仮面ライダーSPIRITS〜転移せし善悪の亡者達〜 作:仮面ライダーハードエボル
ー国連ビル 食堂ー
(
会議室から出て直ぐに聞き耳をたてていた滝は聞いていた内容を思い返していた…。
被害者を襲った異形の怪物…それ等から被害者を救った自身の知人とは違う仮面ライダーを名乗る存在…
(聞いただけだが姿形は似て非なる見てぇだ…何者かの自作自演か?)
「タキィ!!お前また捜査から外されたってぇ!?」
思考していた滝に開口一番にそう言って怒鳴り声を出したのは、同僚であり人生の先輩でもあるホプキンスと言う窓際族だった。
「相変わらず地獄耳だな、ホプキンス」
「しょーがねぇだろ?俺は嫌われてんだから」
「滝さん口が悪いから」フフフッ
そう笑って言ったのは食堂の給仕係りをしているブリジット女史であった。
グビッゴクン!
「ごっそさん、ブリジット!」
「そんじゃ嫌われ者は嫌われ者らしく、チカン逮捕に行ってくるぜ!」
「行ってらっしゃ〜い!」
コーヒーを一気飲みした滝は2人に軽い挨拶を交わし、食堂を後にしてある場所に向かった…
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ーニューヨーク裏路地ー
(俺は或人に倒されて…機能を停止したハズだった…)
自分は死んだハズだった…そう思考していたのは、両耳にヘッドホンのような物を着けた男…
より正確に言えば、人間と同じ姿をした高度の
かつてタイムジャッカーのフィーニスによって変えられた歴史で仮面ライダー
その後、息子の或人と激闘の末に敗北し歴史も元に戻り、機能を停止して消滅した…
しかし、機能が復活し、周りを見れば日本ではなくアメリカ・ニューヨークのハーレムにいた事に飛電其雄は困惑したものの、直ぐに情報収集を始めた。
ある程度情報収集を終えた其雄はハーレムにいたホームレスの人達と仲良くなり、近くにあった廃墟を拠点にした。しかしつい数日前、近くで女性が襲われている事に気づき〈仮面ライダー1型〉に変身して救助した。
(先日会ったあの怪物…僅かに人間と同じ骨格が確認できた…)
(つまりあの怪物は、人間をベースに造られた生物兵器…大きな組織でないと製造することは不可能…)
飛電其雄はそう思考しながら拠点でガラクタなどを使い、
「〜〜〜 」
「ん?」
外に出て最初に聞こえたのは、幼い少年の歌声だった。その少年は自分がこの地に来た時、色々手を貸してくれたスパイクという名で、将来は歌手として成り上がってハーレムの子供たちの助けになりたいと言っていた。
そんな彼は歌い終わった今、ハーレムの子供たちに囲まれながらいい笑顔で笑いあっていた。
「いい歌だったな、スパイク?」
「あ!ソレオのオッサンも聴いてくれてたのか!?」
「その調子ならアポロシアターのアマチュアナイトで成功も間違いなしだな」
「ハハッ!そんなこと言ったって何も出ねぇよ!」
彼は笑いながら謙虚に返した。その姿はまるで、息子が幼い頃に自分を笑わせると言った時の笑顔に見えた…
「スパイク、その人は?」
そう聞いたのは、ハーレムの子供たちの所に遊びに来ていた滝だった。彼の近くにはハーレムの無人の教会に赴任して来たペトレスク神父も一緒だった。
「この人はソレオ・ヒデンって言う日本人でこのハーレムに越してきた変わり者だよ!」
「今は近くの廃墟に住んでるけど、スゲー頭がいいから偶に俺らに勉強を教えてくれてるんだぜ!」
「へぇー?」
「俺はFBIの捜査官をしている滝和也ってもんだ!つっても今じゃ窓際族みたいになってっけどな!」ハハハッ!
「俺は飛電其雄…このハーレムで彼等の世話になっている者だ」
「ところでアンタの両耳のそれは何だ?」
「これか?これは俺にとって体の一部の様な物だ」
ダブルライダーを支えた男…
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side:夜の教会
「う·····」
ここはペトレスク神父が赴任して来た廃墟の教会…ここには神父に食事に誘われたホームレス達がいた。
しかし彼等は苦しみながらのたうち回っていた…それを虫を見るかの様な冷たい目をしていた。
「ひ…ひ…ひもじいよぉ…」
「ひもじい…そうでしょう?生まれ変わるには沢山のカロリーが必要になりますからね…」
「今宵は月の下で外食でもどうです?」
「神の恵みのパンをほうばりながら…紅い…ワインを…」
ペトレスク神父はそう言いながら目を黒くして嘲笑うかのように見ていた…
「!」
扉が開く音がして、入口を振り向けば昼間出会ったFBIの滝が扉に背を預けて立っていた。
「·····おや?滝さんでしたね、何か?」
「神父さん1人かい?」
「えぇ…ミナサン食事を済ませた後帰られました…」
2人ともなんともないただの世間話をしているがお互い信用しておらず、静かに腹の探り合いをしていた…
「なぁ神父さんよ…最近市長が変わって治安が良くなった
「丁度…アンタと飛電其雄ってのが来た時期にな···」
「教会やハーレムのような所には人が集まりやすいからな…なんか知らねぇかな?」
「う〜〜〜〜ん申し訳ありません。そのような噂は何も·····ねぇ」
「そうか·····邪魔したな。また来るよ、懺悔でもしにな」フゥ…
「えぇ···何時でも···」
そう言って滝を見送った神父のいる教会の暗い天井に、蝙蝠のような何かが潜んでいた···
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side:スパイク
「おー、やるじゃねえかスパイク!アマチュアナイトの出場決まったって!?」
「まぁね」
「お前なら絶対いい話が来るぜ!」
「まぁね」
「かーーっ!!余裕だねぇ〜!?」
スパイクがアマチュアナイトの出場が決まり、ハーレムに住む大人も子供もみんな彼が成功することを祝福しながら檄を送っていた。
(俺はマイケル・ジャクソンのように成り上がるんだ!)
(そんでもって俺達も捨てたもんじゃないって所をあいつらに教えてやるんだ!)
(1人もギャング何かにはさせねぇ…俺はこいつらの夢になるんだ!!)
(夢に···)
「あ!」
「ペトレスク神父···?」
「スパイク君···ちょっと良いですか?」
スパイクに声を掛けたペトレスク神父の顔は笑顔だが、その冷たい目は獲物を見定めた
ーENDー
仮面ライダー1型
変身者 :飛電其雄
登場作品『仮面ライダー 令和ザ・ファースト・ジェネレーション』
仮面ライダー作品に出て来た父親ライダーの中で唯一良い父親として登場。
『仮面ライダーゼロワン』で飛電或人の育ての親として造られたヒューマギア。人工知能〝アーク〟の暴走を止めるために手を尽くし、幼き或人の原点となった存在。