですね